前回あらすじ>見守り三日目、仕上げっ!
さて、続き~。
では、本編どぞ。
◇
しばらくの間 皆で空を見上げていると、それまでキラキラと煌めいていた煤から一斉に光が消える。
「おっ!」
上空でクリエの声が聞こえたと同時、アベルたちは空から地上、【やみのランプ】に目を転じた。
……モエールの炎に炙られていた【やみのランプ】が“カタカタ”と音を立て揺れ動いている。
いったい何が始まるのだろう……。
皆が【やみのランプ】に注視していると、それは始まった。
“パアァアンッ!!”
突として【やみのランプ】が、自身を吊っていた金具から、まるで意思を持ったかのように飛び出し、【氷】の囲いの上から砂の上へと着地。
魔力の炎からは遠ざかったものの、口から煤を含んだ煙は出続けており、地上に設置してある【たき火】の灯りが一部始終を映し出す。
……【やみのランプ】の口から出た煤は空と繋がっている。
先ほどまで煤の中に見られた煌めきは、不思議なことに一度真っ暗闇に染まった空同様、今は見えなかった。
再び空を見上げれば、これまであった上空の星々の灯りさえも消え失せ――たかと思ったら、次には無数の小さな煌めきが【やみのランプ】の口から素早いスピードで遡上するように光り出し空へ昇っていく。
あっと言う間に一帯を昼のように明るくした。
急な明るさに『眩しい!』なんていう暇もなく、今度は空から【やみのランプ】目掛け、流れるように光が降下し戻ってゆく。
……空は夜に後戻りだ。
そして再び光が空に伝播し、光は【やみのランプ】に戻る。
何度かそれを繰り返したのち、夜が【やみのランプ】に吸い込まれ始めた。
「わああああぁぁ……!(すごーい!)」
「っ、夜を飲み込んでる……? すごいな……」
……【やみのランプ】に夜の闇が、まるで煙でも吸引するかのごとく物凄い速さで吸い込まれていく。
【やみのランプ】の様子に目を奪われ、興奮しているのだろう、アリアがアベルの手をぎゅっと強く掴むと、アベルも目を見開き感想を述べた。
これが恐らくクリエの言っていた“逆流”ということなのだと思われるが、【やみのランプ】が生き物のようにうねって膨張と収縮を繰り返し、“ゴキュッ、ゴキュッ、ゴキュッ”という飲み下す音が聞こえるのは気のせいか……。
その音はかなり大きく、何だか不穏に感じる。
(中に誰か入ってないよね……?)
アベルは興味をそそられたが、知らない方が良いような気がした。
中に何者かが入っていたとて、それがなんだというのだ。【やみのランプ】は二度と壊すまい。
「……あっ、アベル見て……! あそこ……! あっちの奥の方……!」
「ん……? あっ……っ、アリアっ!」
「……うんっ」
ふとアリアが東の方角を指差す(本人は東とはわかっていない)。
アベルがそちらに目を向けると、視界の隅に白んだ空が見え始めていた。
【やみのランプ】は相変わらず“ゴキュッ、ゴキュッ、ゴキュッ”と夜を飲み続けている。
「うわー、きも。なにあの動き」
「……そうか?」
「もっとシュッとスマートに吸い込めばいいのに。音うるさいし」
“バサッ、バサッ、バサッ”。
メッキーの羽ばたく音をBGMに、地上で闇を飲み込んでいく【やみのランプ】を見下ろす。
かなりの大音量で、時折“ボエェッ!”だの“ゴヴォァッ!”だの、えずく音が聞こえて、クリエは眉を顰めた。
「……オレのチカラ不足か?」
「いやいや、あれは中のおっさ……、わっ!? ちょっとー! メッキ―もうちょっと頑張ってよ~!」
シドーと二人で地上の様子を見ている間に高度が下がってしまい、クリエがメッキーに活を入れると“バサッ、バサッ、バサッ”。
メッキ―は必死に翼を羽ばたかせ高度をなんとか維持する。
クリエの活は尻尾を軽く叩くというものであったが、そのクリエは馬鹿力の持ち主。
痛みにメッキ―の眉間に深い皺が寄せられた。
「メッキッキーッ!!(重いーー!!)」
“ゴキュッ、ゴキュッ、ゴキュッ”
“メッキッキーッ!!”
“ゴキュッ、ゴキュッ、ゴキュッ、ゴフッ”
“メッキッキーッ!!”
……しばらく【やみのランプ】の吸引音と、メッキ―の必死の叫びが静かなオアシスに響き渡る。
その間アベルとアリアは空の様子を見つつ、時折メッキーを気の毒そうに見上げ苦笑い。
ふんばりを見せるメッキ―は、目をぎゅっと閉じてひたすら翼を羽ばたかせ、空の様子など見ている場合ではなさそうだ。
その一方で――。
「おおおおおっ! これはすごいっ! ボボボッ!! 歴史的瞬間ボボッ!!」
魔力の炎としての役目を無事終えたモエールが、首を固定され見えづらいながらも空へと視線を移し、【やみのランプ】が夜を吸い込む様に興奮する。
仕上げの瞬間だけでも見られたモエールの頭は、いつもより1.5倍は強く燃えた。
“ゴキュッ、ゴキュッ、ゴキュッ”
“メッキッキーッ!!”
“ゴキュッ、ゴキュッ、ゴキュッ”
“メッキッキーッ!!”
“ボエェッ! ゴキュッ、ゴキュッ、ゴキュッ ボエェッ……ゴキュッ”
“メッキッキーッ!!”
そろそろ空がだいぶ白んで来たところであるが、相変わらず【やみのランプ】の吸引音は大音量……。
メッキ―も負けずに叫び続け、ふんばりをみせる。
……神秘的な光景であるというのに、効果音が中々のカオスでロマンとはほど遠い。
「うるさいなー。もっと静かに朝を迎えられないの~!? あ、メッキ―は頑張ってるね! ありがとー! でもちょっとうるさいかなー? ん?」
クリエが怒気を孕んだ声で地上を見下ろし、【やみのランプ】に文句を付けつつ、メッキ―にはお礼を告げる。
ついでにポンポンと尻尾を叩くとメッキ―は身体を震わせ黙り込んだ。
「メッ……(クリエさまコワイ……)」
以降は“バサッ、バサッ、バサッ”。
……完全に夜の闇が吸い込まれるまで無言で羽ばたく。
今回一番の貧乏くじはまさかのメッキ―……。
メッキ―は後でアリアに慰めてもらおうと決め、涙を零しながら高度を保ち続けた。
“……ゲェッ!”
◇
あれからどれくらい時が経ったのだろうか。
世界中の闇を吸い込むには少々時間を要したが、夜の闇の吸い込みが終わると、辺りは陽の光で満たされ朝が来る。
……最後の一飲みを終えた完了合図、大音量のゲップは気にしないでおいた。
気温は早朝のためかまだ肌寒いものの、夜よりも心なしか温かく感じる。
すっかり明るくなった地上――砂の上には、一仕事を終え、汗の如き朝露を身に纏い復活した【やみのランプ】が朝陽を受け、威風堂々たる姿でそこに在った。
やみのランプの中に誰かが住んでいるんじゃないかなーと思ったり。
今回から新たな旅がどうの、前回の後書きに書いていましたが移れませんでしたー。
とはいえ、捏造エピソードもそろそろ終わりがはっきり見えてきましたね。
やっとだよ~(涙)
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!