ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

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シドーと合流したアベルはアリアのいるフロアへと急ぐ。

エスタ…。

では、本編どぞー。



第八百五話 あの魔物はエスタ…

 

 

 

 

 階段を上がって三階に出ると、先ほど下から見た祭壇上へと辿り着いたらしい。

 到着早々目の前で頭に大きな二本のツノを持つ青い身体の巨体と戦う冒険者たちの姿があった。

 青い魔物をはっきりと目の当たりにしたアベルはその場で固まってしまう。

 

 

「ソロ! わたしが行くわ!」

 

「アリーナ! 僕も!」

 

 

 とんがり帽子を被った少女と、エメラルドグリーンの髪の青年が武器を手に青い巨体に向かっていく。二人の攻撃がそれぞれ入ったが致命傷には至らない。

 青い巨大な魔物は寝ているのだろうか、動きが鈍いが突然【あやしい光】を放って、その光を浴びた冒険者たちは傷を負った。

 

 

「くっ……ザラキ!」

 

「クリフト! ザラキなんか使ってんじゃないわよっ! ちったあ学習して回復しろっ! メラミッ!」

 

 

 神官らしき青い髪の青年が即死呪文(【ザラキ】)を唱えるも、魔物には効かない。

 【おどりこの服】を身に纏った女性が中級火炎呪文(【メラミ】)を唱えてダメージを与えていた。

 

 

「マーニャさん! ベホイミ!」

 

「ありがとーソロちん♡」

 

 

 エメラルドグリーンの髪の青年が回復呪文を唱える。

 マーニャと呼ばれた【おどりこの服】を身に纏った女性は戦闘中にも関わらず嫣然と微笑んでまた中級火炎呪文(【メラミ】)を唱えた。

 熱い炎と砂煙、武器が互いに身を削って火花が散る。

 

 

 “はえ~すっごい!!”

 

 

 不意に戦場(いくさば)にそぐわない聞き慣れた鈴を転がす声が、冒険者たちの掛け声の合間に紛れた。

 

 

「あ……アリア……? いったいどこに……」

 

 

 しばしぼうっとしていたアベルだったがアリアの声を拾い、ハッと辺りを見回す。

 ……アベルの顔は真っ青に染まった。

 

 

「ソロさまがんばって~! そこ~! ふぁいとー!」

 

 

 よくよく見回し、声を頼りにアリアを捜す。

 今アベルは冒険者たちの背後にいるため、巨大な柱もあってか青い巨体からは見えていない。

 アリアも柱の陰に隠れているはず。

 もう少し近付いて捜せば見つかる、彼女は近くにいる。

 

 ゆっくりとアベルは戦う冒険者たちに近付いていく。

 加勢したいが、まずはアリアの安全を確保したい。

 

 

「……っ、なんでアリアそんなところに!?」

 

 

 青い巨体から一番近い柱の陰からこっそり戦いを覗き、アリアを見つけた。

 だがアベルの目は驚愕に見開かれ、声を上げる。

 

 ……アリアは青い巨体のすぐ脇にいたのだ。

 本人は隠れているつもりなのだろうが、どう見ても隠れていない。

 ただ脇にいるだけで、奴が武器を振れば楽々届くようなその距離――。

 それも三角座りで膝に【バケツ】を抱え……【バケツ】の中身は親指の先くらいのサイズの白く丸い物体がいくつも入っている。

 

 食べ物か何かか……?

 疑問に思う前にアリアがそれを一つ抓んで食べた。

 

 

「ん……この声は……? あっ! アベル! わあっ♡ 来てくれたのね!」

 

 

 アベルの声に気付いたアリアが【バケツ】を床に置き【あらくれマスク】を取り去る。

 満面の笑みでその場に立ってアベルに手を振った。

 約一週間振りの愛しい妻の笑顔にアベルも笑顔で返したかったが、今はそんな場合ではない。

 

 

「アリアっ! 今すぐそこから離れて! あいつはマズイ!」

 

「えぇっ!?」

 

 

 アベルは言うや否や柱の陰から飛び出した。

 まだ魔物は眠っているようだが、起きたらアリアもターゲットにされかねない。

 

 ……アベルは青い巨体が何者か、気付いてしまったのだ。

 身体の色こそ違えど、あの魔物はエスタ――。

 

 

「くっ! 早く逃げ――ぁ、やめ」

 

「アベ……」

 

 

 走り寄って来るアベルにアリアが両手を広げ受け止め体勢を取る。

 その直後――青い巨体の口から真っ白な【こごえるふぶき】が吐き出された。猛烈な冷たい吹雪が辺りを襲い、冒険者たちだけでなくアリアにも降りかかる。

 

 

 

 

「う゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛!!」

 

 

 

 

 突然冷気で目の前が真っ白に染まり、冒険者たちの呻き声が聞こえたが、自身の叫び声が大きくアベルの耳には入らない。

 直前にマーニャが中級火炎呪文(【メラミ】)を唱えていたためか、白い吹雪は赤く染まり、一見すると炎に包まれたように見えた。

 

 

「ア゛リ゛ア゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ゛!!」

 

 

 ――あの時と一緒だ……!

 

 

 アベルの脳裏に幼少期炎に包まれたアリアの姿が重なる。

 あの時はアベルの位置から距離もあって、もしかしたら運よく回避できていたから彼女は生きていたのかもしれない。今回ははっきり目の前で炎……否、吹雪に包まれ一溜りもない。

 

 吹雪はまだ続いており、アリアの姿が見えない。凍えて死んでしまったかもしれない。

 絶望したアベルは膝から崩れ落ちた。

 

 

「あ、ありあ……? ありあぁ……! い、や、だ……。アリアが死ぬなんて嘘に決まって……」

 

 

 ぼたり。

 

 

 ぼたぼたと涙が勝手に溢れ出て止まらない。

 強い風が邪魔をして吹雪に近付けない。

 

 ……涙で前がよく見えなかった。

 

 

「……うそ、だ……。こんなの、認められない……」

 

「主殿!」

 

「がう!」

 

 

 吹雪の前に打ちひしがれるアベルにピエールとプックルが駆け寄って来る。

 二匹(ふたり)ともそれ以上は黙り込んでしまった。

 

 ……吹雪が止むまでアリアの元には行けない。

 アベルは回復呪文をすぐに唱えられるよう、魔力を集中させ吹雪が落ち着くのを待つことにした。

 

 

「っ……ううっ、くそっ……!」

 

 

 アリアはきっと生きている。

 ここに来るまでの戦闘で傷ついてなければ瀕死になるかもしれないが、生きている可能性は高い。

 魔力を集中させているが握った拳はアリアを失う恐怖に震えた。

 

 

「……あの中に、アリア嬢が……」

 

「がう……(アリア……バターの匂いがするぞ)」

 

「え? バターですか?」

 

「がう(うまそうなニオイ♪)」

 

 

 後ろでピエールとプックルの会話が聞こえたが、アベルの耳には入らない。

 

 そのうち白い吹雪が治まってくる。

 ……アリアから返事はない。

 

 アベルはすぐに駆け付けたかったが現実を受け入れ難く、気持ちだけは動くのにいつの間にか拳だけでなく全身が震え、身体は動かなかった。

 それどころか倒れているであろうアリアを直視することができずに、顔を俯けてしまう。

 炎による攻撃じゃないからアリアの肉体はあるはずだが、きっと完全に凍ってしまっている。

 

 ……何事もなかったように元気な姿を見せてくれたらいいのに――。

 

 願ってもそれはないのだと頭は酷く冴えて、アリアを直視するには少し勇気が要る。

 完全に吹雪が治まると再び冒険者たちの戦いが始まり、喧噪だけが耳に届いた。

 

 

「……っ、ぅぅ……」

 

 

 ――アリアがいない世界に何の意味があるんだ?

 

 

 ここまで頑張って未来を変えてきたのに、こんな得体の知れない場所で彼女を失うなんて……。

 母には申し訳ないがもういっそ、ここで彼女と一緒に死んでしまおうか。

 そうしたらまた別の生を受け、何度も生まれ変わることになるかもしれないが、いつかアリアと出会いともに旅ができる。

 

 ……けれど、そんな確率はきっとないに等しい。

 

 俯き黙り込むアベルは床に落ちていく涙を見下ろす。

 あれだけ酷い吹雪だ、床も凍らせ辺りも凍って身体も冷えて――と、そこまで考えアベルは思考を止めた。

 

 

「……?」

 

 

 よくわからない違和感を感じる。

 冒険者たちの戦いは続いていて、激しさが増している。

 冒険者のマーニャが、中級火炎呪文(【メラミ】)を唱え、アベルの横を大きな炎の玉が飛んでいった。

 

 が、その炎の玉は熱くなかった。

 なぜだ……。アベルは首を傾げる。

 

 

「アベル~」

 

 

 そのうち幻聴がした。

 ……鈴を転がすような。何だか暢気な彼女の声だ。

 

 

「……ぇ?(今、幻聴が……?)」

 

 

 不意に顔を上げたが、再び青い巨体から【こごえるふぶき】が吐き出され視界が真っ白に塗り替えられる。

 

 

「アベル~」

 

「っ、アリアぁああああっ!」

 

 

 アリアの声がはっきり聞こえ、アベルは真っ白く塗り潰された向こうへ叫んだ。

 ところが――。

 




アベルにとってはトラウマシーン再びでした。

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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