前回あらすじ>
勇者たちの戦いで青い巨体を沈黙させ、幻の戦場が消滅。現実に戻ると古びた台座の傍らに禍々しい仮面が浮かび、ガオンの気配が漂い始めて…。
顔デッカ! 当社比四倍くらい?
では、本編どぞ~!
◇
そこにいたのは、仮面の魔物――【ガオン】。
その異様な笑みの仮面は、どこを見ているのかも分からず、不気味さを際立たせている。
……仮面は動かない。
ただ、確かにそこに“在る”。存在している。それだけで、まるで空間が怯えているかのようだった。
アリアが無意識に一歩下がる。アベルが彼女の背に手を添えたときだった。
……カツン。
音がした。
仮面には足などないのに、床を叩くような、鈍い硬質音が辺りに響いた。
「うわっ……やっぱ気持ち悪……」
アベルが肩をすくめるのと同時に、アリアがぴたりと足を止める。
「……あのガオン、他の個体と少し違う……何か、強い“魔力”をまとってるみたい……あっ!」
その瞬間、【ガオン】の足元で青白く冷たい光が瞬いた。
光はどこか禍々しく、周囲の空気が凍りつくかのように重く、二人の胸に冷たい不安を刻み込む。
アリアは思わず、震える手でアベルの腕を強く握った。
「アベル……」
「大丈夫、アリアは僕の後ろに」
「ん……」
青白い光が【ガオン】に向かって吸い込まれていく。
……びきっ、びきびきびきっ!!
光が全て吸い込まれると、岩が割れるような音……。
仮面が軋む音を立ててひび割れを起こす。破片がパラパラと床に落ちていった。
無数の裂け目からは血のような赤黒い液体が噴き出し、それを辺りに撒き散らす。液体はやがて、ジュクジュクとした粘度を帯びて、それは仮面の一部となり硬化していく。
……先ほどより一回り大きくなった。
仮面は再び軋む音を立て、ひび割れ、破片が落ち、赤黒い液体の噴出――。
そして身体が再構築され、徐々に体積を増やしていく。
……まるで、脱皮を繰り返す蛇のようだ。
そうしてガオンの身体は肥大化していった。
いったい何が起こっているのかわからないまま、アベルとアリアはそれを見つめる。
やがて音が止み、仮面が空間を支配するように光り輝く。
そして、そこにいたのは――。
【グラガオン】……。
巨大な仮面は、能面のように感情を欠いた“無表情の笑み”を浮かべていた。
笑っているのか、怒っているのか、それとも何も感じていないのか――判別できない。
その曖昧さが、むしろ背筋を這うような恐怖を呼び起こす。
「デカッ!! ってか、デッ、カッ!!」
――通常でもデッカイのにさらにデッカイ……!!
重要なことなので二回言いました。
巨大化したグラガオンに、とにかくデカイと大声で叫ぶアベル。
「大き過ぎ……! こんな仮面、誰も被れなくない? ゴーレムでも無理なんじゃ……?」
「元々被る仮面じゃないしね……! でも、僕もそう思うよ!」
アリアもアベルの意見に同意。
被るとしたら誰の仮面なんだろうね~、なんて話している間、グラガオンは無言でアベルたちに目を向けたまま、その場に留まっている。
……その仮面の“目”が、ふとアリアを捉えた。
まるで、何かを思い出そうとしているかのように――。
仮面には感情の欠片もないのに、確かに“見られている”と分かる。
その瞬間、アリアの胸が、ぞくりと冷たく震えた。
(……なんだろう、この感じ……怖い、でも……)
アリアがわずかに目を伏せた瞬間、グラガオンは何事もなかったように動かず、ただそこに在った。
「うわぁ……めっちゃデカいし、喋んないのが逆に怖……」
アベルがぽつりと呟く。隣でアリアが頷いた。
「……気をつけて。仲間呼ぶかも」
アリアの言葉はフラグか何かか。
その言葉通り次の瞬間、グラガオンの身体がぶるりと震える、と――。
ズズッ……!!
地面が裂け、仮面の魔物【ガオン】の群れが続々と湧き出した。
アベルとアリア、ピエールとプックルの四人が警戒に身構える。
と、そこへ――。
「ちょ~~っと、まったぁああああっ!!!!」
緊迫した場にそぐわない、元気の良いクリエの明るい声が響いた。
みな一斉にその声の方へ、視線を向ける。
「やあやあ! 出たね~! やっぱしっかり取り込んじゃってた~! 座標ずれてたか~」
そこには【ビルダーハンマー】を肩に担ぎ、あちゃ~と額を抱えるクリエの姿。
隣には、無事クリエと合流したシドーもいた。
「クリエ、どうする?」
「ぶっ壊すしかないっしょ! あいつ壊して“カケラ”回収しないと!」
「だなっ!」
クリエはぶんぶんと【ビルダーハンマー】を数回振り回し、ピタッと動きを止めると、グラガオンに照準を合わせる。
隣のシドーも同じようにブンブン。
二人してグラガオンに狙いを定め、駆け出した。
「っ、アリア! ピエール、プックル! 僕たちも戦おう! グラガオンは二人に任せて、今回僕たちはサポートに回る!」
「はいっ……!」
突然始まったアベルの戦闘開始の号令に、アリアは魔力を集中させる。
ピエール、プックルも戦闘態勢に入った。
目の前には【ガオン】の群れ――。
その数、ざっと見た感じ二十匹はくだらない。
「まずは……スクルトぉっ!! ほんでもって、クリエちゃんにバイキルトっ……!!」
アリアの補助呪文がアベルたちの防御力を上げ、また、グラガオンへと向かうクリエの攻撃力を高める。
「おっ! アリアお姉さんありがと~☆ さっすが♪」
身体に力がみなぎるのを感じてクリエは、その勢いのままドーンと【ビルダーハンマー】をグラガオンに振り下ろした。
グラガオンにクリエの【ドッカンハンマー】が炸裂。
ビィィィン……と、震えるようにグラガオンが揺れる。
ダメージは入ったようだが、すぐさま反撃を食らい、クリエの身体は弾き飛ばされた。
「う、わっ……!」
「「クリエちゃん!!」」
アベルとアリアの声が重なる。
「っと……、大丈夫かクリエ!」
「シドー君、ありがと! なんのッ!!」
弾き飛ばされた先にいたシドーが、飛んできたクリエをキャッチする。
クリエは怪我をしているようだが、即座に身を転じて、再びグラガオンに向かって行った。
シドーもクリエと同じように【こんぼう】を振り下ろし、攻撃を始める。
……クリエとシドーは放っておいても良さそうだ。
攻撃を仕掛けながら彼女は、【やくそう】を口に含んでただちに体力を回復させている。
グラガオンからは連続【バギマ】や、身体をくねらせ叩き付けてくる攻撃、それに仲間呼びが激しいのもあるが、クリエとシドーは傷ついても、傷ついても「ほら、シドー君!」「おう!」なんて互いに掛け声をかけながら、【やくそう】を口にして戦い、攻撃の手を止めない。
グラガオン側の【ガオン】の群れも数匹まとめて蹴散らしていた。
「アリア! 僕らはこいつらを倒そう!! バギマッ!!」
「わかった……! すぐに超特大の打つから、それまでお願い」
「ああ、任せて! ピエール! プックル!!」
クリエとシドーばかりに頼ってはいられない。
アベルも目の前に迫る【ガオン】に向けて【バギマ】を放つ。
真空の刃が【ガオン】の群れを駆けて、次々とダメージを与えたが、威力が足らないため、致命傷にはならず――と、そこへピエールとプックルが各々剣とキバを持って、端から止めを刺していった。
【ガオン】からの反撃もあったが、アベルの【バギマ】に動揺しているのか、お得意の【バギマ】を放ってくる様子はなく、身体をくねらせ身体をぶつけてくるだけ。
アリアの唱えた【スクルト】が効いているらしく、その攻撃に、大きなダメージを受けることはなかった。
「……っ、また……!」
アベルは眉を寄せる。
……十匹ほど倒したところで、グラガオンが再び仲間を呼んだのだ。
グラガオン自体は、クリエたちの攻撃でずいぶんと弱っている様子。けれど、仲間を呼ぶスピードが速すぎて、アベルたちの対処が間に合っていない。
今は――元の二十匹に戻ってしまった。
【ガオン】の群れの怖いところは容赦ない【バギマ】の連続。
さっきは、ほぼ全員が身体をくねらせ、身体をぶつけてくるだけの通常攻撃。ラッキーだった。
【バギマ】の連続を受けてしまえば、さすがのアベルもアリアを庇いきれない。
「アリアっ!! そろそろいけそう……!?」
「……ん……、もう、ちょっと……」
……アリアがアベルの後ろで魔力をさらに集中させている。
もう時間がない――でも、ここで手を止めるわけにはいかない。
彼女の周りには、肌で感じるほど、ピリピリとした風が集まり始めていた。
アリアのプラチナブロンドが、その風に乗って靡いている。
「っ……(すごい魔力だ……)」
アベルは【ガオン】の群れと対峙しながら、背後のアリアから感じる凄まじい魔力に息を呑んだ。
アベルとアリアでバギマ連唱したかったな…。いやでもガオンのバギマ怖いしぃ~。先手必勝ですよね!
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!