ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

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勇者たちの戦いで青い巨体を沈黙させ、幻の戦場が消滅。現実に戻ると古びた台座の傍らに禍々しい仮面が浮かび、ガオンの気配が漂い始めて…。

顔デッカ! 当社比四倍くらい?

では、本編どぞ~!



第八百八話 巨面、覚醒

 

 

 

 

 

 そこにいたのは、仮面の魔物――【ガオン】。

 その異様な笑みの仮面は、どこを見ているのかも分からず、不気味さを際立たせている。

 

 ……仮面は動かない。

 ただ、確かにそこに“在る”。存在している。それだけで、まるで空間が怯えているかのようだった。

 アリアが無意識に一歩下がる。アベルが彼女の背に手を添えたときだった。

 

 

 ……カツン。

 

 

 音がした。

 仮面には足などないのに、床を叩くような、鈍い硬質音が辺りに響いた。

 

 

「うわっ……やっぱ気持ち悪……」

 

 

 アベルが肩をすくめるのと同時に、アリアがぴたりと足を止める。

 

 

「……あのガオン、他の個体と少し違う……何か、強い“魔力”をまとってるみたい……あっ!」

 

 

 その瞬間、【ガオン】の足元で青白く冷たい光が瞬いた。

 光はどこか禍々しく、周囲の空気が凍りつくかのように重く、二人の胸に冷たい不安を刻み込む。

 

 アリアは思わず、震える手でアベルの腕を強く握った。

 

 

「アベル……」

 

「大丈夫、アリアは僕の後ろに」

 

「ん……」

 

 

 青白い光が【ガオン】に向かって吸い込まれていく。

 

 

 ……びきっ、びきびきびきっ!!

 

 

 光が全て吸い込まれると、岩が割れるような音……。

 仮面が軋む音を立ててひび割れを起こす。破片がパラパラと床に落ちていった。

 無数の裂け目からは血のような赤黒い液体が噴き出し、それを辺りに撒き散らす。液体はやがて、ジュクジュクとした粘度を帯びて、それは仮面の一部となり硬化していく。

 ……先ほどより一回り大きくなった。

 

 仮面は再び軋む音を立て、ひび割れ、破片が落ち、赤黒い液体の噴出――。

 そして身体が再構築され、徐々に体積を増やしていく。

 

 ……まるで、脱皮を繰り返す蛇のようだ。

 そうしてガオンの身体は肥大化していった。

 

 いったい何が起こっているのかわからないまま、アベルとアリアはそれを見つめる。

 

 やがて音が止み、仮面が空間を支配するように光り輝く。

 そして、そこにいたのは――。

 

 

 【グラガオン】……。

 

 

 巨大な仮面は、能面のように感情を欠いた“無表情の笑み”を浮かべていた。

 笑っているのか、怒っているのか、それとも何も感じていないのか――判別できない。

 その曖昧さが、むしろ背筋を這うような恐怖を呼び起こす。

 

 

「デカッ!! ってか、デッ、カッ!!」

 

 

 ――通常でもデッカイのにさらにデッカイ……!!

 

 

 重要なことなので二回言いました。

 巨大化したグラガオンに、とにかくデカイと大声で叫ぶアベル。

 

 

「大き過ぎ……! こんな仮面、誰も被れなくない? ゴーレムでも無理なんじゃ……?」

 

「元々被る仮面じゃないしね……! でも、僕もそう思うよ!」

 

 

 アリアもアベルの意見に同意。

 被るとしたら誰の仮面なんだろうね~、なんて話している間、グラガオンは無言でアベルたちに目を向けたまま、その場に留まっている。

 

 ……その仮面の“目”が、ふとアリアを捉えた。

 まるで、何かを思い出そうとしているかのように――。

 

 仮面には感情の欠片もないのに、確かに“見られている”と分かる。

 その瞬間、アリアの胸が、ぞくりと冷たく震えた。

 

 

(……なんだろう、この感じ……怖い、でも……)

 

 

 アリアがわずかに目を伏せた瞬間、グラガオンは何事もなかったように動かず、ただそこに在った。

 

 

「うわぁ……めっちゃデカいし、喋んないのが逆に怖……」

 

 

 アベルがぽつりと呟く。隣でアリアが頷いた。

 

 

「……気をつけて。仲間呼ぶかも」

 

 

 アリアの言葉はフラグか何かか。

 その言葉通り次の瞬間、グラガオンの身体がぶるりと震える、と――。

 

 ズズッ……!!

 

 地面が裂け、仮面の魔物【ガオン】の群れが続々と湧き出した。

 

 アベルとアリア、ピエールとプックルの四人が警戒に身構える。

 と、そこへ――。

 

 

「ちょ~~っと、まったぁああああっ!!!!」

 

 

 緊迫した場にそぐわない、元気の良いクリエの明るい声が響いた。

 みな一斉にその声の方へ、視線を向ける。

 

 

「やあやあ! 出たね~! やっぱしっかり取り込んじゃってた~! 座標ずれてたか~」

 

 

 そこには【ビルダーハンマー】を肩に担ぎ、あちゃ~と額を抱えるクリエの姿。

 隣には、無事クリエと合流したシドーもいた。

 

 

「クリエ、どうする?」

 

「ぶっ壊すしかないっしょ! あいつ壊して“カケラ”回収しないと!」

 

「だなっ!」

 

 

 クリエはぶんぶんと【ビルダーハンマー】を数回振り回し、ピタッと動きを止めると、グラガオンに照準を合わせる。

 隣のシドーも同じようにブンブン。

 二人してグラガオンに狙いを定め、駆け出した。

 

 

「っ、アリア! ピエール、プックル! 僕たちも戦おう! グラガオンは二人に任せて、今回僕たちはサポートに回る!」

 

「はいっ……!」

 

 

 突然始まったアベルの戦闘開始の号令に、アリアは魔力を集中させる。

 ピエール、プックルも戦闘態勢に入った。

 

 目の前には【ガオン】の群れ――。

 その数、ざっと見た感じ二十匹はくだらない。

 

 

「まずは……スクルトぉっ!! ほんでもって、クリエちゃんにバイキルトっ……!!」

 

 

 アリアの補助呪文がアベルたちの防御力を上げ、また、グラガオンへと向かうクリエの攻撃力を高める。

 

 

「おっ! アリアお姉さんありがと~☆ さっすが♪」

 

 

 身体に力がみなぎるのを感じてクリエは、その勢いのままドーンと【ビルダーハンマー】をグラガオンに振り下ろした。

 

 グラガオンにクリエの【ドッカンハンマー】が炸裂。

 ビィィィン……と、震えるようにグラガオンが揺れる。

 

 ダメージは入ったようだが、すぐさま反撃を食らい、クリエの身体は弾き飛ばされた。

 

 

「う、わっ……!」

 

「「クリエちゃん!!」」

 

 

 アベルとアリアの声が重なる。

 

 

「っと……、大丈夫かクリエ!」

 

「シドー君、ありがと! なんのッ!!」

 

 

 弾き飛ばされた先にいたシドーが、飛んできたクリエをキャッチする。

 

 クリエは怪我をしているようだが、即座に身を転じて、再びグラガオンに向かって行った。

 シドーもクリエと同じように【こんぼう】を振り下ろし、攻撃を始める。

 

 ……クリエとシドーは放っておいても良さそうだ。

 攻撃を仕掛けながら彼女は、【やくそう】を口に含んでただちに体力を回復させている。

 

 グラガオンからは連続【バギマ】や、身体をくねらせ叩き付けてくる攻撃、それに仲間呼びが激しいのもあるが、クリエとシドーは傷ついても、傷ついても「ほら、シドー君!」「おう!」なんて互いに掛け声をかけながら、【やくそう】を口にして戦い、攻撃の手を止めない。

 グラガオン側の【ガオン】の群れも数匹まとめて蹴散らしていた。

 

 

「アリア! 僕らはこいつらを倒そう!! バギマッ!!」

 

「わかった……! すぐに超特大の打つから、それまでお願い」

 

「ああ、任せて! ピエール! プックル!!」

 

 

 クリエとシドーばかりに頼ってはいられない。

 アベルも目の前に迫る【ガオン】に向けて【バギマ】を放つ。

 

 真空の刃が【ガオン】の群れを駆けて、次々とダメージを与えたが、威力が足らないため、致命傷にはならず――と、そこへピエールとプックルが各々剣とキバを持って、端から止めを刺していった。

 

 【ガオン】からの反撃もあったが、アベルの【バギマ】に動揺しているのか、お得意の【バギマ】を放ってくる様子はなく、身体をくねらせ身体をぶつけてくるだけ。

 アリアの唱えた【スクルト】が効いているらしく、その攻撃に、大きなダメージを受けることはなかった。

 

 

「……っ、また……!」

 

 

 アベルは眉を寄せる。

 ……十匹ほど倒したところで、グラガオンが再び仲間を呼んだのだ。

 

 グラガオン自体は、クリエたちの攻撃でずいぶんと弱っている様子。けれど、仲間を呼ぶスピードが速すぎて、アベルたちの対処が間に合っていない。

 

 今は――元の二十匹に戻ってしまった。

 

 【ガオン】の群れの怖いところは容赦ない【バギマ】の連続。

 さっきは、ほぼ全員が身体をくねらせ、身体をぶつけてくるだけの通常攻撃。ラッキーだった。

 

 【バギマ】の連続を受けてしまえば、さすがのアベルもアリアを庇いきれない。

 

 

「アリアっ!! そろそろいけそう……!?」

 

「……ん……、もう、ちょっと……」

 

 

 ……アリアがアベルの後ろで魔力をさらに集中させている。

 

 もう時間がない――でも、ここで手を止めるわけにはいかない。

 

 彼女の周りには、肌で感じるほど、ピリピリとした風が集まり始めていた。

 アリアのプラチナブロンドが、その風に乗って靡いている。

 

 

「っ……(すごい魔力だ……)」

 

 

 アベルは【ガオン】の群れと対峙しながら、背後のアリアから感じる凄まじい魔力に息を呑んだ。

 




アベルとアリアでバギマ連唱したかったな…。いやでもガオンのバギマ怖いしぃ~。先手必勝ですよね!

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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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