ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回あらすじ>朝が来たので、徹夜明けのアベルは寝ることにしました。

朝だけど宴じゃ宴。

では、本編どぞー。



第七百六十七話 朝餐会

 

 

 

 

 

 そして夜が明けた……!

 

 

「アベルお兄さん、アリアお姉さん、いい朝ですね! 昨日は明るい内からずっとお楽しみでしたネー。おはようございます!」

 

 

 ……徹夜中と打って変わり、礼儀正しくクリエがこうべを垂れる。

 

 場所はテント(大)内、アベルとアリアは少し早起きをして、クリエたちに僅かばかりのお礼に食事を――と、朝餐会の準備中であった。

 そこに先ほどまで白目をむいて寝ていたクリエが起きて来て、挨拶……は、いいのだがお楽しみとはいったい……。

 

 

「お、おはようクリエちゃん……(お楽しみて……何で知ってるんだ……?)」

 

「お、おはよ……(お楽しみて……何で知ってるの……)」

 

 

 アベルとアリアも調理中の手を止め、ご丁寧にどうもと頭を下げた(シドーはアリアからの“おつかい”でヤシの実を取りに行っており、不在である)。

 ……昨日【やみのランプ】が復活してから、クリエとシドーには会っていなかったはず。

 それに小さなテントは外に声が漏れない仕様。防音はばっちりだと、一応確認もしてある。

 安堵感からアリアの声が普段より少し大きかったかもしれないが、外までは漏れていないはずなのだ。

 

 なぜクリエが知っているのだろう……。

 アベルとアリアはぽっと頬を赤く染め、互いに目配せをした。

 

 

「わーい! いっただっきま~す!! アベルお兄さん、アリアお姉さんごはん作ってくれてありがと~! 誰かが作ったごはんは格別だよ~!」

 

 

 クリエはテーブルに並べられた料理を前に、手を合わせ機嫌よく食べ始める。

 

 調理が終わり朝餐会の時間になると、【大きな木のテーブル】には苦楽をともにした仲間たちが一堂に会していた。

 全員で食事を摂るのは三日振りだ。

 しかもクリエとシドーとはこれが最後の会食となる。

 

 

「――んで、山奥の村で設計図を描いたってわけ」

 

「へえ、じゃあクリエちゃんはビアンカと知り合いなんだね」

 

「そだよー。山ん中で迷ってたら近くに村があるから休んで行ったらって、案内してくれたんだー。親切でキレイなお姉さんだよね。スパが出来上がったら温泉水も欲しいし、入りに行きたいなって思ってるよ。あ、この焼き魚ウマー♪」

 

 

 ……最後の会食はたっぷりと時間を掛け、話をしながら時間の共有をする。

 

 メニューは朝だがこれまで頑張った褒美で豪華に【極上タイの塩焼き】と、【極上刺身もりもり】という盛り合わせのお刺身、【イネ】を炊いた白飯、【海鮮サラダ】と【おみそ汁】、そしてデザートに【カットフルーツ】という和食だ。

 いったいどうやって釣ったというのだろう。テーブルにのせるのもやっとな【イシダイ・特大】を使った塩焼きは、一匹だけでも皆の腹を満たせるほどにボリューミー。

 【極上刺身もりもり】も山盛りで、テーブルにのせきれないとのことで、クリエに新しいテーブルを出してもらった。

 どの食材も、家具もすべてクリエからの提供品である。

 

 食材はクリエが【木材】で作った【収納箱】に予め入れてくれていたもので、どれを使ってもよいとのこと。

 アベルにはよくわからなかったが、アリアが「この収納箱、冷蔵庫みたい。不思議~」と感心していた。

 その食材提供も今回で最後だと思うと少々名残惜しくはある。

 

 アリアのお気に入り食材が【みそ】、【ネギ】、【ワサビ】、そして【イネ】。

 この四つがいつもあればいいのに……なんて呟きながら調理をし、アリアは今、美味しそうに【みそ汁】をすすっている。

 

 ……クリエとアベルは、会話に耳を傾けながら食事を続けるアリアに時々視線を移しつつ、会話を続けた。

 

 

「スパか……いつ頃オープンだったかな……」

 

「ん~……世界が闇に覆われてから一か月は軽く経ってるとは思うけど……日数がはっきりしないんだよね~。」

 

「……ぅ」

 

 

 痛いところを突かれアベルは眉を顰め目を閉じる。

 アベルもそうだが、クリエもはっきりした日数がわかっていないらしい。

 

 

「……大丈夫だよ、アベル。そんなに経ってないよ。だいじょぶだいじょぶ」

 

「え?」

 

「あっ、このお刺身おいし~♪ こんなにおいしいお刺身初めて! ……うっ、ワサビがツンと来た~、くぅ~っ!」

 

「アリア……フフッ、君って()は……」

 

 

 不意にアリアがアベルに優しく微笑み掛けたと思ったら、今度は【極上刺身もりもり】に夢中だ。【ワサビ】が鼻にツンと来たらしく涙目で鼻を抓んでいる。

 アベルは思わず噴き出し、アリアの取り皿に追加の刺身をのせてやった。

 

 

「ぅぅっ、ありやと……っ、はー、刺激がすごかったぁ……! これぞワサビね……! ワサビはこうでなくっちゃ! ……ふふっ。アベルはちゃんと責任を取ったんだからもう気にしないで? ん~! おいしいっ♡」

 

 

 ……もう朝が来たのだし、過ぎたことは忘れよう?

 

 涙の粒を目の端に浮かべながらアリアは、アベルの取ってくれた刺身を頬張って口角を上げる。

 幸せそうに食べる彼女の表情に、アベルも釣られて顔が勝手に綻んだ。

 妻の幸せそうな笑みを見ているだけで、夫である自らも幸せな気持ちになれるから不思議だ。

 

 

「そっ! アベルお兄さん大丈夫大丈夫! 多分二、三か月ってとこだと思うからさ」

 

「長く見積もって三か月か……」

 

 

 ――確かオープンは半年後だって、再会した時に言っていたような……。

 

 

 クリエも明るい笑顔で笑い飛ばしてくれたので、アベルはビアンカの言っていたスパオープンの時期を思い出す。

 

 ……長い夜の間、ビアンカに会うことは出来なかった。

 

 この世界の住人たちは“世界の理”によって皆、何らかの役目を背負わされているから、話し掛けても同じことしか言わないことが多い。

 だから殆どの人々は正確な時の流れなどわかってはいないだろう。

 果たしてビアンカは正確な時の流れを把握しているのだろうか……。

 フローラはルドマンとともに、闇に備える行動を取っていたから、恐らく正しい時の流れを理解しているとみていい。

 

 ……テルパドールに着いて何らかの情報が得られたなら、一度山奥の村に行ってみてもいいかもしれない。

 

 

「スパスパ~♪ 温泉水をゲットだぜっ!」

 

「ふふっ、クリエちゃん温泉水なんて何に使うの~?」

 

「温泉に入るに決まってるよ。温泉好きなんだー」

 

 

 ……ビアンカの結婚も確か半年後だった気がする。

 結婚する前か、した後か……。

 

 アベルが結婚祝いはどうしようかと考えている間に、クリエとアリアが温泉の話題で盛り上がっていた。

 

 

「温泉に入る……? クリエちゃんも温泉好きなのね! 私も大好きなの♡」

 

 

 クリエが【温泉水】を手に入れ、【温泉】に入る――という言葉にアリアは意味がよくわからず一瞬首を傾げる。

 この世界はゲームの世界だから、永遠に保温の利く大きな容器があるのだろう。

 そこへ大量に【温泉水】を入れ、どこかに【温泉】を作るという意味なのかもしれない……と、よくわからないが温泉好きが同じでよかったと笑顔を見せた。

 

 

「あそこの温泉、気持ち良かったな~。汲んでおけばよかったな~って思ってたんだ。けど、常にお客がいるし、一瞬とはいえ汲んじゃったらびっくりすると思って」

 

「汲んで……? 少しくらいなら大丈夫なんじゃ……?」

 

「……へへっ♪ スパがオープンしたら個室風呂もあるし、堂々と汲んで戻しとくから大丈夫!」

 

「戻したら、温泉水が手に入らないけど……?」

 

「にゅふふ……。ボクはビルダーだから大丈夫!」

 

「あ、うん。そうなんだ……?」

 

 

 ――個室風呂、堂々と汲んで戻す……? んんん……?

 

 

 アリアにはクリエの話が難しいらしい。

 深堀した方がいいのか迷っている内に、クリエはピエールと話し始め、シドーも会話に参加し、話題が別の内容へと流れてゆく。

 

 その後、アベルとアリアは聞き役に徹し、朝餐会は次第にクリエとシドーのハチャメチャな冒険話に移り変わり、楽しい時間となった。

 




そろそろビアンカとフローラの顔を見に行きたいですねえ。

じ、次々回くらいにやっと再出発できるかな~……。(二回目)

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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