ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

前回あらすじ>砂嵐(旋風)に巻き込まれ姿を消したアリアとクリエ。アベルは二人を救いに行くべく、一路テルパドールの城へと向かった。

ガオーン!(何)

では、本編どぞー。



第七百九十一話 仮面の魔物

 

 

 

 

 

 アベルの足取りは重かったが、一行はテルパドールに戻り、女王アイシスの元へやって来た。

 

 ……アリアとクリエが小さな砂嵐に呑まれ、姿を消した。

 居場所がわかるのなら教えて欲しい。

 

 話をしようとしたアベルだったが、アベルと目が合った女王は、それより先に口を開く。

 

 

「そうですか、アリアが……、あの金の髪の方も……」

 

「え、あの……、僕まだ何も話していな……」

 

 

 まだ何も言っていないというのに。

 女王はすべてを見ていたかのように、難しい顔で腕組みをした。

 

 

「……それは最近調査している、不思議な砂嵐に巻き込まれたのかもしれません」

 

「不思議な砂嵐……?」

 

「この国でも、調査中に何人かの兵士が小さな砂嵐……、旋風に巻き込まれ行方不明となっています。そして巻き込まれた者は、誰一人として帰ってきておりません」

 

「っ……!」

 

 

 調査中の不思議な砂嵐。

 それに巻き込まれた者は帰ってこない。

 

 女王の話にアベルの表情は苦痛に歪み、眉間に皺が寄せられる。

 たった一度の判断ミスで妻を失うなど、悔やんでも悔やみきれない。

 

 

「大規模な砂嵐はともかく、旋風に関しては規模が小さく、すぐに消えてしまうため調査も難航していたのです。ですが、昨日までの発生件数の集計で、最近では城の南での発生が多いと報告がありました。昨夜アリアに伝えたのですが、聞いていませんでしたか?」

 

 

 “あとね、さっき話してた砂嵐についても昨日色々聞いたの。見慣れない魔物の目撃情報と、小さな砂嵐の関係――”

 

 

 教会に行く前、アリアが話そうとしていた気がする。

 ふとアリアが伝えようとしていた話が思い出され、アベルは息を呑んだ。

 

 

「……っ、……聞いて……いませんでした……」

 

 

 ――アリアが言おうとして、僕が止めました……!

 

 

 なんということか。

 アリアからの報告を聞き漏らしたがために、こんなことになってしまった。

 あの時、きちんとアリアの話を聞いていれば、警戒を怠ることはなかったはず。

 

 砂嵐なんていう、異常事態が頻繁に起こっている中で、アベルはどこか他人事のように思っていたのだ。

 積極的に関わろうともしなかった。

 一歩引いた安全な場所で、ただ砂嵐が治まればいいと願っていた。

 まさかそれに巻き込まれ、当事者になってしまうなんて思いもしなかった。

 

 何度も繰り返してきた出来事なら冷静に対処できることも、初めての経験においては、アベルも他の人間と同様、あまりに無力。

 なぜ後回しにしてしまったのか。

 今はもう、別の未来を歩いているのだから、聞き漏らしてはならなかったのに。

 

 テルパドールで危険なことはなかった……という感覚(記憶)に頼り過ぎて、危機感が薄れていたのかもしれない。

 

 ……アベルの歯が擦れてぎりぎりと音を立てる。

 後悔したところでアリアが戻って来るわけでもないが、悔しくて堪らなかった。

 

 

「旋風に巻き込まれそうになった兵士が言うには、小さな砂嵐が現れる直前に魔物の姿が見えたそうです。その魔物は、巨大な仮面の姿をしていて、不気味に嗤っていたのだとか……」

 

「巨大な仮面の魔物……?」

 

 

 そんな魔物、アベルは見たことがない。

 アリアたちが巻き込まれた旋風の前にそんな姿、見ただろうか……。

 

 魔物の記憶なら、名前だとか一部の情報が得られれば、ある程度思い出すことができるが、数多の別世界で“巨大な仮面の魔物”など、出遭った記憶が無い。

 新種の魔物だと言うのか……。

 

 

「ええ。このテルパドールで、そのような魔物は今まで見たことがありませんでした。そう、過去を除いては……」

 

「か、過去……?」

 

「学者にその魔物について調べさせたところ、古書に目撃した魔物に類似した記述がありました。魔物の名はガオン。遥か昔に存在した魔物で、鮮やかな朱の色と緑で彩色され、大きな耳を持つ巨大な仮面の魔物だということでした」

 

「鮮やかな朱の色と、緑……」

 

 

 女王の口から魔物の名前が明かされ、アベルは目を瞬かせる。

 

 大昔の魔物がなぜ、今……。

 アリアが存在することで、大昔の魔物が現れたというのか。

 にわかには信じられないが、大昔といえば【さえずりのみつ】のこともある。

 

 ……別世界と同じ出来事も多くあるが、やはり少しずつ違っている。

 今までの世界と違う世界線を辿っているのだから当たり前で、常に警戒を怠ってはいけなかったのだ。

 

 アリアと結婚できたことは奇跡で、今の状況は恐らく代償。

 未来を変えたのは自分だが、代償を払うのはいつもアリアだ。

 そんな彼女を助けるのがアベル、自分である。

 

 一刻も早く、アリアに会いたい。

 傍に彼女がいないだけで、落ち着かず、胸が苦しくて仕方がない。

 目蓋を閉じると浮かぶ妻の笑顔が消えない内に、アベルは彼女に会って、抱きしめ安心したかった。

 

 

「……で、次はどこに現れるんだ?」

 

「旋風ですか?」

 

 

 アベルが思案している間に、これまで黙って話を聞いていたシドーが、ようやく口を開くと女王が答える。

 

 

「オマエならわかるだろ? オレたちが原因を探って来てやるって言ってるんだ」

 

「……いいでしょう。アリアが巻き込まれたというのなら、私のチカラを使い、必ずや みつけて差し上げましょう……」

 

 

 女王はやにわにアベルに向けて手を(かざ)し、目を閉じた。

 

 

「……?(なんで僕……?)」

 

 

 なぜ自分に手を向けられているのか。

 アベルはよくわからなかったが、手を(かざ)したまま動きを止めて、精神を集中させる女王をそのままに、シドーに視線を移した。

 

 

「アベル、オマエはそのままじっとしていろ」

 

「シドー、君はいったい……」

 

 

 ……シドーは腕組みをし、不敵な笑みを浮かべている。

 先ほどの、女王に対して尊大な態度も気になったが、女王は気に留めることなく従ってくれている。

 

 彼はいったい何者なのだろう……。

 異世界の住人というだけで、何か他にもアドバンテージがあるのだろうか。

 とてつもない馬鹿力の持ち主であるし、ただ者ではないことだけはわかってはいるのだが。

 

 シドーに言われるままに、ついアベルも大人しく従い、じっとしていた。

 

 

「……、……おおよその範囲しか見えませんでしたが、五日後の朝、南西の方角、今朝と同じ場所にて、同様の旋風が起こるかもしれません。いえ、起こるでしょう。その時がアリアたちを救うチャンスです」

 

「い、五日後って……、そんな……」

 

 

 少しして女王の目蓋が開き、次回の旋風の発生を予見する。

 女王には不思議な力でもあるというのか。

 

 次の旋風は五日後……。

 その間、アリアは見知らぬ場所で魔物に囚われたまま。

 五日後に助けに行けたとして、彼女が無事でいるかどうか――。

 

 そこまで考え至ると、アベルの鼓動はドクンドクン。強く波打ち、不安に襲われた。

 

 ……ネガティブなことは考えない方がいい。

 

 妻と無事再会を果たし、二人笑顔でテルパドールに戻って来るのだ。

 戻って来たら ちょっと変な目で見られるかもしれないが、アリアに悟られる前にテルパドールをあとにする――。

 

 不安感は拭えなかったが、胸元をぎゅっと掴み、深い深呼吸を繰り返す。

 そして、アリアの元気な笑顔を思い出すよう努めた。

 

 

「……大丈夫。アリアは生きていますし、あなたと無事再会できるでしょう。私にはわかります。砂を巻き込んだ旋風は、旅の扉のようだったとの報告も上がっています。神出鬼没ですが、旅の扉ということであれば、戻って来ることも不可能ではないでしょう」

 

「え……あ、は、はい……!」

 

 

 アリアは無事だと確信めいた女王の発言に、アベルは少しだけ心が軽くなる。

 

 旋風が【旅の扉】だというのなら、拐われたというより、巻き込まれたというのが正しいのかもしれない。

 【ガオン】の存在は気になるが、拐われたのではないなら、クリエもいることだし、アリアの生存率は高くなる。

 

 

「五日後か……長いな。クリエが一緒だから大丈夫だとは思うが……、アベル、乗り込む準備をちゃんとしておけよ?」

 

 

 シドーは腕組みしたままで、何やら考え事をするように天井を見上げていたかと思ったら、アベルに視線を戻し、準備を促した。

 

 準備……。

 はて、シドーの言う準備とはいったい……。

 

 

「そうですね、向こうでは見知らぬ魔物たちとの遭遇もあるでしょう。もう少し鍛えておくことをおすすめします」

 

「……わかりました、そうします」

 

 

 シドーと女王には何か見えているのだろうか。

 今のままでは力不足と言われた気がして、アベルは素直に受け止める。もう少し身体を鍛えることに決めた。

 

 

「……では、勇者の墓に案内しましょうか?」

 

「っ、いえ! 今は結構です! それどころじゃない!」

 

「あら そうですか」

 

 

 女王から必要な情報は聞けたと思う。

 唐突に勇者の墓に案内すると言われても、行きたい気持ちがないわけではないが、今はそんな気になれない。

 

 女王の誘いをしっかり断り、アベルは城をあとにした。

 




ガオンはDQ4に出てくるモンスターで、バギマを使うのです。
そーいや、タグにDQ4を追加しとかんとあかんね。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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