ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回あらすじ>モエールに食事を食べさせ終えたアベルがやって来て……。

いらっしゃーい。って、ねえ……w

では、本編どぞ!



第七百五十九話 新婚さん

 

「助かる~♪ じゃ、モエールの視界に入らない場所まででよろしくね!」

 

「ん? よくわかんないけど、わかった。じゃあアベルも……」

 

 

 モエールの視界にアリア、自分が入ると火力がなぜか上がる。

 火力は一定でないといけないという。

 つまりは自分がこの場にいてはクリエの作業の邪魔になってしまうということ……。

 それにこの場にいたとして、何ができるわけでもない。

 ただ作業を見守ることしかできないのだ。

 

 それはアベルも――と、アリアは空の食器を持ってやって来たアベルに視線を移した。

 

 

「ん? あ、僕はここに残るよ。さすがにクリエちゃんたちに任せっきりってわけにはいかないからね」

 

「あ、そっか。それもそうだよね。なら私も起きて待ってる」

 

「アリアはちゃんと眠って? 体力を付けるためにも睡眠は大事だよ」

 

「……アベルが寝ないのにそんなわけにいかないよ。アベル、今日もずっと戦ってたし、最近あんまり寝てないよね……?」

 

 

 クリエの作業を見守ることくらいしかできないが、何か雑用くらいは協力できるだろう。

 自らの不注意で起きた事の顛末を見守りたい。

 

 アベルが告げるとアリアの眉が下がる。

 心配そうに眉を下げ、見上げてくる妻の姿にアベルは苦笑した。

 

 

「僕はいいんだよ。君がぐっすり眠ってくれることの方が大事。仮眠は取るつもりだし、闇のランプが直ったら一泊してから出発するから」

 

 

 ――君にはしっかり眠って体力を付けて欲しい……もしかしたら子どもができてるかもしれないし……。

 

 

 夜が長いせいで日数がはっきりしないが、結婚してから既に二ヶ月以上は経っている。

 だからひょっとするのだ。

 

 ……修道院生活中の話だが、アリアにプロポーズをしようか迷っていた頃、アベルはマザーやシスターたちから「旅をしているのだから、結婚したら家族計画はしっかりするのよ」と口酸っぱく言われ、特別室で“ハウツー家族計画”なんていう【本】で勉強をさせられた。

 かつて修道院に身を寄せていた女性たちの中に、望まない妊娠をした人が何人かいたらしく、正しい知識は大事だからと男性にも知って欲しいとのことでアベルに教えてくれたのだ。

 危険と隣り合わせの旅だからいつも以上に気を付けなさいと、ご丁寧に避妊方法まで教わったものの、そちらは今のところ不要である。

 

 なぜなら二人ともに、子どもはいつできてもいいと思っているからかなり頻繁に営み、避妊はしていない。

 つまり、既にアリアに子ができていてもおかしくはないということである。

 月の物が――という話も結婚後は聞いていないし、ひょっとするとひょっとする。

 ……そんな妻に徹夜などさせるわけにはいかない。

 

 なぜそんなことに思い至ったのか――。

 それはアリアの「最近あんまり寝てないよね……?」の言葉をきっかけに、昨夜の彼女が告げたことを思い出したからだ。

 

 

『ンああっ♡ らめっあべる♡ らめぇっ、そんないっぱい×しちゃぁ、――ちゃうよぉっ♡♡』

 

 

 アベルに散々攻め立てられ、泣き濡れたアリアは舌足らずにそう告げて、その後気絶した。

 【布団】と浴衣、そして和室という非日常の空間は、夫婦関係の親密度を上げるのにもってこいの空間であった。

 連日連夜、完全に安全な場所で子どもを望む若い夫婦が致すことといったら、それしかないわけで……。

 その時はただの煽り文句だと興奮していたが、冷静になって考えるとそろそろできていてもおかしくはない。

 

 ……が。

 今はクリエとシドーの前だ、デリケートな話題のため明言せずにアベルは目を細めてアリアの頭を優しく撫でておいた。

 

 

「うん……。わかった……ありがと、ごめんね?」

 

「……アリアと三日間一緒にいられないのはちょっと淋しいけどね(最近毎日一緒に寝てたから余計……)」

 

 

 アベルの気遣いにアリアは納得しているような、いないような……。それでも言われた通りに了承してくれる。

 自然と上目遣いで見上げたアリアをアベルは片腕でそっと抱き寄せた。

 

 

「……私も……」

 

「へへへ♡」

 

 

 抱きしめられ、アリアもぎゅっとつい、クリエとシドーの前だということを忘れ抱き返す。

 すぐさま二人の肩にクリエの手が伸びた。

 

 

「はい、お二人さん。イチャつくの禁止ー! シドー君もじろじろ見なーい!」

 

「なっ!? なんだよっ、見てたっていいだろっ!」

 

 

 クリエは抱きしめ合うアベルとアリアを無表情で引き剥がし、視界の傍で目を輝かせ興味津々で見つめるシドーに注意する。

 シドーが不服そうに頬を膨らませた。

 

 

「「っ!」」

 

 

 指摘を受けたアベルとアリアはハッと我に返り、互いに距離を取る。

 アベルもアリアも頭の隅に二人の前だということは把握していたはず――。

 なれど、新婚時代というものは、往々にして周りが見えなくなってしまうことがあるのだ。

 

 

「じゃ、じゃあ、私その空のお皿もらっていくね! またご飯の時間に!」

 

「う、うん! また後でね!」

 

 

 アリアが真っ赤な顔で、アベルが手にしていた空になった皿とスプーンを奪って走り去る。

 彼女の行く先はここからでも僅かに灯りが見えるテント――さすがに迷うことは無いだろう。

 アベルも照れながら手を振り見送った。

 

 

「あ、シドー君。アリアねえをテントまで送ってってよ」

 

「ん? すぐそこだろ?」

 

「いいからいいから」

 

「ぅん? お、おう。わかったよ、オマエの頼みじゃしょうがない」

 

 

 不意にクリエがシドーを派遣する。

 オアシス内で魔物が出ることはないため、一人でも大丈夫なはず。だが、クリエの頼みごとをシドーが断ることはない。

 

 ……シドー、彼はすぐにアリアを追いかける。

 追いついたシドーは、アリアと一言二言言葉を交わすと皿を奪い、テントに歩いていった。

 

 

「ふぅ……まったく、隙あらばイチャつくよねー!」

 

 

 シドーの背を見送り、クリエは目線をアベルに移す。

 

 

「……なんかすみません……」

 

「いや、新婚さんだもんね! いいんだよ。いいんだけどさあ……シドー君には見せないでやって欲しいなあって。彼、無垢だからさー」

 

 

 ――シドー君は純粋なんだよ……汚しちゃいけないんだからね……!

 

 

 頭を下げるアベルにクリエは苦笑した。

 

 シドーにいちゃラブはまだ早過ぎる――というのがクリエの考えだ。

 シドーは破壊神であるが、神ゆえに視点が高過ぎるのだろう、人間たちの感情の細かいところまではよくわかっていない。

 今の姿になって日も浅い……わけではないが、日々数多の人間と触れ合いそれなりに社会生活を送り、人間とは何か、ビルドとは何かを学んでいる最中である。

 異世界生活では初めてのことが多く、見るものすべてが楽しい盛り……。

 

 身体こそ十代前半……思春期に入る頃だが、シドーの精神の一部はまだ幼く、友情には熱いが色恋に関しては無知蒙昧。

 クリエを異性だとは認識しておらず、ただただ大事なトモダチだと思っている。

 それはクリエも同様で、シドーに性を意識して欲しくない。

 

 女ゆえの精神性なのだろう、クリエは数々のビルドをする中で色々(・・)と学んでしまった。

 ……今はまだ、シドーには花畑で楽しく蝶を追いかける少年のままでいて欲しい。

 そう――クリエから見たシドーはトモダチであり、可愛い弟のような存在。

 アベルとアリアに触発されて性に目覚めさせたくはないのである。

 

 異世界で誰かに恋でもされては、元の世界に戻る時 障害となってしまう。

 せめて元の世界に戻るまでは純真無垢な彼のままでいて欲しい――、クリエはゆっくりと成長していくシドーを見守るのが楽しいのだ。

 

 これまで何とか誤魔化しながら、シドーには性に関することを遠ざけてきた。

 今はビルド欲求の方が勝っているからアベルたちと行動を共にしているが、新婚夫婦と一緒の旅はそろそろ潮時のような気がしている。

 

 

「はあ……」

 

 

 ――シドーに見せないって……なぜなんだ……?

 

 

 シドーはクリエを好きだと思うのだが、違うのだろうか……。

 クリエの想いなど知らないアベルはなんとなく首を縦に下ろした。

 

 

「二ヒヒッ! シドー君かぁーいーっしょっ? わかってもらえたみたいでよかった。よぉっしっ! じゃあ、次は切断面をくっつける作業に入るよ!」

 

 

 この話はこれでおしまいとばかりに、クリエが白い歯を見せ【ビルダーハンマー】をぶん回す。

 やる気は充分、成功する自信もある。今は未知のビルドを楽しむ時間なのだ。

 シドーも異世界でビルドを楽しんでいるようだし、絶対成功させなくては。

 




お姉さんなクリエちゃんはシドー君の成長を温かく見守っているのです。
以前アリアから見たシドーの見解がビンゴってことで。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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