ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回あらすじ>シドー君のチカラをやみのランプに入れてもろて……。

見守り一日目~。

では、本編どぞ。



第七百六十一話 見守り一日目

 

「ハアハア……、クリエ、どうだ……?」

 

「ハアハア……、もっと!」

 

「うっ……、もっと……? くっ……!」

 

「ああっ♪ ソコソコ! シドー君、もっとおぉっっ♡♡」

 

 

 【まほうの作業台】が真っ白な眩い光に包まれ、そこで何が行われているのかやっぱりアベルには判らず、二人の声だけが聞こえた。

 ……少々クリエの声がいつもより高く、アベルは目を閉じ立ち尽くす。

 

 

「……っっ……」

 

 

 ――クリエちゃん、君、わざとだろ。

 

 

 微かに“フヒヒ”とクリエの笑い声が漏れ聞こえた気がして、アベルは眉を寄せ苦笑した。

 しばらくして眩い光は治まり、【まほうの作業台】にはシドーの力が宿った【やみのランプが】置かれていた。

 

 ……【やみのランプ】からただならぬ気配を感じる……。

 

 

 

「上手くいった~♪ やったー!」

 

「おー! やったな!」

 

「シドー君のおかげだよ!」

 

「へっへーん!」

 

 

 【やみのランプ】の修復、第二工程が無事終わり、“ハイタッチ!”とクリエとシドーは飛び上がり手を叩き合わせる。

 二人の額には汗が滲んでおり、その表情は晴れやかだ。

 

 

「ふい~賢者モード~。はぁ……あとはモエールの炎で三日間、燻すだけ~! 簡単っしょ?」

 

 

 額の汗を拭い、クリエは一息吐いて次の工程を説明する。

 アベルが「賢者モードって……」と、これも苦笑した。

 

 

「……地味な作業だな」

 

「地味な作業が一番重要だったりするんだよ。シドー君の得意な素材集めとかさ」

 

「なるほど……。よし、オレも協力する」

 

「ありがとー、シドー君♪」

 

 

 クリエとシドーは【やみのランプ】を手に、【氷】に生き埋めされて身体を震わせるモエールの元へと向かう。

 【氷】の壁を上り、予め設置しておいた金具に【やみのランプ】を引っ掛け、魔力の炎を当て始めた。

 それを二人は並んで腰を落とし、足をやや広げてしゃがんだ姿で黙って見つめる。

 いわゆるウンコ座りであるのは、【氷】にお尻を着けると冷たいからなのだろう。

 三日の間、これでいくつもりなのか……。

 

 

「……地味な作業だなあ……」

 

 

 先ほどまでの工程からすれば地味も地味。

 ただ見ているだけという見守り作業――。

 

 これで本当に【やみのランプ】を完全復活させられるのかは疑問だが、アベルはぽつりと呟き二人をサポートするべく、自らもモエールの傍へと向かった。

 

 

「クリエちゃん! 僕も何か手伝えないかい?」

 

「んー? 今はまだボクも眠くないし、モエールも眠くなさそうだから大丈夫~。眠くなってきたら交代してもらおっかな~」

 

「了解! じゃあ、僕は少し仮眠を取らせてもらってもいいかな? クリエちゃんが眠くなったら起こしてよ」

 

「オケオケ! おやすみ~」

 

 

 【氷】の囲いの上を見上げ、話し掛けてくるアベルにクリエは快諾する。

 ……アベルは「アリアにちょっと会ってから仮眠する」とテントへと走って行った。

 

 一日目くらいはモエールも一匹(ひとり)で頑張れるだろうから、アベルには体力を温存してもらっておいた方がいい。二日目からは眠りこけそうになったら励ましてやらなければならない。

 

 徹夜慣れしているクリエと違い、モエール本人は寝ないとは言っていたが、恐らく眠くなってしまうはず。

 寒い夜が続いているのだから、気付かない内に気絶していることもあるだろう。

 モエールを傷付けないように巧く眠気を覚ましてやらなければと、クリエの手には【ひのきのぼう】が握られていた。

 

 

「っ、起きてますよっ!」

 

 

 クリエが片手で握った【ひのきのぼう】をもう片方の手にペチペチと打ち付け――からの、爽やかな……否、不気味な笑顔。

 目が笑っていない……。

 それは脅しではなかろうか、笑顔の裏の無言の圧ほど恐ろしいものはない。

 

 ……モエールは危険を察知し、目を見開いた。

 

 

「ウンウン。起きててエライエライ! ボクも頑張るから君も頑張ろうね!」

 

「……(寝そうになったらあれで殴るつもりなんだな……)」

 

「はいっ♡ お返事は~!? モエールくーん、お返事でっきるかなぁ~?」

 

「は、はいっ……!」

 

 

 クリエのテンションは相変わらずおかしい。

 張り付いた笑顔で顔を覗き込まれたモエールは慌てて返事をした。

 

 

(クリエさまは恐ろしい方……魔力もないのに……。)

 

 

 笑顔のクリエを見るなり、やはり彼女に逆らってはいけないのだと、勝手に身体が震える。

 クリエに魔力は一切感じられない。だというのに、凄まじい力を感じた。

 ……ついでにチラッと隣のシドーにも目をやってみる。

 

 

(っっ!?!? っっ!?!?)

 

 

 シドーと目が合った途端、モエールの身体には緊張が走った。

 

 

「……どうかしたか?」

 

「ぃ、いえ……」

 

 

 ――暴いてはいけないと、全自分が言っているボボッ……!

 

 

 シドーの目付きは決して険しいものではなく穏やかなのだが、なぜだろう。クリエを恐ろしく思うのとシドーに対する感情は違う。

 どこか懐かしい気がするような……畏敬の念を抱かざるを得なかった。

 

 

「閉じ込められて大変だな。オレも昔閉じ込められたことがあるからオマエの気持ちはわかる。辛いよな。時期が来れば出られるからがんばれよ」

 

「は、はい……!」

 

 

 シドーの優しい笑みにモエールの瞳が輝く。

 

 昔、シドーもどこかに閉じ込められたことがあるらしい。

 クリエの笑顔が一瞬陰りを見せたが、すぐにまた奇妙な笑みへと戻った。

 

 ……【氷】の囲いの上でうんこ座りのクリエとシドーに見下ろされた生き埋めのモエールは、傍から見れば虐められているようにしか見えない――。

 

 

「さ、モエールっち、三日間がんばってこー☆」

 

「はいっ!」

 

 

 クリエが握った【ひのきのぼう】を頭上に勢いよく掲げると、モエールは冷たい【氷】に触れないよう神経を集中させる。

 頭の真上はよく見えないが、クリエがチラチラと【やみのランプ】の状態を確認して頷いているから順調なのだろう。

 

 これだけ周りが冷たくて眠れるわけがないというのに、信用されていないのは少々悲しい。なれど三日経てば解放されるから頑張ろう――、これが終わればアリアからのご褒美が待っているのだから。

 モエールは笑顔のアリアを思い浮かべ、奮起し気合を入れようとした。

 

 ……頭髪の炎が揺らめき、チリチリと音を立てる。

 

 

「モエェェールウゥゥッッ!! アリアねえのこと考えるの禁止だっつってんだろがいィィィっ!?!? あぁーん?」

 

「ヒッ……!」

 

 

 すぐさまクリエの顔が鬼の形相に変わり、モエールは縮み上がった。

 アリアを想うと炎が強くなってしまう。

 気を付けなければ……。

 

 

「……っ、ビ、ビックリした……。クリエ驚かすなよ……」

 

「まだ始まったばっかだから多少は良いんだけどさー、すす(・・)が出始めたら気を付けないと……」

 

「お、おう……」

 

 

 あまりの剣幕にシドーは面食らって目を瞬かせる。

 クリエ曰く、【やみのランプ】を魔力の炎にあて続けるとランプの中に(すす)が溜まり始めるらしい。

 煤が増え続けると、その内煤は空中に流れ出し、空に昇っていく。

 それを呼び水に夜の闇を吸収し始める……はず、とのこと。

 強火で熱し続ければ【やみのランプ】が壊れる可能性もあるため、弱火で見守らなければならない。

 

 ……それからクリエとシドーは、再びモエールを囲うように相変わらずのウンチングスタイルで見守り続けた。

 途中でアベルが戻って来て仮眠を取り、その後はアリアの持って来た食事を運んだり、たまに交代したりとできる手伝いをこなす。

 交代時にはアベルもウンチングスタイルでモエールを励ました。

 

 

 そうして一日目は無事終了した。

 ……【やみのランプ】の口から煤はまだ出ていない。

 




ソフトなエロふざけを入れつつ、見守り一日目が終了。

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