前回あらすじ>
アリアが最大出力の【バギクロス】で【ガオン】の群れを一掃。前線ではクリエとシドーが連携し、暴風で一部神殿を破壊しつつも、戦闘の余波はまだ収まらず……。
びゅうぅぅ……。
では、本編どぞっ!
「ア、アリア……あれ、まずいんじゃ……? もう、いいよ……?」
パラパラと、目の前で天井からこぼれ落ちる破片は暴風によるもの。
掌をかざし続けるアリアの側に寄り、アベルは声をかけた。
なぜなら、風はアリアがコントロールしているが、【ガオン】の群れが消えても衰えなかったからである。
「……っ、うわーんっ! アベルどうしよう~。コントロールが効かないの~~!!」
「え……ええええぇっっ!?!?」
アリアによると、今コントロールしているのは風の動きだけで、威力そのものは特にコントロールしていないとのこと――。
「どうしよう。さっきからあっちこっちに動かして、威力を下げようと思ってたんだけど、全然衰えてくれなくって……! むしろ大きくなってるみたい……!」
「っ……」
アベルは、まるで底が見えないかのように魔力を放出し続けるアリアを、目を見開いて見つめた。
――アリアの魔力どうなってんの……!?
さっきから両手を左右に振り振り動かす彼女に、疲れは見えない。
一見すると踊っているように見えるほどに、その動きは滑らかで、動作のコントロールは難しくなさそうだ。
「あーんっ! なんで消えてくれないのよ~~!! もういいよ~~!!」
「ふ、不思議だねぇ……。ちょ、ちょっと腰を揺らしてみたりできる?」
アベルは、焦りながらも冗談めかして言ってみる。
「え? こ、こう?(なんで……?)」
アベルの言う通り、アリアは腰を左右に揺らしてみた。
……腰の捻り具合が艶めかしい。
「……いい♡ これでさっきのマーニャさんみたいな踊り子の服を着てれば完璧……♡」
「……も~! なに言ってるの! アベルのばかぁっ!」
今は戦闘中だ。
じゃれ合っている場合ではない。
「あははは……! まったく、アベルお兄さんたちなにやってんのさ……」
後方でわちゃわちゃしているアベルとアリアを見て、クリエがハッと閃いた。
「風、風、風……んー……あっ!」
クリエは慌ててふくろに手を突っ込み、巨大な【ちからのオーブ】を引きずり出す。
「よっこいしょ……!」
オーブの重さに思わず足を踏ん張った。
取り出す時だけ異様に重いのに、床に置くと――途端に自ら地面から離れていく。
緑の宝珠は、縦長の八面体を描く銀の支架に包まれ、宙に浮かぶように静かに輝いていた。
「アリアお姉さーん! このオーブにぶつけてみて~!」
クリエの言葉にアリアはすぐに理解し、両手をオーブに向ける。
すると暴風の渦が、壊した壁の破片を巻き込みながらオーブの元へ――。
緑色の光が暴風を吸い込むように渦巻いて、アリアの肩から力が抜けていった。
「風を吸い込んでる……わぁ……少し楽になった!」
喜ぶアリアのそばで、アベルは舞い踊り続けるスカートにニヤリとしつつも、戦闘中の真剣な表情を装う。
オーブに吸い込まれた風の魔力は勢いを弱め、暴れ狂っていた【バギクロス】の暴風が次第に鎮まっていく。
「これでなんとか……!」
クリエは息を整え、アリアも後方で肩の力を抜きながら深く頷く。
さて、残るはグラガオンのみだ。
クリエとシドーは再び身を低く構え、グラガオンの隙を窺った。
……グラガオンは仲間を産むこともなく、アリアをじっと見たまま固まっている。
「よし! 今のうちに! いくよ、シドー君!」
「おう!」
クリエとシドーは、グラガオンがアリアに気を取られているうちに、一気に畳みかけるべく、駆け出した。
「おらぁああああっ!! たかが仮面のくせに、デッカイツラしてんじゃねぇぞ! 誰も被れねえ仮面なんて、ただの置物なんだよ! 置物は置物らしく、大人しくしてやがれぇええええいいいっ!!」
クリエが【ビルダーハンマー】を振り上げ、グラガオンの脳天から力任せに叩き込む。
「クリエ! オマエ言葉乱暴だぞっ! っ、オレの棍棒がうなりを上げるぜ!!」
“ドガァァン!!”
すかさず、シドーも真横からフルスイングするように【こんぼう】を打ち付けた。
巨大な仮面に、シドーの全力が炸裂すると身体をのけぞらせる。
グラガオンの側面にはひびが走った。
……攻撃は始まったばかりだ。
「てへぺろ~♡ 沈黙させたら、家の玄関前に飾って差し上げますわぁああああっ!! はい、ご一緒に!」
「っ!? ますわぁああああっ!!」
クリエの号令に、シドーも合わせて声を張り上げる。
ドゴッ、ドカッ。
ドゴッ、ドカッ。
ドゴッ、ドカッ。
ドゴッ、ドカッ。
クリエとシドーの一方的な攻撃が、グラガオンを少しずつ破壊していく。
グラガオンも抵抗するように身を揺らし、攻撃を仕掛けるのだが、クリエとシドーはあっさりそれを避けてしまう。
【ガオン】のように呪文を撃ってくるかと思ったが、呪文を放つ仕草はするが、どうも不発で終わっている様子。
もしかしたら、【ちからのオーブ】にアリアの魔力と一緒に吸われでもしたのかもしれない。
……ずいぶん硬かったグラガオンだが、二人にかかるとあれよあれよとその身を崩されていった。
「……よしっ! クリエ、そろそろいくぞ!!」
「あいあいさー! トドメッいっきまーす!!」
二人は例の必殺技を繰り出すつもりらしい。
……アベルが羨ましがっていた連携技だ。
シドーがグラガオンに向けて、クリエの身体を持ち上げ宙に放り投げる。
クリエは空中で華麗に縦に四回転。
彼女が回転しながらグラガオンに向かっている間に、シドー自らもクリエよりも高く跳躍、その身を回転させた。
……着地点はグラガオン頭上――寸分違わない真上だ。
二人は空中から同着地点目掛けそれぞれ【ビルダーハンマー】と【こんぼう】を振り下ろす。
『すぺしゃるふぁいてぃんぐこんびねーしょんあたーっくぅっっ!! 異世界すぺしゃるツー!!』
二人が必殺技を叩き込み、床に着地すると同時に衝撃波が発生した。
辺りの小さな瓦礫が周囲に撒き散らされる。
瓦礫は、アベルたちのいる場所まで飛んできた。
「アリアっ!」
「わわっ」
アベルは飛んできた瓦礫で怪我をしないよう、サッとマントを翻し、アリアを庇う。
ピエールとプックルも身体を低くし、アベルの背後に回ってやり過ごした。
風が止み、アベルはマントを元に戻す。
そうしてグラガオンのいた場所に目を移すと、そこには無数のひびが入り、今にも崩れそうなグラガオン……いや、【ガオン】の姿が宙に浮いていた。
……小さくなった【ガオン】は薄ら笑みを浮かべたまま、アベルたちを見ている。
「っ……私を見てる……?」
「え? なんで?」
アリアの言葉に、彼女の隣に立つアベルは首を傾げた。
「わかんないけど、そんな気がして……え?」
そういえば、戦闘中何度も視線を感じたんだよね……と思っていたら、これまで一言もしゃべらなかった【ガオン】が、アリアの心に直接語りかけてくる。
(今、なんて言ったの……??)
アリアは目を瞬かせた。
“テ……イ、オ……マ……、フッ……カ……、テ……イ、オ……マ……、フッ……カ……。”
「テイオマ、フッカ? は……?」
【ガオン】は崩れ落ちる身をそのままに、ただアリアだけを真っ直ぐに見つめ、バラバラと床に崩れ落ちるように消えていった。
その中心に、ぽとりと小さな光が浮かび上がる。
「あっ! カケラっ!!」
アベルとアリアには一瞬光が見えただけだったが、クリエが声を上げた。
クリエは大事そうに“何か”――恐らくは彼女たちの探していた“カケラ”だろう。
それを両手で包み込むようにして、ほっとしたように見下ろした。
「――やったな、クリエ!」
「やったね、シドー君! ヤッホー!!」
“ぱちんっ!!”
クリエとシドーがジャンプし、ハイタッチをする。
今まで何度もやってきているのだろう、ジャンプする高さもタイミングもぴったりだ。
二人の後ろで、アベルとアリアも、どちらからともなく抱きしめ合う。
「やったね、アリア!」
「えへへ、アベル、やったよ~!」
アリアの紫の瞳が、まだ震える光で輝いている。
アベルはそっと彼女の肩に手を置き、心の底からほっとした息をついた。
「ふぅ……本当に勝てたんだな……」
「うんっ……みんなのおかげだね……!」
クリエとシドーも離れた場所で、まだ小さく飛び跳ねながら笑顔を交わしている。
ピエールもプックルも怪我はしているが、身体を揺らして嬉しそうだ。
力を合わせて戦った仲間の存在が、尊い。
勝利を実感した、いい瞬間だった。
せっかくなので、オリジナルモンスター・グラガオンのステータスでも。
☆グラガオン☆
HP /1500(ガッツはあるけど壁に激突するとちょい痛い)
MP /100(風を操れるけど方向音痴気味)
攻撃力/180(仮面で叩くと痛い。でも笑顔でやってくる)
防御力/120(固いけど足元はドジっ子)
素早さ/50(デカいので動きはもっさり)
特技
バギマ(範囲広すぎて巻き込み注意)
ガオン産卵(仲間を無限増殖、敵味方問わず迷惑)
突進(壁も巻き込む、迫力満点)
特徴
仮面だけに顔がデカイ。大き過ぎて誰も被れない。迫力とキモさが同居。
仲間を呼ぶとき&産卵中は、実はテンション高め♡(しかし喋れない)
産後は、産後ハイで実は気持ちが高ぶってる(しかし表情に出ない)。
戦闘中も笑顔を忘れない愛想のいい子♪
※大きさはエスタークよりやや小さめ。
以上、ドラクエⅣから輸入したガオンの進化系モンスターでした!
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読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!