ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回あらすじ>見守り三日目、仕上げっ!

さて、続き~。

では、本編どぞ。



第七百六十五話 見守り三日目③

 

 

 

 

 

 しばらくの間 皆で空を見上げていると、それまでキラキラと煌めいていた煤から一斉に光が消える。

 

 

「おっ!」

 

 

 上空でクリエの声が聞こえたと同時、アベルたちは空から地上、【やみのランプ】に目を転じた。

 

 ……モエールの炎に炙られていた【やみのランプ】が“カタカタ”と音を立て揺れ動いている。

 いったい何が始まるのだろう……。

 皆が【やみのランプ】に注視していると、それは始まった。

 

 

 “パアァアンッ!!”

 

 

 突として【やみのランプ】が、自身を吊っていた金具から、まるで意思を持ったかのように飛び出し、【氷】の囲いの上から砂の上へと着地。

 魔力の炎からは遠ざかったものの、口から煤を含んだ煙は出続けており、地上に設置してある【たき火】の灯りが一部始終を映し出す。

 

 ……【やみのランプ】の口から出た煤は空と繋がっている。

 先ほどまで煤の中に見られた煌めきは、不思議なことに一度真っ暗闇に染まった空同様、今は見えなかった。

 

 再び空を見上げれば、これまであった上空の星々の灯りさえも消え失せ――たかと思ったら、次には無数の小さな煌めきが【やみのランプ】の口から素早いスピードで遡上するように光り出し空へ昇っていく。

 あっと言う間に一帯を昼のように明るくした。

 

 急な明るさに『眩しい!』なんていう暇もなく、今度は空から【やみのランプ】目掛け、流れるように光が降下し戻ってゆく。

 

 ……空は夜に後戻りだ。

 

 そして再び光が空に伝播し、光は【やみのランプ】に戻る。

 何度かそれを繰り返したのち、夜が【やみのランプ】に吸い込まれ始めた。

 

 

「わああああぁぁ……!(すごーい!)」

 

「っ、夜を飲み込んでる……? すごいな……」

 

 

 ……【やみのランプ】に夜の闇が、まるで煙でも吸引するかのごとく物凄い速さで吸い込まれていく。

 【やみのランプ】の様子に目を奪われ、興奮しているのだろう、アリアがアベルの手をぎゅっと強く掴むと、アベルも目を見開き感想を述べた。

 

 これが恐らくクリエの言っていた“逆流”ということなのだと思われるが、【やみのランプ】が生き物のようにうねって膨張と収縮を繰り返し、“ゴキュッ、ゴキュッ、ゴキュッ”という飲み下す音が聞こえるのは気のせいか……。

 その音はかなり大きく、何だか不穏に感じる。

 

 

(中に誰か入ってないよね……?)

 

 

 アベルは興味をそそられたが、知らない方が良いような気がした。

 中に何者かが入っていたとて、それがなんだというのだ。【やみのランプ】は二度と壊すまい。

 

 

「……あっ、アベル見て……! あそこ……! あっちの奥の方……!」

 

「ん……? あっ……っ、アリアっ!」

 

「……うんっ」

 

 

 ふとアリアが東の方角を指差す(本人は東とはわかっていない)。

 アベルがそちらに目を向けると、視界の隅に白んだ空が見え始めていた。

 

 【やみのランプ】は相変わらず“ゴキュッ、ゴキュッ、ゴキュッ”と夜を飲み続けている。

 

 

「うわー、きも。なにあの動き」

 

「……そうか?」

 

「もっとシュッとスマートに吸い込めばいいのに。音うるさいし」

 

 

 “バサッ、バサッ、バサッ”。

 

 メッキーの羽ばたく音をBGMに、地上で闇を飲み込んでいく【やみのランプ】を見下ろす。

 かなりの大音量で、時折“ボエェッ!”だの“ゴヴォァッ!”だの、えずく音が聞こえて、クリエは眉を顰めた。

 

 

「……オレのチカラ不足か?」

 

「いやいや、あれは中のおっさ……、わっ!? ちょっとー! メッキ―もうちょっと頑張ってよ~!」

 

 

 シドーと二人で地上の様子を見ている間に高度が下がってしまい、クリエがメッキーに活を入れると“バサッ、バサッ、バサッ”。

 メッキ―は必死に翼を羽ばたかせ高度をなんとか維持する。

 

 クリエの活は尻尾を軽く叩くというものであったが、そのクリエは馬鹿力の持ち主。

 痛みにメッキ―の眉間に深い皺が寄せられた。

 

 

「メッキッキーッ!!(重いーー!!)」

 

 

 “ゴキュッ、ゴキュッ、ゴキュッ”

 

 “メッキッキーッ!!”

 

 “ゴキュッ、ゴキュッ、ゴキュッ、ゴフッ”

 

 “メッキッキーッ!!”

 

 

 ……しばらく【やみのランプ】の吸引音と、メッキ―の必死の叫びが静かなオアシスに響き渡る。

 

 その間アベルとアリアは空の様子を見つつ、時折メッキーを気の毒そうに見上げ苦笑い。

 ふんばりを見せるメッキ―は、目をぎゅっと閉じてひたすら翼を羽ばたかせ、空の様子など見ている場合ではなさそうだ。

 

 その一方で――。

 

 

「おおおおおっ! これはすごいっ! ボボボッ!! 歴史的瞬間ボボッ!!」

 

 

 魔力の炎としての役目を無事終えたモエールが、首を固定され見えづらいながらも空へと視線を移し、【やみのランプ】が夜を吸い込む様に興奮する。

 仕上げの瞬間だけでも見られたモエールの頭は、いつもより1.5倍は強く燃えた。

 

 

 “ゴキュッ、ゴキュッ、ゴキュッ”

 

 “メッキッキーッ!!”

 

 “ゴキュッ、ゴキュッ、ゴキュッ”

 

 “メッキッキーッ!!”

 

 “ボエェッ! ゴキュッ、ゴキュッ、ゴキュッ ボエェッ……ゴキュッ”

 

 “メッキッキーッ!!”

 

 

 そろそろ空がだいぶ白んで来たところであるが、相変わらず【やみのランプ】の吸引音は大音量……。

 メッキ―も負けずに叫び続け、ふんばりをみせる。

 

 ……神秘的な光景であるというのに、効果音が中々のカオスでロマンとはほど遠い。

 

 

「うるさいなー。もっと静かに朝を迎えられないの~!? あ、メッキ―は頑張ってるね! ありがとー! でもちょっとうるさいかなー? ん?」

 

 

 クリエが怒気を孕んだ声で地上を見下ろし、【やみのランプ】に文句を付けつつ、メッキ―にはお礼を告げる。

 ついでにポンポンと尻尾を叩くとメッキ―は身体を震わせ黙り込んだ。

 

 

「メッ……(クリエさまコワイ……)」

 

 

 以降は“バサッ、バサッ、バサッ”。

 ……完全に夜の闇が吸い込まれるまで無言で羽ばたく。

 

 今回一番の貧乏くじはまさかのメッキ―……。

 メッキ―は後でアリアに慰めてもらおうと決め、涙を零しながら高度を保ち続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 “……ゲェッ!”

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれからどれくらい時が経ったのだろうか。

 世界中の闇を吸い込むには少々時間を要したが、夜の闇の吸い込みが終わると、辺りは陽の光で満たされ朝が来る。

 

 ……最後の一飲みを終えた完了合図、大音量のゲップは気にしないでおいた。

 

 気温は早朝のためかまだ肌寒いものの、夜よりも心なしか温かく感じる。

 すっかり明るくなった地上――砂の上には、一仕事を終え、汗の如き朝露を身に纏い復活した【やみのランプ】が朝陽を受け、威風堂々たる姿でそこに在った。

 




やみのランプの中に誰かが住んでいるんじゃないかなーと思ったり。

今回から新たな旅がどうの、前回の後書きに書いていましたが移れませんでしたー。
とはいえ、捏造エピソードもそろそろ終わりがはっきり見えてきましたね。
やっとだよ~(涙)

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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