ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

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シドーが囮になり、アベルたちは…。

やって来ました、地下神殿。

では、本編どぞー。



第八百二話 地下神殿

 

「っ……」

 

「主殿、どうされますか?」

 

 

 囮になっているシドーを一人置いて先に行ってもいいのだろうか……。

 二の足を踏むとはまさにこのこと。ピエールに判断を仰がれたが、アベルは自分よりも小さな少年に罪悪感が湧いてすぐに動き出せなかった。

 ところがそんな時、仲間がいるというのはすごいことだと思う。

 

 

「がう!(行くんゴ!)」

 

「ちょっ!? プックル!? わぁああああっ!?」

 

 

 切羽詰まった状況でいち早く動いたのはプックル。

 プックルがアベルのマントに噛みつき、引き摺って走り出したのだ。

 【ほこら】を抜け出し神殿へとひた走る。その後ろにはピエールも続き、引き摺られるアベルを憐れむように見つめていた。

 

 【ほこら】前に残っていた魔物たちはアベルたちに目もくれず、シドーだけを狙って攻撃している。

 不利であるはずの戦いもシドーは臆することなく一人で大立ち回り。

 彼がどれだけ強いのか計り知れないが、今のところ怪我もなく順調そうだ。

 アベルもピエールも徐々に遠ざかるシドーの無事を祈り、それ以上振り返ることはしなかった。

 

 

「ぐえぇぇ……プック……ぐ、は、走るから……! 放し……! ぐっ(首絞まってる絞まってる!!)」

 

「グルルルル!(アリアを助けるぞ! 主、走れ!)」

 

 

 今はシドーを信じ、神殿に向かうことが最優先。

 プックルはこの場をシドーに託し、一刻も早くアリアの無事を確認することを選んだ。

 マントを咥えているから走りづらいであろうプックルからは、唸り声が聞こえる。アベルを引き摺っているため、速度が出なくて悔しそうだ。

 首が絞まって上手く言葉が出せないアベルは一瞬気を失いかけたが、どうにか体勢を立て直し走り出した。

 

 

「ぃてて……プックルありがとう、ごめん! シドーを信じて急ごう!」

 

「がうがう!(アリアの匂いが上からする!)」

 

 

 絞まった喉を擦り擦り、アベルに話し掛けられたプックルは目の前に迫り来る神殿の上階へと目線を移す。

 【ほこら】を出た時に気付いたアリアの僅かな匂いが神殿に近付くと強くなった。

 

 ……巨大な建造物である地下神殿は石造りで建てられた禍々しいもの。

 地下神殿の入口前にやって来ると扉はなく、入口の上部に邪悪な魔物の顔を模した扉飾りが設置され、神殿内へと続く暗闇が訪問者を迎える。

 

 

「うん、行こう。大きな神殿だね!」

 

「ガルルルル……(変な臭いもするんゴ……!)」

 

 

 プックルの言葉をアベルが真に理解することは難しい。

 神殿の禍々しさに圧倒されたアベルは、ピエールともども警戒に毛を逆立てたプックルに気付くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは……、急ごう」

 

 

 神殿に一歩踏み込み、辺りを見回す。

 中は広いホールのような空間で、何本かの【かがり火】が設置されており視界はそれほど悪くはなかった。

 神殿なのであれば通常なら神聖な気を感じるはずである。だがそんなもの微塵も感じられない。

 屋内に漂っているのは土色をした霧のようなガス。呼吸は難なくできるため色の割に濃度は薄いようで、そもそも可燃性はないのか【かがり火】が設置されているのを見るに燃えたりすることはなさそうだ。

 入口上部の壁飾りから察してはいたが、ここは神聖とは真逆。不穏な気で満たされている。

 

 シドーのことは心配だ。

 けれど本能的なものだろう、暗く重い纏わりつくような感覚が一歩進む毎にはっきりしてくるから気持ち悪い。

 この神殿内部には嫌な気が充満しているように思えて仕方ないから今は先に進む。

 ピエールとプックルも何か察知しているのか落ち着かない様子でいつも以上に警戒し、きょろきょろと周りを窺っている。

 こんなところにいつまでもいたくない。

 ……そう思わせるような場所だった。

 

 

「……ん? 小さな部屋……?」

 

 

 ホールを抜けると廊下に出た。

 廊下に面していくつか小部屋が存在し、アベルは一つ一つ扉を開けて確認してゆく。

 どの部屋にもアリアの姿は見つからず、また、宝箱がありそうな気もしたがそれもなかった。

 

 

「アリア嬢の姿はありませんね……」

 

「そうだね……この神殿、何もないみたいだ……」

 

 

 巨大な地下神殿だから宝箱が必ずあると思った。

 ……長旅をするアベルの勘は、残念なことに今回は空振りとなりそうである。

 

 

「今度こそお宝はここだぁ! って……ここも何もない。ツボすらもないし……」

 

 

 廊下に面した部屋はこれで最後。少しばかり大きな部屋の扉を開いてみたがアリアもおらず、やはり宝箱もなく空振りで終わった。

 

 

「……主殿、アリア嬢より宝探しになっていませんか?」

 

「う」

 

 

 【つぼ】くらいあってもいいじゃないかと唇を尖らせるアベルはピエールから鋭い指摘を受ける。

 

 アリアが一番大事だ。

 大事だけど、第一目的ついでの宝探しは冒険者たる者の常識。

 アリアの居場所確認と宝探しが一緒にできて一挙両得なのだから問題はないはず。

 “もちろんアリアが一番に決まってるじゃないか!”……一応言い訳しておいた。

 きっとアリアなら「さっすがアベル。アベルは抜け目がないよね! すてき♡」なんて褒めてくれるだろう。

 

 ……部屋には何もないため、すぐさま廊下の奥へと歩みを進める。

 

 

「階段か……、そういやシドーが上だって言ってたっけ」

 

「その前に敵ですね」

 

「……うん、がんばろう!」

 

 

 廊下の先に二階へと続く階段を見つけたが、背後から魔物の群れがやって来てアベルたちは振り返った。

 シドーがいない状態で戦うには少し厳しいかもしれない。

 だが骸骨の魔物五匹。どうにか切り抜けてやろうじゃないか。

 アベルもピエールもプックルも、同時にそれぞれの骸骨の魔物に向かって先制攻撃を仕掛ける。

 アベルが袈裟斬りに斬り掛かった個体は霧となって消え、ピエールの横一線の攻撃はヒット。実体だ。

 プックルの振り下ろした爪は空を切って骸骨の魔物は一匹消えた。

 

 実体だと判明した個体はピエールに任せ、残る二匹はアベルとプックルでもう一度それぞれ向かう。

 ……結果実体は三匹。手強いがやるしかない。

 

 この骸骨の魔物、【まどろみのけん】を装備しているのか眠り攻撃をしてくるのがいやらしくてアベルは苦手だ。

 仲間のうち誰か一人でも眠ってしまえば戦力がかなり落ちる。

 誰かが眠らされる――そんな想像をしてしまえばその通りになりそうで想像したくなかった。

 

 戦闘中は何が起こるかわからない。

 ではせめて自分だけは絶対に眠らないようにしないと……。アベルは絶対に眠らないぞと気張りながら戦っていく。

 

 

「っ、プックル!!」

 

 

 アベルの声が部屋に響いた。

 【まどろみのけん】攻撃によりプックルが眠らされてしまったのだ。

 ……プックルは鼻提灯まで作って気持ち良さそうに寝入っている。

 

 

「主殿! 一匹仕留めます!」

 

「ああ、頼む! 僕はスカラ!!」

 

 

 こんな戦闘中によく寝落ちできたな! なんてツッコみたいがそんな余裕は今のアベルにはない。

 ピエールが実体のうち一匹を集中攻撃しに行っている間に、激しい戦いの中ですやすや眠るプックルに【スカラ】を唱えて守備力を上げておく。

 これで多少攻撃のダメージを和らげることができるだろう。

 

 

「プックル早く起きて……! ッ!!」

 

 

 【スカラ】を唱えたアベルの背後から、骸骨の魔物が剣を振り下ろし斬り掛かってきた。

 油断などしないアベルは身を転じて【パパスのつるぎ】で攻撃を防いだ。

 

 ギチギチギギギッ。

 刃と刃が擦れて火花が散り、押して押されて一時的に力が拮抗したが最後は力任せに弾き飛ばす。

 幸いと言えるだろうか、骸骨の魔物より力はアベルが上だったらしい。骸骨の魔物はアベルの反撃により吹き飛ばされて、大打撃を受け動きを鈍らせた。

 

 

「よし、もう一押し!」

 

 

 力の押し合いで手が痺れているような気もするが、アベルは動きの鈍い骸骨の魔物に(とど)めを刺すべく【パパスのつるぎ】を頭の上に掲げて一気に下へと振り下ろす。

 ……骸骨の魔物は崩れ去った。

 

 

「一匹討伐致しました!」

 

「ありがとう! プックルのところへ!」

 

 

 アベルが止めを刺した頃、ピエールも勝利を収めたようで報告とともにやって来る。

 二人は眠るプックルの元へ急いだ。

 

 

「プックル! 大丈夫かい!?」

 

「がうぅ……(痛いお……)」

 

 

 丁度今目覚めたばかりのプックルの両目の上に大きなたんこぶが二つ――。寝ている間に殴られたようでかなり痛そうだ。

 致命傷ではないため【やくそう】一つで回復が間に合うだろう。

 

 

「がうがう!(怒ったお! おやつにするお!)」

 

 

 ちょっぴり涙目のプックルはお怒りモードで、残る一匹に向かって爪を斜めに振り下ろす。

 アベルもピエールもプックルをサポートしながらどうにか戦闘を勝利で終えた。

 

 

「ふう……もぐもぐ」

 

 

 戦いが終わり深い息を吐いて緊張を少しばかり緩める。

 まったくなんて強さだ。深手は追わなかったが、ところどころに怪我をしてしまった。

 【やくそう】を食べ食べアベルはプックルにも【やくそう】を与えようとしたが拒否される。

 

 そんなことより今はこれ――。

 

 

「がう♪(ホネ~♪)」

 

 

 プックルは骸骨の魔物が消える前に、おやつに丁度良いサイズの【骨】を手に入れていたらしい。それに齧り付いた。

 味が良くなかったようで一瞬齧ったもののすぐにぺっぺと吐き出す。

 

 

「フフッ。おいしくなかったんだね、ほら薬草だよ」

 

「がうがう……(アリアの作ったごはんが食べたい)」

 

 

 鼻筋を顰めて不服そうな顔をするプックルにアベルは今度こそ【やくそう】を与える。たちまちプックルのたんこぶは癒されぼこぼこだった顔が元に戻り、頭を撫でてやった。

 プックルの言葉はアベルには伝わらない……。

 




肉の付いていないホネじゃ美味しくないよね。
イヌ科でもなさそうだし。

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