ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回あらすじ>アリアにそっくりな女性、ジュメリア。アイシス女王は彼女のことを知っているらしい。アリアの母親なのだろうか……。

天使と剣士……、です!

では、本編どぞ!



第七百八十二話 天使と剣士

 

「あなたのお名前を聞かせていただけますか?」

 

「あ、アリア……です、女王さま♡」

 

「ふふ。アリア……いいお名前ですね。アリア、あなたに昔話をしてもいいかしら」

 

「え? あ、はい……♡」

 

 

 女王はアリアに問いただすのを止めたらしい。

 昔話をするからと、話す前にお茶を一口口に含んでから、話し出す。

 

 

「……昔、私はあなたにそっくりな天使、ジュメリアさんとお会いしたことがあります」

 

「「!!」」

 

 

 アベルとアリアは衝撃に目を見開いた。

 

 

「……もう二十年以上前の話になります。当時も私は女王の座に就いていましたが、事情があり、幼い姿をしていました。そんなある日、王位を簒奪せんとする勢力に拐かされ、広い砂漠に放置されたのです。簒奪者たちは、私のあまりの愛らしさに殺すことはできなかったのでしょうね。死出への餞別でしょうか、犯人の内、誰かが水の入った水筒だけは置いていってくれました」

 

「……(自分で可愛いとか言っちゃうんだ……)」

 

「……(女王さまの幼い頃……可愛かったんだろうなあ……)」

 

 

 過去誘拐されたなどという、女王の話に気になる点はいくつかあれど、今気になったのはそこではない。

 注目したのは、幼少期の自らを愛らしいと自画自賛する女王の様子だ。

 “私のあまりの愛らしさに――”の発言部分に、女王の表情はうっとりと自己陶酔したよう……。アベルとアリアは黙り込む。

 

 

「……コホン。城の位置はわかっていたので、私は戻るためにすぐに移動を始めました。ですが砂漠には魔物も多く、昼は暑く、夜は寒い、時折砂嵐もある。魔物はどうにかなるとして、暑さ寒さと砂嵐、そして一番堪えたのが空腹でした。……三日目に水が底を尽き、私は砂漠に倒れました。倒れた私が再び目を開けた時、そこにいたのが……」

 

「ジュメリアさん……?」

 

 

 ……黙ったままのアリアの代わりに訊ねたのはアベルだった。

 

 

「ええ。目覚めたのは夜でした。私が目を覚ますと、目の前には焚き火と、隣にはアリア……、あなたにそっくりなジュメリアさんが大きな翼で温めてくれていたのです」

 

 

 女王はアリアに優しい視線を送る。

 アリアを通してアリアの母(ジュメリア)を見ているようだ。

 

 

「……、ジュメリアさんは一人だったんですか?」

 

「いいえ。焚き火の向こう側には、背の高い男性がいました」

 

「男性?」

 

「はい。長い銀の髪の、美しい男性剣士でした」

 

「銀髪の男……!? ふ、二人は恋人か夫婦だったんですか?」

 

 

 女王とアベルの会話がしばし続き、アリアはただ黙って二人の話を聞いている。

 ……アベルはアリアが訊きたいであろうことを訊ねた。

 自分の妻が何者であるか、少しでも多くのヒントを集めたかったのだ。

 

 

「いえ……、訊いてはみましたが、二人は恋人でも夫婦でもなく、契約関係なのだと仰っていましたね」

 

 

 背の高い長い銀髪の男とは、見はらしの塔で見た、前世のアリアの兄に似ているという人物のことだろうか。

 あの時の男は別人であるが、元となった人物の可能性はあるかもしれない。

 

 だが、契約関係とはいったい……。

 

 

「契約関係……?」

 

「ジュメリアさんを家に無事届けるまで、護衛を買って出てくれたそうです」

 

「家って……いったいどこに……?」

 

「詳しくは知りません。教えてもらえませんでした。ですが、天界とは違うようでしたよ」

 

 

 ジュメリア……、アリアの母は家に帰る途中だったということだが、二人は天界を目指していたわけではなかった。

 この世界のどこかに自宅があるということなのか……。

 

 女王は「お二人は魔族に追われている身だそうで、二人とも私を守りながら砂漠を行き、テルパドールに送り届けてくれた後、すぐに旅立ってしまいました」と続け、城に招待したかったが断られたらしい。

 

 特定の魔族に追われていたのかはともかく、魔族は天空人を憎んでいるから、襲ってくるのは理解できる。

 追われる身の二人が城に滞在し、魔族を寄せ付けてはと気を遣ったのかもしれない。

 修道院で聞いたアリアの母の記憶は、身体が弱い人で顔色が悪かったと聞いている。女王の話を聞くに、この頃は健康だったのだろう。

 

 

「……あの、男の人の名前は……」

 

 

 これまでずっと黙って聞いていたアリアがようやく口を開く。

 

 

「レイさんと仰っていました。なんでも記憶を失くされて、ご自分の名前も誰であるかも思い出せないとのことで、ジュメリアさんが付けたのだと。無口でしたが、とても頼もしい美丈夫でしたよ」

 

 

 ……二十年以上前に出逢った男の姿を思い浮かべる女王の頬は、ほんのりと赤く色付いていた。

 

 【レイ】……というのは仮で付けた名前らしい。

 記憶喪失の、男。

 

 ここでも記憶喪失――。

 もしアリアの父だとしたら、アリアの記憶喪失は遺伝……、なわけはない。

 

 

「レイ……」

 

「アリア……、聞き覚えはある?」

 

「……ううん、全く……」

 

 

 レイという名は、聞き覚えがないようだ。

 ……アリアは眉間に皺を寄せ首を傾げている。

 

 

「アリアの父親じゃないってことか……」

 

「お父さん……? だって二人は契約関係だったんでしょ? 違うんじゃ……」

 

「うーん、アリアの関係者っぽいから、もしかしたらって思ったんだけど」

 

 

 二十年以上前ならば、アリアはまだ生まれていない。

 女王の話で判ったことは、ジュメリアはアリアの母親であることと、レイという剣士がいたということ。

 レイがアリアの父親の可能性はあるが、ただの知り合いということも考えられる。

 

 

「レイさんは人間のようでしたよ」

 

「え? 人間のよう……?」

 

「説明が上手くできないのですが……、少し……、特殊な感じもしましたね。そこが魅力的というか……」

 

「み、魅力的……?」

 

 

 突然魅力的と語る女王にアベルは首を傾げる。

 当時の女王アイシスは、淡い恋心でも抱いていたのだろうか――。

 

 ……その答えはすぐにわかった。

 

 

「ジュメリアさんとレイさんは、互いに協力し合う関係ではありましたが、お二人に甘い雰囲気は全くありませんでした! ないったらなかった!」

 

 

 これまで落ち着いた話し方だったというのに、急に語気を強め言い切るその姿――。

 アベルが思った通り、現在進行形で恋心を抱いているように見える。

 

 

「あ、はい……」

 

 

 ……素直に肯定しておいた。

 

 

「というわけで、アリア。あなたはジュメリアさんの娘さんですね?」

 

「た、たぶん……?」

 

「うふふ。ジュメリアさんには大変お世話になりました。彼女は命の恩人です。彼女の代わりにあなたにお礼をしたいのです」

 

「そんな、お礼なんて……。私、何もしてないですし……(アイシスさま……♡)」

 

 

 アリアはジュメリアの娘だと認めたわけではないのだが、女王は有無を言わせない美しい笑顔を見せて、アリアの手を握る。

 美麗且つ、妖艶。そんな風に微笑まれては、アリアに拒否などできるわけがない。頬をぽっと赤らめ、照れてモジモジし始めてしまった。

 

 

「……(アリア、チョロい……)」

 

 

 アベルが唇を噛み締める。

 そんな時――。

 

 何かお礼を……と、アリアの手を握る女王の元へ、上の階から兵士がやって来た。

 

 

「失礼します! 女王さま、砂嵐が静まりました」

 

「あら、ありがとう。わかりました。では、勇者さまのお墓に参りましょうか? ついて来て下さい」

 

「あ、はい」

 

 

 上の階からやって来た兵士の連絡を受けて、女王が立ち上がる。

 アリアの母親の話ですっかり忘れていたが、そういえば勇者の墓を見るために、砂嵐が静まるまで待っていたのだった。

 女王はアベルたちを再び勇者の墓に案内してくれるらしい。

 

 ……アベルの返事を聞くや否や、先ほど見た俊足であっという間にテーブルから消えた。

 

 

「「早ッ!」」

 

 

 アベルとアリアは同時に声を上げ、席を立つ。

 置いて行かれないようにとあとを追うが、既に女王の姿は庭園にはない。

 

 

「早いなあ……」

 

「女王さま、サラマンダーより、ずっとはやい!!」

 

「え? サラマンダー?? なに? あっ、アリア!?」

 

 

 アベルがアリアの言葉を理解するより先に、彼女は一目散に女王を追いかけて行った。

 

 

「え、なになに? どういうこと? ちょっ、アリアぁっ!? 走っちゃ駄目だって!!」

 

 

 ――走っちゃいけないのに、なんで今、走って行った?

 

 

 女王に誘導されるように走り出したアリアに、アベルは嫌な予感を覚える。

 なぜだかわからないが、急いで追いかけた方がよさそうな気がした。

 

 

「ピエール、プックル、先に行くよ! 食べ終わったらついて来て!」

 

 

 ピエールたちに言い残し、アベルもアリアを追いかける。

 アベルとアリア同様、ピエールとプックルにもお茶と菓子が出されており、二匹(ふたり)+アンドレはまったりしていたのだが、急遽お開きに。

 ピエールたちは慌てて菓子を頬張り、アベルを追って走り出した。

 

 

 そして、ピエールたちが城門にやって来ると……。

 




いつものことだけど、わかる人にはわかるセリフをぶっこんでおりますw
知ってる人いるかな。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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