ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回あらすじ>勇者の墓を案内してくれるという女王の足は、めちゃくちゃ速かった。

アリアの母?

では、本編どぞ!



第七百八十一話 アリアの母?

 

「「早っ!」」

 

 

 夫婦二人の声が重なる。

 

 

「っ、アベル、今、女王さま歩きだったよね!?(競歩かな?)」

 

「だね……、お、追いかけてみる?(もう見えないけど……)」

 

「追いかけなきゃ!」

 

「うん! 行こう!」

 

 

 アベルはアリアの手を取り歩き出す。

 女王は既に飛び石の通路を渡り、上り階段に消えた。走って追いかけたいところだが、アリアを思って歩くに留めた。

 

 

「女王さま、マザーより早いかも……」

 

「確かに俊足だね」

 

「……あ、あそこ! 女王さまかな?」

 

 

 階段を上がり城門へ向かうと、アベルたちを迎え入れてくれた兵士と話す女王の姿が見えてくる。

 ……足止めをされているようだ。

 

 足止めされているのなら、ゆっくり歩いて行ってもいいだろう。

 

 

「ね、アベル、女王さまってお綺麗だった?」

 

「ん?」

 

「私、アベルの後ろでよく見えなかったから。後ろ姿といい匂いしかわからなかったの」

 

 

 二人並んで歩きながら、アリアが女王の姿を訊ねてくる。

 アベルの後ろでよく見えなかった……、見えていたらアリアは――。

 

 

「あ、うーん。僕はアリアが好きだよ」

 

 

 “女王は確かに美人だが、目を奪われたりはしてないよ――”、そう伝えたいが、アリアに伝えるのは多分間違い。

 美人だよと言えば、喜ぶのが目に見えている。

 

 焼き餅を焼くどころか美女に惚れてしまうような、浮気な妻には教えてやらない。

 

 

「っ? 急になに言ってるの?」

 

「……僕のためにも、アリアは僕の後ろに隠れてた方がいいと思うんだ」

 

「へ?(ドユコト?)」

 

 

 僕のためにも後ろで控えていて欲しい……、そんなアベルは、わけもわからず首を傾げるアリアを背後に隠した。

 

 

「私も綺麗な女王さまが見たい~!」

 

「あとでね!」

 

「アベルのケチ~」

 

 

 城門に辿り着くまで、アリアがアベルの背後左右から、どうにか女王を見ようと顔を出そうとするが、アベルも負けじと身を捩って邪魔をする。

 ……妙な動きをしてしまった。

 それでもアベルに言われた通り、アリアは前に出てこようとはしない。

 そんなところが可愛く思え、アベルの表情は綻んでいた。

 

 

「ああ、追いつかれましたね。砂嵐が発生中だったのを失念していました。砂嵐が静まったら案内しましょう。私は一度下に戻ります」

 

 

 城門前で兵士と話をしていた女王が、追いついたアベルたちに気付き、話しかけて来る。

 まだ砂嵐は過ぎ去っていないようだ。

 

 女王は一旦、下の庭園に戻るらしい。

 再び素早い動きで歩き出し、ちらと横目ですれ違うアベルたちを見やる。

 

 ……そこで女王は、はっと足を止めた。

 

 

「……あなたは?」

 

 

 アリアに言っているのだろう。

 女王がアリアの手を取り、柔らかい笑みを浮かべる。

 

 

「え?(ほわぁあああ~♡ キレーなお姉さ~ん♡♡)」

 

「あ゛(しまった!!)」

 

 

 嫌な予感がしてアベルは振り返った。

 すぐ後ろのアリアを見ると、瞳にハートマークが浮かんでいるではないか……。

 その一方で女王の瞳には涙が滲み、声を詰まらせるようにゆっくりと言葉を紡ぐ。

 

 

「……ジュ、……メリア……さん?」

 

「ほえ? じゅめりあ?(誰?)」

 

「……?」

 

 

 ――ジュメリア……?

 

 

 【ジュメリア】……。

 初めて聞く名前にアリアもアベルも目を瞬かせた。

 ……いったい誰なのだろう。

 

 アリアを見て名前を告げたとなると、一つだけアベルには心当たりがあった。

 

 

 (もしかして……アリアの……?)

 

 

 アベルが答えを導く中、女王がアリアを凝視しながらぶつぶつと呟く。

 

 

「いえ、そんなはずは……でもあまりにも……」

 

「あ、あの……女王さま……?」

 

「……ついて来て下さい」

 

「あっ……!」

 

 

 戸惑うアリアを、女王は手を引いて歩き出した。

 少し足が速いが先ほどよりはましだ、アリアなら問題ないだろう。

 

 

「って早っ! ピエール、プックル行こう!」

 

 

 行く先は下の階――、庭園だ。

 二人が階段を下って行くのが見える。

 

 このままアリアを拐われてはたまったものではない。

 出遅れたアベルは慌てて走り出す。

 

 

「主殿、いったい何が起こっているのでしょうか」

 

「わからない。けど、女王はもしかしたら……」

 

「……アリア嬢の、ご母堂を知っておられる……?」

 

 

 ピエールもピンときたらしく、アベルの導き出した答えと同じ答えを口にした。

 アリアにそっくりのアリアの母親。名前は知らなかったが、もし女王の言う“ジュメリア”という人物がそうであるなら、アリアの過去を一つ見つけたことになる。

 

 ……アベルたちは庭園に続く階段を下り、女王がいたテーブルに向かった。

 

 

「アリア!」

 

「アベル」

 

 

 女王のテーブルにやって来ると、アリアが女王と隣り同士で席に着き、親密そうに手を握り合っている。

 アベルがやって来たことに気付いたアリアは、顔だけ向けた。

 

 

「……どういう状況?」

 

「えっと……」

 

 

 訊ねてみたが、アリアはまだ現状を把握できていないようで、にっこりとはにかみ首を傾げる。

 ……女王はアリアの手を握ったまま頭を下げていた。

 

 

「……あなたはそちらにお座りください」

 

「え? あ、はい」

 

 

 ふと女王が顔を上げ、アベルにテーブルの向かい側、一番離れた席に座るようにと促してくる。

 

 

 ――アリアは女王の隣なのに、なぜ、僕は一人だけ離れた席へ?

 

 

 アベルは少々不満を持ちながらも、アリアの過去がわかるかもしれないと思い、渋々席に着いた。

 ここは女王の話を静かに聞くのがいい。ひとり離れた席で、二人の会話に耳を傾ける。

 

 

「……あの、女王さま……、私、ジュメリアさんて方、存じ上げないのですが……」

 

「……あなたはジュメリアさんの娘ではありませんか?」

 

「えっと……、わ、わからないです……。私、小さい頃の記憶がないので、母親の名前も知らないんです。あっ、顔はなんとなくわかるのですが……」

 

 

 女王が手を握ったまま アリアを真っ直ぐに見据えるものだから、アリアの白い頬はほんのりと赤みを帯びて、緊張しているのか、声もなんだかよそ行きのように大人しめだ。

 

 ……アリアにアベルと出会う以前の記憶はない。

 母親に関して憶えているのは、夢で見た天使の姿だけ……。

 

 アリア自らにそっくりな女性がいたとして、他人の空似ということもある。

 かつて翼を持っていたということを、アリアはアベルとビアンカ、そしてヘンリーという、ともに幼少期を過ごした人間以外に教えたことはない(仲魔たちにもはっきりと話したことはないが、たまに会話中に出たりするので、理解はされている)。

 

 天空人は非常に珍しい種族。

 下手に話せば面倒事も多いだろうと、過去に翼を失っていることもあり、特に話題に出したことはなかった。

 “翼が生えている”とでも決定的なことを言われない限り、女王に自分の事情を話していいものか……、警戒心の強いアリアは測りかねているらしい。

 

 ……女王から注がれる視線を何度か気まずそうに外していた。

 

 

「……そうですか……。では、ジュメリアさんの特徴をお話します。その特徴が一致していれば、あなたが彼女の娘であると確信が持てます」

 

「特徴……?」

 

「……彼女にはそう……、背に翼が生えていました。恐らく天空人かと思われます。あなた、翼は……?」

 

「っ!? わ、私には翼がありませんよ……?」

 

 

 アリアから目を離さず、じっと見つめながら話す女王は、最早確信しているように見える。

 核心に触れられたアリアの声が上擦り、苦し紛れにアベルにヘルプの視線を送った。頬にたらり。汗が滴り、いつもの笑顔を取り繕うが、かなりぎこちない。

 

 ……これではバレバレではなかろうか。

 

 

「……(……アリア、美人に嘘吐けないもんな~)」

 

 

 女王になら話しても別に構わないのでは……? もうバレてるようだし――と、アベルはいつの間にか出されていたお茶を飲みつつ聞いていたが、カップをソーサーに戻し、薄っすらはにかむ。

 そんなアベルの反応に、アリアは瞬きを繰り返した。

 

 ……“え? いいの?”という顔だ。

 

 アイシス女王に特に不審な点は見られないし、彼女とは恐らく別世界でも会ったことがあるのだろう、なんとなく既視感覚がある。

 それに、謎の砂嵐の発生はあれど、ラインハットの時のような不穏な空気もテルパドールには見受けられない。

 この国には魔族の息は掛かっていないように思える。

 

 ならばアリアの事情を話すことは、アベル的に全く問題はないわけで。

 むしろ自分の旅に付き合ってもらっている最中に、妻の過去がわかるなら万々歳である。

 

 

「そうですか……、もしかしたらと思ったのですが 人違いでしたか。いえ……これだけ似ているのです、人違いとは思えません」

 

 

 アリアの誤魔化しは効かなかったようで、女王は艶っぽく微笑んでみせた。

 

 

「……は、ぃ……女王さま……♡」

 

 

 麗しい女王の笑みに、アリアの瞳にハートマークが宿る。

 ……こうなってしまっては、アリアの攻略は容易い。

 

 アベルの口から「ほら、アリアってチョロい……」と小さく不満が零れ落ちた。

 




アリアは美女の言いなり。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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