前回あらすじ>砂嵐(旋風)に巻き込まれ姿を消したアリアとクリエ。アベルは二人を救いに行くべく、一路テルパドールの城へと向かった。
ガオーン!(何)
では、本編どぞー。
◇
アベルの足取りは重かったが、一行はテルパドールに戻り、女王アイシスの元へやって来た。
……アリアとクリエが小さな砂嵐に呑まれ、姿を消した。
居場所がわかるのなら教えて欲しい。
話をしようとしたアベルだったが、アベルと目が合った女王は、それより先に口を開く。
「そうですか、アリアが……、あの金の髪の方も……」
「え、あの……、僕まだ何も話していな……」
まだ何も言っていないというのに。
女王はすべてを見ていたかのように、難しい顔で腕組みをした。
「……それは最近調査している、不思議な砂嵐に巻き込まれたのかもしれません」
「不思議な砂嵐……?」
「この国でも、調査中に何人かの兵士が小さな砂嵐……、旋風に巻き込まれ行方不明となっています。そして巻き込まれた者は、誰一人として帰ってきておりません」
「っ……!」
調査中の不思議な砂嵐。
それに巻き込まれた者は帰ってこない。
女王の話にアベルの表情は苦痛に歪み、眉間に皺が寄せられる。
たった一度の判断ミスで妻を失うなど、悔やんでも悔やみきれない。
「大規模な砂嵐はともかく、旋風に関しては規模が小さく、すぐに消えてしまうため調査も難航していたのです。ですが、昨日までの発生件数の集計で、最近では城の南での発生が多いと報告がありました。昨夜アリアに伝えたのですが、聞いていませんでしたか?」
“あとね、さっき話してた砂嵐についても昨日色々聞いたの。見慣れない魔物の目撃情報と、小さな砂嵐の関係――”
教会に行く前、アリアが話そうとしていた気がする。
ふとアリアが伝えようとしていた話が思い出され、アベルは息を呑んだ。
「……っ、……聞いて……いませんでした……」
――アリアが言おうとして、僕が止めました……!
なんということか。
アリアからの報告を聞き漏らしたがために、こんなことになってしまった。
あの時、きちんとアリアの話を聞いていれば、警戒を怠ることはなかったはず。
砂嵐なんていう、異常事態が頻繁に起こっている中で、アベルはどこか他人事のように思っていたのだ。
積極的に関わろうともしなかった。
一歩引いた安全な場所で、ただ砂嵐が治まればいいと願っていた。
まさかそれに巻き込まれ、当事者になってしまうなんて思いもしなかった。
何度も繰り返してきた出来事なら冷静に対処できることも、初めての経験においては、アベルも他の人間と同様、あまりに無力。
なぜ後回しにしてしまったのか。
今はもう、別の未来を歩いているのだから、聞き漏らしてはならなかったのに。
テルパドールで危険なことはなかった……という
……アベルの歯が擦れてぎりぎりと音を立てる。
後悔したところでアリアが戻って来るわけでもないが、悔しくて堪らなかった。
「旋風に巻き込まれそうになった兵士が言うには、小さな砂嵐が現れる直前に魔物の姿が見えたそうです。その魔物は、巨大な仮面の姿をしていて、不気味に嗤っていたのだとか……」
「巨大な仮面の魔物……?」
そんな魔物、アベルは見たことがない。
アリアたちが巻き込まれた旋風の前にそんな姿、見ただろうか……。
魔物の記憶なら、名前だとか一部の情報が得られれば、ある程度思い出すことができるが、数多の別世界で“巨大な仮面の魔物”など、出遭った記憶が無い。
新種の魔物だと言うのか……。
「ええ。このテルパドールで、そのような魔物は今まで見たことがありませんでした。そう、過去を除いては……」
「か、過去……?」
「学者にその魔物について調べさせたところ、古書に目撃した魔物に類似した記述がありました。魔物の名はガオン。遥か昔に存在した魔物で、鮮やかな朱の色と緑で彩色され、大きな耳を持つ巨大な仮面の魔物だということでした」
「鮮やかな朱の色と、緑……」
女王の口から魔物の名前が明かされ、アベルは目を瞬かせる。
大昔の魔物がなぜ、今……。
アリアが存在することで、大昔の魔物が現れたというのか。
にわかには信じられないが、大昔といえば【さえずりのみつ】のこともある。
……別世界と同じ出来事も多くあるが、やはり少しずつ違っている。
今までの世界と違う世界線を辿っているのだから当たり前で、常に警戒を怠ってはいけなかったのだ。
アリアと結婚できたことは奇跡で、今の状況は恐らく代償。
未来を変えたのは自分だが、代償を払うのはいつもアリアだ。
そんな彼女を助けるのがアベル、自分である。
一刻も早く、アリアに会いたい。
傍に彼女がいないだけで、落ち着かず、胸が苦しくて仕方がない。
目蓋を閉じると浮かぶ妻の笑顔が消えない内に、アベルは彼女に会って、抱きしめ安心したかった。
「……で、次はどこに現れるんだ?」
「旋風ですか?」
アベルが思案している間に、これまで黙って話を聞いていたシドーが、ようやく口を開くと女王が答える。
「オマエならわかるだろ? オレたちが原因を探って来てやるって言ってるんだ」
「……いいでしょう。アリアが巻き込まれたというのなら、私のチカラを使い、必ずや みつけて差し上げましょう……」
女王はやにわにアベルに向けて手を
「……?(なんで僕……?)」
なぜ自分に手を向けられているのか。
アベルはよくわからなかったが、手を
「アベル、オマエはそのままじっとしていろ」
「シドー、君はいったい……」
……シドーは腕組みをし、不敵な笑みを浮かべている。
先ほどの、女王に対して尊大な態度も気になったが、女王は気に留めることなく従ってくれている。
彼はいったい何者なのだろう……。
異世界の住人というだけで、何か他にもアドバンテージがあるのだろうか。
とてつもない馬鹿力の持ち主であるし、ただ者ではないことだけはわかってはいるのだが。
シドーに言われるままに、ついアベルも大人しく従い、じっとしていた。
「……、……おおよその範囲しか見えませんでしたが、五日後の朝、南西の方角、今朝と同じ場所にて、同様の旋風が起こるかもしれません。いえ、起こるでしょう。その時がアリアたちを救うチャンスです」
「い、五日後って……、そんな……」
少しして女王の目蓋が開き、次回の旋風の発生を予見する。
女王には不思議な力でもあるというのか。
次の旋風は五日後……。
その間、アリアは見知らぬ場所で魔物に囚われたまま。
五日後に助けに行けたとして、彼女が無事でいるかどうか――。
そこまで考え至ると、アベルの鼓動はドクンドクン。強く波打ち、不安に襲われた。
……ネガティブなことは考えない方がいい。
妻と無事再会を果たし、二人笑顔でテルパドールに戻って来るのだ。
戻って来たら ちょっと変な目で見られるかもしれないが、アリアに悟られる前にテルパドールをあとにする――。
不安感は拭えなかったが、胸元をぎゅっと掴み、深い深呼吸を繰り返す。
そして、アリアの元気な笑顔を思い出すよう努めた。
「……大丈夫。アリアは生きていますし、あなたと無事再会できるでしょう。私にはわかります。砂を巻き込んだ旋風は、旅の扉のようだったとの報告も上がっています。神出鬼没ですが、旅の扉ということであれば、戻って来ることも不可能ではないでしょう」
「え……あ、は、はい……!」
アリアは無事だと確信めいた女王の発言に、アベルは少しだけ心が軽くなる。
旋風が【旅の扉】だというのなら、拐われたというより、巻き込まれたというのが正しいのかもしれない。
【ガオン】の存在は気になるが、拐われたのではないなら、クリエもいることだし、アリアの生存率は高くなる。
「五日後か……長いな。クリエが一緒だから大丈夫だとは思うが……、アベル、乗り込む準備をちゃんとしておけよ?」
シドーは腕組みしたままで、何やら考え事をするように天井を見上げていたかと思ったら、アベルに視線を戻し、準備を促した。
準備……。
はて、シドーの言う準備とはいったい……。
「そうですね、向こうでは見知らぬ魔物たちとの遭遇もあるでしょう。もう少し鍛えておくことをおすすめします」
「……わかりました、そうします」
シドーと女王には何か見えているのだろうか。
今のままでは力不足と言われた気がして、アベルは素直に受け止める。もう少し身体を鍛えることに決めた。
「……では、勇者の墓に案内しましょうか?」
「っ、いえ! 今は結構です! それどころじゃない!」
「あら そうですか」
女王から必要な情報は聞けたと思う。
唐突に勇者の墓に案内すると言われても、行きたい気持ちがないわけではないが、今はそんな気になれない。
女王の誘いをしっかり断り、アベルは城をあとにした。
ガオンはDQ4に出てくるモンスターで、バギマを使うのです。
そーいや、タグにDQ4を追加しとかんとあかんね。
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!