ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回あらすじ>未知のビルドを絶対成功させるぞ……! と、意気込んだクリエ。

シドー先生!

では、本編どぞ!



第七百六十話 シドー先生オナシャス

 

 ……シドーがアリアを送り届けて戻って来ると、クリエは【やみのランプ】を接合する作業を始めた。

 アベルからは作業台が光り輝き、何が行われているのかはっきり見えなかったが、光が治まると【やみのランプ】は元の姿に戻っていた。

 

 

「ッ、オオオオオオッッ!!」

 

 

 ――やったーっ!!

 

 

 外形が元通りになった【やみのランプ】を前に、興奮したアベルはプックルではないため何の効力はないものの、つい【おたけび】を上げてしまう。

 腹の底からかつてないほど野太い声が出た。

 

 

「ふぅ……これで一応接合は完了かな?」

 

「クリエちゃん! 前からすごいとは思ってたけど、ホントすごいね君!」

 

 

 クリエはアベルが笑顔を見せる中、修復した【やみのランプ】をコンコンと叩いて強度を確かめる。

 水差しの形に月を模した飾りの付いた蓋、蓋は開かないように固定されており、接合部などは見えない。まるで新品のような仕上がりだ。

 

 

「へっへーん☆ まあね! 一応強度も上げておいたからもう壊れることは無いと思うよ」

 

「ありがとう、クリエちゃんありがとうっ!」

 

「あ、けど、まだ形だけだから、今はまだ ただのランプだよ。ここからはシドー君の出番」

 

 

 これで朝が来る……! と思いきや、まだ接合作業が終わっただけで【やみのランプ】としての力はやはりないらしい。

 そういえば【やみのランプ】を完全に復活させるにはシドーの力が必要だと言っていた。

 はて、シドーの力とは何のことなのか……そんな簡単な疑問、形だけでも元に戻った【やみのランプ】を前に、興奮したアベルが気付けるはずもなかった。

 

 ……現時点では修復工程の一部が終わったに過ぎない。

 だがきっとクリエたちなら直せるのだろう。そう確信したアベルの顔は明るく綻び、引き続き二人の作業を見守る。

 

 

「シドーせんせい、オナシャスっ!」

 

「せ、せんせい?? せんせいってなんだ?」

 

「んじゃ、魔法の作業台出すね」

 

 

 クリエから手を合わせて拝まれ、“せんせい”と呼ばれたシドーは意味が解らず首を傾げた。

 毎度のことながら、徹夜続きの彼女のテンションについていくのは難しい。

 戸惑いの表情を浮かべるシドーをよそに、クリエはシドーの発言は無視で、銀の円卓に青い大きな宝玉が据え付けられた作業台、【まほうの作業台】を【ふくろ】から取り出す。

 

 アベルは「神秘的な作業台だなあ……」なんて、独り言を呟きつつ大きな宝玉をまじまじと見つめ、どうやって使うのだろうと興味津々だ。

 

 

「おい、クリエ……って、魔法の作業台か……。オレはどうすればいい?」

 

「フヒヒ。シドー先生のおチカラをちょちょーいと、この作業台からランプに込めて欲しいんですわ。ちょちょーいっとなっ♪ ハアハア……」

 

 

 両手人差し指で【まほうの作業台】を指差し、隈の酷い顔で白目を剥いて嗤うクリエにシドーが訝しく目を細める。

 彼女がビルドに関してイカレているのは知っているが、最近で最も酷い顔かもしれない。

 

 

「……オマエ……だいぶイカレてるな(で、せんせいってなんなんだ……)」

 

 

 充実したビルドをしていると妙な表情を浮かべるのはいつものことだから、きっと楽しくて仕方ないのだろうと理解できるが、普段は可愛いのに勿体ないとシドーは思う。

 

 

「フヘヘへ……徹夜続きなもんでね」

 

「……本は出来上がったのか?」

 

「うんっ! あとは増殖させるだけっ! 次の町で売り出すよっ♪」

 

 

 ここ数日の徹夜で【本】は出来上がったらしい。シドーの質問にクリエはヘラヘラと笑ってみせた。

 一つの修羅場は越えたと言っていいだろう。これから三日間の徹夜が残ってはいるが、それ以上はない――。

 そう思うとシドーは、ここを乗り越えればやっとクリエが安心して眠れるのだと安堵する。

 

 

「今度こそ読ませてくれよな」

 

「いやいやいや……シドー先生にはとても見せられない出来でして」

 

「何言ってんだよ、毎回即完売させるくせに……」

 

「いや、ホントなんだって! あんなの見たらシドー君の目が腐る」

 

 

 クリエ作の【本】のいくつかはシドーも読んだことはあるのだが、一部の【本】は秘密裏に販売され、それらは読んだことがない。

 シドーが出掛けている時を見計らい、クリエはその間に売り切ってしまうのだ。しかも売り切った後、増刷はしない。

 彼女の作ったものだからどんな【本】も読みたいのだが、在庫がないと毎度言うから最近じゃビルド欲は満たされているものの、そこは不満が溜まっている。

 

 

「……そうやってオマエはいっつもオレに販売を手伝わせないもんな……」

 

「そう不貞腐れないでよ。いつか見せるからさ~」

 

 

 唇を尖らせ言ってみてもクリエは動じず笑顔で、シドーの目は半目になった。

 

 

「……アリアは色々手伝わせてくれるのになー」

 

「アリアねえはそういうとこ上手だよねー! こう、シドー君のビルド欲求を巧みに刺激して満たしてくれてさー」

 

「……むぅ」

 

 

 チラッと目配せし、アリアを引き合いに出したがクリエに折れる気はないらしい。

 ……そんなに新刊を見せたくないというのか。

 この世界に来てから久しぶりの新刊なのだから読ませてくれてもいいだろうに。

 アリアをさくっと褒めてやり過ごすクリエを前に、シドーの頬はプクっと膨らんだ。

 

 

「ささっ、シドー先生! ひとつよろしくお願いしまっす! ほい、カケラ!」

 

「……使っていいのか?」

 

 

 不貞腐れるシドーをそのままに、クリエは【ふくろ】から“カケラ”を一つ取り出す。

 その“カケラ”はアベルから見ることはできないが、僅かに青白く輝いていた。

 

 

「一個くらいなら大丈夫だよ」

 

「……クリエ、オマエって良いやつだよな」

 

「へっへへ♪ お褒め頂き光栄のいたり~☆」

 

 

 シドーの手に“カケラ”が渡る。

 鼻の下を擦りながら笑顔を見せるクリエを眺め、シドーは発光する“カケラ”を握りしめた。

 

 

「アベル、クリエに感謝しろよ。カケラ探しは大変なんだからな!」

 

「え? あ、ああ! 感謝してる!!」

 

 

 発光する“カケラ”の光がシドーの身体に染み込むように消えていく。

 アベルには何が起こっているのかさっぱりだが、言われたままに返事をした。

 

 

「おお~! さっすがシドー君、入ったね!」

 

「……弱いな」

 

「まあ、カケラだからね」

 

 

 感心しながらクリエは光を失った“カケラ”を回収し【ふくろ】に収めると、拳を何度か握りしめ、手の平を見下ろすシドーに頷く。

 ……“カケラ”の光が消え失せ、シドーの手の平には青白い光が宿っていた。

 

 

「……よし、入れるぞ」

 

「早く入れてっ! ハアハア」

 

 

 真剣な顔で告げるシドーへクリエも同調し、【やみのランプ】がのせられた【まほうの作業台】に向け、祈りのような妙な動きを始める。

 

 

「……っ……(入れてって……そんなはっきり……)」

 

 

 【まほうの作業台】に向かって作業を始める二人の後ろで、アベルは独り赤面する。

 ……昨夜のアリアを思い浮かべたことは誰にも言うまい。

 




シドー君は先生という単語を知りません……。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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