前回あらすじ>“そっちはまだ許してないんだからっ……!”とのこと。なんのこっちゃ。
いちゃらぶ回。
では、本編どぞー。
「……頬を膨らませる君も可愛いなあ♡ つい触りたくなっちゃうよ……」
アベルはアリアの頬をつんつんと突く。
その表情は優し気で、穏やか。うっとりとアリアを見下ろしている……。
こんな顔で宥められては、夫を大好きな妻は許すしかなくなってしまうではないか。
「やだやだやだ。すぐそういうこと言うんだから~! なら私の鼻の穴でもほじれるっていうの? ほら やってみてよ。どうせできっこないでしょう?」
アリアは自分でもいったい何を言ってるんだろうと思いつつ、アベルに向けて顎を上向けた。
「え、いいの? ……僕は君の鼻の穴でも愛せるけど? だけど、指が太いからアリア痛いんじゃないかな……」
「え」
「アリアって鼻も可愛いよね。痛かったらごめんね?」
他人の鼻の穴に指を突っ込む人なんてそういない。
できるわけない――。
そう高を括ったアリアの鼻へ、不意にアベルの小指がズボッと入り込んだ。
「んがっ! なにするのっ!」
「何するのって、やってみろって今言っ……じゃあ、耳……?」
アベルの行動に驚いたアリアは、鼻に指を突っ込まれながら怒っている……。
ちょっと間抜けで不細工な彼女も可愛いくて、アベルはにゅるりとアリアの耳穴に舌を這わせた。
「っ!? ぎ……ぎゃあああああっ……! へんたーい! おまわりさーん!」
「あっ、アリア……!(おまわりさん……?)」
耳を一舐めされた身体がぶるりと震え、アリアは直ちにその場から逃げ出す。
逃げ去る彼女をアベルはすぐさま追い掛けた。
大きな岩から離れた視線の先、遠くに小規模だが砂嵐らしきものが見え、アベルは走る速度を上げる。
砂嵐の進む方向からして、アベルたちの方へは来ることはなさそうだが、このままアリアを放っておいたら何が起こるかわからない。
砂の上は歩きにくく、アリアも出発前の大人の運動会で疲れている。早足で駆けたら、あっという間に彼女を捕まえることができた。
「はあっ、はあっ……捕まっちゃった……」
「はあ、はあ……アリア、一人で遠くに行っちゃ駄目だよ……!?」
駆けて行く先に回り込み、腰を引き寄せ捕まえるアベルの腕は力強く、アリアはこれ以上の逃走は無理だと観念し、肩で息をする。
相変わらず突然いなくなろうとする行動を諌めつつ、アベルは彼女を抱き抱えた。
「ちょっ!? だってアベルがすぐエッチなことするから……!」
「だって触りたくなるからしょうがないでしょ?」
「触りたくなるって……、いつも触ってるのに!?」
すぐに捕まえたとはいえ、【せいすい】を撒いた地点からは離れてしまっている。
運悪く二人で魔物と遭遇しても勝つ自信はあるが、アリアを無傷でいさせることができるかは自信がないし、まだ先が長いから余計な怪我もしたくない。
アベルは急に抱き上げたことに驚くアリアの話に耳を傾けつつ、このままさっさと皆の元に戻ろうと足を速めた。
幸い魔物に遭遇することはなく、【せいすい】の効果がある場所まで戻り、先ほど座っていた椅子代わりの岩へとアリアを下ろす。
アベルも隣りに腰掛けると、身体をアリアに向け神秘的な紫水晶を見つめた。
今日も彼女の瞳はキラキラと輝いて、吸い込まれそうなほどに美しい。
……僕の妻はなぜ毎日こんなに可愛いのだろう。
宝石の瞳も、潤いのある魅惑的な唇も、頬だけはいつもほんのり赤い白い陶器の肌も、シルクの髪も、柔らかく大きな胸に括れた腰、触り心地の良いお尻。そして優しくて甘い香りに、ずっと聞いていたくなる鈴を転がすような声。
いつでも抱きしめていたいくらいだ。
好きだからそう感じるのか、そう感じるから好きなのか。
日々、好きがレベルアップしていくから毎日ドキドキして心臓に悪くてしょうがないが、胸を締め付ける甘い痛みは嫌いじゃない。
世界が闇に覆われた時もアベルは幸せで、奴隷となった十年間は辛かったが、今は殆ど思い出さなくなった。
重い空気を軽くする、アリアの底抜けの明るさに何度救われたことか。
長く辛い旅だと思っていたのに、こんなに毎日が幸せだなんて――。
「……アリアと目が合うよね?」
「ん?」
アベルの言葉に、アリアはいったいなんのことなのだろうと小首を傾げた。
「目が合って、ハグするよね?」
「う、ん?(目が合ってハグ……?)」
言葉を紡ぎながらアベルは目を合わせ、アリアを抱き寄せる。
実演しながら説明するようで、アリアはわけの分からないままアベルの腕にすっぽりと収まった。
「目が合って、ハグしたらチューするよね?」
“ブチューッ”
……目が合い、ハグの後、次の段階はキスらしい。
アベルは熱のこもった瞳で説明しながら、目を丸くするアリアの唇を塞いだ。
「んっ……ンン?(チューした……!?)」
「……目が合って、ハグして、チューしたら、揉むよね? お触りしちゃうよね?」
“モミモミ”
軽く吸いつくだけのキスをし終えたアベルの次なるステップは、お触りらしい。
……アリアの断りなく、たわわを優しく揉む。
スラりんよりも柔らかく温かいこの触感は、アベル自らには存在しない神秘そのもの。
アベルはこの触感が大好きだ。
お触りだけなら結婚前から許してくれていたアリアが、いまさら怒ることはないだろう。
突然触れても怒らないくらいには慣れてもらっている。
「っ……アベルのえっち~!(揉んでるしっ……!)」
「ね? 仕方ないよね?」
愛する女性と目が合い、抱きしめ、キスを交わしたら触ってしまうのは当然の流れなのだとアベルは主張した。
ここが馬車の中や、宿屋なら安心してアリアを押し倒すところだが、ここは砂漠の途中、皆の前で軽く戯れるくらいならしても許されるはず……。
「っ、仕方ないって……なにそれ……、もぅ……プッ、フフフッ♡ でもみんなも見てるんだからこんなとこでダメだよー?」
実演を含めた説明にアリアは呆れ顔をしたが、最後には笑ってくれる。
きちんと理解はしてもらえていないようだが、鼻尖に人差し指で優しく触れ
「……へへへ♡ ……って、そういえばアリア走ってたけど、身体は辛くないのかい?」
「え? うん。ベホマ掛けてもらったし……あ……そっか。私、ちょっと体力アップしたかも。ステータスウィンドウ見てみてくれる?」
「うん……へ? HPとチカラと身の守りが上がってる……いつの間に?」
そういえば今日はまだ【ステータスウィンドウ】を見ていなかった。
アリアに言われてアベルは【ステータスウィンドウ】を開く。
そこにはいつものようにアリアの下着の種類が書かれていたが、今確認したいのはその項目ではない(ちなみに下着の種類はレース、色は白であることは瞬時にチェック済み)。
……アリアの【HP】と【ちから】、それに【みのまもり】が上がっていた。
「えへへ。馬車の中で筋トレしてたんだ~! だから体力がアップしたんだね」
なんと、アリアは馬車の中で身体を鍛えていたらしい。にこにこと両手でVサインを作ってはにかむ。
アベルはアリアの両腕を掴んで満面の笑みを向けた。
「すごい……! アリアよく頑張ったね……! これなら回数増やしても大丈夫かな?」
「……」
称賛を送りつつ、嬉々として営みの回数を増やしたいことを伝えたが、途端にアリアの目が細くなる。
……これはジト目というやつだろう、アリアに睨まれてしまった……。
「あ、えと……。た、たまに増やしてもいいでしょうか……。その、アリアの調子がいい時だけでいいので……」
「……、それなら別にいいけど……」
「よかった! 僕は早くアリアに子どもを授けてあげたいんだよ!」
――血の繋がった子ができたらアリアもうれしいよね……!
結婚後 数か月の間、長い夜が始まってから少し減ったものの、できるだけ仲良くしていたと思う。
アベルはこの世界で独りぼっちだというアリアに、血の繋がった家族を作ってやりたかった。
早ければ早いほどアリアの喜ぶ顔がすぐに見れると思うと、毎日でも頑張れそうだ。
……というのは建前である。
彼女が子どもを授かったら営みもできなくなるだろう。
アリアに触れたくて触れたくて、多少のお触りはしていたとはいえ、我慢した期間は一年以上……。正直なところまだまだ二人きりで過ごしていたいし、たくさん致したい。
アリアに
いつでも癒されたいアベルはついついアリアに触れてしまうのだ。
気が付いたら触れていたりするから自分でもたまに驚くほど。
本音は“今の内に気が済むまで思いきりしたい……!(気は済まないと思うけど!)”だが、そんなことはさすがに言えない。
アリアの希望を満たす&アベル、自らの欲求を満たすために丁度いい文句は、相手の希望に添った言葉だろう。
「子ども……」
明るく爽やかに言ってのけたアベルの言葉を受けて、アリアはぽつりと呟く。
「さ、そろそろプックルも元気になった頃かな。出発しよっか!」
感の鋭いアリアに見透かされる前にアベルは立ち上がり、プックルに声を掛けに行ってしまった。
「あ、うん……(子どもかあ……)」
――アベルの子……産んであげたいなあ……。
きっとアベルに似た可愛い子どもが生まれるに違いない。
アリアも立ち上がり、尻に付いた砂を払ってアベルの後を走って追いかけた。
アリアの能力値が上がりました☆
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!