ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回あらすじ>妊娠の疑いで診察を受けたアリアだったが、はっきりしたことはわからないまま教会を後にする。

夫婦のコミュニケーションて大事。

では、本編。



第七百八十八話 夫婦の会話

 

 

 

 

 

 ……夫婦だけで少し話がしたい。

 

 早く【さばくのバラ】を探しに行きたいところだが、クリエたちにピエールとプックルを任せ、アベルとアリアは歩廊の下、日陰まで歩いて行く。

 歩廊下に着くと【砂】を纏う風が少し和らぎ、診断を聞いてから黙ったままのアリアが、ようやく口を開いた。

 

 

「アベル……、ごめんね」

 

「謝ることじゃないよ。まだはっきりしてないだけかもよ?」

 

 

 いつも笑顔で前を向くアリアが足元を見て、申し訳なさそうにするその姿に、アベルは努めて明るく応える。

 早合点していたのは自分だが、まだ可能性は残っているではないか。

 それに今、妊娠していなくとも、子は授かりものというのだから、次の機会を待てばいいだけだ。

 

 ……この時のアベルはまだ、事の重大さをよく理解できていなかった。

 

 

「うん……、でも月の物が不順だってこと、ちゃんと相談してなかったなって……」

 

「あ。けど、修道院生活中は毎月きてたよね?」

 

「うん……定期的にきてた」

 

「いつから不順になったの……?」

 

「……元々不順だったの、修道院生活中だけ毎月きてたってだけで」

 

「そうなんだ……」

 

 

 アリアの話によると、再会前も不順だったらしい。

 だが自分との再会後、修道院で一緒に生活している間は毎月きていた、とのこと。

 

 元々同年代と比べても身体の小さかったアリアは、八年の眠りの中でシスターたちの尽力により成長することができた。

 睡眠中の栄養は管を使った流動食で、栄養が充分に取れていたか定かではない。

 そのせいもあるのかは不明だが、背も中々伸びず、成長不良で月の物の始まりが遅かった。

 目覚めてすぐの頃は生きることに必死で、月の物のことなど気にしてはおらず、たまにきていた……程度の認識しかない。

 

 再会後もたまにきており、毎月なくとも旅には有利なため、特に気にしていなかったらしい。

 ともに過ごした修道院生活中は毎月きており、面倒くさいと思っていた――と。

 

 

「私……アベルが、ビアンカちゃんかフローラさんと結婚すると思ってたから……」

 

 

 後れ毛を耳に掛けるアリアは後ろめたさからか、やっぱり俯いたままだ。

 

 

「それって……、じゃあ、サラボナを目指した時からってこと!? あれ? 一度ビアンカに会う前にきたって言ってたことあったよね!?

 

「そうだったっけ……? よく憶えてるね……」

 

「君のことなら憶えてる!」

 

 

 アベルはアリアの両肩を掴み、訴えかける。

 声が少し大きくなってしまい、アリアの肩がびくりと揺れた。

 

 ……アリアのことなら毎日観察しているのだ。

 何を考えているのかまでは読めていないが、些細な変化を見逃しているつもりもないし、妻の過去の発言をしっかり憶えている自信もある。

 

 

「っ……そ、そう……。えと、一応結婚してから一回だけきたの。でもそれからまた止まっちゃってて……。これだと、妊娠しないんじゃないかなーって思ってて……」

 

「言ってよ! 僕たちは夫婦なんだよ!?」

 

 

 ――なんでそういうこと言ってくれないんだ……!? 言ってくれなきゃわからないじゃないか……!

 

 

 アリアが困っているなら力になるし、不安に思っているなら、その不安を取り除いてやるというのに。

 “ホウレンソウ”だと、常日頃言っていたはずが、アリアは報告と連絡はともかく、相談は滅多にしてこない。

 

 なぜ、頼ってくれないのか――。

 好きな女の不安すら、払拭できない男だと思われているのか。

 

 アベルは自分が無能に思えてくる。

 

 

「っ、ごめん……。また前みたいに毎月くるようになるとも思っていたし、その……、私も少しは期待してたりもして。……アベルが子どもを楽しみにしてるから言えなかったの」

 

 

 “だからごめんね……。”

 

 

 最後にもう一度か細い声で謝罪し、縮こまるアリアがいつもよりも小さく見えた。

 このままどんどん委縮して、いつか姿を消してしまうんじゃないかと心配になってしまう。

 

 だからアベルは。

 アベルはアリアの頬を両手で包み、そっと顔を上げさせると間近に覗き込んだ。

 

 

「アリア、なにか不安があるのかい? なにが怖い? 僕が全部吹き飛ばしてあげるよ?」

 

「……不安なんて別にないよ? ちょっと夜が長いのが心配だったけど、それもちゃんと解決できたし! うん、全然大丈夫、問題なし!」

 

 

 優しく問い掛けると顔を上げた紫水晶には涙が滲み、零れ落ちそうだったが、それを堪えてアリアは微笑む。

 

 不安はない――。

 長い夜が心配だったが、解決できた。

 

 そうか、それならよかった。

 だが……、何かがおかしい。

 

 アリアの発言に違和感を感じる。

 彼女が素直に 自分の不安を言うことはないのはわかっている、大丈夫という言葉を鵜呑みにしてもいいのだろうか……。

 

 シスターの話では、知らない内にストレスを溜めて、それが溜まり過ぎると月の物が止まることもあるということだ。

 どんなことがあっても“大丈夫”と言い切るアリアは、自分でも気付かない内に……?

 

 

「……、……えーと、つまり。あー……、なんかわかってきた……? かも……」

 

 

 ――そもそもアリアは怖がりじゃなかったか……?

 

 

 幼いアリアには、身を守るための保護呪文が翼に掛けられ、完全ではないにしても、多くの魔物の目を欺くことができていた。

 だからアリアは臆病ながら、ひとりでサンタローズまでやって来れたし、徐々に戦えるようにもなった。

 

 レヌール城ではよく泣き叫んでいたし、今もガイコツやオバケ関係は苦手で、魔物との戦いも多少は慣れてきた程度。

 特に結婚後はあまり戦闘に参加させてないから、感覚も多少鈍っている。

 

 アベルからすれば、何百、何千、何万と体験してきた戦闘も、アリアにとっては不慣れなことばかりだったろう。

 別世界の記憶を一部だが なぜか持ち、恋人が別の誰かと結婚すると思い込んだり、滝壺に落ちて死にかけたり、感電死や串刺しといった危機にも見舞われ、さらには世界が闇に呑まれてあちこちを奔走……、自責で落ち込んだ夫を気丈に励まし、受け止め、癒し続けた。

 

 

 “はあー……。”

 

 

 アベルは深く溜息を吐き出す。

 

 

「ん……?」

 

「……たぶん、僕のせいだ。ごめんアリア。君が臆病で怖がりだってこと知ってたのに、君に僕の不安を受け止めてもらってた」

 

「……ん?」

 

「ストレスって知らない内に溜まるものだって、シスターが言ってたよね」

 

「あ、うん。でも、私ストレス解消においしいおやつをいただいてるよ? ふふふっ、お菓子の食べ過ぎでちょっと太っちゃったかも? ……。ぇ、えっ?」

 

 

 アリアが腹の肉を摘まんで「お菓子少し控えようかな……」なんて言いながら笑い、思いの外しっかり腹に肉が付いていたようで、目を見開き焦り出した。

 もう少し肉が付いた方がいいというのに、夫に見られていることに気付き、慌てたように両腕で腹を隠し、頬を赤く染める彼女のいじらしさが愛おしい。

 

 ……アベルはアリアを抱き寄せる。

 

 

「アリア……、僕、もう少し大人になるよ」

 

「ん……アベル……?」

 

「……アリアに癒してもらうのは好きだけど、アリアに負担を掛けてるならもう少し自重する」

 

 

 絹髪の頭頂に囁き、確かな温もりを身に沁み込ませると、愛しみの気持ちと安堵感が胸を満たした。

 だが、アリアの肉感は好み過ぎて駄目なのだ。

 

 あまり長くハグしていると興奮してしまう。一旦離れた方がいいだろう。

 そう気付いてアリアから身体を離そうとしたが、できなかった。

 

 

「負担なんて……。私も癒してもらってるし……」

 

 

 ぎゅううぅぅ。

 アリアがきつく抱きしめてくる。

 

 柔らかい肉の感触と彼女の香りが鼻腔をくすぐり、満たされていた胸がいっぱいに膨らみ、弾けそうだ……。

 

 

「ンンッ! そ、それでも……! 君はすぐ無理をするからね……!」

 

「ムリしてないもん、旦那さまを甘やかすのは妻の特権なんだよ?」

 

「アリアぁ……♡」

 

「……ふぅ。アベルチャージ完了~! よっし、じゃあ! 次行ってみよう! いざ、ゆかん砂漠のバラ探し~!」

 

 

 アリアに抱きしめられたら、勝手に下半身が反応してしまう。

 【さばくのバラ】よりも妻を馬車に連れ込む方が大事に思え、アベルの手は白い頬に伸びたが、刹那彼女はパッとあっさり身体を離し、距離を取った。

 

 足を肩幅に開き、いつもの朗らかな明るい笑顔に片手で腰を支え、もう片方の手は人差し指で砂漠を示す。

 一瞬の間に気持ちを切り替えたというのか、無理して笑っているわけではなさそうだ。

 

 それからアリアはさっさと一人で歩き出し、少し離れた場所にいるクリエたちの元へと歩いて行った。

 

 

「えぇー!?(そんなあっさり……!?)」

 

 

 何の解決もしていないが、アリアに落ち込んだ様子がないため、アベルは慌てて追いかける。

 

 一週間後にまた診てもらえば違う結果が出るかもしれないが、テルパドールに長居は、諸事情によりできないのだ。

 それならば一度サラボナや、修道院に戻るのも手かもしれない。

 

 アベルはアリアの体調を気にしつつ、ストレスを軽減すべく、ともに歩くことも念頭に置いて、これからの旅の方針を再考することにした。

 




アリアはチート持ちとはいえ、感覚は一般人なので、主人公のアベルたちとはメンタルが違うわけです。

※次回は砂漠のバラ探しです。
めっちゃ楽しんで書いているので、楽しみにして頂けたら幸いです♪
あ、グランバニアはまだまだ先でございます、悪しからず。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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