ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回あらすじ>夜にテルパドールへ到着したアベルたち。一泊してから教会や城へ行ってみます。

びゅううう。

では、本編。



第七百七十三話 強い風にさらされて

 

 

 

 

 

 そして夜が明けた……!

 

 

「ふわぁ~あ……ん~よく寝たあ~! 元気ひゃくばいっ、ア〇パンマーン! ああ、あんぱんが食べたーい……!(小豆とはまだ巡り合えてないけど、なくても別のものをあんこにすれば作れるよね!)」

 

 

 アリアは身体を起こし、両腕を天井に向け背伸びをする。

 宿屋の客室は地下にあるため 日の光は入らないが、たっぷり睡眠を取ったアリアは自然と目を覚ました。

 

 

「あんぱん……? フフフッ、おはようアリア♡」

 

「おはよ、アベル☆」

 

 

 隣で横になっていたアベルが頬杖を突き微笑むと、アリアはにこにこと答えてくれる。

 アベルは横になったまま早速【ステータスウィンドウ】を開いた。

 

 

「……うん、元気そうだね」

 

「元気だよー! 顔洗って来るね」

 

 

 昨夜は添寝だけのため、アリアの【HP】は全快。

 彼女は早々にベッドから出て顔を洗いに行ってしまった。

 

 いつもこうしてあげられたら彼女は朝から元気なのだろう――とは思うが、新しい家族を迎えるためだ、我慢してもらうしかない。

 ……なんて免罪符はいつまで使えるかなと、アベルも顔を洗うべくアリアを追いかけた。

 

 

「僕も洗う」

 

「うん、今交代するね」

 

 

 アベルが追い付くと、顔を洗い終えたアリアが場所を交代してくれる。

 顔と前髪が一部濡れ、それをタオルでそっと拭うアリアが眩しい。

 

 

「……アリア、今日も君は綺麗だ」

 

 

 ……口に出さずにはいられなかった。

 

 

「ちょっ!? も、も~、朝からアベルってばなに言って……アリガト……♡ アベルもステキよ。ほらっ」

 

 

 朝から褒められたアリアは、照れながらアベルの前にサッと手鏡を差し出し笑う。

 

 

「ハハッ、照れるな……って、目やに付いてるし! ヨダレのあとも! 全然ステキじゃないじゃないか! アリアぁ~?」

 

「ふふふっ、アベルはいつでもステキだよ? さっ! はい、これタオル。顔を洗ったらご飯を食べて出発だねっ」

 

 

 手鏡に映ったアベルの目には、目やにとヨダレの跡。

 寝ぐせが付いた髪はボサボサで、服もなんだかヨレヨレだ。

 

 妻の前では格好良くいたい――そうは思ってもアリアは気にしていない様子で褒めてくれた。

 

 

「うん、すぐ洗うよ!」

 

 

 アベルは上機嫌でアリアからタオルを受け取り、素早く顔を洗って身支度を整える。

 その後は客室前の談話室で軽めの朝食を摂(【パン】を齧)って、出発することにした。

 

 ……アベルたちが談話室に一つしかないテーブルで食事を摂っていると、客室から寝起きの宿泊客がやって来る。

 手には横笛を持ち、身形からして吟遊詩人のような男が笛をピ~ヒャララ。心地良い音色を奏で「おはようございます、いい朝ですね」などと話し掛けてきた。

 

 

「私は旅の吟遊詩人ですが、この城に来てみて本当にびっくりしました。この城には勇者にまつわる色んな事が語り継がれているみたいですね」

 

 

 彼は何日か滞在しているのか、すでに城を訪れ あれこれと勇者にまつわる逸話を聞いたようだ。嬉々とした表情で語った。

 

 

「勇者にまつわる色んなこと……! お城は一般の人でも入れるんですか?」

 

「ええ、旅人の訪問を歓迎してくださっているようですよ。あなた方は確か昨夜着いたばかりでしたね? あ、すみません、お二人のそんな会話が聞こえたものですから」

 

「あ、はい、そうなんです。僕たち、勇者に関する情報を求めてここにやって来たんです」

 

「そうでしたか。風が強い中、よく辿り着かれましたね。でしたら今日は城へ? 求める情報があるといいですねっ」

 

 

 アベルが城に関して訊ねると、男は丁寧な受け答えをしてくれる。

 城で聞いた勇者に関する話がよほど興味深かったのだろう、最後には「おかげで勇者さまに関する新たな詩が浮かびそうでワクワクしているんです!」などと嬉しそうな笑顔を見せた。

 

 

 ……朝食の時間はほどなく終わり、アベルたちは吟遊詩人と別れ、宿屋を後にする。

 

 宿屋を出ると、【砂】を伴う強い風が吹いていた。

 ずっと吹き続けているわけではないが、時折視界が黄色で霞むから、アベルは少しでもアリアに風が当たらないようにと先頭を歩く。

 昨夜ほどではないもののミニスカートが揺れるため、アリアはマントを閉じてあとに続いた。

 アリアの太ももが拝めないのは少々残念ではあるが、他人に妻の下着を見られるよりはいい。賢明な判断にアベルは無言で頷く。

 

 

「親切な人だったね」

 

「だね。ねえ アベル。吟遊詩人さんが言ってた通り、昨日 風強かったよね。砂嵐に巻き込まれなくて良かったよ……んっ……今日も強っ、わっ!?」

 

 

 親切な吟遊詩人について話を振ると、アリアがひょっこりとアベルの背後から顔を出すが、強い風にすぐに引っ込んでしまった。

 オアシスのあった東側ではここまで風は強くなかったように思う。

 別世界でもここまで風が強かった印象はないのだが、憶えていないだけで、テルパドールの城付近がそういう地域にあたるのかもしれない。

 

 ……不意にアベルのマントが強風に煽られ、ぶわり。大きく捲れ上がった。

 その風に【砂】も宙を舞う。

 アベルは咄嗟に身体を反転させ、アリアを抱き寄せた。

 

 

「っ、風……そうだね。遠くに砂嵐も見えたし、この辺りは風が強いみたいだ」

 

「ぁ、痛っ。目に砂が入っちゃった……」

 

「大丈夫かい? フードも被っておくといいよ。僕が風よけになるからすぐ後ろにいて」

 

「うん、ありがと、そうするー」

 

 

 アリアに【砂】の被害がないようにと抱き寄せたが、遅かった。

 【砂】が目に入ったらしいアリアは目を擦る。アベルは彼女のフードを被せてやった。

 最後尾のプックルも目を擦っており、彼もまた目に【砂】が入ったらしい。

 

 城下を移動中は舞い上がった【砂】が目に入らないように気を付けようと声を掛け、まずは昨日言っていた教会を目指すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 宿屋を出たアベルたちの現在地は城の手前、目の前には城の入口に伸びる大階段が見える。

 テルパドールという単語は記憶にあれど、城の施設の記憶などはさっぱりだ。それはそれで新鮮味があり旅のわくわくが感じられて良い。

 

 ただ、以前ピエールの言っていた“未知が怖い”という言葉の意味も少し理解ができた気がした。

 

 テルパドールの城下には旅人が複数訪れており、ここに来るまでに、城から出てきた何人かとすれ違った。

 どの旅人からも「まだ出られそうにないな」という落胆の声が聞こえ、旅人たちは足早に武器屋やら、防具屋やらへと向かって行く。

 

 いったいなんのことなのだろうとアベルは思ったが、そんなことより、今は妻のことを優先させねばならない。

 

 

「ねえ、アベル~。私 体調とか全然変化ないんだけどー……むしろ絶好調っていうかー……だから教会に行かなくてもいいよー?」

 

「いいからいいからー。念のためねー」

 

 

 強い風に晒されながら、アリアは教会に行かなくても良いと言う。

 アリアの体調に変化がないことは先ほど【ステータスウィンドウ】で確認済みだ。だが【ステータスウィンドウ】に“妊娠中”なんて表記がされるとは思えない。

 身体の変調は教会へ……というのはこの世界での常識。

 

 とりあえず城へと続く大階段の前までやって来てみたものの、相変わらずの強風で、打つかってくる【砂】が地味に不快である。早く屋内に避難したいと誰もがそう思った。

 

 ふと、大階段の下でメモを手にし、たまにそれを確認しながら周囲を険しい顔できょろきょろと警戒する髭面の戦士が目に入る。

 城で雇われた傭兵か、兵士か……。

 アベルは目を擦り擦り、戦士に教会の場所を訊ねることにした。

 

 

「すみません教会ってどこに――」

 

「ややっ! あんたは確か、アリアさんの旦那さん! ちょうど良かった! 実はルドマンさんから預かりものがあるんだ」

 

「ルドマンさんから預かりもの……?」

 

「よっこらしょっと!」

 

 

 教会の場所を訊ねたアベルの顔を見るなり、メモと見比べた戦士の表情が和らいだ。メモには“紫のターバン、紫のマント、黒髪の浅黒い肌に白い服の色男――以上が可愛い私の娘婿アベルの特徴だ”と書かれている。

 ……どうやら戦士はアベルを探していたらしい。

 

 彼はガサゴソと持ち物の中から大きな【宝箱】を取り出し、“ドンッ!”。

 豪快にアベルの前に置いた。

 

 

「た、宝箱……?」

 

「じゃあ確かに渡したぜ。あばよ!」

 

「あっ、教会は……!?」

 

「宿屋の北ー! 砂嵐に気を付けろよー!」

 

 

 ルドマンのおつかいだったらしい戦士に、「ありがとうございます」と礼を言おうとしたが、彼は役目を終えたと既に駆け出し、広大な砂漠の中へと姿を消した。

 戦士の消えた方角を見るアベルたちの視線の先を、砂を巻き上げるつむじ風が通り過ぎていく。

 

 ……その時、突然アベルたちにも強い風が吹き付けた。

 

 

「行っちゃった……わっ!(いたっ!)」

 

 

 “ベシッ!”

 

 立ち位置が悪かった。風を捉まえたアベルのマントが舞い上がり、背後のアリアの顔を叩く。

 一方向からの向かってくる風に、アベルのマントはアリアの顔に張り付いた。

 

 

「っ、風がつょ……。よし、ちゃっちゃと宝箱を確認して……」

 

「……」

 

「アリア、なにが入ってるか楽しみだねっ」

 

「……」

 

 

 アベルは平気だったが、一方向からの強い風は吹き続け、マントはアリアの顔を覆ったまま。

 

 

「……アリア?」

 

「……(息が苦しい……)」

 

「アリアっ……!?」

 

 

 ――ごめんっ!

 

 

 返事がないことに首だけ回し背後の様子を窺うと、アリアの顔がぴったりとマントで覆われている。

 アベルのマントは厚手で風を通しにくい素材。布越しに顔の形がはっきり見え、アベルは内心 血の気を引きつつ、慌てて振り向き剥がしてやった。

 

 ……こんな些細な出来事でアリアを失いたくはない。

 

 

「プハッ! あーびっくりした!」

 

「よかった……。すごい風だよね……! 宝箱だけ確認して屋内に避難しよう!」

 

 

 アリアを救い、アベルはさっさと【宝箱】の中身を確認して屋内に避難することにした。

 

 

「……2000ゴールドと……、救急キット……?」

 

 

 開いた【宝箱】の中には2000Gと薬や包帯などが詰められた【救急キット】が入っており、底には手紙――。

 その手紙を確認しようとしたが、西の方角から“ビュウゥゥッ”という強い風の音が聞こえてくる。

 

 

「うっ……! あっ、アベルっ、避難しよ! 砂嵐っ! 砂嵐が来たよっ!」

 

「えっ? あっ、本当だ! アリア急ごう! ピエール、プックルも急げ! パティもおいでっ!」

 

 

 いち早く異変に気付いたアリアが西を指差し、アベルのマントを引っ張る。

 アベルがそちらに目を向けると、城を容易く呑み込める規模を誇る砂嵐が迫っていた。

 城周辺は聖なる力で守られているから大丈夫なはず――と思っていたが、向かって来る砂嵐の勢いは衰える気配がない。

 このままでは砂嵐に巻き込まれてしまう。

 

 ここは一先ず屋内に避難した方が良さそうだ。

 アベルは【宝箱】の中身だけさっさと取り出し、アリアの手を引いて城へと続く大階段を駆け上がった。

 




フローラかデボラと結婚するとテルパドールの城前に戦士が現れ、2000G貰えるアレアレ。

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