助けに行くよ。
では、本編どうぞっ。
「っく……ひっく……ぁあ……嫌だ。もう、イヤだぁ…………」
アベルは膝からガクッと崩れ落ち、地面に膝を着いた。
頭を垂らすと地面の黒染みがどんどん広がってゆく。
「もう、イヤだ……、
どうして、僕は気が付かなかったの……!?
何度も、
何度も、何度も。
何度も、何度も、何度も、何度も、何度も。
何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も………………………………。
繰り返して来たのに……!!!!
「うあ……うぁぁぁあぁああん……!!」
終にアベルは、顔を上げ空を見上げて泣き出してしまった。
町の人々が「あら、迷子かしら」とか、「転んだのか?」、「声を掛けてあげた方がいいかな」等、心配そうにアベルの様子を見ていた。
「うわぁあぁあああ……!!」
「ふにゃぁ……」
泣きじゃくるアベルにプックルがそっと近付き、涙を舐め取る。
「ぁあああぁあ……」
ざらつく舌の感触がしてもアベルは泣き止まなかった。
「ふにゃぁ……ゴロゴロゴロ……」
そんなアベルの様子などお構いなしにプックルは、今度は前足でアベルの頬を強く押す。
頬に肉球が埋まり離すと、アベルの頬は土で汚れてしまっていた。
「っ……うぅぅ……。何だよぅ……僕は今、絶望してるんだよぉ~っ」
「フニャァ~……」
漸くアベルがプックルを見る。
涙で濡れ、土が付着したアベルの顔は真っ黒だった。
一見すれば泣きっ面に蜂である。
プックルはそんなアベルの前にごろんと寝転がり、腹を撫でろと腰を揺すり誘う。
「……プックル……。ひょっとして、慰めてくれてるの……?」
「ふにゃあ……ゴロゴロゴロ……」
ほらほら、我の腹を撫でろ。
さすれば主の悲しみなど吹き飛ぶであろう。
我の毛並みは最高級のもふもふであるぞ!
プックルはこの際であるからして、道化を演じてやろうぞとあざとく目を細め口を開け笑ったように見せかけてやった。
そんなプックルの気持ちに気付いたのかはわからないが……、
「……すんっ…………、ははっ……柔らかいや。……アリアの羽と似てる」
アベルは鼻を啜ってプックルの腹を撫で、笑った。
そうして目を擦り放すと、手が真っ黒になっていることに気が付く。
「っ、プックルっ! 手っ汚れてるのに触ったなぁ!?」
アベルが怒るとプックルは“ビクッ!”と反応し、すぐさま立ち上がったのだった。
「ぐすっ……、そうだ、アリア……!」
泣き止んだアベルはプックルの毛の触り心地にアリアを思い出す。
……まだ、諦めるには早いんじゃ?
アリアが居れば、もしかしたら何か変わるのかも……。
――今まで彼女みたいな人に出会った覚えはないのだから。
そういえば、ヘンリーと一緒に遊んだ時、
ヘンリーと遊んだことは一度もない気がする。
けれど、今回初めて一緒に遊んだし、子分にだってなった。
同じじゃない……。
なら、望みはある……?
そう気付いたアベルの鼓動はドクドクドクと高鳴った。
「っ、プックル。ヘンリー達と父さんがどこに行ったか、町の人に行きそうな場所を聞いてみよう!」
「ガルルルル!」
アベルは立ち上がり膝に付いた土を払うと、情報収集へと乗り出したのだった。
◇
情報収集といえば酒場なのだが、この町に酒場はないので次に人が多く集まりそうな宿屋へとアベルは向かった。
「うーん……泊まり客はあんまりいなそうだな……」
宿屋の一室をノックするが返事がなく、誰も居ないようだった。
仕方なく、隣の部屋の扉を叩く。
コンコン。
「はーい」
アベルが扉を叩くと、部屋から男性の声が聞こえ、扉が開く。
そこには声の主と思しき宿泊客が立っていた。
見た感じ、旅の商人のようである。
「こんにちは。すみません、ちょっと聞きたいことがあって」
「う、ん?」
「えと、この近くに盗賊みたいな人達が隠れられるような場所、知りませんか?」
アベルは目の前の人物を旅の商人と見受けるや否や、旅先でそういった場所を見なかったか訊ねていた。
「いやあ……、どうかな……。私は旅の商人でね。よその国から来ているんだ。だからこの辺の地理には詳しくなくて……」
旅の商人は“すまないね”とアベルに断りを入れる。
「そうですか……」
「旅をしていて思うのだが、最近どうも魔物どもが強くなってきた気がするぞ。どこかで良くないことが起こっていなければよいのだが……」
そう云って旅の商人は手首を擦る。
手首には魔物に襲われたのか、包帯が巻かれていた。
「良くないこと……」
……もう、起きた後だよ。
アベルは瞳を伏せ、旅の商人に軽く会釈して宿屋を後にした。
「……あ、一先ず装備整えよっか……」
宿屋を出ると武器屋の看板に目が留まり、アベルは武器を買うことにする。
この町を出た外では魔物といつ遭遇するかわからない。
パパスも居ないし、アリアも居ない。
プックルと二人で乗り切らなければいけないのだ。
目的地に着くまで死にたくはないからね、と自分とプックルの分を買い揃えた。
そうして武器屋を後にし町中を歩いていると、小さな女の子が目の前を通り過ぎる。
「っ、ねえ、君! この辺で盗賊とかが隠れ家にしてるような所知らないかな!? 遺跡みたいな場所だと思うんだけど……!」
もう少し、手掛かりが欲しい。
宿屋で聞いた話は魔物が強くなって来てるってことだけ。
武器を買うきっかけにはなったが、目的地がわからなければ、父パパスやヘンリー達を助けに行けない。
思い出したくはなかったが、さっき過ったパパスが叫ぶ背後に、遺跡のような壁と柱があった気がする。
だが、遺跡なのか不明なその場所は、どの方角にあるのかわからなかった。
アベルは小さな少女が何か知っているとは思えなかったが、藁をもすがる思いで訊ねていたのだった。
「このお城の北東には大きな遺跡があるんだって! でも、外は危ないから絶対に行っちゃダメってママに言われてるの」
「っ!! 北東だねっ!? ありがとうっ! プックル行くよ!」
「がうっ!」
まさかの少女から有益な情報を掴み、アベルはにっこりと微笑んでプックルと走って行く。
走るアベルの背中に「危ないから行っちゃダメなのよっ!?」と少女の忠告が聞こえた。
うん、わかってるよ。
行っちゃいけない場所だってこと、僕は知っている。
それでも、行かなきゃいけないんだ。
ヘンリーを助けに、
父さんを助けに、
アリアを助けに。
――未来を変えるために。
……アベルはプックルと共に古代の遺跡へと向かうのだった……。
アベル……。
泣かしてごめんやで……。
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読んでいただきありがとうございましたっ!