前回あらすじ>見守り二日目が終了。
さて、三日目、イチャラブ回。
では、本編どぞ。
◇
ジリリリリリッ! ジリリリリリッ!
【めざまし時計】のベル音がけたたましく静かなオアシスに鳴り渡ると、クリエの手が伸びる。
ジリリリ……――“バンッ!!”
ベルの音は途中で途絶え、最終日――。
見守り三日目が始まった。
「はーい! いよいよ大詰めっ、三日目ぇえええっ~~いっ! イエイッ!! ねっ、シドー君!」
クリエは壊れかけの【めざまし時計】を掴み、アベルたちに三日目に突入したことを伝える。
アベルに途中で代わってもらい仮眠を取っているとはいえ、眠る時間は僅かで相変わらず妙なハイテンションは継続中だ。
「っ、お、おう……」
「さあ~最終日、はりきって参りましょーおっ! チャッチャッチャッチャッ♪ チャッチャッチャッチャッ♪ チャッチャッチャッチャッ♪ 炎ぉっ、燃やせぇっ! 闇を~壊せ~♪ チャッチャッチャッチャッ♪ チャッチャッチャッチャッ♪ チャッチャッチャッチャッ♪ パンを~食うぜ~、ビルダークリエ♪ チャッチャッチャッチャッ♪ チャッチャッチャッチャッ♪ チャッチャッチャッチャッ……――♪」
目の下が真っ黒に変色したクリエの謎の歌が静かな夜に溶けていく……。
しっかりした伴奏付きなのはなぜなのかと思ったら、クリエの前にはいつの間に出したのか【チェロ】が置かれていた。
ビルダーは演奏もできるというのか。
クリエの腕と手が素早い動きで弦を弾き、音を奏でている――と思いきや、歌の途中で【チェロ】から手を放し、彼女は【パン】を食べ始めた。
手が離れた【チェロ】からは勝手に音楽が流れている……。
呆れ顔のシドーはクリエの【ふくろ】から【ミルク】ビンを取り出しクリエに手渡す。
クリエは【パン】と【ミルク】をそれぞれ手に持ち、がっつくように交互に食した。最後には【パン】を先に食べ終え、腰に片手を添えると【ミルク】ビンを勢いよく傾け一気飲み。
「ングング……! プハーーッ! ……ボエェェッ!!」
……喉に勢いよく【ミルク】が流れていき、ビンが空になるまで飲み切ると、口の周りを白くしたクリエが大きく息を吐き出す。最後には大きなゲップをした。
ゲップ……。生理現象ゆえに仕方ないが、異性の前なのだからもう少しデリカシーがあってもよくはないだろうか……。
アベルはそう思ったが、シドーは慣れているのか「ほらよ」なんて何ごともなかったかのようにタオルを差し出している。
「ふぃ~。おやつタイム終了~! おやつにパンもいいよね~!」
「ははは……、クリエちゃん元気だね……」
――ちょっと慣れてきたなこのテンション……。
三日目開始早々腹が減っていたのだろう。早速【パン】と【ミルク】を摂取し差し出されたタオルでもって、口元を乱暴に拭うクリエの目が血走りギラついている。
徹夜玄人だと自負するクリエもそろそろ限界が近いと見た(……十日以上徹夜中である)。
今は音が止んだが、先ほど掛かっていた曲は戦いの最中に掛かっていれば、士気が上がりそうなリズムとメロディー。
クリエにとってビルドとは戦いと同義なのかもしれない。自身を鼓舞するために選曲したのだろう。
そう、見守り作業はあともう少し――。
「モエール、大丈夫かい? 煤も出始めてるからあとちょっとだと思う。終わったらたくさん眠ろう」
「……は、はい……」
ぐったりしたような顔色の悪いモエールは、なんとか頑張って起きてくれている。
アベルは労いの言葉を掛けて励まし続けた。
三日目に入り、しばらくして“ぐ~きゅるるる”。
アベルの腹が音を立てる。
さすが徹夜三日目――クリエたち同様、アベルもあまり眠っていないため眠くて仕方ないが、眠くとも腹は減るもので……。
そろそろアリアが食事を作ってくれているのではないだろうか、と。
アベルはクリエたちに料理をもらって来ると告げ、一人テントへ足を運ぶ。
まだでき上がっていなくとも、アリアに会えるのが嬉しいから良かった。
「アベル……目の下のクマ、濃くなってる。大丈夫……?」
「うん、三日目だからね。ああ……アリア……♡ 君の顔を見ただけで癒されるよ……」
「も、もぉ……アベルったらっ。あっ、今回は海鮮鍋にしたよ。クリエちゃんがオアシスで釣ったお魚を使ったの」
……アベルがテントに着いたら料理は既にできあがっており、丁度今持って行こうと思っていたとのこと。
そんなアリアは鍋の〆だと【かまど】で炊いた米を皿に盛っている。
テントのテーブルには【海鮮鍋】が二つ置かれており、待機組も食べるのだろう。
毎食メニューはアベルたちと同じなのは手間を思ってだ。
鍋から立ち昇る湯気から煮込まれた野菜と魚の好い匂いがした。
テント内は温度が一定に保たれ温かいが、外はやっぱり寒い。
寒い夜には温かい鍋が身に染みる。
アベルはできればここで食べていきたかったが、クリエたちも楽しみにしているだろうから早く持っていってやらねばならない。
「スンスン……ん~いい匂い……。おいしそうだね」
「ふふっ。みんなで作ったからきっとおいしいよ♡」
「へえ、そうなんだ? 楽しみだな」
【海鮮鍋】に鼻を近付け食欲をそそる匂いを目一杯吸い込むアベルに、米を盛った皿をテーブルに置くアリアがにこにこと応対する。
彼女の体調に特に変化は見られず、肌艶も良い。
しっかり眠ってくれているのだと思うとアベルはほっとした。
「メッキ―とピエール君が がんばってくれたんだ~」
……アベルたちの三日目最初の食事――。
クリエが釣った魚は【イワシ】である。
なぜ海水魚である【イワシ】が砂漠のオアシスの淡水で釣れるのかは謎なものの、ゲーム世界だからなのだろう。
前日クリエに「これ使って鍋ヨロ!」と大量の【イワシ】を渡されたアリアはそれを“つみれ”にした。
ピエールとメッキ―が手伝い、山盛りの“つみれ”が大量に入った【海鮮鍋】。
待機組であるアリアたちには寝起きのため朝食にあたるが、アベルたちにその感覚はないから昼食or夕食にあたる。
しっかりした食事を作らねば気力も体力ももたない。最後まで気を抜くわけにはいかないのだ。
昨日は「眠くなってきてるから辛いものが食べたい」とのクリエからのリクエストで【ドラゴンの肉】と【トウガラシ】を手渡され【高級溶岩ステーキ】を作った。
【ドラゴンの肉】なんてものを初めて見たアリアは驚き興奮してしまったが、クリエから教えられたレシピ通りに調理――。
『カラーイ、ウマーイ! アリアねえは料理上手だねえ~。昨日の食事、実はちょっと物足りなかったんだ~。やっぱ肉だよね肉~♪ やる気出るわ~、ハフハフ♪』
アリアが【高級溶岩ステーキ】を持って来るなり、肉の匂いを察知しダッシュで奪取したクリエはその場で口の周りを赤くしながらあっという間に平らげた。
前日の【パンプキンスープ】はお気に召さなかったのかと訊ねたら、そうではなく、肉を食べたい気分だったそうな。
その後は、材料はボクが出すからリクエストしていいかと訊かれ、アリアは快よく頷いた。クリエも人が作ったものは「おいしい♪ おいしい♪」と嬉しそうな笑顔を見せている。
アリアも身体が温まるメニューをと、一応は考えているつもりだが、皆の好みやその日の気分まではわからない。
何せアベルやピエールは何を作っても喜んでくれるし、文句も言わないからメニューはアリアの気分次第。
クリエのようにリクエストをくれるのは正直なところありがたかった。
「じゃあ鍋もらってくね」
「うん。〆にご飯入れて食べてね。卵も入れとくね」
「ああ、ありがとう。アリア」
【海鮮鍋】を受け取ったアベルは、アリアから【タマゴ】と炊いた白米を持って行ってあげてねと派遣されたピエールと共に、クリエたちの元へと戻ることにした(※余談であるが【タマゴ】もクリエからの提供品である)。
「じゃあ、名残惜しいけどもう戻らないと……」
「うん……、あともう少しだもんね」
「うん……、じゃ」
……アベルが料理を取りに来た時はテントを出たところまでアリアが見送ってくれる。
テントを出たアベルはアリアを見下ろし、アリアもアベルを見上げていた。
泣いても笑っても、最終日――。
今日さえ乗り切れば【やみのランプ】が復活する。
そうすれば、長い夜ともやっとさよならだ。
アリアの顔も見れたし、料理もゲットした。
さあ、残り時間はモエールを励まさねば。
アリアと離れるのに後ろ髪を引かれる思いで、アベルはテントに背を向け歩き出す。
「アベル」
「ん?」
「ファイト! ちゅっ♡」
名前を呼ばれて振り返ると、アリアが投げキッスを贈ってくれた。
仕草も笑顔が可愛くて嬉しいが、ここ二日ほど軽いキスしかしていないアベルが投げキッスだけで満足できるはずもない。
どうせなら――。
こっちは鍋で手が塞がっているというのに誘惑してきて……と、アベルは頬を膨らませた。
「っ! む……アリア、そういうのは直接してよ。ん!」
「……もぅ、アベルったら……、しょうがないなあ……」
身を屈め口を窄めるアベルに軽くならいいかと思ったのだろう。アリアは少しだけ困ったような顔で、傍にいたピエールに目配せをする。
ピエールはアンドレと共に察しよく「先に行ってます」とクリエたちの元へと向かった。
ピエールには以前から「
むしろ主君が機嫌良くいてくれるのならいつでもウエルカム。
アベルとアリアの仲が良いと仲魔たちも気分が良かった。
ただ時と場所によっては、たまに冷静にツッコまれる――のはご愛嬌。
……そんなわけで恥ずかしいが、アリアもアベルに触れたい。
アベルはアリアが来るのを今か今かと目を閉じ待っている。
中腰のままキスをせがむアベルが可愛く思えて、アリアの目元が緩んだ。
そうしてアリアの唇がそっと重なり、噛みつきたくなったアベルは逃がさないように唇に齧り付く。
「っ……ンンッ……!(お鍋零れちゃう……!)」
軽く重なっただけのはずの唇を割ってアベルの舌が口内に入り込み、その舌の熱さにアリアは肩をビクリと震わせた。
徹夜作業に入ってから挨拶程度の軽いキスしかしていなかったというのに、キスってこんなだったっけ……? と、二日振りに感じる熱くて甘い感触に身体の芯が勝手に反応してしまう。
一度唇が重なってしまうと歯止めが効かないアベルは、逃げ腰のアリアに迫るように角度を変えて口内を舐め回していった。
いつの間にかアリアにのみ効く【なめまわし】を習得したらしい、次第に紫水晶の瞳がぼうっと虚ろい僅かに揺れた。
そうしてアベルの鍋を持つ手を支えながら舌撃を受け止めたアリアだったが、少し経つと理性を取り戻す。
……このままでは終りが見えないと後退った。
発情スイッチが入ったらしいアベルの陶酔するような瞳が逃げ腰のアリアに迫り、ちゅっ、ちゅっと唇を啄みながら彼女をテントの入口まで追い詰める。
もうこれ以上は逃げられない場所まで追い詰めてからアベルは口を開いた。
「はあ、はあ……、アリアなんで逃げるの? 気持ちいいでしょ……?」
「……はあっはあ……っ、だ、だって、お鍋零れちゃうよ……」
妖しい目付きのアベルへアリアは眉をハの字にしてか細く声を吐き出す。
テントの入口に設置されている【カベかけランプ】のお陰で、彼女の頬が赤く上気しているのがわかった。
「はあ……零したりしないよ……」
――アリア顔真っ赤だ……可愛い……♡
二日振りのベロチューが刺激的で、キスだけで感じてしまったということなのか、アリアの目が涙を湛えじっと見上げてくる。
今にも泣き出しそうな……いや、物欲しそうな紫水晶にアベルは自身の唇を再び近付けた。
「……っ、零れてるのっ(熱っ)」
唇が触れそうになる瞬間、アリアの眉が寄せられキッと睨まれる。
アベルの持つ【海鮮鍋】が傾き、中身が少々零れていた。
……アリアに掛かってしまったらしい。
「え? っ、ごめん! 火傷しなかった!?」
「平気。エプロンにちょっと掛かっただけ。でも……クリエちゃんたち待ってると思うから……」
慌てたアベルは瞬時に理性を取り戻し、鍋をしっかり持つとアリアの様子を窺った。
……アリアのエプロンに鍋の汁の染みができている。
火傷しなかったか心配になったが、少し掛かっただけで大丈夫らしい。
「う……そうだった……」
「闇のランプが直ったらいっぱいしようね♡」
「あっ、うんっ!」
やはりすべてが終わってからの方がいいだろう。
アリアの手が伸び、指先がアベルの唇をトンと優しく押さえると、アベルは素直に従い踵を返した。
残念だがここは我慢してクリエたちの元へと向かい、さっさと【やみのランプ】を直すが吉。
アリアに上手くあしらわれた気もするが、明日泣くのは彼女の方だから良しとした。
クリエの口ずさんだ曲は実は『戦火を交えて』だったりします。
ビルダーズ2には出てこないですがw
ちなみにイワシの下りは現在ゲーム内ではアプデでフナとなっていたりします。
なぜフナに……。イワシ、好きだったのにな。
そして基本的にアベルとアリアは常にらぶらぶです(昔からそうな気もする)。
今回、切りどころがわからず長くなりました。
イチャラブが長いんよ……、気付くとイチャコラしてんのよ……。
ついでに活動報告に載せた残暑見舞いイラストのっけときます。
【挿絵表示】
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!