前回あらすじ>シドー君のチカラをやみのランプに入れてもろて……。
見守り一日目~。
では、本編どぞ。
「ハアハア……、クリエ、どうだ……?」
「ハアハア……、もっと!」
「うっ……、もっと……? くっ……!」
「ああっ♪ ソコソコ! シドー君、もっとおぉっっ♡♡」
【まほうの作業台】が真っ白な眩い光に包まれ、そこで何が行われているのかやっぱりアベルには判らず、二人の声だけが聞こえた。
……少々クリエの声がいつもより高く、アベルは目を閉じ立ち尽くす。
「……っっ……」
――クリエちゃん、君、わざとだろ。
微かに“フヒヒ”とクリエの笑い声が漏れ聞こえた気がして、アベルは眉を寄せ苦笑した。
しばらくして眩い光は治まり、【まほうの作業台】にはシドーの力が宿った【やみのランプが】置かれていた。
……【やみのランプ】からただならぬ気配を感じる……。
「上手くいった~♪ やったー!」
「おー! やったな!」
「シドー君のおかげだよ!」
「へっへーん!」
【やみのランプ】の修復、第二工程が無事終わり、“ハイタッチ!”とクリエとシドーは飛び上がり手を叩き合わせる。
二人の額には汗が滲んでおり、その表情は晴れやかだ。
「ふい~賢者モード~。はぁ……あとはモエールの炎で三日間、燻すだけ~! 簡単っしょ?」
額の汗を拭い、クリエは一息吐いて次の工程を説明する。
アベルが「賢者モードって……」と、これも苦笑した。
「……地味な作業だな」
「地味な作業が一番重要だったりするんだよ。シドー君の得意な素材集めとかさ」
「なるほど……。よし、オレも協力する」
「ありがとー、シドー君♪」
クリエとシドーは【やみのランプ】を手に、【氷】に生き埋めされて身体を震わせるモエールの元へと向かう。
【氷】の壁を上り、予め設置しておいた金具に【やみのランプ】を引っ掛け、魔力の炎を当て始めた。
それを二人は並んで腰を落とし、足をやや広げてしゃがんだ姿で黙って見つめる。
いわゆるウンコ座りであるのは、【氷】にお尻を着けると冷たいからなのだろう。
三日の間、これでいくつもりなのか……。
「……地味な作業だなあ……」
先ほどまでの工程からすれば地味も地味。
ただ見ているだけという見守り作業――。
これで本当に【やみのランプ】を完全復活させられるのかは疑問だが、アベルはぽつりと呟き二人をサポートするべく、自らもモエールの傍へと向かった。
「クリエちゃん! 僕も何か手伝えないかい?」
「んー? 今はまだボクも眠くないし、モエールも眠くなさそうだから大丈夫~。眠くなってきたら交代してもらおっかな~」
「了解! じゃあ、僕は少し仮眠を取らせてもらってもいいかな? クリエちゃんが眠くなったら起こしてよ」
「オケオケ! おやすみ~」
【氷】の囲いの上を見上げ、話し掛けてくるアベルにクリエは快諾する。
……アベルは「アリアにちょっと会ってから仮眠する」とテントへと走って行った。
一日目くらいはモエールも
徹夜慣れしているクリエと違い、モエール本人は寝ないとは言っていたが、恐らく眠くなってしまうはず。
寒い夜が続いているのだから、気付かない内に気絶していることもあるだろう。
モエールを傷付けないように巧く眠気を覚ましてやらなければと、クリエの手には【ひのきのぼう】が握られていた。
「っ、起きてますよっ!」
クリエが片手で握った【ひのきのぼう】をもう片方の手にペチペチと打ち付け――からの、爽やかな……否、不気味な笑顔。
目が笑っていない……。
それは脅しではなかろうか、笑顔の裏の無言の圧ほど恐ろしいものはない。
……モエールは危険を察知し、目を見開いた。
「ウンウン。起きててエライエライ! ボクも頑張るから君も頑張ろうね!」
「……(寝そうになったらあれで殴るつもりなんだな……)」
「はいっ♡ お返事は~!? モエールくーん、お返事でっきるかなぁ~?」
「は、はいっ……!」
クリエのテンションは相変わらずおかしい。
張り付いた笑顔で顔を覗き込まれたモエールは慌てて返事をした。
(クリエさまは恐ろしい方……魔力もないのに……。)
笑顔のクリエを見るなり、やはり彼女に逆らってはいけないのだと、勝手に身体が震える。
クリエに魔力は一切感じられない。だというのに、凄まじい力を感じた。
……ついでにチラッと隣のシドーにも目をやってみる。
(っっ!?!? っっ!?!?)
シドーと目が合った途端、モエールの身体には緊張が走った。
「……どうかしたか?」
「ぃ、いえ……」
――暴いてはいけないと、全自分が言っているボボッ……!
シドーの目付きは決して険しいものではなく穏やかなのだが、なぜだろう。クリエを恐ろしく思うのとシドーに対する感情は違う。
どこか懐かしい気がするような……畏敬の念を抱かざるを得なかった。
「閉じ込められて大変だな。オレも昔閉じ込められたことがあるからオマエの気持ちはわかる。辛いよな。時期が来れば出られるからがんばれよ」
「は、はい……!」
シドーの優しい笑みにモエールの瞳が輝く。
昔、シドーもどこかに閉じ込められたことがあるらしい。
クリエの笑顔が一瞬陰りを見せたが、すぐにまた奇妙な笑みへと戻った。
……【氷】の囲いの上でうんこ座りのクリエとシドーに見下ろされた生き埋めのモエールは、傍から見れば虐められているようにしか見えない――。
「さ、モエールっち、三日間がんばってこー☆」
「はいっ!」
クリエが握った【ひのきのぼう】を頭上に勢いよく掲げると、モエールは冷たい【氷】に触れないよう神経を集中させる。
頭の真上はよく見えないが、クリエがチラチラと【やみのランプ】の状態を確認して頷いているから順調なのだろう。
これだけ周りが冷たくて眠れるわけがないというのに、信用されていないのは少々悲しい。なれど三日経てば解放されるから頑張ろう――、これが終わればアリアからのご褒美が待っているのだから。
モエールは笑顔のアリアを思い浮かべ、奮起し気合を入れようとした。
……頭髪の炎が揺らめき、チリチリと音を立てる。
「モエェェールウゥゥッッ!! アリアねえのこと考えるの禁止だっつってんだろがいィィィっ!?!? あぁーん?」
「ヒッ……!」
すぐさまクリエの顔が鬼の形相に変わり、モエールは縮み上がった。
アリアを想うと炎が強くなってしまう。
気を付けなければ……。
「……っ、ビ、ビックリした……。クリエ驚かすなよ……」
「まだ始まったばっかだから多少は良いんだけどさー、
「お、おう……」
あまりの剣幕にシドーは面食らって目を瞬かせる。
クリエ曰く、【やみのランプ】を魔力の炎にあて続けるとランプの中に
煤が増え続けると、その内煤は空中に流れ出し、空に昇っていく。
それを呼び水に夜の闇を吸収し始める……はず、とのこと。
強火で熱し続ければ【やみのランプ】が壊れる可能性もあるため、弱火で見守らなければならない。
……それからクリエとシドーは、再びモエールを囲うように相変わらずのウンチングスタイルで見守り続けた。
途中でアベルが戻って来て仮眠を取り、その後はアリアの持って来た食事を運んだり、たまに交代したりとできる手伝いをこなす。
交代時にはアベルもウンチングスタイルでモエールを励ました。
そうして一日目は無事終了した。
……【やみのランプ】の口から煤はまだ出ていない。
ソフトなエロふざけを入れつつ、見守り一日目が終了。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!