ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

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魔物と遭遇し、近くにあった回復の泉のある建物に無事避難したアリアとクリエは小休止することにしました。

カケラの力は偉大なり。

では、本編どぞ!



第七百九十六話 “カケラ”のチカラ

 

 

 

 

 

「ふ~……こんな場所でティータイムだなんて……。クリエちゃんてやっぱりすごいなぁ」

 

「えへへ。たとえ地底の底でも、ボクがいればどこでもケーキが食べられるのさ☆」

 

「さっすが! おいしかったよー♡」

 

 

 ……回復の泉で全回復をしたのち、「休憩がてら この場所についての説明をするね」とクリエから告げられ、現在二人はクリエの出した【ケーキセット】でティータイム中だ。

 先ほどまで命の危険を感じていたはずだが、屋内に魔物が入れないこともあり、すっかり気が緩んでしまっている。

 

 アリアが二杯目の紅茶を飲み始めてようやく、それまで【ケーキ】にがっついていたクリエが口を開いた。

 

 

「んぐんぐ……ふー食べたー、チャージ完了☆ あのね、アリアお姉さん。今も存在しているのかもしれないけれど、ここはたぶん、かつて存在した空間なんだと思う」

 

「へ? かつて……?」

 

 

 腹が減っては戦はできぬということか……。

 クリエの口の周りには、生クリームや【ケーキ】のスポンジカスが付着していたが、乱暴に拭ってさらに汚れを広げた。

 話をする表情は真剣そのものだというのになんだか間が抜けて見え、可愛く思えたアリアは汚れた頬にハンカチをそっと当てて拭ってやる。

 

 ……かつて存在した空間とは何なのだろう――。

 

 アリアの首がまた横に傾いた。

 

 

「うん、そだよー。ここに来るまでにボクが“あっちとこっちが繋がってたり、繋がってなかったり”って言ったの、憶えてるかな?」

 

「あ、うん。意味がよくわかんなかったけど……」

 

「だよねー。で、ね。ボクらの探している“カケラ”のせいで、時間軸と、空間を繋ぐ“道”っていうのかな……それが壊れちゃってる状態なんだ~。本来の道がちゃんと繋がってなくて、別の空間と時間が混ざって繋がっちゃってるってわけ」

 

「ほぉ……?」

 

 

 クリエが身振り手振りを交え懸命に教えてくれるが、やはりアリアにはさっぱりわからない。

 

 

 ――道……? どういうことだろう……??

 

 

 とにかくクリエの話を真剣に聞いてみようと試みたものの、首を捻ったまま腕組みするしかできなかった。

 ここは話の腰を折らず、黙って続きを聞くのが良さそうだ。

 

 

「ボクたちが異世界から来たのは知ってるでしょー?」

 

「うん、もちろん」

 

「ボクとシドー君、この間までこの世界の大昔にいたんだよねー」

 

「え……、ええっ!? お、大昔って……どういうこと……!?」

 

 

 クリエの話は続き、次から次へと謎を呼ぶ発言にアリアは我慢できずに驚きの声をあげる。

 “この間まで~大昔に~”とは過去にいた――ということになるのだが、あまりに軽く言ってのけるから信憑性に欠けるような……。

 異世界から来た彼女がわざわざ嘘を言う必要もないとは思うものの、にわかには信じられなかった。

 

 

「“カケラ”にはシドー君のチカラが宿ってるんだけど、そのチカラは時空の壁を破壊してしまえるほど強いものなんだよ。ボクたちのいた世界と、この世界を隔てる“時空の壁”ってのがあるんだけど、間違って破壊しちゃったみたい」

 

 

 説明しながらクリエは【ふくろ】から世界に見立てた、草を丸めたような緑の球体を二つと、茶色い瓦を取り出し、球体をそれぞれ離して置いて、間に瓦を壁のように立たせる。

 そうしてから「この指がシドー君のチカラね!」瓦を指先で弾き割ってみせた。

 

 “パリンッ!”

 

 壁に見立てた瓦があっさりと割れて崩れる。

 ……こうして異世界とこの世界の行き来が可能になってしまったということらしい。

 

 “テヘッ☆”――なんて。

 クリエは悪気の無い笑顔で頭を掻いている……。

 

 

「っ……や、やばくないのそれ……(緑の球体……なんかちょっと臭うな……)」

 

「ヤバイ、かなりね。本当はこの世界に来る予定じゃなかったんだけど、ボクがミスったせいでこの世界に来ちゃったってわけ☆ しかも、時空の壁を壊すための道具が途中で壊れて“カケラ”になっちゃうわ、弾け飛んじゃうわ、時間軸も壊して この世界の過去に飛ばされるわで、てんやわんやでさ~」

 

 

 緑の球体が少々臭うため、そっと鼻を抓みながらアリアが心配そうに訊ねるも、何度も様々な窮地を乗り越えきたのだろう、肝が据わっているというかなんというか、クリエの表情は笑顔のまま。

 

 ……二人が異世界からこの世界にやって来たのは、偶然だった。

 

 だから二人は元の世界に戻るために、壊れて弾け飛んだ道具の“カケラ”を探している。

 “カケラ”にはシドーの力が宿っており、体内に取り込むと破壊の力を得ることができるが、代わりに理性を崩壊させ、己の欲求を我慢できなくなるという。

 

 そもそも“カケラ”自体、異世界の住人であるクリエとシドーにしか見えないものだから、偶然でなければ手にすることはないわけで、悪用される可能性は低い。

 とはいえ、偶然取り込むことはありえるのだそうだ。

 この洞窟へアリアとクリエを連れて来た魔物、【ガオン】も知らない内に“カケラ”を取り込み、何らかの理由で人を誘拐していたのだろう……とのこと。

 

 “カケラ”は破壊のチカラを持つが、同時創造のチカラも持つんだよ――クリエはそう締めくくり、ドヤ顔で笑った。

 

 

「……っ、クリエちゃん、そのっ、世界に影響があったりは……。世界が壊れたりなんかは……しなぃょ……ね……?」

 

 

 クリエたちの介入で、世界に何か影響があったりするのだろうか――。

 

 当然アリアは気になる。

 アリア自身、前世とはいえ異世界からやって来たのだから。

 

 異世界の住人の介入……もし自らの介入が、この世界の均衡を崩すことになったとしたら。

 アベルを不幸にしてしまうのが嫌なのもそうだが、もしも世界自体が崩壊してしまったら。

 それを招いたのが自らだとしたら。

 

 ……死んで詫びたところで償いきれない。

 

 

「んー、影響は少なからずあるとは思うけど……、ボクとシドー君、“カケラ”集めしかしてないから……。たぶん世界が壊れたりはしないんじゃないかな~。世界って案外丈夫だからさ。ボクらの影響で壊れるとかは心配しなくてもいいと思う。過去の世界にいたとき勇者一行に会ったけど、今この世界壊れてないみたいだし?」

 

「そうなんだ……へ? 勇者一行に会ったって……、えぇっ!? 本当!? クリエちゃん、勇者さまに会ったことあるの!?」

 

 

 クリエの思わぬ回答にアリアは目を丸くして大きな声を上げる。

 自分が世界に与える影響がどうの――なんてこと、一瞬で吹き飛んでしまった。

 

 

「うん、天空の勇者ソロね。エメラルドグリーンの髪のイケメン」

 

「名前まで……! ソロさまっていうのね……! 彼に会って魔王を倒してもらえないかな……」

 

 

 ――エメラルドグリーンの髪でイケメンといえば……ひょっとしてⅣの勇者……?

 

 

 意外なところで天空の勇者の情報が得られたアリアの手は組み合わされ、瞳をキラキラ輝かせる。

 天空の勇者の名前がわかったのなら、探すのも多少は楽になるはず。見つかったらともに魔界へ行き、魔王を倒してもらえばアベルの母を取り返せるではないか――。

 

 そんな考えはすぐに、クリエによって否定された。

 

 

「それは無理だと思うよー」

 

「え」

 

「だって、ここはソロがいた世界の未来でしょ? 今ソロはこの時代に生きてないし。それに、この時代の問題はこの時代の人が解決しなきゃ」

 

「あ……。そっか……それもそうだね……」

 

 

 ゲームの中だとはいえ、ここは今のアリアの現実。

 大昔に生きた人間が、この時代に生きているわけがないのである。

 

 勇者探しは振り出しに戻ってしまった……。

 

 

「んで、今の状況ね。“カケラ”を拾った魔物がこの仮想空間を生み出してるっぽい。いや……一部は本当の空間なんだと思うけど、すべてがそうじゃないんだよ」

 

「んん?」

 

「“カケラ”を拾った魔物が“カケラ”のチカラを使って、自分が全盛を誇っていた頃の、この洞窟を作り出してるってわけ。多分ここ、ボクたちの目には見えてないけど、本当はもう誰も入ることのできない ただの地下神殿()なんだと思うよ」

 

「跡……」

 

 

 クリエがいつも持ち歩いているノートに図解で教えてくれたが、時間軸と空間の二重らせんの図に“DNAかな……?”なんてアリアはぽかん顔で、難解過ぎて理解が及ばなかった。

 ただクリエは、過去に同じ事象を経験しているらしく、それと酷似しているのだという。

 

 

「うん、跡。ここはもう廃墟でしかない。“カケラ”さえ回収したら元の姿に戻る。そして時間軸は少し不安定だけど、過去とか未来には行ってなくて、現在のままだと思う。実体のある魔物がいるのは、たまたま大昔から生き残ってるヤツってわけ」

 

「そっか……」

 

 

 ――うん、なるほど、よくわからん……! まあそういうものだってことにしておこっと。

 

 

 アリアは思考を放棄し、遠い目をする。

 これ以上詳しく聞いたところで、きっと真に理解することは難しい。

 クリエがそう言うのだからそれでいいのだ。

 

 理解した風を装い、愛想笑いを浮かべるのには慣れている。

 説明してくれたのに理解できずにごめんねと、胸の内で謝罪しながら首を縦に振った。

 

 

「ただ……」

 

 

 ……クリエの話にはまだ続きがあるらしい。

 

 

「ただ?」

 

「その魔物がなんでボクらを拐ったのかがわかんないんだよねー。せっかく“カケラ”を手に入れたんだから、ここを創造して満足してるんだと思うんだけど……。まあ、ボクからしたら“カケラ”を回収できるからいいんだけども……」

 

 

 “カケラ”には破壊の力があるが、あくまで壊れた“カケラ”である。

 元の道具そのものならば、世界に影響を与えることもあるかもしれないが、壊れた“カケラ”にそこまでの力はないようで、小さなエリアを限定して効力を発揮するくらいのもの。

 前回似た事象に見舞われた時も、特定の範囲以内で収まっていたとのこと――。

 

 

「……なにかしたいことがあったのかな……」

 

「したいこと?」

 

「あ、うん。その魔物、全盛期の洞窟にしたかったんでしょ?」

 

「だね」

 

 

 昔の洞窟もこんな感じだったよ、とクリエは再現度の高さに感心していたらしい。

 

 

「ね、クリエちゃん。この洞窟……この先の神殿でなにがあったの……?」

 

 

 この先の神殿で昔、何があったのか。

 それがわかれば魔物の目的もわかるかもしれない。

 クリエが本当に過去に行ったことがあるのなら、この先の神殿で何があったのか知っているはず。

 

 アリアはまっすぐにクリエを見据え尋ねた。

 




※エスターク神殿編(仮)はかなり独自設定なお話となりますのでご容赦ください。(い、いまさら…w)

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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