ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回あらすじ>クリエちゃんたちとお別れしたアベルたち。新婚夫婦は未知のビルド後に再出発。

ちょいえち回です。

では、本編どぞー。



第七百六十九話 へばるプックル

 

 

 

 

 

 はてさて、昼前にはオアシスを出たアベルたちだったが、しばらく砂漠を西へ――。

 上陸した時から夜だったせいで、砂ばかりだと思っていた砂漠だが、オアシスから西に進むにつれ、大きな岩が点在していることに気が付く。

 

 今日一日でテルパドールに着けるとは思っていない。

 一日か、二日……あるいは三日。魔物との遭遇率で前後すると思うが、遅くとも食糧事情もある、五日以内に辿り着きたいところ。

 

 ……日が高く昇り、砂漠特有の強い日差しが照り付け、アベルの額には汗が浮かんだ。

 

 

「ふう……(アリアは大丈夫かな……?)」

 

 

 アベルは水を飲み飲み馬車に振り返り、アリアを窺う。

 残念ながらアリアの姿は見えなかった。

 

 砂漠の昼間はとにかく暑い。夜の寒さとの温度差はいかほどか。

 カラッとした暑さだけに、幸い死の火山よりはマシではあるが、のどが渇く。

 水はオアシスでたっぷり汲んで来たからしばらくは問題ない――とはいえ、魔物とも何度か遭遇しているし、これだけ暑いと先に進もうとする足が重くなってしまうのは、当然といえば当然かもしれない。

 

 

「……主殿、プックル殿がだいぶへばっております」

 

「え? ……あ、ホントだ」

 

 

 ピエールが馬車の左側からやって来て、馬車の後ろを歩くプックルの様子を教えてくれる。

 アベルが馬車の下から後ろを窺い見ると、プックルが長い舌を出し「ヘッヘッヘッ……」、肩で息をしていた。

 先ほどあった戦闘でもプックルの動きが少々鈍かった気がする。

 

 ピエールも暑そうではあるが、アンドレに乗っているからか特に息切れした様子もなく、まだ平気そうだ。

 アンドレにも疲れた様子は見られない。

 馬車の右側を守るキングスに目をやれば、涼しい顔で巨体を震わせ平常運転。

 スライム族は暑さに強いのだろうか……。

 

 へばっているのはプックルだけだ。やはり毛を背負っているプックルにこの暑さは堪えるらしい。

 

 

「プックル、大丈夫かい……?」

 

「がぅ……ヘッヘッ……(暑いお あるじ……)」

 

「……うん、大丈夫じゃなさそうだね。少し休憩しようか」

 

 

 馬車の後ろに様子を見に来たアベルが声を掛けると、プックルは瞳を潤ませ必死に呼吸を繰り返した。

 舌が出っ放しで口を閉じることができないらしい……。

 一目見て辛そうだと判断したアベルは、先を急ぐよりもまずは休憩を取ることに決めた。

 

 

「アリア~、あっちの大きな岩の影で休憩にするよ~!」

 

 

 何もない砂漠にあった、大きな岩。

 馬車をすっぽり覆っても余裕がある日陰で、涼を取ることができるのはありがたい。

 アベルは白いカバーを張ったままのキャビンに向けて、声を掛けたがアリアから返事はなかった。

 

 

「……ん~……。まだ怒ってるのかな……?」

 

 

 ……あとで謝り倒そう。

 休憩に入ったらアリアに謝ろうと、パトリシアの元に戻ったアベルの手には手綱。アリアのことは後回しにして、先に近くの大きな岩を目指した。

 

 なぜアリアが怒っているのか――。

 それは出発前にアベルがアリアにしたことが原因だったりする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……目当ての大きな岩の陰までやって来ると、座るのに丁度良さそうな岩が点々としていた。

 魔物の奇襲を防ぐため、アベルは早速辺りに【せいすい】を振り撒く。

 久しぶりに危険を伴う場所での休憩である。結界を張るのを忘れてはいけない。

 

 アベルが安全地帯を作る間にアリアは、暑さでへばり岩に寄り掛かるプックルに【きれいな水】を飲ませる。

 そして【ヒャド】で出した【氷】と【きれいな水】でスラりんを冷やし、もふもふの顎下に敷いた。

 氷枕替わりにされてしまったスラりんだったが、冷たい氷水は快適だったようで、プックルの顎が少々重そうながらも目をうっとりとさせ、心地良さそうである。

 

 ……時折吹き抜けていく砂漠の強い風は生温いものの、体温を下げるのに一役買い、しばらくしてプックルの出しっ放しだった舌も仕舞えるようになった。

 

 

「あ、プックル元気になったみたいね……?」

 

「がう……(褒めてつかわす)」

 

「ははあ~! ありがたき幸せ~! ……ふふふっ♡」

 

 

 他の仲魔たちにも【きれいな水】を配布中のアリアが通りかかり、声を掛けるとプックルが澄まし顔で一言ぼそり。

 ……プックルはいつもアリアには尊大だ。

 そんなプックルにアリアはわざとらしく頭を下げてから笑った。

 

 

「……がう……(礼を言うぞ)」

 

 

 見透かされたと思ったのだろう、プックルは気まずさに目を泳がせてから改めてお礼を述べる。

 

 

「ふふっ、お礼なら下のスラりんに言ってあげてね」

 

 

 プックルってばツンデレなんだから……。

 

 いつもアリア、自分に対してだけ態度が横柄であるが、いつでも守ってくれる頼もしいプックル。

 長い付き合いになるし、もう自分を食べようとは思っていない(?)ようで、アリアにはプックルのツンデレ属性が可愛くて仕方ない。

 ……お礼は枕役のスラりんへどうぞと促した。

 

 

「がうがう(スラりん、そなた枕の素質があるな。ひゃっこくて快適だお☆)」

 

「ピキー! たまになら顎のせてもいいよー! プックルさんも もふもふ気持ちいいねー」

 

 

 プックルが礼を言うと顎下のスラりんがぷるぷる揺れる。

 普段外を歩くプックルと、基本馬車組のスラりんにあまり接点はないが、仲は良い。

 やはり長く一緒にいると気心が知れてくるものだ。

 

 

「うふふっ♡」

 

 

 アリアはプックルとスラりんの会話を背に、自分も休憩するため座れそうな岩を探す。

 地べたに座ると砂が付いてしまうため、椅子替わりになりそうな岩はないかな~、などと辺りを見回していると、アベルが二人で座れそうな岩に腰掛けるのが見えた。

 その岩の先にもう一つ、一人だけ座れそうな岩があり、アリアはそちらを目指しアベルの前を横切ることにする。

 

 

「あ、アリア……みんなに水を配ってくれてありがとう……あの、僕だけまだもらってないんだけど……もらってもぃ――」

 

 

 ……目の前を通過しようとするアリアをアベルは呼び止めた。

 

 

「アベルさんは水筒がございますよね?」

 

 

 ぴしゃり――と。

 アリアはアベルが手にした水筒を見下ろし、最後まで聞き終わらない内に涼し気な笑みで指摘してくる。

 

 

「っ……そうでした。あ、隣座らない?」

 

 

 ――アリアやっぱり怒ってる~!

 

 

 アベルの水筒には水がまだ半分残っている……。

 笑顔だというのに、目が笑っていないアリアにアベルは息を呑み、話題を変えた。

 ……隣に座ってもらって、謝らせて欲しい。

 

 アリアが怒っているのは明白だ。

 彼女は普段あまり怒らないが、本気で怒ると言葉遣いが丁寧になるからわかりやすい。

 まだ早かったのだろうか……、そんなに悪いことをした自覚はアベルにはなく、それでもアリアが嫌なら謝っておきたかった。

 

 

「……私、向こうに座りますから結構です。アベルさんがゆったり座られたらよろしいのではないでしょうか」

 

「っ、アリア~……そう怒んないでさ~。さすがにはっちゃけ過ぎたと反省してるよ~……!」

 

 

 プイッとあからさまに視線を逸らすアリアを逃すまいと、アベルは立ち上がって通せんぼをする。

 ……アリアが目を合わせることはなかった。

 

 

「……知らな~い」

 

 

 怒った彼女の頬がぷくっと膨らんでいる。

 そんな顔も可愛いと言ったら今は火に油だ。

 

 目を合わせてくれない妻を無理やり振り向かせるのはよろしくない。

 ここは振り向いてくれるように仕向けるのが吉。

 ……アベルが導き出した最善策は、アリアの手を優しく包み、目で訴えること――。

 

 

「アリア……ごめんね?」

 

 

 アベルの策は無事成功……か?

 アリアの手を両手で包み込むと、彼女はやっと目を合わせてくれた。

 

 ……アリアは優しいからきっと許してくれるはず――と。

 アベルは弱り目でアリアをじっと見つめてみる。

 

 

「っ……! か、可愛い顔で謝ったって許さないんだから。あんなこと急にされたらびっくりするでしょっ?」

 

 

 見つめられたアリアの頬がぽっと赤く染まった。

 出発前の出来事を言っているのだろう、アベルの両手から逃れ、今度は背を向けてしまう。

 

 ……やはりまだ怒ってるらしい。

 

 暑かったのかアリアは今、マントを身に付けていない。

 しかも髪を二つに分けて耳の下で結んでおり、アベルの目の前にはミニスカート越しにお尻が見えているわけで――。

 

 

 “さわっ”

 

 

 ……気付けばアベルの手はアリアの臀部を撫でていた。

 

 

「……だって、アリアのお尻可愛くて……つい……指が勝手に……。でも気持ち良さそうだったよね?(アリアのおしり♡♡♡)」

 

「ひゃっ!? ……っ!」

 

 

 背後から耳元でこっそりと囁くと“セクハラですよ……!”、大きな声で言わんばかりの勢いで、アリアはアベルの手を叩き落とし身体を反転させる。

 

 

「めっ、お触り禁止! 今っ、指入れっ……! アベル段々エスカレートしてないっ?」

 

 

 結婚してからアベルに求められることが多いが、それは主に夜で、普段のスキンシップは比較的軽めだったはず。

 徹夜三日間の内は軽くしか触れ合えなかったから我慢していたのだと、昨日テントで競技中に聞いたが、オアシス出発前のアベルはおかしかった。

 突然何かに目覚めたように、これまで触れなかった場所に触れてきたのだ。

 

 

「いたた……。えー……? 奥さんの洞穴は全部探検したいじゃん……?」

 

「っ、ほ・ら・あ・なぁっ!? なにその言い方っ! ンもうっ!」

 

 

 ……アベルは叩かれ少しだけ赤くなった手でもって、アリアの髪を一房掴むと口付けを落とし、じっと見つめる。

 徹夜続きでおかしかっただけだと思っていたのに、臀部を撫でるだけならまだしも、仲魔たちの前でどことは言わないが指を入れようとするとは。

 

 “そっちはまだ許してないんだからっ……!”

 

 オアシスを出る前、キャビンに連れ込まれたアリアはアベルに「そっちはまじムリ、やめて!」と本気の拒否をしていた。

 まだマンネリ化もしていないし、普通の営みなら付き合える。

 

 ところがアベルは興奮し過ぎたのか暴走。

 アリアの声は中々届かず「痛いってばっ!」と大声を出すまで止まらなかった。

 そしてアリアは大激怒――。

 そっちはまだ駄目だと訴えたが、涙目のアリアにアベルは胸を鷲掴みされ臀部は撫でるだけに留めて、なあなあで営みを続行したのである。

 嫌だということが今ひとつアベルには伝わっていないようで、悪びれる様子はなく、妻の洞穴探検を続けたのだ。

 

 ……アリアは不機嫌そうに頬を膨らませた。

 




そっち(どっちよ)はまだ許してないんだってさ!
……しばらくいちゃらぶえち回が続く予定。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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