パパスほっこりする、の回。
では、本編どうぞっ。
ヘンリーの部屋にアベルが向かってから、一時間が過ぎた頃――。
パパスが通路から移動し、ヘンリーの部屋前までやって来ていた。
(……アベルが戻ってこないな、上手くやっているのだろうか。どれ……、こっそり覗いてみるか……)
そっと、ヘンリーの部屋の扉を僅かに開いて中を窺う。
中ではヘンリーとアベルが床で仲良く何かを書いて遊んでいたのだった。
(……おお……、良かった……。さすがは私の息子だ……、アベル。父さんはお前が誇らしいぞ!!)
パパスはうんうんと頷いて、もう少しだけ様子を見てから、また先程居た場所まで戻ることにした。
◇
「だから、違うって! こうだって!」
『えぇっ、ここ一本書くんじゃなかったの?』
「えっと……それだと、――――……になっちゃうから……、こう……かなぁ……」
床にはアベル達が書いた絵や、文字の紙が散乱している。
ヘンリーがアリアの書く文字の間違いを指摘すると、アリアは首を傾げて『難しい~!』と書き直し始めていた。
そして何度も練習するが、毎度同じところで
『ああ、また
と諦めモードに。
アリアの躓いたそこは本来、
何とかバランスのいい字を書こうと奮闘してはいるのだが。
自ら文字を覚えたいと言っておいてなんだが、アリアはこういった作業は苦手らしい。
どうやら似たような文字にどっちがどっちか覚えられず、上手く書けないようだった。
“べ、別に覚えられないわけじゃないんだからねっ、手が小さくて上手くペンを操れないだけなんだからねっ”
アリアは少年二人に見守られ、文字の一つも書けない自分に気恥ずかしさを感じながら必死に覚えようとするのだった。
そんなアリアにアベルは新しい紙に解りやすく、大きい文字でお手本を書いてやる。
『これなら見やすい! ありがと、アベルっ!』
アリアはアベルにお礼を伝えると、今度こそ! とばかりに羽ペンを滑らせた。
『じゃあ……こう……?』
「うん! アリア上手!」
「そう! よく出来たじゃん! アリアは飲み込みが早いな!」
アリアが再び書き直すと、そこそこ癖はあるが今度はまあまあ上手く書けたのか、アベルとヘンリーがアリアの頭をわしゃわしゃと撫で回した。
『っ、ちょっ、髪ぐしゃぐしゃになっちゃう……』
アリアは二人の手から逃れる様に両手で頭を抱えると、イヤイヤをする。
「いーんだよ、ぐしゃぐしゃでも!」
「うん、アリアの髪気持ちいいからね!」
ヘンリーとアベルはアリアの意見など無視で、アリアが頭から手を放した途端頭を撫でた。
ついでに翼も撫でて「ここ、ふわふわしてて面白い!」「こっちはすべすべ! 羽根ペンに使えそう!」と弄り倒してくる。
髪も翼もさらさら、ふわふわした柔らかい毛の手触りがいいらしい。
『あのね……』
髪はともかく、確かに私の翼は光沢があって瑞々しくて綺麗だけども!
これじゃ私、玩具みたいじゃない……。
全く。
この子達、私の事同年代だと思ってるでしょ! 弄り過ぎ!
……まぁ、珍しいんだろうなぁ……。
触らせてやるか……と、アリアは男の子達の気の済むまで弄らせてやるのだった。
そうしている内に……、
パタン……。
扉の閉まる小さな音が聞こえた。
◇
(仲良く遊んでいるからいいかと思ったが……、ありゃありゃと……ヘンリー王子まで言い出したぞ……)
どうなっている?
パパスはヘンリーの部屋の扉を閉めると、元の場所まで戻り頭を捻る。
(……さっきの二人の様子、少しおかしくなかったか……? まるで、もう一人居るようだった……?)
「ふむ……」
パパスは壁に背を預けると、足をクロスさせ腕組みする。
そして、天井を見上げた。
「……子供にしか見えない存在……? ……そういえばどこかでそんな話を聞いたことがあったような……」
パパスは呟き、“
「…………よくはわからぬが、アベルに友達が出来たならまあいいか……」
パパスは考えるのを止め、傍にある窓の外を見上げる。
日が少し傾きかけていた。
◇
パパスが持ち場に戻った頃、アベル達はというと。
「アリア、せっかく文字が書けるようになったんならさ、自分の名前書いてみたら?」
『え……?』
「そうだな。先ずは自分の名前だけでも覚えるといいと思うぞ」
アベルの提案で、アリアは自分の名前を書けるように練習することにした。
「…………ア、……リ……、“ア”は一緒だから……こう、ね?」
「ブッブー……! ……残念だな。“リ”が間違ってるぞ。“リ”はこう!」
「え~っ!? 難しいよぉ……」
紙に書いた自分の名前は違うらしく、ヘンリーが容赦なくバッテンを付ける。
アリアは悔しそうに嘆いた。
「んー……アリアの居た世界では違う文字を使ってたの……?」
不意にアリアの様子を見ていたアベルが訊ねてくる。
「うん、そうなの。この世界の文字とは全然違うよ。慣れの問題だと思うけど、こっちの方が私には難しいかなぁ……。一朝一夕には覚えられないと思うわ」
「そっか。でも名前だけでも書けるといいと思うんだ」
「そうだよね~」
「僕がお手本を書いてあげるから、そのリボン貸して?」
アベルはアリアの髪に結ばれているビアンカに貰ったリボンを指差した。
「へ? リボン……って、これ……?」
「うん。旅してるとこんな風に練習できる機会も少ないでしょ? だからいつでも見て忘れないように、そこに書いておけば覚えられるかなって」
「なるほど~! 確かに。じゃあ……」
アベルの提案にアリアはリボンを外して手渡した。
すると、アベルがリボンに小さく【アリア】と書き込んでくれる。
「もし、落としても誰のかわかるしね。はい、どうぞ」
「そうだね。アベルありがとっ」
名前を書き込んでもらったリボンを返され、アリアは再び髪に結び付けた。
リボンを摘まみ上げると、小さな文字が見える。
なるほど、これなら忘れずに済むわね!
アリアは名前を完全に書けるようになるまで、こまめに見るようにしようと思ったのだった。
「お前、何でそんな小さな字が書けるんだ??? 器用なんだな(しかも字がオレより上手くないか……?)」
アベルとアリアを見ていたヘンリーが、自分の書いた文字を見ながらアリアの手元のリボンに書かれた字と見比べる。
ヘンリーの書いた文字はずいぶんと大きかった。
そしてその大きさがまちまちで、汚い。
六歳前後の子供は小さく揃った文字を書けないのが普通なのだが、アベルの書いた文字は小さく、しかも揃っていた。
「……へへっ。僕こういうの得意みたいだ」
「アベルってすごいのね」
「それほどでも……」
アリアに褒められ、アベルは後ろ頭を掻く。
「……お、オレだって書けるんだからなっ!!」
ほらっ、アリア見てろよ! と、ヘンリーは新しい紙を取り出し、自分の名前を書き出す。
少し小さくは書けたが、大きさはバラバラだった。
「くぅっ!!」
思ったように書けなかったヘンリーは悔しそうに歯噛みすると、字の練習を始める。
そんなヘンリーを余所に、アリアはアベルに話し掛けていた。
「ね、アベル。“アベル”ってどう書くの?」
「え……? あ、僕は……」
ちょっぴり感づいたパパスさん。
アベルが楽しそうなのでそれでヨシ! なのです。
ていうかパパス耳垢溜まってるんじゃwww
文字なぁ……。
どんな文字なんやろうね、複雑な感じの文字を希望します……。
かっちょいいやつ。
青年期で英単語が出て来るけど、記号ってことにしておこうっと。
このまま、ほのぼの平和に終わるといいなぁ~……(終わらんけどもw)。
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