ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回あらすじ>砂嵐に追い立てられたアベルは城内へと続く階段を駆け上がる。

城内にやって来ましたよ、と。

では、本編どぞ。



第七百七十四話 ようこそ! テルパドールのお城へ!

 

「急げっ! 旅人っ!」

 

「さあ中へ!」

 

 

 大階段を駆け上がると、城の兵士らしき二人の男が城門前でこっちだと手招きをし、馬車に気付くとキャビンの後ろに回り、押して迎え入れてくれた。

 旅人を城内で保護しようというのだろう、アベルたちが中に入ると兵士は二人掛かりで城門を閉めた。

 格子状の城門は【鉄】でできているようで、今は砂嵐のせいか格子に板が嵌められ、隙間風と【砂】が僅かに入り込んでいる。

 

 

「フーヤレヤレ。これで何度目だ? 砂嵐にも困ったものだな。鉄の城門に板を嵌めるほどとは……」

 

「全くだ。アイシスさまが調査隊を編成されるとおっしゃっていたが、いつ頃派遣されるのだろうか」

 

 

 城門を閉め切り、兵士たちの話が漏れ聞こえた。

 昼間城門は開けっ放しだというのに……と、城の周辺には聖なる力が働き、普段は風も穏やからしい。

 いつもであれば城門が開かれていることがわかる。

 砂嵐が閉じられた城門を叩く音がするが、多少の隙間風を感じる板もしっかりと嵌っておりビクともしない。

 

 城門を閉じた兵士二人は落ち着いた様子で言葉を交わしており、アベルはお礼を言おうと思ったが、二人は慣れっこなのか本来の持ち場らしき城門の正面、二階へと続く階段下へと戻って行く。

 ……二人のその様子に城内は安全なのだと思えた。

 

 

「……ふう(城門はいつもは開けっ放しなのか……)」

 

「はあ……、お城の中は快適ね」

 

「だね」

 

 

 兵士たちの話に耳を傾け、アベルはマントの裾を払うアリアの肩についた【砂】を払う。

 ピエールもアンドレに付着した【砂】を払い、プックルは身体を震わせ毛の間に詰まった【砂】を弾き飛ばした。

 

 入口付近にはこれまで旅人たちが落とした【砂】が、小さな山となって端に寄せられている。

 兵士の話によれば、何度か似たようなことが起こっているようだが――。

 

 

「主殿」

 

「ん?」

 

 

 ふとピエールがアベルの側にやって来て声を掛けてきた。

 こんな風に声を掛けてくるのは“気付き”があった時だ。

 

 

「……城下に砂嵐が入って来たことなどあったでしょうか……」

 

「うーん……、……ない!」

 

 

 アベルは【砂】が積もったターバンをそのままに腕組みをし、ちょっと考えてはっきり答える。

 別世界でそんなこと、一度も経験した憶えはない。

 事前に気付くことも無ければ、経験中の既視感もなかった。

 

 ……つまり、これは初めての体験なのである。

 

 

「そうなんです。ないんですよ、一度も」

 

「何が起こっているのかはわからないけど……。初めてだね!」

 

 

 ピエールが頷き、彼もまた初めての体験なのだと認識が一致した。

 突然の砂嵐に見舞われ身体は砂塗れだが、なんだかわくわくする。アベルの瞳はきらきらと輝いた。

 

 

 ……アベルとピエールが話をしている間に、パトリシアにも掛かってしまった【砂】を、アリアが馬用のブラシで払っている。

 馬車まで城内に入れてもらえたのは助かった。

 外にいたら今頃、白き馬のパトリシアは【砂】で黄色く染まっていたことだろう。【砂】が体内に入り込み、病気になっていたかもしれない。

 

 

「は~、だいたい落ちたかな?」

 

「ブブブブ♡」

 

 

 【砂】を落とし終えたアリアに、パトリシアは目を細めて頭を摺り寄せる。

 パトリシアの足元には落とした【砂】が散らばっていた。

 

 

「うん、よかった♡ ……ん? アベルなんだかうれしそうだね?」

 

 

 パトリシアのメンテを終えて、アリアが側にやって来る。

 自然とアベルの頭に白い手が伸び、アベルも身を屈めた。

 パラパラと、ターバンに積もった【砂】が城の床に落ちていく……。

 

 

「うん……♡ 今僕、初体験中なんだ……! ドッキドキだよ!」

 

 

 アベルはにこにこと笑顔を見せ、アリアを抱きしめた。

 

 予期せぬ砂嵐――。

 何かが起こっているのはわかるが、アリアが元気で自分の傍にいる。であれば、こういう初体験も悪くないかもしれない。

 ところ構わず吹き荒れる砂嵐に何かできるとは思えないが、ちょっとした別世界との差異が、今のアベルにとっては喜ばしいことなのだ。

 

 

「はつ……たい、けん……? なっ、えっち! だからそっちはダメだって……」

 

「その初体験じゃないよ? ていうか、アリアの方がスケベだよね!」

 

 

 アベルは言うが、アリアが勘違いするのも無理はない、抱きしめついでにアリアの尻をしっかり撫でたのだから。

 

 

「にゃ!? にゃにゃにゃ……大きな声でにゃんてことを……!(紛らわしい~っ。だったらお尻触らないでよ~っ)」

 

「ふふふっ、エッチなアリアも好きだよ♡ さあ、まずは教会がどこにあるか聞いてみようか」

 

 

 アリアの耳にこっそり囁いて、アベルは馬車を城門近くに停めたまま、先ほどの兵士に話し掛けることにした。

 “アベルのバカあっ!”と、顔を真っ赤にして後ろについて来る可愛い子猫に、つい笑みが零れる。

 

 

「先ほどはありがとうございました」

 

「ようこそ! テルパドールのお城へ!」

 

「われらが女王アイシスさまは、旅人の訪問を心より歓迎いたします」

 

 

 アベルが先ほど城に招き入れてくれた礼を伝えると、兵士二人は挨拶を返してくれた。

 この地を治めるのは【アイシス】という女王らしい。宿屋で会った吟遊詩人が言っていた通り、旅人に対して友好的なようだ。

 アリアたちも後ろで頭を下げる。

 

 ……謎の砂嵐。

 別世界では一度も出遭ったことのない自然現象――、ラインハット領や、山奥の村でも嵐や大雨があった。アベルにそれを止める術はないが、いったい世界で何が起きているというのか……。

 

 気になったアベルは兵士たちに訊ねてみることにした。

 

 

「あの、今みたいな砂嵐はよくあるんですか?」

 

「災難だったな、旅人よ。この辺の砂嵐はだいたい夜が多いのだが……、つい最近、昼間でもよく起こるようになってな。旅人が城の近くにいる時はこうして保護させてもらっている。城の近くにいない者は建物の陰にでも隠れてやり過ごしていることだろう」

 

「そうなんですか……」

 

 

 質問に答えてくれたのは階段下、左側にいた兵士で、砂嵐が起こっている間は身動きが取れないとのこと。身体中どころか持ち物すべてが【砂】塗れになり、運が悪いと健康被害を被ることもあるという……。

 頻発する砂嵐に、テルパドールを後にした旅人が戻って来るケースも多く、流通もままならないのだとか。

 大変な時に来たなと憐れまれた。

 

 

「一度砂嵐が始まると静まるまでしばらくかかります。城の中は安全ですので、ゆっくりされていってください。城内見学もご自由にどうぞ」

 

 

 階段下、右側の兵士も話を聞いていたらしく、「砂嵐が静まれば城門は開きますから城から出られますよ」と笑顔を見せる。物腰が柔らかく、愛想の良い人だ。

 

 

「ありがとうございます。あっ、すみません、ついでで申し訳ないんですが、教会ってどこにあるか 教えてもらってもいいですか?」

 

「教会……ですか? 教会は城門を出て左手、歩廊の先です。一度外に出なければいけないので、砂嵐が発生している間の移動は危険ですよ。今はやめておいた方がよろしいでしょう」

 

「そうですか……」

 

 

 ――教会は砂嵐が去ってからじゃないと行けない……か。

 

 

 ついでに教会の場所を訊ねてみたが、残念なことに城外にあるらしい。

 アリアの様子が気になって目配せしてはみたものの、目が合うと彼女が柔和な顔で微笑み頷く。

 “あとでいいよ”、アリアの目はそう言っていた。

 いつもと変わらない妻の様子に、アベルは仕方なく僅かにはにかんで返す。

 

 砂嵐がなくならないと教会には行けないのだ、ならば先に城内を探検するのもいいだろう。

 

 

「……というわけで、どっちから行く?」

 

「ん~……」

 

 

 兵士たちと別れ、アベルたちは城内を自由に歩き回ることにした。

 

 城内に入ってからわかったことだが、この城は三階建てのようだ。

 二階に出入口がある造りで、兵士が警備する三階へ続く階段と、奥に下りの階段が見える。

 まずはここ、二階の各部屋を訪れてみよう――と、アベルは三階に続く階段前でアリアに左右の部屋を指差し訊ねる。

 

 

「じゃあ、入口に近い方から?」

 

「オッケー! じゃあ右の部屋から行ってみよう!」

 

 

 アリアが右手、城門近くにある扉を指差す。

 アベルは快諾し、部屋に向かった。

 




次回から城の中を練り歩きます。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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