ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

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異様な仮面【ガオン】が禍々しい光を吸収し、巨大魔物【グラガオン】へ変貌。圧倒的な存在を前に、アベルたちはクリエとシドーと合流し、群れを相手に必死の攻防へ挑む。

ブッパします!

では、本編どぞ~!



第八百九話 アリア、最大出力

 

 一方で、前線のクリエとシドーは――。

 

 巨大なグラガオンの瞳から赤い液体……塗料だろうか。それが頬を伝い、顎先から滴り、一滴、一滴、次々と【ガオン】を生み出していく。

 みな同じ表情の仮面の増産――。

 

 ……これも“カケラ”とやらの力なのだろう、仲間を呼ぶ方法を変えたらしい。

 

 

「うわっ、キモッ! 産卵してるみたい……!」

 

「産卵……これが、ウミガメか……!」

 

「ガオンだってば!」

 

「あ、ああ、そうか。そうだったな」

 

 

 クリエにツッコまれ、シドーは新たに生まれ出た【ガオン】を叩く。

 シドーの攻撃により【ガオン】はあっさり倒れたものの、通常の仲間呼びとは違い距離が近いこともあり、こちらはクリエとシドーで対処しなければならない。

 

 

「仲間産み過ぎィぃいいい!!!!」

 

 

 クリエも一旦グラガオンへの攻撃はやめ、産み落とされた【ガオン】叩きに終始した。

 そうして戦っていくうち――。

 

 

 “【バギマ】”

 

 

 ……ついに、【ガオン】から【バギマ】が放たれたかと思うと、その響きが重なる。

 【バギマ】を唱えたのは一匹だけではなかった。

 

 

「アリアッ!!」「アリア嬢っ!!」「がうっ!!」

 

「へっ? あっ……!」

 

 

 咄嗟にアベル、ピエール、プックルがアリアの前に立ちはだかり、彼女を庇う。

 

 

「う゛あぁああああっ……!!」

 

 

 アリアに覆い被さるようにして、アベルたちは【バギマ】の攻撃を受けた。

 皮膚を割き、辺りに血飛沫がほとばしる。

 アベル、ピエール、プックルの叫び声が、アリアの頭上でこだました。

 

 

「アベルっ! ピエール君っ! プックルっ!」

 

「アリアっ、今は顔を上げちゃダメだ……!! 伏せてて!!」

 

「っ、アベルッ!!」

 

 

 猛烈な風の刃がアベルたちに襲いかかる。

 前線のクリエたちもダメージを受けているようで、「いったぁああああい~!!」「いってぇー!!」との叫ぶ声が聞こえた。

 

 

「……アベルぅ……、頭から血が……」

 

 

 アベルたちに守られ、アリアの瞳から涙がこぼれ落ちる。

 

 

「くっ……。大丈夫……これくらい……。僕たち、体力には自信あるから」

 

 

 大切な妻を守れて本望だ――アベルの目は優しい。

 穏やかに微笑み、アリアを安心させようと額に唇を落とした。

 

 

「ぅぅ……でも」

 

「集中してアリア。風が止んだら僕たちは回復に専念するから、強力なやつ頼んだよ」

 

「っ……うん……! 任せて……!」

 

 

 すんっと鼻を啜り、アリアは傷だらけのアベルに深く頷く。

 それからは目を閉じ、また精神の集中を始めた。

 

 

「うぅ……呪文やっべ……。結構効いた~~」

 

 

 前線では、クリエが垂れた鼻血を乱暴に拭う。

 しかし、瞳にはやる気と闘志が宿っており、何より愉快そうだ。

 

 

「……っ、だな。けど、後ろでアリアが魔力を集中させてる。あれぶっ放したらちっさいのは全部吹っ飛ぶぞ。タイミング合わせてデカブツにトドメを刺せば……」

 

 

 シドーも口の中を怪我したのか、ぺっと口に溜まった血を床に吐き捨てた。

 こちらも、ぺろりと唇を舐め、ニヤリと口の片端を上げる。

 

 

「あっ、な~るっ!!」

 

「あ○る?」

 

「ヒッ、ワーイ!!」

 

「ヒッ、ワーイ!?」

 

 

 クリエは理解したが、シドーは理解できない。

 とりあえずクリエの言葉を反復したが、クリエはそれには答えず続けた。

 

 

「やってやろーじゃん……! アリアお姉さん! いつでもいいよ!」

 

「……よし、オレもいつでもいいぞ……!!」

 

 

 ここまでグラガオンも体力の半分は削られている。

 あとはアリアの呪文と、クリエ&シドーの連携技を一発。大きなダメージを与えれば、一掃できそうだ。

 

 ……アリアの準備が終わるまで、次々と生まれてくる【ガオン】を叩き続けた。

 

 

「……ふぅ……うん。できそう」

 

「……無理しないように。僕がそばにいるからね」

 

「ありがとう、がんばるね……!」

 

 

 少し経ち、アリアの準備が終わる。

 彼女の身体の表面には、溢れ出した魔力が薄い膜のように覆って、周りの空気が僅かに震えているのがわかった。

 

 ふと、前線のグラガオンがクリエたちから視線を逸らす――遠く後方に立つ小さな人間、アリアを捉えたのだ。

 その身体から漂う魔力の気配に、グラガオンは思わず一瞬硬直する。

 後方とはいえ、無視できない存在――ぞくりと全身に戦慄が走った。

 

 ……アリアはアベルたちの背後から前に出て、【ガオン】の群れの前に立ちはだかる。

 

 

「クリエちゃん……! シドーくん……! いくよ……!!」

 

『はいよ~!』『お~!』

 

 

 アリアから前線のクリエたちへ声をかけると、間延びしたような、いつもと変わらない声が返ってくる。

 

 ……その返事に、アリアは思う。

 

 異世界からやって来たあの二人は今、危機感なんて感じていない。

 きっと、自分たちがおらずとも、この危機を難なく乗り越えていけるのだろう。

 そう思うと、安心感がアリアの胸を満たした。

 

 

「最大出力は初めてなんだ。手加減なし、忖度なし、自分の限界を試すよ……!!」

 

 

 アリアは両手を前に突き出し、すぅーっと息を吸い込むと口を開く。

 

 

 “【バギクロス】!!”

 

 

 その瞬間、空気が――震えた。

 

 グラガオンは、アリアの手から迸る竜巻のような風の渦を目にし、思わず後退する。

 

 

 “あの小さな人間が、こんな力を……!?”

 

 

 視線の先で、【ガオン】の群れが次々と暴風に巻き上げられ、塵と化していく。

 

 

「っ!?!?」

 

 

 空気がピリリと弾け、アリアの掌の先で暴風が爆ぜた。

 竜巻のような風の渦が【ガオン】の群れを呑み込み、次の瞬間、彼らの姿は霧のように消え去った。

 

 

「「うわっ、すごっ……!」」

 

 

 アリアとアベルの声が重なるが、二人の声の意図は違う。

 

 アリアは、自分の放った呪文の凄まじさに驚いた声――。

 対してアベルは、アリアのスカートが風にあおられ、捲れ上がったことへの歓喜の声――であった。

 

 

(ああ、可愛いおしり……♡♡ アリア、君って本当、最高の奥さんだよ……♡)

 

 

 【やくそう】をかじるアベルのマントが風に揺れている。

 ……が、今は戦闘中だ。真剣な表情を装おう。

 

 

「……アベル殿、奥さまの尻ばかり見てないで、残党がいないか警戒してくださいね」

 

「っ、べ、別にいーじゃん!?」

 

「がうがう(主は助平だからな、仕方あるまい)」

 

 

 ピエールとプックルにツッコまれてしまった……。

 

 

「二人も見てるくせに……」

 

 

 ――にしても、アリアは凄いな……!!

 

 

 アベルたちの前を暴風が通り抜けると、前線では――。

 

 

「きたきたきた~~!! アリアお姉さん、すっごーい!!」

 

 

 クリエとシドーの間にも暴風が駆け抜け、【ガオン】を一掃。

 その暴風は【ガオン】たちを粉々に砕いてもなお、勢いは衰えず、地下神殿の天井や壁にぶち当たり、一部を破壊した。

 

 

「おおっ! すごいな! オレでもここまで一気に破壊するのは難しいぞ!」

 

「すっごーい!!」

 

 

 ……シドーとクリエが楽しそうに暴風の行方を眺める。

 グラガオンも猛烈な風に傷こそ負っていないものの、吹き飛ばされないようにするのが精いっぱいの様子。

 

 だが――。

 




読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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