どういうことなんだ、説明を求める!
では、本編どうぞっ。
「……で、どういうことなの?」
アベルはヘンリーの上に倒れこんだアリアを引き起こすと、下敷きになり、顔を真っ赤にしているヘンリーも起こしてやった。
そして、二人に訊ねる。
「…………っ、あ、アリアさんから言ってくれよ……」
何故か、アリアを
「アリアさんて……ふふっ」
ちょっと鼻先に唇が触れたくらいで初心だなぁ、とアリアは微笑む。
「っ、な、何だよっ!? …………はっ! ……っ……」
今度は向きになってアリアの顔を見るが、すぐに俯いてしまう。
耳まで赤くなっていた。
「ふふっ、別に?」
「アリアっ、早く教えて!」
優し気に目を細めるアリアの顔に、何故かアベルも向きになって問い詰める。
「んもぅ……アベルってば何向きになって……。今教えるよ。……えっとね、アベルが隣の部屋に行っている時のことなんだけど……」
アリアはアベルが不在の時のことを話し始めるのだった……。
◇
――アベルがヘンリーの部屋から隣の部屋に入って行った時のこと。
「くくくっ。あいつ、この下に階段があるなんて気付かないんだろうなぁ!」
ヘンリーは愉快そうに自分が座っていた椅子をずらし、床板を剥がす。
すると、そこには隠し階段が現れたのだった。
「なるほどね~、そういう仕掛けだったんだ」
「っ、誰だっ!?」
背後からアリアの声が聞こえ、ヘンリーは振り返る。
「お、お前は……! な……(……めちゃくちゃ可愛い子じゃないか!! というか……翼!? 天使か……!?)」
アリアが見えるのか、ヘンリーの頬がほんのりと赤く染まった。
アリアは後ろ手に手を組んで、そーっと隠し階段を覗き見ると、
「……あ、ひょっとして、私のこと見えてる?」
アリアは片手を軽く振って、ふわりと笑う。
ヘンリー王子に姿を見せてもいいって思っただけなんだけど、うまくいったみたい?
もし見えてるなら、コツを掴めばパパスさんやサンチョさんにも認識してもらえるかな……?
「っ、み、見えている! その綺麗な髪も、翼もなっ!」
「あら……。カワイイ……」
ヘンリーが怒鳴りつつも、照れ臭そうにアリアを指差し云うので、アリアはつい、口走ってしまった。
男の子に可愛いって言ったら、怒っちゃうかな?
「かっ、かわっ!!?(何だって!?)」
ヘンリーはアリアの言葉に目を見開く。
そ、そんなこと言われたの、初めて……。
オレ、可愛いのか……!?
可愛い子に可愛いって言われた……!!
ドキドキ。
ヘンリーの鼓動が速まる。
胸が締め付けられてしまうヘンリーだった。
「ね、ヘンリー王子。アベルはあなたのお友達になろうと思って、隣の部屋に行ったの」
「ふんっ、あいつは友達なんかじゃないやいっ! 子分になりたいっていうから、取りに行かせただけだ!」
アリアの言葉にヘンリーは腕を組んで怒る。
「そんなこと言って……。絵に描いてたじゃない」
「っ、はっ! な、何のことだっ!? そんなものは知らないなっ!」
アリアの指摘にヘンリーは白を切った。
「……ふぅん?」
アリアがテーブルに視線を移すと、ヘンリーは即座に気付いて、慌てて絵を裏返した。
ちらっと見えたが、描かれたヘンリーらしき人物とアベルらしき人物の目が弧を描いている。絵の中では既に仲良しらしい。
アベルらしき人物の足元にはご丁寧にプックルらしき生き物も描かれており、しっかり観察しているなとアリアは感心したのだった。
「っ、こ、これは違うんだからなっ!! これはアレだ。アレ!!」
アレ! と云いつつ、ヘンリーの口からは何も出て来ず……。
「ふ、ふんっ、あいつはオレの子分なんだ! 友達なんかじゃないぞ!」
「それ、いつも言ってるの? いつもそんなこと言ってたら、あなた一人になっちゃうよ?」
虚勢を張っているのなんてお見通しですよと、アリアは訊ねる。
「っ、何だよ、どうせオレはいつだって独りなんだよっ!!」
「……独りじゃないよ……。私はアベルのお友達だけど、あなたともお友達になりたいと思ってるんだけど?」
「なっ! お前はあいつの友達だったのか!?」
アリアの言葉にヘンリーは目を見開く。
「ん、そう。だから、あなたともお友達になれたらなって。どうかな、ヘンリー王子。私とお友達になってくれない? それと、アベルともお友達になろう、ね?」
「っ、……そんなこと言って、最初だけ良い顔して近づいてくるんだ……。どうせその内オレを仲間外れにするんだろ? ……これだから誰も信用できないんだ」
過去に誰かと何かあったのだろう(恐らくは王妃のことではあるが)、ヘンリーはアリアとアベルもその
どうせオレは嫌われもんだ。
父王にすら、最近は話し掛けて来ないくらいだからな!
王妃も初めは優しく接してきておいて、デールが生まれてから変わっちまって……。
だったら、初めっから優しくなんてすんなっての!
天使! どうせお前もオレを嫌うんだろ!?
そんな風に
「…………ふぅ。まぁ、そう思う気持ちもわからなくもないんだけど……。ヘンリー王子はどうして自分から嫌われようとするの? そんなことしたら余計自分が苦しくなるだけじゃない」
アベルと城内の人達の話を聞いて、ヘンリーの境遇は大体わかった。
だからひねくれちゃったのね。
よくある継母問題の気もするけれど、まだこんなに小さい子供なのに、独りぼっちでいる必要なんてないよね……。
アリアは悲し気に瞳を伏せる。
「っ!? べ、別にオレは……!(オレを心配してる……のか?)」
「……大丈夫だよ。あなたは独りじゃない。あなたには王様だって、弟だっているじゃない」
アリアは手を伸ばし、戸惑うヘンリーを抱きしめ、背中をトントンと安心させるように叩く。
「っ……!!?」
「……本当の独りぼっちは、私なんだから……」
この世界で生きていくことはもう受け入れている。
でも、私は独りぼっちだ……。
私は大人だから平気だけどね。とアリアは諦めたように自嘲気味に笑った。
「っ、こ、こんなことされたらオレは……!!」
バッと、ヘンリーはアリアを剥がし、跪いて彼女の手を取る。
「……ん?」
ちゅ。
と、ヘンリーはアリアの手の甲に口付けを落とした。
「アリアっ!?」
アベルの声と共に隣の部屋の扉が勢いよく開く。
…………というわけだったらしい。
ヘンリーの境遇可哀想問題。
母親が死ぬと(居なくてもだけど)人生ハードモードになるっていう……。
おかーちゃーん! うわぁああああんっ!!
泣いてる子が居たら、抱きしめてやりたくなってしまうわけです。
子供が大きくなるまで、せめて成人するまでは死んだらあかんのやなと。
んなこと言うても死ぬ時は死んじゃうし、死なない時は死なないし。
生きよ……。
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読んでいただきありがとうございましたっ!