ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回あらすじ>食堂で見つけたツボにインパスを掛けると赤く光っていました。

アベルの過保護が進みます。

では、本編どぞー。



第七百七十七話 城内を巡る ~食堂にて過保護が進む~

 

「赤……ってことは、魔物か……」

 

「うん……、どうするの?」

 

「魔物を城の中に置いてはおけない。倒そう」

 

「……そうくると思った。私 久しぶりの戦闘がんばるね……!」

 

 

 鑑定呪文(【インパス】)は唱えると中身に反応し、色で教えてくれる便利な呪文。

 アリアは腰に下げた【グリンガムのムチ】を手に構える。

 

 

「ああ、事前に知れてよかった。アリアはプックルの後ろへ」

 

「はい……!」

 

 

 隊列を変え、アリアを後ろへ。

 【ツボ】の魔物が【ひとくいばこ】ならば たいしたことはないが、もし山奥の村で出遭った【あくまのツボ】であれば【痛恨の一撃】は痛い。

 一撃でアリアを死なせてしまう可能性を考え、隊列は重要だ。

 

 ……アリアがプックルの後ろに付くと、ピエールとプックルも【ツボ】を囲むようにして戦闘態勢に入った。

 

 

「よしっ、じゃあ割るよ」

 

 

 メンバー全員に目配せをしてから、アベルは【ツボ】に手を掛ける。

 こっそり城に住みつく悪い魔物はお仕置きだ。

 戦闘前に少しでもダメージを与えられたらいいなと願いつつ、思い切り床に叩き付けてやった。

 

 “ガシャンッ!”

 

 【ツボ】の割れる音と共に、中身が飛び出してくる。

 

 

「っ……! そうはいくか!(悪魔の壺か!)」

 

 

 先ほどアベルたちの会話を聞いていたのだろう、不意打ちのつもりなのか、中身……【あくまのツボ】は、鋭い目付きでアベルに襲い掛かった。

 アベルは【パパスのつるぎ】でその攻撃を往なす。

 

 【あくまのツボ】はバランスを崩し、床に着地。すぐに身体を反転させ再び攻撃に転じようとした。

 

 

「アリア、ルカニを! ピエール、プックル! 物理攻撃!」

 

 

 アベルの指示によって、アリアは防御力低下呪文(【ルカニ】)を二度唱え、防御力を低下させる。

 と、そこへピエールとプックルがそれぞれ【はじゃのつるぎ】と【はがねのキバ】でもって攻撃を叩き込んだ。

 【あくまのツボ】には呪文攻撃はあまり効かないため、物理攻撃に限る。

 

 

「人間の住まいにこっそり住むなっ!」

 

 

 最後にアベルが【パパスのつるぎ】を高く振り上げ、力任せに【あくまのツボ】目掛けて真っ直ぐ下ろした。

 【パパスのつるぎ】の刃が、【あくまのツボ】の急所(ツボ)を捉えたらしい。【会心の一撃】が決まり、【あくまのツボ】は得意の即死呪文(【ザキ】)を唱える暇もないままに消えてゆく……。

 【あくまのツボ】の姿が消えると、辺りにゴールドが散らばり、【ちいさなメダル】が転がった。

 

 袋叩きのような形になってしまったが、素早さ重視――。

 

 ……アリアが「攻撃するのに○ボタン連打しちゃうよね!」などと、サムズアップでアベルにはわからないことを言っていた。

 

 

「ふう……」

 

 

 アベルは額に浮いた汗を拭う。

 ……アリアに怪我がなくてよかった。

 

 ちらっと彼女の様子を窺うと“ぎゅっ”と抱きついてくる。

 

 

「やった~! アベル格好いい~♡ 最後の一撃すごかったよ~!」

 

「え? あっ、そ、そう? あ、アリアっ、怪我はなかったかい?」

 

 

 ――アリアっ、お、おっぱいが僕で潰れ……♡♡

 

 

 抱きとめた彼女を見下ろすと、アリアの胸がアベル、自らの身体に押し付けられ潰れた。

 柔らかい肉に包まれ、鼻の下が伸びる。

 

 恥ずかしがり屋のくせに、人前でもたまに、こうして抱きついてくる妻が愛おしい。

 

 

「うんっ、アベルたちのおかげで無傷だよ~☆ ありがとっ」

 

 

 アリアが弾けるような明るい笑顔で安心させてくれるから、アベルはほっと一息吐いた。

 

 

「よかった……。大丈夫だとは思ってたけど、万が一ってこともある。アリアが怪我をしたらって心配してたんだ」

 

「大丈夫だよ、私 そこまでひ弱じゃないよ? HP101あるし! 多少のケガは旅に付き物でしょ?」

 

「だからまだ101でしょって……。痛恨の一撃を喰らったら君、一発アウトなんだよ? 妊娠だってして……」

 

「死なないよー。それに妊娠してるかもわかんないし」

 

 

 アベルが喋っている間にアリアは離れてしまい、落ちていた【ちいさなメダル】を拾う。

 ついでにゴールドも拾い集めて、必死に語り掛けるアベルの気持ちなど、お構いなしだ。

 

 

「アリア~!(人の気も知らないで……!)」

 

 

 ……もし妊娠していたら、どうするつもりなのだろう。

 

 戦いはアベル、自分がすればいい。仲魔たちもいる。

 できれば彼女には、胎の子のために安全な場所で楽しく過ごしていて欲しいというのに。

 過保護だとアリアは言うが、アベルからすればまったく過保護ではないし、もし過保護だとして、過保護の何が悪いとさえ思う。

 

 大切な家族である妻を守りたいというのは、夫として当然の感情で、アリアに蘇生呪文が効くか効かないか、試してみないとわからないということは、試すことができないのと同義。

 

 ……そんな状況に陥らせることなどできようものか。

 彼女が常に元気で過ごしてくれていることが 大事だというのに、なぜこうも伝わらないのだろう……。

 

 アベルは歯痒さに眉を寄せた。

 

 

「はい、小さなメダル。……アベルを残して死んだりしないから大丈夫だよ、約束する。でも、足手纏いになるのは申し訳ないから、基本的に町中以外は馬車にいるね。アベルがいいよって言ったときだけ出るよ。ね? それならいいよね?」

 

 

 アリアはゴールドを拾い終えると、アベルの手を取り、拾い集めたゴールドと【ちいさなメダル】を手の平にのせる。

 そして顔を上げ、しっかり目を合わせると、指切りを催促するように小指を立てて差し出した。

 

 ……アベルを残して死んだりしない。

 町中と、アベルの許可が出ない限りは馬車内にいる――。

 

 珍しくはっきり宣言する彼女に、ここまで言ってくれるのなら信用できる気がする……。

 首を傾げながら指切りを待つアリアが、アベル、自らのことをきちんと理解できていることがわかり、さっきまでの歯痒さが消えていく。

 

 アベルの寄せた眉は崩れ、今度は目を瞬かせた。

 

 

「……あ、うん。そうしてくれると僕も安心できて嬉しい」

 

「ふふふっ、久しぶりの戦闘、緊張した~」

 

「そっか……」

 

 

 やっと気持ちが通じたのだと思ったアベルは、指切りしながらアリアの後れ毛を耳に掛けてやり、目を細める。

 彼女は自分で言った通り、久しぶりの戦闘で緊張したのだろう、明るく笑ってはいるが、手が僅かに震えていた。

 【あくまのツボ】の【痛恨の一撃】を受ければ、アリアは即死を免れない。本当は怖かったのだろうか。

 

 城内に魔物がいたため 即座に対応したとはいえ、隊列を変えることしかしないまま、アリアを戦闘に出したのは軽率だったかもしれない。

 今後は一層気を付けてやった方がいいのでは……。

 

 

「ね、アベル」

 

「ん?」

 

「アベルが安全だっていう地域だけでいいんだけど、たまには戦闘に参加させて欲しいの」

 

「それは……」

 

 

 ――あれ? まだわかってくれてないのかな……?

 

 

 急に戦闘に参加させて欲しいと告げるアリアに、アベルの目は丸くなる。

 先ほど理解したよねと、ツッコんだ方がいいのか、悪いのか。

 

 

「あっ、妊娠してなかったらね! さすがに赤ちゃんがお腹にいたら戦おうとは思わないよ? ただね……ほら、久しぶりの戦闘だったからか、手が震えちゃって……。慣れておかないと、とっさに動けないんじゃないかなって思って。この先、何があるのかわからないし……、訓練みたいな……?」

 

「……そうか……、別に僕はアリアが戦闘に、一切参加しなくても構わないんだけど……。でも、アリアの言う通り、咄嗟に動けなくなるのは怖いね」

 

「うん、訓練って大事だよね?」

 

「あ、さっき僕が言っ……、まあ……そうだね……。うーん……」

 

 

 “何かあった時のために訓練って大事なんだよ”

 

 

 ……訓練所を見学した際、自らが言った言葉が重くのしかかる。

 

 アリアが戦闘に参加したいのはわかっているし、訓練が大事だというのは確か。彼女の希望を聞いて、戦闘に参加させてやりたい気持ちが、アベルにもないわけではない。

 だがアリアを戦闘に参加させるのは、正直なところ あまりしたくないのが本音である。

 クリエたちとの共闘は、クリエの保護が完璧で、アリアが危険に晒されることはなかったが、あれほどの守りをアベル自身で始終できるかと言えば、難しいだろう。

 ……ビルダーの二人は強さの次元が違うのだ。

 

 それでも窮地になど陥らないよう配慮し、アリアを守るつもりでいるアベルは、今回はうっかりしたが、せめて彼女に蘇生呪文が効くという確証を得てから戦闘に参加させたい。

 例えレベル的に余裕のある地域だとしても、そこの魔物が以前の強さのままであるかは、しばらく様子をみてみないとわからないのだから。

 ここは少々過保護だなと、アベル自身もそう思うのだが、アリアが魔物に狙われやすいという特性を持つだけに、心配でしょうがない。

 

 ……例え【スライム】八匹の群れであっても油断などできようものか――。

 

 一瞬思ったが、さすがに【スライム】の群れは大丈夫だとハッと我に返る。

 

 

 (確かに過保護過ぎかもしれない……。)

 

 

 アリアが大切になり過ぎて、彼女の強さを失念していたようだ。

 愛する妻は力は弱いとはいえ、あらゆる呪文のエキスパート且つ、ムチの使い手。

 そして、本人に自覚があるのかは不明だが、実はおねだり上手だったりする。

 

 胸の前で両手拳を握り、期待の眼差しを上目遣いで(あざとく)向けてくるアリアを見下ろし、アベルは口を歪めた。

 

 

「……う~ん……(くっ、瞳が綺麗過ぎる……カワイイ……、なんでも聞いてやりたくなる……!)」

 

「ダメ?」

 

「全然駄目じゃないよ(あ)」

 

 

 追い打ちを掛けるように首を傾げられては、アベルになすすべはない。

 サムズアップで頷いてしまった。

 

 

「あ、やったあっ♪」

 

「っ、しまった! あ~も~、アリアずるい! なんで今甘えた声出した!?」

 

 

 アベルの許諾を受けたアリアが両手拳をぐっと下に引いて、アベルから離れる。

 彼女にのせられてしまったアベルは、悔しさに歯噛みし抗議した。

 

 

「えぇ~? なんのことかな~?」

 

 

 ……アリアは腰に手を当て、勝利の笑みを浮かべている。

 どうやら今回のあざとい行動は、故意だったようだ。

 

 

「アリアってあざといよねー!(くぅっ! ドヤ顔まで可愛いっ!!)」

 

「アベルって優しいよね~♡」

 

 

 アベルが言ってやれば、アリアも笑顔で応酬してくる。

 妻の笑顔が大好きなアベルは、どうあっても勝てそうにない。

 

 

「……っ、どうせ妊娠してるし、当分無理だからいいけどね」

 

 

 負け惜しみのように口を尖らせた。

 




アリアはあざとい。
恥ずかしいくせにやったりする。

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