ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回あらすじ>突然の砂嵐に城内へと避難したアベルたち。せっかくなので城の中を散策することにしました。

城内を練り歩きます!

では、本編どぞ。



第七百七十五話 城内を巡る ~図書室にて~

 

 扉を開けた先は本棚がそこかしこに並び、一目で図書室であることがわかる。

 図書室の中央には閲覧席、白いテーブルクロスが掛けられた丸いテーブルがあり、学者のようないで立ちの、紫のローブを纏った老人が【本】を読んでいた。

 

 

「わ~本棚がいっぱい! 面白い本あるかな~」

 

 

 アリアは瞳をキラキラと輝かせ本棚を見渡す。

 これまで見てきた本棚の数で、ここが一番多いのではなかろうか。テルパドールの図書室にはまだ見ぬ【本】があるとみた。

 

 なにせ この世界の娯楽は、カジノはあれど、そう多くはない。

 そもそもアリアにとってカジノとは働く場所で、自らは遊んだことがなく、興味も特になかった。

 【本】は前の世界でも読んでいたし、この世界でも手軽にできる娯楽の一つ。

 

 修道院の【本】は読み尽くしたから、珍しい【本】と出会えるのが楽しみだ――と、それは先にテーブルに座る老人に話を聞いてから。

 

 

「あるといいね、先にそこの人に話を聞いてから読もうか」

 

「そうだね」

 

 

 アベルの話にアリアは頷いた。

 

 

「こんにちは。旅の者なんですが、勇者にまつわるお話を聞かせてもらえませんか?」

 

 

 そういえば宿屋で会った吟遊詩人が、勇者にまつわる話を城で聞いたと言っていた気がする。

 もしかすると、目の前の老人が何か知っているかもしれない。

 

 思い出したアベルは早速勇者について訊ねた。

 

 

「私は伝説の勇者さまについて研究をしている者です。どうやら伝説の勇者さまは天空の血をひいていたようですな。しかし、その天空の血をひく勇者さまの家系がその後どうなったのか……。今となってはもはや知るすべもありません……」

 

 

 アベルの訊ねに老人が軽く会釈し、話しだす。

 やはり学者のようで、彼は手元にあった開かれた【本】の一文に指を添え、“ここに書かれている一文に……”と、伝説の勇者が天空の血をひいていることを教えてくれた。

 

 

「天空の血……!」

 

「ん?」

 

 

 学者の話にアベルは目を見開き、アリアに視線を移す。

 ……アリアは元天空人だ。アリアも勇者に関係したりするのだろうか。

 

 ふと疑問に思い彼女を見つめたが、目が合ったアリアはなぜかきょとん顔――。

 彼女の様子に疑問を持ちながら、伝説の勇者について教えてくれた学者にお礼を告げ、本棚の前へと移動した。

 

 途端アリアが「面白い本ないかな~」などと、小さく呟き【本棚】を物色、背表紙を指で追っている。

 

 

「……あの、アリア」

 

「ん? あ、勇者さまって、天空の血をひいてるんだね~。聞いてたよー(ってことは、Ⅳの勇者がそうなのかな……?)」

 

「らしい……けど。アリアってさ……」

 

 

 ――アリア、君は元は天空人だよね……?

 

 

 もしかするとアリアは勇者に関係しているのかもしれない。

 ……無関係とは思えない。

 

 だが、アリアは忘れているのでは?

 

 元々翼が生えていたことも忘れていたくらいだ、自分が元天空人であることも忘れているのだろう。

 彼女は自分に無頓着なところがあるから、十分あり得る。

 

 ドラクエⅣの勇者を思い出しながら 他人事のようにさらりと流すアリアに、アベルは彼女が元天空人であることを思い出させようと、話を続けた。

 

 

 ところが――。

 

 

「あ、私、もう翼ないからただの人間だよ? 勇者さまの家系じゃないとダメなんじゃないのかな? 私、野良天空人だったわけでしょ? 天空人の子なら誰でもってわけじゃないと思う。それに、勇者さまの子孫なら、翼なんて生えてないはずだし……」

 

「そ、そっか……。けど……もしかしたらって思って……(なんだ、忘れてたわけじゃなかったのか……)」

 

 

 翼を失ってしまえばただの人間でしょ、と言うアリアにアベルは納得がいくようないかないような……。

 

 ……だが一理ある。

 

 アリアには翼が生えていた。

 勇者に翼が生えていたなんて話は聞かないから、子孫も恐らく生えてはいないのだろう。

 伝説の勇者が家系に依存するのであれば、アリアはただの天空人で、勇者とは関係がないといえる。

 

 けれどどうにも引っ掛かる。

 新しい情報を得たにもかかわらず、結局雲を掴むような話のまま 変わらないのがもどかしい……。

 

 

「もしかしたら……?」

 

「うん……、今なんか掴めそうだったんだけど……もうちょっと手掛かりが欲しいかな」

 

「アベル……。勇者の子孫ってどこに行っちゃったんだろうね……」

 

 

 何かを掴めそうな気がして、アベルはもう少しこの城で情報を掴みたいと思った。

 ともあれ、次は各本棚で珍しい【本】探しだ。

 

 

「どれどれ、これを読んでみるか……」

 

 

 アベルは本棚を調べた!

 

 「モンスターだじゃれ全集」と書かれた【本】がある。

 アベルは手に取ってみた。

 

 

「“そんなこと、まだキメラには決められない。”」

 

「!!」

 

 

 アベルがゆっくりはっきり読み上げると、隣で【本】を覗き込むアリアが固まった。

 

 

「アリア……?」

 

「っ……っ……!」

 

 

 ……徐々にアリアの眉間に皺が刻まれていく。

 不快に思ったのだろうか、彼女が苦々しい顔で唇を噛んでいる。

 楽しんでもらえるよう受けを狙い、アベルなりに考えて真顔で言ってみたのがまずかったのかもしれない。

 

 

「ど、どうかした……?」

 

 

 心配になってアベルは訊ねる。

 

 

「……、ブフッ……ふふふっ。ダメ、ムリ。キメラは決められないだってっ! プフフフッ! メッキーが首ふるふるしてあたふた迷ってる姿を想像したらおっかしくって! それに、アベルの真顔もおっかし~のっ! なんで真顔で言ったの~?」

 

「え。あ……フフッ、アリア、笑いの沸点低すぎないかい?」

 

「え~、そうかなあ? ダジャレが大好きなだけだよ~。うふふふっ♡」

 

「ハハッ、そうなんだ? へ~、じゃあ今度アリアを笑わせるダジャレを考えてみるよ」

 

 

 アリアは笑いを堪えていただけだったようだ。

 あ~お腹痛い……なんて、腹を抱えて笑うアリアにアベルも釣られて笑う。目尻に涙が光って見えて、本気で笑っているのがわかった。

 

 そんなに面白いダジャレとは思えなかったが、アリアが面白いと思えたならそれでいい、いつか自作ダジャレで笑わせてやろう。

 アベルが考える中、二人の後ろでピエールとプックルは呆然とし、笑壺に入るアリアを見ていた。

 

 

 

 

 ……さて、お次は――。

 

 アベルは ダジャレを楽しみにしているねと告げるアリアに頷き、隣の本棚を探る。

 【砂漠の歩き方】という本を見つけ、読んでみた。

 

 

 “砂漠では暑さのあまり倒れてしまうことがあります。命を落とすこともありますから、水や日よけの帽子を忘れないようにしましょう”

 

 

「……うん! 水分、塩分、糖分、日よけは大事よね! まあここまで来てから教えられてもって感じだけど」

 

 

 アベルの手元の【本】を覗き込み、熱中症には気を付けようと早速アリアは水筒を傾け【水】を飲む。飲み終えると、アベルも飲んでとアリアの水筒を渡された。

 関節キスもいいな……、なんて思いながらアベルも水分を摂取する。

 アベルが【水】を飲んでいる間、ピエールとプックルにも水分を取らせているあたり、本当に世話好きな奥さんだなと思う。

 

 気が付くとすぐに実行に移すアリアの素直なところが、アベルは可愛くて仕方ない。

 

 

「帽子か……、僕はターバンを巻いているからいいけど、アリアは帽子がないもんな。……買う?」

 

「フードがあるから平気だよ?」

 

「ムッ。買ってあげたかったんだけど?」

 

「ありがとう! お気持ちだけいただくね♡」

 

 

 アリアにプレゼントしよう作戦は結婚後も失敗続きだ。彼女は物を欲しがらない。

 口を尖らせてみたが、笑顔で躱された。

 

 

「アリア~! なんで君、防具とか欲しがらないの? 欲しいものはないのかい?」

 

「帽子よりもお菓子が食べたいな~。約束のご当地菓子、楽しみ♡」

 

「……はあ……消え物ばっかり……て、あ。……わかったよ。あとで買いに行こうね」

 

 

 アベルは形に残る物を贈りたいのだが、アリアはいつも要らないと言う。遠慮しているのだとばかり思っていたが、最近それだけではないことがわかってきた。

 

 ……恐らく彼女は馬車に荷物が増えるのが嫌なのだ。

 

 キャビン内には旅の道具が色々と積まれている。

 アベルは整理整頓が苦手で、そっちは彼女任せ。いつも綺麗にしてくれているのだが、日を追うごとに物は増え続け、捨てることは滅多にない。

 

 一度彼女が「だんしゃり、だんしゃり」と言いながら、キャビン内の掃除をしているところを見たことがある。

 だが、アベルの物が減った様子はない。

 アリアが自身の持ち物を捨てているのだろう……。

 

 アリアに何か贈るなら、置く場所を確保してからの方が良さそうだ。

 その事実に辿り着いたアベルは“はいっ”と、手を差し出す。

 

 

「ふふふっ、アベル優しい~、だいすき~♡ 美味しかったら二つ買ってね!」

 

「ああもう、しょうがないなあ……♡ いくつでも買ってあげるよ」

 

 

 差し出した手を取り、アリアが腕に絡まってくる。

 柔らかい肉感と、好みの甘く優しい香りに、アベルの鼻の下が伸びた。

 

 

「ね、アベル、こっちの本は奇人列伝だって」

 

「奇人列伝……? なになに……、世界を代表する変わり者をご紹介……?」

 

 

 隣の本棚に気になる【本】を見つけ、アリアは指を差す。

 一番上の棚にあったため、背の低いアリアには届かなかった。

 

 ならばと、アベルが【奇人列伝】と書かれた【本】を手に取り開く。

 内容は――。

 

 

 “南東の島にメダル王なる人物あり。持っている宝と交換に【ちいさなメダル】を集めている。”

 

 “北東の小島に夢見る男あり。しかし、夢半ばにして死す。後を継ぐ者を求めている。”

 

 

 読んでみると、メダル王とゆうじいのことが書かれていた。

 メダル王に関しては【本】の内容通りで問題ないが、ゆうじいに関しては死後の望みが書かれており、違和感を覚える。

 たまたまそう書かれただけなのかもしれないが、まるで【奇人列伝】の著者が、死んだゆうじいの嘆きを直接聞いたかのような書き方だ。

 

 

「アリア、これ……」

 

「ん? アベルどうかした?」

 

 

 アベルはゆうじいのことが書かれた箇所を指先で示す。

 

 

「ゆうじいさん、博物館の前に立ってたから 独り言でも言ってたのかな?」

 

「どゆこと?」

 

「あ、いや……ゆうじいさんが死んだことが書かれていて、死んだ後の希望まで書かれているから、あの小島に直接見に行った人がいるのかな、と。この本結構古そうだから もしかしたらって思って」

 

「ん~……そういえば、ゆうじいさんのお墓が森の中にあったものね。埋葬してくれた人なのかも」

 

「なるほど……。ゆうじいさんの幽霊を見かけて、アリアみたいに幽霊嫌いだとしたら近付けなくて、けど屍を見つけて埋葬してくれたのかもしれないね」

 

「だとしたら優しい人ね」

 

 

 博物館を臨むことのできる森の中にあった ゆうじいの墓は、ニセおやぶんゴーストに掘り起こされ荒らされていた。

 ゆうじいは長い間、博物館で誰か来るのを待っていたが、生きている間は誰も来ず、死後にアベルと出会ったわけで、その間 誰とも会っていないらしい。

 ところが墓は存在しており、あの屍はゆうじいのものだということは確定済み。

 誰が埋めたのか……、【奇人列伝】を書いた著者が一番有力だ。

 

 当時どんな状況だったのか、アベルの想像上のものでしかないため不明だが、それでも ゆうじいの夢を汲み取り、【奇人列伝】に書き記してくれた著者は思いやりのある人物だといえる。

 

 ……真相は博物館を訪れた著者が、幽霊になったゆうじいを目撃し、自己の屍の側でブツブツと昼夜問わず独り、名産品語りをし続ける様子に、近付くと面倒そうで声を掛けなかった、だが野ざらしの屍は見て見ぬふりができずに埋葬をした――というもの。

 

 アベルたちが知ることはない。

 ゆうじい本人も名産品のことで頭がいっぱいのため、憶えていないだろう。贄にされていたゆうじいの屍は、アベルが再度埋葬したが、霊体のゆうじいはまったく興味を示さなかったくらいだ。

 

 とにかくゆうじいの夢が叶ってよかったとアベルは思った。

 

 

「他の本は~……」

 

 

 アリアが隣の本棚へと移動し、新しい著書はないかと調べている。

 アベルも残りの本棚をすべて調べてみたが、特に変わった【本】は見られなかった。

 




天空城の図書室の方が広そうだけど、テルパドールの図書室も結構広いよね。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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