ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回あらすじ>数日振りに再会したクリエから、夜シリーズ最新刊を買ったアベルは、妻のいない夜を満喫しました。

乗り込むぞー! おー!

では、本編。



第七百八十六話 アベル、浮気現場に乗り込む

 

 

 

 

 

 ……次の日。

 まだ薄暗い夜明け、アベルは朝食も摂らずに宿屋を出て、クリエとシドーを引き連れ城へとやって来た。

 

 アベルたちが来たタイミングで、城門が開く。

 昨晩寝ている間にも砂嵐が発生したのだろう、吹いた風で運ばれた大量の【砂】が城に続く大階段に積もり、それを掃除するために、昨日出迎えてくれた兵士二人が丁度城から出てきたところで、普段は槍を持つ彼らは掃除道具を片手に、「早いな、足元が悪くてすまない」などと言いながら、アベルたちを迎え入れてくれた。

 訊けば一晩で【砂】が積もってしまい、毎朝の掃除は欠かせないのだそうだ。

 こんな朝早くにやって来る旅人もいないらしく、少しばかり驚かれたが、入城しても問題ないということで通してもらった。

 

 そんなわけで庭園にやって来たわけだが――。

 

 

「は、早い……!」

 

 

 女王の寝所で、二人はまだ寝ているはずと予想をつけていたアベルは、昨日女王がいたテーブルの前で立ち尽くす。

 東の空が白み始めたばかりだというのに、すでに女王とアリアは昨日のテーブルで優雅に朝食を摂っていた。

 “皆さんもいかが?”なんて誘われ、クリエが「いただきます!」、即答するので皆で朝食を摂ることになった。

 

 “一緒に眠っている二人を見たかったんだよねー? アベルお兄さんてさ……ムッツリだねー。”

 

 半目のクリエにこっそり囁かれ、アベルの胸がどきり。

 

 別に二人の寝乱れた姿を見るのが 目的だったわけではない。

 浮気現場を押さえるのは大事だと思っただけ――。

 

 ……というのは言い訳で。

 実はクリエの言う通りなのである。

 

 むしろ浮気現場を押さえ、観賞したかった……のが正直な気持ちだ。

 浮気はいけないことだが、昨夜【エッチなほん】を読んだアベルは意見を変えた。

 アリアは自分を愛しているからきっと浮気だけで、自分の元へ帰って来るだろう。

 戻って来るなら許してやろう、だから観賞させて欲しい……。

 一晩の間に、180度考え方が変わるなんて自分でも驚いたが、新たな扉が開いた新しい世界は新鮮で、興奮に満ちていた。

 

 

「あ、アベル……? なにか顔についてる……?(顔洗ったんだけどな……)」

 

「い、いや……?(アリア……、本の中の君はとても淫らで……)」

 

 

 ついじっと見ていたようで、少し寝癖のついたアリアが首を傾げる。

 アベルは【エッチなほん】の中のアリアを思い出してしまい、頬をぽっと赤らめた。

 

 

「へえ、砂嵐の調査をされてるんですかー」

 

「ええ。頻発する砂嵐は自然発生とは違い、どうも何かに起因しているようなのです。現在兵士たちの働きにより、おおよその発生源が掴めそうなところまできていますが、砂嵐の近くで見慣れない魔物の目撃情報もあり、引き続き原因の特定を急いでいます。発生源さえ見つかれば、私のチカラで異常な頻度の砂嵐を、ある程度まで抑えられるかもしれません」

 

「ええっ!? そんなことができるんですか!? 女王さますごーい!」

 

「このままでは、せっかく夜が明けたというのに、テルパドールの民を始め、国を出る方も、訪れる方も困りますから」

 

 

 ……食事を続けている内に、話題は昨今の砂嵐についてへ――。

 

 アベルが気にしていたアリアの浮気話はどこへやら、真面目な話をクリエが進めるので、アベルは食事を口に運びながら耳を傾ける。

 

 女王の発言から、テルパドールの人々が明けない夜について、正確に認識していることが確定した。

 

 クリエたちもテルパドールに到着するまで、何度も砂嵐に遭遇したらしい。

 遭遇する度 風の方向を読み、退避してはいたが、避けれそうにない時は、突貫工事で建物を建てて耐えたそうだ。

 

 昨夜宿屋で聞いた話では、追っていた“カケラ”の気配が途中で消えてしまい、とりあえずここ、テルパドールまで来たと言っていた。

 砂嵐の中に“カケラ”があり、広い砂漠を移動しているということなのか――。

 クリエたちも砂嵐に参っているようだった。

 

 ……女王は砂嵐の頻度を下げる力があるようで、発生源を探している。

 

 別世界でそんな話は聞いたことがない。

 アベルは移動呪文(【ルーラ】)が使えるし、砂嵐にまともに巻き込まれると大変だが、今のところそこまで困ってはいない。

 旅人の自分たちに何ができるわけでもない。

 

 積極的に関わろうとは思わないものの、城下に入り込む砂嵐だけでも早く治まるといいなと、願わずにいられなかった。

 

 

「砂漠を歩き、もし何か気になることを見つけたら、手間でなければ教えてください。ですが、命 最優先で頼みますね」

 

「お任せください!」

 

「まあ、アリアは頼もしいですね。ウフフ♡」

 

「アイシスさまのためなら……♡」

 

 

 女王の言葉にアリアが立ち上がり、どんと胸を叩く。大きな白い【スライム】が振動し、女王がアリアの空いた片手を掴むと、指を絡ませ見つめ合った。

 

 

 (ん……?)

 

 

 ……昨夜、何かあった?

 

 二人の雰囲気がなんだか親密に見えて、アベルは訊ねたかったが、クリエの手前ここは黙っておく。

 女王とアリアのやり取りに、クリエの瞳がキラキラと輝き興味津々の様子。下手に夫婦の不和を見せては【本】のネタにされかねない。

 

 

「……んぐ(アリア、すっかりアイシス女王の言いなりだな……)」

 

 

 アベルの口には【パン】が詰まっていたが、それだけではない頬の膨らみが不機嫌を物語る。

 

 ……面白くない。

 女体同士の絡みならともかく、手を繋ぎ、見つめ合うのは非常に面白くない。

 

 そもそも なぜ上座の女王の隣がアリアで、その隣がピエール、向かい合う席にはクリエ、隣りはシドー……、そして自分はまたしても独り離れた下座の席なのか――。

 ……プックルは【じゅうたん】の上でだが、【ステーキ】と【いろどりサラダ】を上機嫌に食らっていて幸せそうだ。

 

 

「朝食が終わったら勇者の墓に案内しましょう」

 

「は……」

 

「いえ! 先に行きたいところがあるので あとでお願いします!」

 

 

 女王が妖艶に微笑むとアリアが返事をしかけたものの、アベルはすかさず挙手し、大きな声でそれを遮った。

 やっと勇者の墓を案内してもらえるのはありがたいが、ここは昨夜考えた予定でいきたい。

 

 

 ――まずは教会、ほんでもって【さばくのバラ】探しだ!

 

 

 昨日はアリアに予定を乱されたが、今日はこちらが先んじて行動してやるのだ。

 早くアリアと女王を引き剥がさないと、浮気が本気になっては困る。

 

 

「まあ、そうですか。わかりました。アリア、ではまた後で……」

 

「へ……?」

 

 

 “チュッ”

 

 

 不意に女王はアリアを引き寄せ、頬に口付けをした。

 

 

「なっ!?」

 

「わぁお♡」

 

 

 アベルの目が見開かれると、クリエが隣のシドーの目を手で塞ぐ。一瞬出遅れたようで、シドーから「らぶらぶだなっ!」との声が漏れた。

 その後で「使い方あってるか?」なんて目隠しされたまま言うので、クリエは苦笑いで「あってるあってる」。

 

 

「アイシスさま……ぽっ♡」

 

 

 ……アリアが女王からのキスに、頬を赤く染めている……。

 

 

「“ぽっ♡”じゃな~~いっ! アリア、行くよ!! クリエちゃんたちも! ごちそうさまでした!!」

 

 

 ついに堪忍袋の緒が切れたアベルは、食事途中ではあるが立ち上がり、女王からアリアを奪い返すと抱き上げ駆け出した。

 走るアベルの後ろでクリエが「ニシシ☆ そういうシチュもありかも?」……どうやら話を閃いたらしい。“ピキーン”という閃きの音が聞こえた。

 

 もうネタにでもなんでもするがいい。

 浮気は許しても本気は許さない。

 

 

「アベル……? 怒ってる?」

 

「怒ってる! この浮気者っ! 君は僕の奥さんでしょ!?」

 

 

 飛び石の通路を駆け抜け階段を上り、通路を行き、昨日の兵士たちの横を通り過ぎる。

 女体の協演も見せてくれないくせに、夫の前で浮気相手と心を通わせようとするのは絶許。

 アベルはアリアの額に軽く自らの額を打ち付けてやった。

 

 

「ぃたっ、ご、ごめん……。アイシスさまはそういうのじゃなくて……」

 

「ほっぺにチューされて、頬赤く染めてたぁーーっ!」

 

「うわっ! アベル泣いてるのっ!?」

 

「泣いてないよ! アリアのバカぁああああっ!!」

 

「アベル……」

 

 

 知らぬ間にアベルの目と鼻から汁が流れ出ている。

 いつもは冷静なアベルが取り乱すように泣き叫ぶ様子に、アリアの胸は痛み、眉が下がった。

 俊足の女王が追いかけてきたら、追いつかれるかもしれないと思っているのか、アベルは必死だ。

 

 

「あはははっ! アベルお兄さん鼻水出てるよー!」

 

「ら、らぶらぶだなっ!?」

 

「あはははっ! シドー君、無茶苦茶だねキミ!」

 

「むっ、違ったか……」

 

 

 幸い追いかけて来たのはクリエとシドーだけで、二人はいつの間にかアベルに追いついている。

 ……クリエに指差しで笑われた。

 

 

「……(クリエちゃん、君、酷くない?)」

 

 

 笑われたアベルは少々ムッとしたが、そのまま城門を潜り、外へと飛び出す。 このまま女王が追いかけて来ませんように、と願いながら城門を出て左、歩廊を駆けて行った。

 

 ……歩廊の先に、下り階段が見えてアリアを床に下ろす。

 来た道を振り返ってみたが、女王の姿はなかった。

 




夫のアベルさん、無事妻を取り返すことができました。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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