ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回あらすじ>アリアに妊娠の疑いが……、そしてようやくテルパドールへ!

○っぱい。

では本編どぞ。



第七百七十二話 砂漠の城テルパドール(夜)

 

「わっ、風つよっ! ああっ砂がっ……!」

 

 

 テルパドールを視認できたアリアは強い風もあってか、すぐにキャビンに引っ込んでしまう。

 【砂】が入り込まないよう、しっかりと馬車の(とばり)が閉じられた。

 

 

 ……さあ、あともうひと踏ん張り。アベルは歩みを進める。

 

 

「あぁ……僕の奥さん、ホント可愛いんだよなあ……♡」

 

 

 今夜は町の宿屋だ、完全なる安全地帯……!

 抱いてもぃ――、そこまで考えアベルは気付く。

 

 ……アリアが妊娠しているなら手を出すべきではない、ということに。

 

 

「くっ……! 妊娠は喜ばしいことだけど、気付くんじゃなかった……!」

 

 

 ――お触りくらいならオケ……?

 

 

 またしてもアリアとの営みを思い浮かべ、アベルはもんもんと夢想する。

 

 ……この分だとテルパドールに着く頃には夜だ。

 皆も疲れているだろうし、着いたら教会は明日にして、今夜はすぐに宿を取った方がいいだろう。

 

 そうだ、少しだけ触らせてもらって眠りに就こう。

 そうだ、そうしよう。

 

 

 おっぱい触るだけなら大丈夫かな……。

 おっぱい……、アリアのおっぱい、大好きだ……一日の終わりに触らせてもらわないと一日が終われない……。

 

 この間 激しくしたけど、アリア大丈夫そうだったし、今夜くらいなら大目に見てもいいかなっ……!?

 

 ああ、けどアリアの身体も心配だし……。

 

 けどおっぱい……。

 

 ならアリアに触ってもらっちゃう?

 いやいや、無理させたくないし……。

 

 大人しく添い寝だけにするかあ……!

 

 でもアリアのおっぱい触りたい……。

 

 

 アベルの中で最小限のスキンシップだけは取ることに決め、テルパドールに到着するすんでのところで、現れた魔物の群れとの戦闘に入った。

 ……が、戦闘中のアベルはとにかく――、

 

 

「主殿……独り言がうるさかったですよ」

 

「え?」

 

 

 戦闘を終え、ゴールドを拾いながらピエールが寄って来てこそこそと告げる。

 うるさかったとはいったい……、アベルは首を傾げた。

 

 

「ご夫婦が仲睦まじいのは結構ですが、閨事はあまり大きな声で言うものではないです。アリア嬢に聞こえたら引かれますよ」

 

「……えっ!? 声に出てた!?」

 

「ええ。戦いの最中、心ここにあらずでずっと“おっぱい、おっぱい、アリアのおっぱい”……と、ぶつぶつおっしゃってましたよ……。まあ、敵が眠っていたので問題なく倒せましたが……。主殿は助平ですねえ」

 

 

 どうやらアベルの考えは全て声に出ていたらしい。

 遭遇した魔物は【ケムケムベス】四匹、幸いなことに全員睡眠中だった。

 

 ……ピエールに淡々と指摘されたアベルの顔が真っ赤に染まってゆく。

 

 

「っ! スケベですみませんでしたね!」

 

 

 アベルは否定しなかった。

 アベル自身、自分がスケベだという自覚は一応あるのだ。

 

 アリアがいたらすぐ触ってしまうし、移動中でも戦闘中でも、アリアの裸を思い出すことだってある。

 彼女と話をしていても、顔だけじゃなく胸や太ももに視線がいくし、気付けば触れていたりする。

 アリアも嫌がらないから(めっ! とは言われているが無視)自由に触らせてもらうのがつい当たり前に……。

 

 それがスケベだというのならそうなのだろう。

 だが、思考が声に出てしまうのはいかがなものか。

 

 

 ――僕の威厳が崩れてしまう……!!

 

 

 恥ずかしい独り言を聞かれ、赤っ恥もいいところだが、せめて態度だけでも堂々としよう――。

 アベルは顎を上向かせると腰に両手を添え、仁王立ちをした。

 

 ……まったく様になっていない。

 

 

「……そうドヤられましても……。此度の主殿が助平なのは既に承知しております。何を気にされているのかは大体想像がつきますが、主殿がアリア嬢にメロメロで、仲魔たちの前で甘える姿を何度晒していると思っているのですか? いまさら威厳など気にしたところで何か変わりますか? 変わりませんよね?」

 

「……ですよねー……。なんかごめん……頼りなく見えてたら気を付ける。もっとしっかりしないとな……」

 

 

 ――僕、威厳なかった……。

 

 

 相変わらずピエールは冷静に意見を伝えてくる。

 アベルは自分に威厳など、初めから無かったのだと気付いてガクッと肩を落とした。

 

 

「フフッ。威厳はともかく、アベル殿はそのままで良いのですよ。アリア嬢もアベル殿のありのままを慕っておられるはずですから」

 

「そ、そうかな……。じゃあピエール、さっきのは黙っておいてもらえるかい?」

 

 

 ――もう少し大人の男としてしっかりしなければいけない……とは思ってるけど、アリアの前じゃ上手くできないんだよね……。

 

 

 アベルは口元に立てた人差し指を添え、気まずそうな顔でピエールに口止めをした。

 

 アリアがありのままの自分を好きでいてくれているなら、このまま甘えていてもいいだろうか……。

 最愛の妻はたまに怒るが、殆ど優しく受け入れてくれる。

 アベルからすれば居心地が良い――いや良すぎる存在。

 

 彼女には恰好いいと思われたいが、駄目な自分も受け入れて欲しい。

 すべて丸ごと包み込んで欲しい。

 

 生まれてから母親が不在だったアベルは、無意識でアリアに母性を求めているところもあるのだろう。

 そしてアリアも無意識でそれに応えてくれている。

 

 そんな彼女に嫌われるなんてのはもってのほか。

 常にアリアと戯れることばかり考えていることは、心の内に仕舞っておかねばならない。

 

 アベルのお願いにピエールは特に何も言わなかったが、一度だけ深く頷く。

 アリアの実質義父であるピエールが、夫婦二人が不和になるようなことを言うわけがないことがわかって安心した。

 

 ……そんな時――。

 

 

 “ビュウゥゥ……!”

 冷え始めた夕暮れの強い風がアベルたちの間を吹き抜ける。

 

 

「ぁぃっ! ……風が強くなって来たね。また砂嵐が発生するかな?」

 

「そうですね……テルパドールの城に入ってしまえば大丈夫でしょう。さあ、もう少しです。丁度日も暮れましたし、今夜は砂嵐に遭わずに済みますね」

 

「そうだね、昨日も一昨日も危なかったもんな」

 

 

 【砂】を纏う風に不意をつかれ、目をやられたアベルは目を擦り擦り。

 

 テルパドールの城は目と鼻の先、あと数百メートル。

 徐々に迫る城の陰影は、蜃気楼ではない。

 

 アベルたちは昨日、一昨日と既に砂嵐に何度か出遭っており、身体も馬車も【砂】だらけだ。

 西に進めば進むほど、規模は大したことはないが、砂嵐に見舞われること数回。

 粒子の細かい【砂】は目に鼻に口に――、服の中へも侵入し、掻いた汗と相まって不快なことこの上なし。

 

 始めは食糧事情(主に水)で早くテルパドールに着きたいと思っていたが、今は身体に纏わりついた【砂】を一刻も早く綺麗に取り除きたい。

 ……特にアリアはそう思っているのだろう。

 一緒に歩きたいだのなんだの言っておいて、今はキャビンを閉め切っている。

 

 

「アリア~! もうすぐ着くからね~! 今夜は宿屋に泊まれるよー!」

 

 

 アベルは宿屋に着いたらアリアの身体を拭いてやろうと思い、馬車に向かって声を掛ける。

 馬車の(とばり)が開くことはなかったが、アリアの「やった~☆」という喜悦の声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……テルパドールの城――。

 アベルたちが到着する頃にはすっかり日が落ちて、月明かりが静かにその城を照らしている。

 

 砂漠に突如現れた、ラインハットやメダル王の城とも違う造りの、巨大な城は、【砂】が長い年月を経て固まった【砂岩】で建てられたようで、朝になればはっきりするだろうが、壁が地面の【砂】と同様の色合いをしていた。

 

 ……城自体は三階建てなのだろうか、ぱっと見た外観なので詳細はわからない。

 到着したばかりのアベルたちの今いる位置からはよく見えないが、城を中心に左右に歩廊が伸びて、それぞれ何かの施設に続いているようだ。

 城は巨大ながらシンプルな造りで、これといった派手な装飾はないものの、遠くからでもわかる建物を支える巨大な石柱には圧倒される。

 地面は【砂】で柔らかいというのに、あの柱があるおかげで巨大な城が成立しているのだ。

 

 

「あのお城、砂岩で建てたんだよね……? すごいなあ……(強度とか大丈夫なのかな……)」

 

 

 アベルに馬車から降ろしてもらったアリアは、風で舞い上がる髪を押さえつつ、遠目に見える城を見通し声を漏らす。

 テルパドールに入ったとはいえ、城までは少し距離がある。

 ……アベルたちの近くには、左手に武器屋・防具屋、右手に宿屋の看板が見えた。

 夜でも消えない【カベかけたいまつ】が各店の看板を照らすから、迷わずに済みそうだ。

 

 テルパドールに入った途端、これまで吹いていた砂漠の強い風がやや弱まり、城周辺が聖なる力に守られていることを感じる。

 これまで歩いて来た方角に目をやれば、砂嵐なのだろう、遠くに砂粒が煙っていた。

 

 アベルはすぐに馬車を宿屋の脇に停め、パトリシアが寒くないよう 風の影響を受けない場所へと連れて行き、モエールを適度な距離を保って配置。

 モエールは寒そうだったが、【ほのおのせんし】の消えない炎はパトリシアを寒さから守り、他の面々をも温める。強風でも然程煽られない炎は素晴らしい。

 

 ……モエールがいてくれてよかったと、お礼を伝えておかねば。

 

 

「モエール悪いね、ありがとう」

 

「い、いえ……ぶるぶるっ、寒いなあ……」

 

 

 アベルがお礼を告げる中、スラりん、キングス、メッキ―が早速モエールの傍で微睡み始める。クリエにもらった【どうぶつの寝わら】の上だからか、そこそこ快適そうで何よりだ。

 これで馬車組は朝まで安心して眠れることだろう。

 

 馬車組のメンバーが休むのを確認し、さあ次はアリアの番――。

 

 

「さ、アリア、宿屋に行こう。寒いし、ずっと馬車に乗ってて疲れたでしょ? 教会とお城は明日にしようよ」

 

「うん。お風呂あるかな~?」

 

 

 冷たい夜風に吹かれ、アリアが寒さに両腕を擦った。

 

 屋内に入ればそれなりに温かいはずだろうと、アベルは先ほど連れ歩くメンバーをアリア、ピエール、プックルに入れ替えている。

 

 

「う~ん、砂漠だからね。ないかもしれないね」

 

 

 ……アベルはアリアの手をとる。

 手を繋いでおけばアリアが突然いなくなることもなく安心だ。

 

 

「そっかあ……、水は貴重だもの、しょうがないか」

 

「だから身体を拭いてあげるね」

 

「へ?」

 

「……ね? 拭かせてくれるよね? この間 お風呂で洗わせてくれたのと変わらないよ♡」

 

「っ……もぉっ、アベルったら……♡」

 

 

 ここは砂漠のど真ん中、砂漠で【水】は貴重品――。

 オアシスでクリエが用意してくれた【ごえもん風呂】は自動的に湯が沸いてくれる不思議な風呂だったが、そんな便利なもの、恐らくこの宿屋にはないだろう。

 

 新婚夫婦の会話に後ろでピエールとプックルが辟易する中、【宿屋のカベかけ】が掛けられている建物に入ると、思っていた通り温かい。

 宿屋の外観は夜ということもあって暗く、よくわからなかったが、城同様【砂岩】で建てられているように見えた。

 

 建築物につい目が行ってしまうのはクリエの影響だろう、アベルもアリアも屋内に入ると自然に壁へと視線を移す。

 ……壁は【砂】のレンガと【砂】らしきもので塗り固められている。

 【石レンガ】と木の柱で作られるサンタローズの自宅とは全く違う作りだ。

 

 

「へえ……砂の壁か……(砂なのにしっかり固まって……不思議だなあ……)」

 

「砂の壁だあ……すごいなあ……砂なのに固まってる……(砂と岩かなんかを混ぜて作ってるのかな……?)」

 

「……ん?」

 

 

 アリアから同じような言葉が漏れ聞こえ、アベルは首を傾げた。

 

 

「あ、ふふっ♡ アベルも同じこと考えてた?」

 

「うん、みたいだ♡ 砂の町って面白いね。明日、見て回ろうね♡」

 

「うん♡」

 

 

 どうやらアリアも同じことを考えていたらしい。

 たまに同じことを考えているのか、こうして言葉が重なる度に感性が似ているなとアベルは嬉しく思う。

 

 途方もない過酷な旅とはいえ、異国の城や町を見て回るのは、新たな発見ができて楽しいものだ。

 別世界ではどうだったか思い出せないが、旅を“楽しむ”という余裕をこの世界ではアリアが教えてくれた。

 

 彼女はいつも楽しそうにしている。いつも楽しいわけではないらしいが、だいたい楽しそうだ。

 それは彼女の心にゆとり――余裕があるからなのだろう。

 何事も余裕がなければ目的ばかり追い掛けてしまい、ただ苦しい旅になってしまう。

 

 ……朝になったらあちこち見て回るのを楽しみにしながら、その日はアリアの清拭だけさせてもらって一緒に眠った。

 




アベルがおっぱい星人だということが発覚したところでテルパドールにin。
風が強いのですよ。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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