ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

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幻影の戦いを特等席で観戦するアベルとアリア。仲間の活躍を楽しみつつ、夫婦そろってガオン討伐に挑む“共同作業”に胸が高鳴って…。

夫婦が揃っていれば怖いものなし!

では、本編どぞ!


第八百七話 幻影の終幕、現実の幕開け

 

「この作戦、どうかな?」

 

「……いいね!」

 

「ふふっ。そう言ってくれると思ったんだ~! アベルすき~♡」

 

 

 アベルが同意するとトンッ。アリアが肩にしなだれかかってくる。

 

 

「久しぶりにアリアの攻撃呪文が見れるんだね。ちょっと楽しみかも」

 

 

 ――心配は残るけど、一緒に戦えるのは嬉しいな。

 

 

 事前に敵の情報が手に入ったのはよかった。

 アベルは頭を傾け、寄り掛かるアリアの頭に自分の頭をそっと重ねる。

 

 ……やはり、妻が傍にいると安心する。

 これから戦闘が始まるというのに、負ける気がしない。妻の存在は、それくらい偉大なのだ。

 

 

「ふふっ、最上級の呪文唱えちゃうからね! 思いっきりやっちゃう♪」

 

「……えっと、この神殿が壊れたり、洞窟が崩れたりは……」

 

 

 アリアが【バギクロス】を思いっきり放ったら、この地下空間は大丈夫なのだろうか……。

 なにせ彼女は規格外――。

 物理的な力は非力ながら、こと呪文に関しては威力が半端ない。

 

 

 ――崩れて生き埋めに――なんてことにはならない……よね?

 

 

 ふと、そんな心配が頭をよぎったアベル。

 そっとアリアの顔を窺うと、彼女は目を合わせてにっこり笑った。

 

 

「そこは気を付けておくね」

 

 

 妻の可愛い笑顔にアベルの胸はキュンと疼き、釣られて口角を上げる。

 

 

「じゃあ、大丈夫かな」

 

「だいじょぶだいじょぶ♪」

 

 

 恐らく大丈夫ではないのだろうが、アベルは愛妻がそう言うのなら止めたりはしない。

 

 ……軽く返事したこの選択が、後に後悔することになろうとは――この時のアベルとアリアには想像もつかなかった。

 

 戦闘が進む中、アリアは勇者たちに「そこだっ、いけえっ!」と応援。

 そうして戦いもいよいよ佳境に入り、青い巨体は押され気味に……。

 どうやら青い巨体は、眠りから目覚めたばかりのようで、まだ完全に覚醒していないらしい。動きが鈍い気がする。

 

 そこに畳み掛けるように、勇者たちがひたすら攻撃を繰り返し、やがて青い巨体は石化するように灰色へと変化――沈黙した。

 

 ……戦闘が終わると、勇者たちは青い巨体が動かないかどうか突いたりしながら確認を取る。

 

 

「返事がない。ただのしかばねになったみたいだ」

 

 

 最終確認を経て、勇者ソロの口からそう聞こえてようやく、アリーナ、マーニャ、クリフトがほっと胸を撫で下ろした。

 

 

「や……、やったぁああっっ!! アベルっ! 勇者様たちが勝ったよ~♡」

 

「ンむっ!?(アリア♡♡)」

 

 

 勇者たちの勝利にアリアは大興奮だ。勢い余ってアベルの両頬を手で挟むと“ムッチュウ~”と口付けをする。

 妻の口付けはいつでも大歓迎だが、勢いが良すぎて歯がぶつかり、ちょっと痛い。

 

 

「よしっ……! いよいよ私たちの出番ね!」

 

「っ……、だね……」

 

 

 ――アリアから与えられる痛みなら、僕は……♡

 

 

 アリアは既に立ち上がり、お尻に付いた砂を払っていたが、アベルはそのまま、ぽっと頬を赤らめ立ち上がった妻を見上げた。

 もうちょっとキスしていたかった……とは状況が状況のため言えず――。

 

 

『な……なんということだ! こ、このようなことが起きようとは……!』

 

 

 ふと祭壇の下、バリア床が張り巡らされたフロア西側で、男の声が聞こえる。 アリアには聞こえなかったのか、気にしている様子は見られない。

 今後の展開が気になって緊張しているようで、彼女は沈黙した巨体を注視している。

 

 ……アベルは声のした方をちらと見た。

 

 そこにいたのは銀髪の眉目好(みめよ)い男で、隣に魔物を伴い、青い巨体を見上げて驚愕した様相。

 もしアリアが見ていたら、また「イケメン!」なんて褒めるだろうから、気付かなくて良かったと思った。

 

 

「勇者さまがた、お疲れ様でした! お見事でした! 次は私たちががんばる番です……!」

 

 

 アリアは勇者一行と、この後に出現する仮面の魔物が気になって仕方ないらしい。

 彼女は戦闘を終えた勇者たちに拍手を送ってから、【グリンガムのムチ】を手にした。

 

 

『我らが長きに渡り、その復活を待ち望んだ魔の帝王が、おぬら人間どもに敗れただと……』

 

 

 銀髪の男の話は続いているようだが、どうせ過去の出来事だ。

 アベルも気にする意味がないため、アリアの隣に立ち、仮面の魔物が出現するのを固唾を飲んで待った。

 

 すると――。

 

 

「あっ」

 

 

 台座の上、座した巨体の背後から、何者かの影がちらつく。

 ……アリアが声を上げた。

 

 

「アリア?」

 

「うん、いた……。さっきまで、大きな魔物の魔力に紛れてよくわからなかったんだけど……今ならわかる。すっごく、禍々しい気を放ってる……」

 

 

 ほら、あそこ――と、アリアは灰色の巨体を指差す。

 

 

「エスターク……」

 

「の背後……! バギッ!!」

 

 

 アベルがアリアの指し示す先に視線を向けると同時に、アリアは先制攻撃よろしく真空呪文(【バギ】)を唱えた。

 

 彼女の手から放たれた真空の刃が、沈黙したエスタークにぶち当たる。

 その瞬間、エスタークが白く眩い光を放ったかと思うと、霧散した。

 

 ……時を同じくして、辺りの空気も一変。

 その場に居た天空の勇者一行の姿も瞬時に消えてゆく。

 

 

「アリアっ!!」

 

「アベルっ!」

 

 

 アベルは咄嗟にアリアを庇うように抱きしめた。

 白い光は次第に収まっていき、残ったのは古びた台座と朽ちた床、ヒビの入った飾り柱――。

 祭壇下の男たちの姿もなく――消えてしまったらしい。

 

 ……やはりあの存在たちは幻……。

 

 

「……っ、アリア、これ、は……」

 

 

 光が収まると、目が慣れてくる。

 周りを見回し、アベルが呟くとアリアが口を開いた。

 

 

「現在に戻ったみたいだね……。ここ、こんなにボロボロだったんだ……」

 

「そうだね……」

 

 

 幻たちが消え、目の前には現実の光景が広がる。

 もう何百年、何千年という昔に存在した空間は、やはりそれなりの経年劣化を起こしていた。

 

 アリアは眉を寄せアベルの腕を掴む。その手が少し震えている。

 

 

「アベル……なんだか、嫌な予感がする……」

 

 

 その言葉とほぼ同時に、ふと視線を上げると、古びた台座の傍らに、ぽつんと何かが浮かんでいるのが見えた。

 

 それは身体をもたない、巨大な仮面だけだった。

 装飾が施されたその仮面は、長い年月の汚れとヒビに覆われている。

 

 だが、目のくぼみからはかすかな赤い光が漏れ、無言のままこちらを見据えている。

 静寂の中、禍々しい気配がじわりと周囲に広がり、まるでそこだけ時間が歪んだかのように重く、冷たい空気が流れた。

 

 アリアの唇が震える。

 

 

「……ガオン……」

 

 

 アベルも顔を強ばらせ、ぎゅっと拳を握った。

 

 

「気を抜かないように……これから何が起こるかわからない」

 

 

 その仮面の顔だけがぽつんと浮かぶ異様な光景が、二人の背筋を凍らせた。

 




ガオーン!

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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