ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

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風を鎮め勝利した一行は、勝利の喜びを分かち合う。しかしガオンの断末魔のような謎の声と、バギクロスで傷ついた神殿の姿が、不吉な予感を呼び起こして……。

神殿、崩れるってよ。

では、本編どぞ~♪



第八百十一話 崩落のフルコース

 

 ……ひとときの静寂を突き破るように、地鳴りとともに神殿全体がきしむ音が耳を貫いた。

 

 パラパラパラ……。

 それはわずかに砂が天井から落ちる音――。

 

 その音を皮切りに、辺りの空気がピリリと変わった。

 

 天井の光が揺れ、床のひび割れが徐々に大きくなる。

 石壁の奥から、かすかにひび割れが走る音が聞こえた。

 

 

「……あれ?」

 

 

 アベルが周囲を見回す。

 アリアもすぐに異変に気づき、警戒した。

 

 目に映る景色が少しずつ歪んで、なんとか形を保っていた神殿――それが崩壊し始めたのだ。

 

 

 ゴゴゴゴゴゴゴ……。

 

 

 地響きとともに、瓦礫や崩れかけの柱が轟く音を立てて落ちていく。

 

 

「神殿……崩れるの!?」

 

 

 アリアの声に、アベルはすぐさま彼女の手を取り、崩れゆく瓦礫を避けながら、下層階が見える位置まで走った。

 

 

「「急いで――!」」

 

 

 それぞれ離れた場所でアベルとクリエの声が重なる。

 喜びの余韻は、瞬く間に生き残るための緊張感へと塗り替えられた。

 

 足元に見える下層階は、崩れた天井のおかげか、瓦礫があちこちに落ち、張り巡らされたバリア床が潰され、一部が消え失せている。

 ……これなら下へ下りて、脱出できそうだ。

 

 

「はぁっ、はぁっ……ここから下りるしかない」

 

「っ……高っ……!」

 

 

 目の前には大きな瓦礫の岩が、足場のようにすぐそこにある。

 その先にも同じような瓦礫の石段が次々と――まるで、ここを通れとでも言わんばかりに下層階へと続いている。

 

 アベルはアリアの手を握り、腕を軽く抱えるようにして引き寄せた。

 

 

「アリア、こっちだ! 足元気をつけて!」

 

「う、うん!」

 

 

 アリアは飛び降りるのは苦手だが、これならいけるだろう。アベルの手に支えられ、崩れる石段を慎重に駆け下りていく。

 石段を踏みつけるたびに瓦礫が足元で崩れ、砂や埃が舞う。

 頭上から、小さな石片が二人の目の前を落ちていき、かすかな衝撃を与えた。

 

 

「うわっ……危ない!」

 

 

 アリアの声に、アベルは即座に片手で彼女の腰を支え引き寄せて、天井から落ちてきた瓦礫を躱す。

 

 

「大丈夫だ、僕がいるから!」

 

 

 下層階へと無事下りて、瓦礫の山を避けるようにして三階の出入口を目指した。

 

 ……瓦礫だらけの下層階。

 アベルたちは崩れゆく天井を背に、足元の石片を蹴散らしながら出口へと駆ける。

 

 そうしてなんとか三階屋上に出たはいいが、下階へと続く階段のある部屋が、瓦礫で潰され通れない。

 

 

「アベルっ! どうしよう……」

 

「っ……」

 

 

 ――ここから飛び降りるのはさすがに……。

 

 

 アベルは駆け出し、三階屋上から下を見下ろす。

 高さがかなりある。

 とてもじゃないが、飛び降りるのは無理だ。

 

 

「っ、アベル上っ!!」

 

「えっ」

 

 

 アリアの声でアベルは頭上を見上げた。

 パラパラパラと、神殿の建材ではない、生々しい岩の破片が洞窟の天井から降ってくる……。

 

 ……崩れているのは神殿だけじゃなかったのだ。

 

 

「洞窟も崩れてるみたい!」

 

「なんだって!? っ、アリアこっち!」

 

 

 アベルはアリアの手を引き、崩落の直撃を避けて神殿の壁際へと身を寄せる。神殿に接する洞窟の壁際まで追いやられた。

 ふいに――。

 

 

 “ドォォンッ!!”

 

 

 アベルたちがさっきまでいた位置へ、巨大な岩塊が落ちた。

 それはあまりにも大きく、轟音とともに神殿の二階部分を破壊し、続く崩落が道を塞いでいく……。

 

 

「おわぁっ!? ちょっ……道塞がっ……!」

 

「あぁ~んもうっ!! やだやだ崩れないでぇえええ~~っ!!」

 

 

 “私のせい? 私のせいだよね!?”

 

 アリアが泣きそうな顔で天井を見ると、そこからさらに石片がパラパラと落ちてきた。

 

 

「アリア伏せて!!」

 

 

 アベルがマントを広げ、アリアを抱き寄せるようにして庇ったところへ――。

 

 

 “ドガガガガッ!!”

 

 

 突然横の壁が割れて、何かが飛び出す。

 砂煙が舞って、すぐにはわからなかったが、次の瞬間すぐわかった。

 

 

「どぉぅりゃああああああああああっっ!!」

 

「フンッ!」

 

 

 粉塵の中から現れたのは、【ビルダーハンマー】を肩に担いだクリエ。

 その後ろでシドーが瓦礫を蹴りながら出てきた。

 

 

「アベルお兄さーん! アリアお姉さーん! お困りじゃないですか~~!?」

 

「「クリエちゃん!!」」

 

 

 クリエの自信満々な笑顔が、安心感を与えてくれる。

 ……アベルとアリアの声がハモった。

 

 

「うぉっ!? 通路が塞がれてるな……どうしたもんか……」

 

 

 あとからやって来たシドーが、二階部分を潰した大岩を見て一瞬驚いたが、すぐに冷静に腕組みをする。

 なぜそんなに落ち着き払っているのか……アベルにはわからない。

 

 

「シドーくんも! 無事でよかったぁ~!」

 

「へへっ、まーな。オレは死なないからな!」

 

 

 アリアはシドーに駆け寄り、ほっとした顔を見せた。

 

 

「? そうなんだ? ならよかった!(さっすが神様……!)」

 

 

 【破壊神シドー】は死なない設定でもあるのか……は知らないが、本人が言ってるならそうなのだろう。

 アリアは、鼻の下を擦るちょっぴり嬉しそうなシドーに微笑んだ。

 

 

「へへっ♪ おい、クリエ、この辺がいいんじゃないか? わずかに風を感じるぞ」

 

「そうだね~☆」

 

 

 ふとシドーが、視線を洞窟に接する神殿の壁に移す。

 そちらから、かすかにだが、生温かい風を感じた気がした。

 クリエも深く頷き、肩に担いだ【ビルダーハンマー】を下ろす。

 

 

「この辺って……いったいなにをするつもりなんだい? 早く脱出しないと……って、足場がないから困ってるんだけどね……さっきそこの大岩に二階の一部を破壊されちゃったし」

 

 

 アベルは、クリエとシドーの様子に疑問を持ちながら現状を伝えた。

 

 クリエたちと合流できたことはよかったが、洞窟の崩壊で、周りはかなり崩れている。

 

 このまま運よく神殿から出られたとして、長い洞窟を無事抜けられるだろうか……。

 かなり絶望的な状況だ。

 

 ……なのに、クリエの口角がニヤリと上がった。

 

 

「フフフ」

 

「……クリエちゃん?」

 

「フフフフ……アーッハッハッハッハッ!!」

 

 

 クリエが突然高笑いしだす。

 知らない間にどこか頭を打ってしまったんだろうか……。

 

 アベルは眉を寄せた。

 

 

「クリエちゃん……頭大丈夫?」

 

「でぇーじょーぶだ! もんだいないっ!」

 

「……ダメだと思うんだけど……」

 

 

 アリアが憐れみの目でクリエを見たが、クリエはサムズアップで応える。

 そんなクリエに、アリアは彼女の額に手を当てた。失礼である。

 

 

「フフッ――足場がない? 足場がなければ作ればいいのさ」

 

「っ、そんな簡単にできないよ!? 足場があったとしても上から崩れてくるんだ、避けながら洞窟を抜けるのは……」

 

「アベルお兄さん……ボクを誰だと思ってるの……? ボクはビルダーだよ?」

 

 

 “ドンッ!”

 

 

 アベルの心配をよそに、クリエは自信満々に自分の胸を叩いた。

 

 

「ここは最強ビルダーのクリエさまに、まっかせなさ~~いっ!! ほれ、どいてどいて~~!」

 

 

 神殿の壁沿いにいたアベルの肩を掴んで横にずらし、ちょっと離れていろと告げ、クリエが【ビルダーハンマー】を振り上げる。

 そうして溜めのポーズを取ったかと思うと――。

 

 

 “ドッカァァァァン!!!”

 

 

 と壁にハンマーを叩き込んだ。

 それは洞窟の一部を破壊し、壁の向こうに、辛うじて通れそうな細い通路が開いた。

 

 

「この横穴を行けば抜け出せるよ!」

 

「い、行ける……!?(真っ暗なんだけど……!?)」

 

「行ける行ける! 行こ行こ行こーっ!!」

 

 

 クリエが笑顔で促した次の瞬間――。

 




読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
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