ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回あらすじ>アリアに早く子どもを授けてあげたい(否、とにかく営みたい)アベルさん。逃げるようにプックルの元へ。アリアは走って追い掛けた。

お客さんとは……?

では本編どぞー。



第七百七十一話 お客さんが来ない

 

(そういえば最後の生理っていつだったっけ……? しばらく来てなくない……?)

 

 

 【砂】を蹴り上げ、走りながらそこまで考えてふと、立ち止まる。

 

 

「――……ええっ!?(まっさかぁ?)」

 

 

 アリアは驚きの声を上げた。

 

 指折り数えて前回月の物が来た日を計算する。

 カレンダーがないからはっきりしていないが、結婚後に一度来たきりで、それからはまだ一度も訪れていない。

 

 ……子どもは欲しい。

 アベルがとにかく頑張るので毎度死に掛けながらも、これも新しい家族のためと受け入れてはいるが――それは建前である。

 

 アベルとの営みは愛されているという実感ができて、毎度疲れるが満ち足りて幸せなのだ。

 いずれは子を授かると思うのだが、今の自分の肉体年齢は前世のアラサーではなく、まだ十九と若い。

 早く子ができても構わないが、もう少し二人きりでいてもいいと思っている。

 

 今は吐き気がすることもなく、体調の変化も特には感じられない。

 これで懐妊しているのだろうか……。

 

 

「ん……? アリアどうかした?」

 

 

 突然大きな声を上げるアリアにアベルは訊ねた。

 

 

「あ……えと。お客さんが……ずっと来ていない気がして……、って元々不順だったりするんだけども……」

 

「お客さん……って……あっ、月の……? っ、ホント!? それって……!」

 

 

 アリアが下腹部を撫でながら素直に答える。

 アベルは目を数度瞬かせてからアリアの置いた手の位置にはっとした。

 

 女性が言うお客さん……とは、月の物の異称。

 修道院生活中は毎月来ていたらしい、その月の物がずっと来ていない……ということは――。

 

 修道院では、マザーたちに女性の身体についての講義を受け、呪いを受けているアリアと旅をする時には、特に気を付けてあげなさいと散々言われた。

 当時はまだ清い付き合いだったため、マザーたちの心配は杞憂であったが、結婚した今は来客中だけでなく、妊娠の可能性を考えれば、より細かな配慮が必要となるだろう。

 

 

「……えと、まあ……可能性はないこともないかなっ、て……。まあないこともあるとは思うけど」

 

 

 ……アリアが頬をぽりぽりと照れ臭そうに掻いている。

 仮に妊娠していたとして、現時点ではアリアにもよくわからないようだ。

 

 

「……っ! アリアぁっ♡♡♡ テルパドールに着いたら教会に行こう! 診てもらわないと! っていうか、アリア走っちゃ駄目でしょ!」

 

「うわぁっ!? あっ、アベルっ!?」

 

 

 突然の妻の仰天告白にアベルのテンションは一気に上がった。

 いつもなら自分の後ろを走ってついて来るアリアが可愛くて仕方ないが、胎に子がいるなら走らせてはいけない。

 

 アベルは注意をしつつ、丁重にアリアを抱え上げ馬車まで連れて行く。

 

 

「アリアはキャビンで安静に! 横になっててね! 戦闘中も顔出さなくていいから!」

 

「アベル……まだわかんないよ……? たまたま遅れてるだけかもだし……。体調の変化も全然ないし、ほら、さっきも言ったけど私元々不順で……」

 

 

 キャビンにアリアを乗せると横になるように促し、彼女の言うことも碌に聞かないアベルの心は浮き立っていた。

 妊娠の可能性があるだけで、確定したわけではないアリアは冷静だ。

 そんなアリアの下腹部にアベルの手が触れる。

 

 

「いや、きっとおめでただよ! 僕、父親になるのか~! うわ~どうしよう、なんか緊張する……って今から緊張してもしょうがないか。こんにちは赤さん、僕が父親のアベルです。ゆっくり大きくなってください……うーん、言い方が硬いかな……」

 

 

 ――記憶は降りて来ていないけど、アリアとだからだよね……!

 

 

 別世界の記憶が今のところ降りて来ていない。

 ビアンカやフローラとの結婚生活がどうであったか、逐一思い出すと思っていたが、意外とそういうことはなく、子どもの有無も今はわからない。

 ただ現在アリアが妊娠しているのなら、別世界の記憶とは合致せず、未来が完全に変わったのだと思えた。

 

 とはいえ、魔物の記憶やテルパドールのことなど、そういったことの既視感がやはりある。

 この記憶をどうにかうまく利用し、アベルはアリアとより良い毎日を過ごしていきたい。

 

 

「あの、できているかもわからないのに、さすがに気が早いと思うんだけど……。黙ってるのもなんだから、アベルに言っただけだし……」

 

「アリア似の可愛い子が生まれると思うと楽しみだなあ~♡ あっ、今夜から子守歌を歌ってあげるよ。何もしないから添い寝だけは毎日させてね」

 

「アベルったら……まだ確定してもないのに、そんな喜んじゃっていいの?」

 

 

 ――アベルって、たまに話聞いてないよね……。

 

 

 愛おしそうに腹を撫でながら、子について語るアベルにアリアは苦笑する。

 

 

「絶対できてるよ。僕がどれだけがんばっていたか、君が一番よく知ってるはずじゃないか。あ」

 

 

 “モミモミ”

 

 ……なぜか突然、アベルの手がアリアのたわわを揉んだ。

 アベル曰く不可抗力らしい。

 

 

「もぅっ! アベルのえっちっ! すぐ触るんだから……めっ」

 

「あはははっ! じゃあ、なるべく馬車を揺らさないように行くね!」

 

 

 手をぺちんと叩かれたが、アベルは明るく笑って日陰に散らばる休憩中の仲魔たちを呼びに行くことにした。

 

 

「……アリアに赤ちゃん……僕たちの……! おーい みんなー! そろそろ出発するよー!」

 

 

 アリアとしばらく営めないが、アベルの喜びようはとてつもない。

 早合点だと言うアリアの話が耳に届くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……砂漠のオアシスを出て、三日目。日は傾き、地平線に日が落ちていく。

 地図で見たテルパドールの位置と、アベルたちの現在地がもうすぐ重なる。

 

 大岩のある場所ならばどうにかなるキャンプも、砂漠のど真ん中では思ったように休めず、昼夜問わずにアベルたちは戦い続けた。

 

 

「ふう……おつかれ。炎の戦士 五匹はやっぱきついな……いてて……」

 

「ハアハア……そうですね……。今、回復呪文を――」

 

 

 たった今戦いを終えたアベルは【パパスのつるぎ】を鞘に収め、火傷した手足を見下ろし、ピエールに声を掛ける。

 ピエールにも【ほのおのせんし】が放った【かえんのいき】で付いた傷が多く、いつも磨き上げたように綺麗な兜も鎧も、今は黒い焦げが付いていた。

 【ほのおのせんし】の【かえんのいき】攻撃を連続で食らうと洒落にならない。

 

 

 “【ベホマラー】!”

 

 

 ピエールが回復呪文を唱えようとすると、馬車からアリアの声が聞こえ、アベルたちの傷が塞がった。

 

 

「おお……! 鎧までキレイに……! アリア嬢! ありがとうございます!」

 

「のっしのっし♪」

 

「ぶるぶるっ、寒いなあ……」

 

 

 アリアの回復呪文により、ピエールの兜や鎧までが綺麗に補修される。不思議な現象だが、そういうものらしい。

 キングスは上機嫌でキャビンから覗くアリアをガン見し頬を染め、巨体でジャンプジャンプ――、砂ぼこりを巻き上げ元気そうだ。

 暑さにやられたプックルと交代したモエールはといえば、夕暮れになって気温も下がり寒いのだろう、キャビンに震えた身体を向け軽く会釈した。

 

 

「ありがとうアリア。さっきから連続でその回復呪文使ってるけど、大丈夫かい?」

 

「平気だよ~、まだ魔力はたくさん残ってるし。アベルたちこそ大丈夫? 私、元気だからモエールさんと代わろうか?」

 

 

 アベルもアリアにお礼をと、馬車に近付く。

 アリアは乗降口から身を乗り出し降りようと、やって来たアベルに笑顔を見せ両手を差し出した。

 ハグで下ろして欲しいという可愛いおねだりなのだが、下ろすわけにいかない。

 

 これから夜が訪れ魔物たちの出現率が上がり、アリアに何かあっては後悔しかなくなるのだから。

 

 

「いや、君は馬車で」

 

「もぉ~! アベルってば過保護なんだから~! HPやっと100越えたのに~! もうちょっとでテルパドールだよー?」

 

 

 いつでもアリアの我儘を聞いてやりたいと思っているアベルも、命に関わることは決して聞き入れたりしない。

 せっかくなのでハグだけして、キャビンの奥にアリアをそっと押し込んだ。

 

 

「まだ100じゃん! ほら、奥さんは中で横になっててよ」

 

「ぐぬぅ……違うもん……100超えて101だもん……」

 

 

 クリエたちのおかげもあるだろう、長い夜の間の度重なる戦闘で、仲魔たちが強くなったからか、戦闘中にアリアに頼ることはほぼない。

 戦闘後に回復呪文を唱えてくれるだけで充分なのだ。

 

 ……アリアは悔しそうな顔をしているが、こればかりは我慢してもらう他なかった。

 

 

「……ひとりの身体じゃないんだからさ」

 

 

 ――妊婦を戦わせるなんてありえないよね……!

 

 

 アベルはアリアの腹に手を当て優しく撫でる。

 

 

「だから体調不良とか全然ないし、できてるかもわかんないってば……。早とちりだよ……」

 

「それならそれでもいいよ? アリアにはゆっくりしてて欲しいんだ。クリエちゃんから買ったお菓子まだあったでしょ? テルパドールに着いたらご当地菓子買ってあげるね!」

 

「うん、お菓子楽しみ~♡ ……はっ!? 餌付けしようとしてるでしょ!」

 

「……フフッ、アリアは食いしん坊だからなあ。じゃあ出発しようか」

 

 

 体調の変化は全くなしだと言うアリアを見上げ、アベルはにこにこと笑顔で応対する。

 ご当地菓子で餌付けしようとしたことがバレてしまった。

 本人には決して言わないが、食べ物をちらつかせればすぐに靡く、そんなアリアのちょっと緩いところもアベルは大好きなのだ。

 

 

「あっ、ちょっ、もぉっ! アベルぅ~~!!」

 

 

 アリアの懇願する声を背に、アベルはパトリシアの元へ戻り出発する。

 

 ……少し歩みを進めると夕映えの空の下、【砂】が輝く視線の先に、砂漠の城テルパドールが遠くに見えてきた。

 

 

「あっ、アベルあれっ!」

 

「うん、テルパドールだ! やっと着くね。着いたら降ろしてあげるからもうちょっと待っててね!」

 

「うん!」

 

 

 キャビンからひょっこり顔を出すアリアに、先頭のアベルが【ふしぎな地図】を手に振り返って答えれば、彼女は満面の笑みで大きく頷く。

 黄金色に照らされたアリアの髪が少し冷えた砂漠の風にのって揺らめき、いつもそう見えるが、今日もやっぱりキラキラと輝いて見えた。

 




アリアに妊娠の疑い。
そりゃ、お盛んですしね~。

ドラクエって病院あったっけか?病室がビルダーズ1にあったけど。
呪文と祈りで回復しちゃう世界だからな~。
というわけで、教会では病院の役目もこなしていただいております。

次回、テルパドールのお城に到着。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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