ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

827 / 827
いつもありがとうございます、はすみくです。

前回あらすじ>
東の故郷を目指し航海に出たアベルたち。愛を深め合う二人だったが、新大陸の手前で地図の光が消え、異常な嵐と魔物の襲来に阻まれる。この不自然な嵐の裏に“カケラ”と中ボスの存在を察したアリアは警戒を強める。

さあ、行くぞ!

では、本編どぞ~。



第八百二十三話 嵐の向こう側

 

 

 

 

 ……翌朝。

 

 穏やかな波の音が外で響き、アベルはゆっくりと身体を起こす。

 

 

「っ、ベホマッ!! ……う、うん。顔色、よくなった……!」

 

 

 隣で青白い顔で眠る妻をそのままにし、アベルは気まずさを抱えながら部屋を出た。

 

 その後も、日を改めて何度か東を目指したが、結果は同じだった。近づけば必ず猛烈な嵐に見舞われ、コンパスも地図も役に立たなくなる。

 

 このままでは、東の大陸にたどり着けない。

 やはり、アリアの言う通り、異世界の干渉によるものなのだろうか……。

 

 

「……何が起こっているのかはわからない。けど……ここを越えていかないと、東の大陸に上陸できないんだ」

 

 

 大海原を見つめるアベルの瞳に、強い光が宿る。

 

 

「……行こう。明日、あの嵐の奥へ」

 

 

 逃げるのではなく、真っ向から嵐を突破する――その固い決意を胸に、アベルは一度船室に戻り、アリアにこれからの作戦を説明することにした。

 

 

「ええっ!? 嵐の中に突っ込むっ!?」

 

「ああ。知らない魔物も、強い魔物も出てこないし、奥に進むしかないかなって……って、アリアそれなに?」

 

 

 船室に戻ったアベルが話す間、アリアはテーブルに置かれた揚げ物を食べていた。

 

 

「あ、フライドポテトだよ。小腹が空いたって言ったら、エソスキーさんが作ってくれたの♡ ジャガイモを揚げて、お塩振ったやつ。おやつにどうぞって。アベルも食べる?」

 

 

 テーブルの上の揚げ物は【フライドポテト】というらしい。

 山盛りになった【フライドポテト】を、アリアが上機嫌にぱくぱくと次から次へと口に入れている。

 

 

「…………。食べる、けど……」

 

 

 今、真剣な話をしてたんだけど……と思いつつ、アリアの鼻の頭がテカテカだ。それに、あまりにも幸せそうな顔をしているので、アベルはそのままにしておいた。

 

 

「おいしいんだよ~! はい、どうぞ♡」

 

 

 ふとアリアがポテトを差し出してくる。

 愛妻に差し出されたとあっちゃ、口を開かないわけにはいかない。

 アベルは大きく口を開いた。途端に放り込まれる、熱々の【フライドポテト】。

 

 

「あ~~ん。ング!? ウマッ! 何これ!?」

 

 

 カリッと揚がったポテトに絶妙な塩加減。少ししんなりしているのもまたおいしい。一本食べたら手が止まらない。

 アベルはパクパクとテーブル上の【フライドポテト】を夢中になって食べた。

 

 

「でしょ~♪ まだまだジャガイモの在庫はあるから、いっぱい食べていいって♡」

 

「ンま!」

 

 

 山盛りの【フライドポテト】を夫婦で食しながら、明日の突入について話すのだった。

 

 

 

 

 ……そして、特攻を決めた翌日。

 

 

「全速前進! 進めーー!!」

 

 

 アベル一行を乗せた船は、ついにあの荒れ狂う嵐の奥へと突入した。

 激しい暴風雨を突っ切り、しばらく彷徨うように進むと、突如として嘘のように波が穏やかになる。アベルたちは「抜けたか……?」とホッと胸をなでおろした。

 

 ところが――。

 

 進めど、進めど、一向に東の大陸は見えてこない。再び表示されるようになった【ふしぎな地図】を確認してみても、船の絵はピクリとも動いていなかった。

 

 やがて夜になり、不気味な静けさの中で船を停泊させる。その日は入念に【せいすい】を撒いて魔物を退け、夜を明かした。

 

 さらに翌日、再び出発する。

 しかし、やはり昨日と同じように、どれだけ進もうとしても、進んでいる感覚が全くない。コンパスは正確に方角を指しているのに、試しに西へ戻ろうとしても、やはり地図上の位置は変わらない。

 

 ……まるで、海そのものが巨大な記録媒体になり、同じ空間を延々と繰り返しているようだった。

 

 いつの間にか、肌にねっとりとまとわりつくような、重苦しい空気が辺りに満ちていた。

 

 

「……おかしい」

 

 

 甲板でアベルが腕を組み、険しい表情で頭をひねる。

 

 

「進んでないッスね……。東西南北、どっちに舵を切っても進んだ気がしないッス。なんか、変なんスよね……舵はいつも通り軽やかに動いてるはずなんスけど……」

 

 

 アジスキーは必死に舵を回しながらも、恐怖で顔を真っ青にしていた。いくら東に進んでも、水平線にはただ青い海が広がっているだけだ。

 そんなとき――。

 

 

「――ひっ!」

 

 

 アジスキーの小さな悲鳴が聞こえた。

 

 

「どうしました!?」

 

「こ、コンパスが……!」

 

 

 船のコンパスを見ると、さっきまで正確に方角を指していた針が、物凄い速さで回転している。

 

 

「……やっぱり、海に住んでいる魔物の仕業か……?」

 

 

 アベルが海面へ鋭い目を凝らした、その時――。

 半透明の青い海の下を、ゆらりと横切る、とてつもなく巨大な影が見えた。

 

 

「……っ、これは……」

 

 

 ……ちょっと大きすぎやしないだろうか。

 船体をまるごと軽々と呑み込んでしまえるような、圧倒的な巨躯の影が海中に潜んでいる。

 

 海に住む、伝説のドラゴンだろうか、それとも……?

 

 

(いや、ドラゴンにしたって大きすぎる……!)

 

 

 アベルの額から嫌な汗がだらりと流れる。

 

 

「アジスキーさん……すぐに船長に報告を……!」

 

 

 全速力でこの海域を離脱しようとした、まさにその瞬間だった。

 船の真下の海面が大きく盛り上がり、凄まじい水飛沫を上げて、その巨大な魔物が姿を現した。

 

 淡い群青色の節くれだった皮膚。うねうねと蠢く長い巨体。遥か昔に生息していたはずの魔物【マリンワーム】――が、異世界の力(“カケラ”)を取り込んだことで、山のような超巨大怪獣へと変貌を遂げていたのだ。

 アベルとアリアは知らないが、そいつが放つ強力な磁場こそが、この海の時空を歪めていた正体だった。

 

 そして運悪く、その不気味な顔が突き出たのは、船尾のすぐ目の前。

 そこには、気晴らしに船室のベランダに出て外を眺めていたアリアがいた。

 

 超巨大【マリンワーム】と、アリア。

 至近距離で、互いの存在を感じ取った。

 

 【マリンワーム】は、脳内に直接語りかけるようなのんきな声で「こんにちわぁ♡」と挨拶を投げかけた。

 

 だが、現実世界の女子の記憶を持つアリアにとって、目の前にいるのは「ただの淡い群青色の超巨大なミミズ」である。

 

 ぶよぶよとした、血色の悪い肌。しかも表面はぬめぬめしている。

 その大きな口には、ギザギザとした歯がずらりと並び、端からは透明なよだれがだらりと垂れていた。

 

 

 ――せめて普通のミミズなら……いや、普通のミミズも嫌だ。

 

 

「…………」

 

 

 ヒュッ……と。

 アリアの顔から一瞬で血の気が引き、全身にゾワゾワと凄まじい鳥肌が立った。

 

 

「ギャーーーッッ!!! 巨大ミミズーーーー!!!(涙目)」

 

 

 挨拶もクソもない。恐怖が瞬時に限界突破したアリアは、本能のままに両手を突き出し、最大火力の呪文をぶっ放した。

 

 

極大火炎呪文(【メラゾーマ】)!!!!」

 

 

 ドゴォォォン!!! と、至近距離で爆発した超高熱の火球が【マリンワーム】の顔面に直撃する。

 

 「ぎゃふん☆」と悲鳴を上げる暇もなく、大火傷を負った【マリンワーム】は、そのまま海の底へと真っ逆さまに沈んでいった。

 

 ズザザザザンッ!! と巨体が海に没した拍子に、大怪獣映画さながらの巨大な波が立ち、船体が大きく揺れる。

 それと同時に、肌にまとわりついていたあの重苦しい空気が、パチンと弾けるように霧散した。

 

 

「時空の歪みが切れた!? 今のうちだ!!」

 

 

 アベルの声に、甲板に飛び出してきたブライズ船長が、豪快に声を張り上げる。

 

 

「全速力! 進めーーい!!」

 

「アイアイサーー! まかせろッス!!」

 

 

 狂ったようにぐるぐると回っていたコンパスの針が、正常に動きだすのをアジスキーは見逃さなかった。

 

 力強く面舵を取り、帆が風をいっぱいに孕む。

 呪縛から解き放たれた船は、今度こそ白い波飛沫をあげて、まだ見ぬ東の大陸へと力強く突き進んでいくのだった。

 

 そうして謎の海域を抜け、【ふしぎな地図】が正しい船の位置を示す。

 

 

「少し、北にずれてたみたいだ。東に進みながら南下してください」

 

「うッス!」

 

 

 アベルは地図を見せ、アジスキーに現在地を確認してもらう。

 地図を見ると、東の大陸に、森に囲まれた平原と家屋のシンボルが表示されていた。

 その北には毒沼があり、その先には険しい山脈へと続く洞窟がある。そこを抜けた先に城があり、城の北西には教会のシンボルも見て取れる。

 

 

(この山々を越えていくのか……。いったいどれくらいかかるかな……アリアは馬車でゆっくりしててもらおう……)

 

 

 地図上で見る距離と、実際の距離はかなり違う。

 まずは、家屋のシンボルの場所に立ち寄り、情報収集だ。

 

 アジスキーに「このシンボルの場所に行きたい」と伝えたところ、一番近い場所へと接岸してくれた。

 

 




※マリンワームは『ドラゴンクエストIV』に登場するモンスターです!
通常は体長5メートルほどですが、今回は「カケラ」の力により、約100倍に超巨大化しております。

----------------------------------------------------------------------
読了お疲れ様でした、そして読んでいただきありがとうございました!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ドラゴンクエストⅤ 転生したらパパスだった件。(作者:兎深みどり)(原作:ドラゴンクエストV 天空の花嫁)

駅のホームで子どもを助け、命を落とした現代人の男。▼目覚めた先は、ドラゴンクエストⅤの世界。▼しかも彼は、主人公の父パパスとして転生していた。▼この先に待つ未来を、彼は知っている。▼ゲマ。▼ラインハット。▼奴隷生活。▼サンタローズの崩壊。▼そして、パパスに待ち受ける死の運命。▼一度死んだ身で、パパスとしてもう一度死ぬなど冗談ではない。▼だが、幼い息子と出会っ…


総合評価:787/評価:7.04/連載:56話/更新日時:2026年08月25日(火) 08:15 小説情報

転生タイガのオーブ改革録 〜崩れゆく世界で未来を選び直す〜(作者:台風200号)(原作:ガンダム)

気がつけば、そこは『機動戦士ガンダムSEED』の世界だった。▼だが――転生したのはコーディネーターでも、英雄でも、パイロットでもない。▼よりによって「オーブのアスハ家三男」という、政治と陰謀の渦中に放り込まれる地雷原のド真ん中の最悪のポジションだった。▼未来を知る者として、タイガ・ウラ・アスハは決意する。▼――オーブを守る。▼――プラントの滅びを見届ける。▼…


総合評価:2295/評価:6.88/連載:256話/更新日時:2026年08月25日(火) 07:29 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>