ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回あらすじ>夜のテルパドールに突如現れた人だかり。その先では夜店が出ていて……。

何が売られてたんですかねw

では、本編どぞー。



第七百八十五話 夜店で売られていたモノ

 

「クリエちゃん!?」

 

 

 アベルの目の前には先日別れたクリエが、赤い【じゅうたん】を敷き、【カウンターテーブル】の向こうであぐらを掻いて座っていた。

 城の壁には勝手に取り付けたであろう、【えっちなライト】のピンク色の灯りが、ぼんやりと夜店を照らしている。

 

 

「あ! アベルお兄さんだー! やっほー! こんばんは~」

 

 

 アベルに気付いたクリエは、片手を振って明るく笑ってみせた。

 

 

「こんばんは……って、なんでクリエちゃんが?」

 

「路銀稼ぎだよー。ちょうど最後の一冊! 本人に売るのもなんだけど、よかったら見てってよ」

 

 

 クリエが【カウンターテーブル】に置いてあった、最後の一冊らしき【本】を手にし、ほいっと、アベルに手渡す。

 受け取ったアベルは手元にやってきた【本】を見下ろした。

 

 

「見てって、って……、本だったのか……、すごい人気みたいだね……――……って……(こ、これはっ!?)」

 

 

 表紙は至ってシンプル、タイトルには“旅~”とあったから、旅シリーズの新刊なのだろう。

 他にも色々書かれていたが、特にしっかり読むことはせず、アベルは早速表紙を捲った。

 しかし、表紙をぺらりと一枚捲ると一転する。

 

 内表紙に描かれていたのは、見覚えのある女性の姿――。

 しかも、その女性はエプロンを身に付けているにも関わらず、大きな胸が惜しげもなく晒されているという描写。

 表情も切なげで、肌には汗という効果まで描かれている。

 

 どう考えても“夜シリーズ”……、つまりは【エッチなほん】――。

 思い出したアベルは表紙にページを戻し、タイトルを確認した。

 

 

「……“夜の天空の花嫁、淫らな妻の日常”……って、クリエちゃん!? これアリアだよね!?」

 

「モデルさんへのご奉仕価格、1000ゴールドです!」

 

 

 【カウンターテーブル】に置かれた【値札】には、5000ゴールドと記されている。

 

 

「買った!」

 

 

 ……アベルは二つ返事で買ってしまった。

 いや、確かにモデルにしていいとは言ったが、まさか【エッチなほん】に描かれてしまうとは思いも寄らないわけで。

 

 

「フィクションだよー」

 

「うわ……、うわあ……! これ僕じゃん……!」

 

 

 中身を覗いてみれば、夫婦の濃厚な接触が描かれた物語が綴られている。

 申し訳程度にキャラクターの名前が“アレル”と“アレア”になっているが、見知った人ならすぐに気付くだろう。

 先ほど声を掛けてきた戦士が「似てる」と言った意味がここで繋がった。

 

 

「ラブラブエッチがいいよねー」

 

「だけど! こっちの僕、アリアに無茶苦茶してないかい!?(なんでアリアに翼が付いてるんだ!?)」

 

「え? そこは見たまま描いたけど? 一部ノンフィクだし」

 

 

 ……【エッチなほん】を広げ、内容を指差し訊ねてみれば、クリエはそんなことを言う。

 

 見たままとは――。

 察するに、クリエがテントの中を監視していたと思われる。

 どんな体位で致したかなどわざわざ憶えていないが、手元の【本】のしっかりした描写に眩暈がしそうだ……。

 

 

「そんな……エグイ……。僕こんなことしてないし……」

 

「気付いてないだけじゃない? アリアお姉さんも喜んでたし、大丈夫っしょ」

 

「そういう問題では……。こっちはなんか縛られてるし……、魔物とも……? ええっ!? うわあ……すご……♡」

 

 

 ペラペラペラ……、ページを捲っていくと、アリアがロープで縛られ攻められているシーンと、魔物に襲われているシーンが目に入る。

 ここはクリエの想像で描かれている部分であるが、薄い本だというのに、中身が熱いではないか。

 

 ……アベルは不覚にも、【本】の中で苛められる妻の姿にドキドキしてしまった。

 

 

「アリアお姉さんにはナイショね! たぶん倒れちゃう☆ ちょうどいなくてよかったよー」

 

「クリエちゃん、これさ、他の人に見せるの嫌なんだけど……」

 

 

 さっきまで群がっていた男たちが今夜これで……と、考えると胸中は複雑極まりない。

 アリア本人の身体を見られたわけではないが、クリエの絵が上手過ぎて困る。明日テルパドールを歩いたら、アリアが好奇の目にさらされることは必至。

 町中だというのに馬車に乗せるのは可哀想だが、我慢してもらうしかないではないか……。

 

 

「今までで一番早い売り切れだったよ! ご協力感謝しますっ! これ、感謝の気持ちのえっちなライト! お二人でラブラブな夜をお過ごしください!」

 

 

 クリエは話題を逸らし、オアシスでも貰ったというのに【えっちなライト】を押し付けてくる。

 

 

「はあ、そりゃどうも……って、だからさ、さすがにここまで露骨だと、テルパドールを歩きづらいじゃないか。僕は旅シリーズかと思ってたのに……」

 

「エロは懐を温めてくれるんだよ……」

 

 

 アベルの抗議に気まずいと思っているのだろう、クリエの目はアベルから逸れ、【カウンターテーブル】や広げた【じゅうたん】を片付け始めた。

 

 

「……もう店じまいかい?」

 

「売り切れたし、路銀が貯まったからねー! 迎えが来る前に、片付けておかないとね! あ~ホクホク~♪」

 

 

 そそくさと店じまいをするクリエに、アベルは“ふう”とため息を吐く。

 クリエは嬉しそうに売り上げ金の入った袋を掲げ、笑顔をみせた。

 

 これ以上責めたところで、売り切れてしまったものを回収して回るのは難しい。

 何冊売ったのかは不明だが、一冊5000ゴールドもするものを、買い戻すのはアベルには無理だ。

 旅の恥は掻き捨てとして、早く忘れた方がいいかもしれない。

 

 

 ……十数年後、この【エッチなほん】はプレミアが付き、世界を巡ることになる。旅の途中でビアンカやフローラの目に触れることになるとは、この時のアベルは知る由もなかった……。

 

 

「そういえばシドーはどこに?」

 

 

 今夜自分も読んで寝よ……と、大事に【エッチなほん】を【ふくろ】に仕舞い、ふとアベルはこの場にいない人物を思い出した。

 

 

「素材集めしてもらってるよー。シドー君にこの本は見せられないからね」

 

「そっか……」

 

 

 さすがはクリエ、シドーはしっかりと退避済みだ。

 砂漠で集められる素材なんて【砂】と【石材】くらいのものだが、シドーなら砂漠で単独でも難なく戦えてしまうだろう。

 

 

「いや~、アベルお兄さんたちに会えるとは思わなかったよ~。今夜はお金もたっぷり手に入ったし、宿屋に泊まるんだけど、一緒にどう?」

 

「そりゃ構わないけど……」

 

 

 宿代は奢らせてと、ゴールドがたっぷり詰まった袋を揺らすクリエは、一応【エッチなほん】に対しての罪悪感があるらしい。

 アベルには断る理由がないため首を縦に下ろした。

 

 ……クリエの片付けを待って、アベルたちは移動を開始する。

 もう少し城下を歩いて回りたかったが、それは明日に回し、数日振りの再会を祝って食事をするのもいい。

 

 

「あ、ところでアリアお姉さんはどこに?」

 

「あー……アリアは、今夜は城に泊まるって」

 

「そうなんだー。お城に泊まれるなんて羨ましい~。ボク、女王さまに会ってみたいなあ。城下の人に聞いたけど、綺麗な人なんだってね」

 

 

 綺麗なお姉さんていいよねー! なんてにクリエがにこにこするから、ひょっとして彼女も美人に弱いのかもしれない。

 アベルにはアリアもだが、女の子のその辺の感覚がよくわからなかった。

 

 

「明日の朝、アリアを迎えに行くから一緒に行けばいいよ」

 

「やったー! 紹介してねー!」

 

 

 ……明日朝早くにアリアを迎えに行き、勇者の墓はあとでいい。まずは教会だ。

 アイシス女王がどういう意図で、アリアを連れて行ったのかを聞いていないアベルは、明日の行動予定を心の中で繰り返す。

 

 アイシス女王と一緒にいる時間が長ければ長いほど、アリアは女王の美女パワーで洗脳されてしまう。

 警戒心が強いくせに一度警戒心を解くと、驚くほどゆるゆるになり、強気に出られると、何でも受け入れてしまいがちな優しい妻が心配だ。

 今夜何をされているのか……。想像するだけでおっき……否、苛立ってしまう。

 

 邪な気持ちが生まれるのは、さっき立ち読みしてしまった【エッチなほん】のせいかもしれない。

 

 ……何が起こるか不確定な未来は慎重に進めたいものである。

 一度仕切り直した方がいいだろう。

 

 アリアがアイシス女王から離れなかった場合、クリエにアイシス女王を留めておいてもらい、アリアを奪取し正気に戻す。

 物理的に距離を離せば、多分愛の力で元のアリアに戻るはず……、そう、多分……。

 

 自信はないが。

 

 アベルは明日朝の、アリアお迎えミッションを脳内でシミュレーションしながら、再会したクリエとシドーと、束の間の楽しいひと時を過ごした。

 もちろんこっそり【エッチなほん】(新刊)も楽しんだが、思春期真っ只中(?)なシドーに見つからないようにするのには骨が折れた。

 

 ……クリエには、アリアがいない夜には持ってこいの【本】であったと、こっそり感想を伝えておいた。

 




クリエせんせいはスゴイんですw

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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