ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

772 / 822
いつもありがとうございます、はすみくです。

前回あらすじ>クリエちゃんたちとの朝餐会は、楽しく終えました。

未知のビルドとは。

では、本編どぞー。



第七百六十八話 未知のビルド?

 

 

 

 

 

 ……楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうもので、アベルたちが身支度を整えテントから出ればお別れの時間がやって来る。

 アベルたちはクリエとヤシの実を抱えたシドーと対面し、別れの挨拶を交わしていた。

 

 

「じゃ、ボクたちそろそろ行くね」

 

「そっか、もうお別れなんだね。淋しくなるなあ……」

 

 

 クリエがなぜか自身の【ふくろ】の口を大きく開けながら告げると、アリアの眉が下がる。

 

 クリエたちは一足先にオアシスから離れ、先を急ぐらしい。

 行き先を特に訊ねたりはしなかったが、この大陸にもクリエたちの求める“カケラ”があるようだ。

 二人は広大な砂漠を捜索するとのこと――。

 小さな“カケラ”を探すには広すぎる大地だが、大丈夫なのだろうか……。

 

 一方でアベルたちは、今日から大陸の西に位置する砂漠の城、テルパドールを目指す。

 ……だが、クリエたちには世界を元に戻してもらったという大恩がある。

 ともに行くべきかとアベルは一瞬迷ったが、まだしばらくアリアと二人きりでいたい。

 クリエたちとともに行動するとなると、シドーがアリアに懐いていることもあり、アリアに近付くのも容易じゃなくなってしまう。

 

 一応食事中に「カ、カケラ探しを……て、手伝……おう……か?」と引き攣った笑顔で訊ねてはみたが、クリエには見透かされたのか「プッ。いーっていーって! あははははっ!」なんて明るく笑い飛ばされた。

 結婚までは何かと邪魔が入ることが多かったアベルは、もう二人の邪魔をされたくなかったのである。

 

 どの道アベルたちに“カケラ”を認識することができないため、役に立てるのは戦いくらいしかない。

 その戦いもクリエとシドー自身が強いからか、足手纏いにはならないとはいえ、自分たちの必要性も特に感じなかった。

 

 クリエもシドーに悪影響(?)を与える新婚夫婦(アベルとアリア)とは別れた方が良いと判断したのだろう。

 一緒に行こうとは言いださない。

 

 ……諸々考慮すると、ここでお別れがベストといえる。

 

 

「サミシイ……? そうだな……オレもサミシイ。けどアリア、オマエとはまたどこかで逢えそうな気がするから大丈夫だ。ほらヤシの実」

 

「え? あ、ふふっ、そうかな? ありがと……」

 

「おう! また何か頼みたいことがあれば何でも言えばいい! ビルドに関することなら何でも手伝ってやる。だからそれまで元気でいろよ」

 

 

 朝食時に“おつかい”で取って来たヤシの実のジュースを飲んだシドーは、気に入ったのか再び【ヤシの木】に登り、実を追加で取って来ていた。

 それをアリアに一つ分けて、また逢えるはずだと白い歯を見せる。

 

 

「うん……そうだよね……! また逢おうね!」

 

「おう! 次逢ったらまたパンでも捏ねてやるよ」

 

 

 笑顔で返事をするアリアの手元のヤシの実に、シドーも自らの持つヤシの実を軽くぶつけ、再会の約束とした。

 アリアとシドーが笑顔で話をする中、アベルは少々ヤキモチを焼きながら二人を見守っていたのだが……。

 

 

「わっ! アリアっ!(危ないっ!)」

 

「えっ、アベルっ!?」

 

 

 アベルが慌ててアリアを抱き寄せ、目の前のテントから距離を取る。

 

 ……ガラガラガラ、と。

 崩れる音がした。

 

 それは急に始まり、あっという間に終わる。

 

 二張りあった大きなテントと小さなテントが突然崩れたのだ。

 つい数十秒前まで立派に建っていたテントは、ただの瓦礫の山へと化し、今は砂煙を上げている。

 

 

「あちゃー……! やっぱりか~!(まあ、もったほうだよね……)」

 

 

 崩れたテントを前にクリエは瓦礫を【ふくろ】に回収しだす。

 瓦礫をよく見て見れば、どうやら瓦礫はただの瓦礫ではなく、元のブロックや素材へと戻っているようだ。

 ビルドした建物が崩れる事象……、クリエに聞いたことがあったがこういうことなのだとアベルは改めて理解した。

 

 

「……クリエちゃん、このブロックたちを袋に入れればいいんだね? 手伝うよ」

 

「あっ、たすかる~!」

 

 

 大恩人に恩返しを――と、アベルはせめてもの恩返しに元の素材となったブロックや家具を拾い、クリエの【ふくろ】に詰めていく。

 クリエは慣れっこらしく「写真 撮っておけばよかったな~」などとブツブツ呟きながら片付けを進めた。

 

 

「私も手伝う~! はいっ、これ壁掛けランプかな?」

 

 

 アベルが手伝い始めるとアリアも自主的に動き出し、仲魔たちもそれに倣う。

 重い物が多いため、アリアに参加させたくないアベルは、ピエールにそれとなく彼女を気遣うようにと頼み、自らは率先して働いた。

 

 ……仲間総出での素材拾いは瞬く間に終わる。

 

 

「いや~、ありがとね。これで元通りになってなによりだよ。立つ鳥跡を濁さずってね」

 

「クリエちゃんもありがとう。お布団、うれしい……♡」

 

「フフフッ、アリアお姉さん気に入っているみたいだったから。仲良く使ってよ」

 

「うん!」

 

 

 馬車を前にクリエとアリアが立ち話をし、シドーがその後ろでピエールたちと対話中。

 ……モエールがシドーになぜか恐縮して、ペコペコと頭を下げている。

 

 アベルはといえば――。

 クリエから【布団】を贈られ、キャビンにセット中だ。

 

 既に備えてあるマットレスの上に、【布団】をのせればふかふか度がアップ。寝るも良し、座るも良し。

 掛布団付きであるから眠る際の快適度も上がり、これでいつでもアリアに休んでもらえると思うと旅の安心感が増した。

 

 

「……この布団で、昨日アリアは……」

 

 

 ……昨夜を思い出すと顔が熱くなる。

 浴衣姿のアリアは実に魅力的で、一緒に入った風呂も、狭かったが楽しかった。

 もう二度とあんな彼女を見ることはないのだろうと思ったが、浴衣に【布団】、【えっちなライト】なるピンクの灯りまで貰い、一部再現が可能である。

 

 

「……っ、僕の奥さん、最高過ぎでしょ……っ!」

 

 

 昨夜異国情緒溢れる【布団】の上で、目に焼き付けた乱れる浴衣姿の妻が頭に浮かぶと、つい口走ってしまった。

 魔物の出る場所でのキャンプ中は難しいが、町に泊まる時は浴衣を着てもらうことができるではないか。

 

 いつでも再現できるかと思うと、もうアベルはクリエがどこにいようと、彼女に足を向けて眠れそうにない。

 そろそろテルパドールに向けて出発だが、もんもんと良からぬ妄想が捗り、少々遅れてもいいやと、クリエたちを見送ったらアリアをキャビンに連れ込むことに決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二人とも今回は本当にありがとう。君たちは僕の恩人だよ」

 

「へへっ、いいっていいって。な、クリエ?」

 

「うんうん こちらこそ、いい本ができて最高の気分だよ♪」

 

 

 アベルが手を差し出し改めて礼を述べると、シドーが鼻の下を擦りつつ、ぎゅっとその手を掴む。

 隣のクリエも満面の笑みで満足気だ。

 

 世話になったクリエたちともお別れ――。

 出会いがあれば、別れもある。

 淋しくはあるが、互いの目的達成のためにも別れは必然。

 

 

「二人と一緒に旅ができて楽しかったよ。また機会があったらよろしくね!」

 

 

 アリアはアベルの隣でクリエと握手を交わした後、シドーとも握手し終えて目に涙を湛えながらも笑顔を見せる。

 泣いて別れる湿っぽい別れよりも、笑顔が一番だ。

 

 

「じゃあ元気で。クリエちゃん、シドー」

 

「アベルお兄さん、アリアお姉さんも! ボクには出来ない未知のビルドが成ることを願ってるよ」

 

「「未知のビルド……?」」

 

 

 アベルがクリエから手を放すと未知のビルドについて語られる。

 アベルとアリアは互いに目を合わせ首を捻った。

 

 

「フフフ。ボクには成し得ないビルドを、二人は成すことが出来るんだよ。素晴らしいね……! じゃっ☆」

 

「あっ」

 

 

 クリエとシドーはアベルが呼び止める間もなく、砂煙を上げて走り去って行く。

 ……途中で一度だけ振り返り、笑顔で手を振りまた駆けて、砂漠の彼方に消えて行った。

 

 

「早っ! ハハッ。別れを悲しんでる暇もないなあ……」

 

「ふふふっ、そうだね。ね、アベル……。クリエちゃんに作れないものなんてあるの……? あの子、なんでも作れるじゃない……?」

 

 

 はて、クリエが言い残していった“未知のビルド”……とはなんぞや。

 アリアはクリエに作れないものなどないと思うのだが――。

 

 

「うーん……未知のビルド……? ん~……子、ども……かなあ……?」

 

 

 アベルは少し考え込んで、何となくそう思った。

 クリエにもできなくはないと思うが、それはまだ先の話だろう。

 

 

「え? ……あっ、やだ、そういうこと? でも、クリエちゃんだっていつかはシドー君と……うふふっ、クリエちゃんにとったら子どももビルドなんだね。ふふっ、彼女らしい」

 

 

 アリアも同じことを考えていたようで、目をぱちくりさせる。

 子どもを作ることまでビルドと同等に語るクリエに笑った。

 

 

「ね、アリア」

 

「ん?」

 

「……ちょっと出発遅らせてもいいかな?」

 

「え……、けど、早く出ないと夜になっちゃうよ……?」

 

「僕と一緒に未知のビルドを致しませんか?」

 

「っ……も~! 昨日もがんばったのに……!」

 

 

 現在の時刻は朝と昼の間――。

 未知のビルドは一朝一夕で成るものではない。

 

 別世界の自分がどうだったかは憶えていないが、今のアベルは毎日でも未知のビルドをすることができるほどに強かった。

 

 

『はあはあ……アリアこれ好き? あ、だめ? じゃあこっちかな? ……フフッ♡ いい反応! ほらほらっ♡』

 

『はああん、やだアベルっ。そこダメだって……! こんなすごいなんて聞いてないってばあっ! 主人公パワーえぐいて――』

 

 

 “あ……ひゃあっああぁあぁぁああんっっ!”

 

 

 ――そろそろ落ち着こうよぉ~~!

 

 

 キャビンからアリアの嘆く声と、アベルの荒い息遣いが漏れ聞こえてくる。

 馬車はギッギッと音を立て、その場でだけ小さな地震が発生しているらしい。

 何が行われているのかは不明だが、大人の運動会だと、人間夫婦のいろはがよくわかっていないスラりんには説明してある。

 

 ……アベルたちの再出発まで、オアシスの外れに停めた馬車には誰も近付くことはなかった。

 




クリエちゃんとシドー君とはまたいつか会えると信じてます、ウフフ。

次回、出発しまーす。
出発だけ……。テルパドール遠いわあ……。
リアル時間で何年かかっとんって話ですわ。

----------------------------------------------------------------------
読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。