ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

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別ルートでしか行けない場所にアリアを見た気がするアベルは……。

急がば回れっす。

では、本編どぞー。



第八百四話 急がば回れ

 

 

 

 

 

 ……まさかそんなはずはない。

 走るアベルの額から手の平から、脇から暑くないのに嫌な汗が噴き出て止まらない。

 ドクンドクン、ドクン。

 鼓動が痛いくらいやけに強く響く。

 

 さっきのマスク男がアリアだなんてこと、あるわけがない。

 あんな魔物の目の前に独りで座っているはずは……。とにかく早くあの部屋の上層に辿り着いて確認しなければ。

 

 足取りがどんどん早くなる。

 

 

「はっ、はっ、はっ……」

 

 

 焦燥感に苛まれ、呼吸が浅くなった。

 アベルは二階へと続く階段を一段飛ばしで駆け下りる。

 すぐに二階通路へ到着したが、勢いが良すぎたのか急には止まれない。

 

 

「え、わっ!? シ、ドッ」

 

「おおっ!?」

 

 

 “ドンッ!!”

 

 

 階段を駆け下りたアベルと通路を駆けて来たシドーがぶつかった。

 互いに弾き飛び尻餅をついて「いてて」。アベルはすぐに立ち上がる。

 

 

「シドー! 無事だったんだね!」

 

「おー! アベルか! なっ、大丈夫だって言ったろ!」

 

 

 尻餅をついたままのシドーに手を差し出し、引っ張り上げた。

 シドーの服が多少汚れてはいるが、怪我した様子はなく明るい笑顔を見せてくれる。

 あれだけの魔物を相手にして無事だったとはさすがだ。彼の戦闘能力は神懸かっているとしか思えない。

 

 

「ああよかった! って……シドー。君、クリエちゃんと先に合流してたんじゃ……」

 

「アベルオマエ何言ってるんだ? オレはたった今神殿に来たばかりだぞ」

 

「え、けどさっきクリエちゃんとシドーを上で見て……」

 

 

 アベルの視線が頭上、三階へと向けられる。

 

 数分前、三階の部屋で柱の後ろに隠れるクリエとシドーを確かに見た。

 ピエールとプックルは見ていないからはっきりとは証明できないが、アベルの記憶の中では確実だ。

 

 

 ――どういうことだ……?

 

 

 困惑するアベルを前にシドーが腕組みをし首を捻る。

 

 

「……。ははーん……なるほど。混ざっちまってるんだな?」

 

 

 シドーはすぐに答えを見つけたらしい。

 ニヤリとほくそ笑んで二度、三度軽く頷いた。

 

 

「混ざ……?」

 

「上に行くのか?」

 

「あ、この階段からじゃ駄目だった。あっちから行ってみようかと」

 

「そうか。急がば回れってやつだな!」

 

 

 アベルの指が今し方下りて来た三階へ続く階段から二階通路の奥へと移り、下り階段を指し示す。

 シドーは同意しすぐさま一行は下り階段に急いだ。

 

 一階に下りて通路を進むと、何かが安置されていたと思われる大きな台座が目に入った。

 だが見たところ無人で、何も置かれている形跡はない。

 やはり宝箱なんてものはなさそうだ。

 台座の前に小部屋もあり、一応素早く扉も開けて中を確認したがここももぬけの殻。

 宝箱は諦めアベルたちは奥へと足を進める。

 

 

「あっ! スライムベホマズンとアンクルホーン!!」

 

 

 通路を進んで行くと前方から見覚えのある魔物が現れ、アベルは身構えた。

 【アンクルホーン】がこんな場所に出るのもそうだが、【キングスライム】によく似た身体の色が黄緑色の巨体【スライムベホマズン】までもがここに出るとは……。

 

 

「へえ、アベルの知ってる魔物か!」

 

 

 ……いっちょ戦ってやろうじゃないか。

 シドーが駆け出し先制する。

 

 渾身の力を込めて【スライムベホマズン】の横っ腹……腹なのかはわからないがそこに【こんぼう】の一撃をぶち込んだ。

 【スライムベホマズン】の身体に【こんぼう】がめり込んだかと思うと遠くの壁へと一直線に飛んでゆく。

 ドンッ! と壁にぶつかった【スライムベホマズン】の巨体はそのまま壁に貼り付いた。

 

 

「おぉっ! すごい!」

 

「へっへーん!」

 

 

 どうやら実体だったらしい。

 アベルの歓声にシドーは鼻の下を人差し指で擦る。

 【スライムベホマズン】はシドーから受けた痛い一発で目を回している。

 ……やはり先制攻撃が有効とみえる。

 

 

「じゃあ僕も!」

 

 

 アベルも負けじと【アンクルホーン】に向かって斬り掛かった。

 

 結果二匹ともに実体で、その後【スライムベホマズン】による完全回復呪文(【ベホマズン】)を使われたりもしたが、二匹とも倒して無事勝利を収め通路を進む。

 シドーがいると戦いがずいぶん楽に感じた。

 

 

「――で、アリアがいたって?」

 

「ああ、君とクリエちゃんは柱の裏側に隠れていて……」

 

 

 奥へと足を進めながらシドーに三階で見た光景を説明し、アリアがいたかもしれないことを伝える。

 なぜか【あらくれマスク】を被っていたが、聞こえてきた声といい、マントの色といい、愛する妻のアリアとしか思えない。

 認めたくはなかったが、夫である自分が愛してやまない妻を間違えるはずがないのだ。

 

 ……説明を続けるうち、アベルの顔は真っ青になっていく。

 

 

「そうか……、巨大な魔物と小物の間にアリアがいて拍手、か……? ……、まあ大丈夫だと思うぞ」

 

「うん……へ? 大丈夫? ほ、本当かい?」

 

 

 シドーが慰めのようにぽんぽん。腕を軽く叩いてくれたが、簡単に信じられそうにない。

 彼は以前に一度ここに来たことがあるらしいが、この神殿の禍々しさを感じてはいないのだろうか……。

 三階のあの祭壇へ近づく度に言い知れぬ恐怖のようなものがぞわぞわと背を這って気持ち悪いというのに。

 

 

「ああ、多分今のところはなー」

 

 

 なぜだろう、シドーは余裕のある態度で辺りを見回しながら歩いている。

 彼の武器は通常よりも大きいだけのただの【こんぼう】だ。頼もし過ぎるというか、なんというか……。

 何百万回と人生を繰り返しているアベルでも、初めては緊張の連続だというのに、一度経験したぐらいでここまで余裕が生まれるものなのか。どれだけの修羅場を潜り抜けてきたらここまでの余裕が?

 

 ……シドーを見ているとなんだかそれだけではない気がする。

 色々と疑問に思ったが、もっと根本的なものなのかもしれない。

 

 

「今のところは……?」

 

「アリアじゃなくて、冒険者と小物が戦っていたんだろ?」

 

「あ、ああ……」

 

「じゃあ、問題ないな」

 

「え、それどういう……」

 

「だがそのあとが予測できないからな……急ぐか」

 

「へ? あ、ああ!」

 

 

 話をしながら通路の先に二階に続く階段を見つけ上がっていく。

 二階に出るとすぐ三階に続く階段があった。

 

 その先でアベルが絶叫するまであと少し――。

 




シドーくんは強い。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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