ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

あれ? 今回アリアパートになってしまいました。

では、本編どうぞっ。



少年期【古代の遺跡】
第八十三話 古代の遺跡


 

 アベルがラインハット北東の古代の遺跡に向かい始めた頃、アリアはというと――。

 

 

「……広い、なぁ……」

 

 

 ぽつん、と独り。

 アリアは足元に広がる古代の遺跡を眺めていた。

 

 

 ザーーーー……と、水路を水が流れる音が微かに聞こえる。

 

 

 何故、独りなのかというと……。

 

 

 

 

 

 

 ――時は数分前まで遡る。

 

 

「よっこいせっと……」

 

「王子をさっさと牢に入れて、酒でも飲むぞー!」

 

「おーっ!」

 

 

 古代の遺跡にやって来た人攫い達はヘンリーを担ぎ、奥へと向かう。

 古代の遺跡内にアジトがあるらしい。

 

 古代の遺跡に到着してもヘンリーは目を覚まさなかった。

 意識が無いにも拘わらずアリアの手を放す様子もない。

 アリアは繋がれたままの手をそのままに、翼を小さく羽ばたかせ地面や床で身体を引き摺られないよう何とかここまでついて来ていた。

 

 ……までは良かったが、体力のないアリアは入口に入ったところで脱力する。

 その拍子に男の腕が床へと引っ張られた。

 

 

「うおっ!? 何でぇ、こいつ急に重くなりやがったぞ! 何かがぶら下がってるみてぇだ」

 

『痛い! 痛い! 痛い!!』

 

 

 アリアの身体は前のめりに引き摺られ、スカートや膝を石造りの床に擦られていた。

 血が滲み、白いスカートが赤く染まる。

 

 

「っ、くっそ、ガキのくせに!」

 

 

 げしっと、男の一人がヘンリーの伸びた腕を蹴った。

 その腕の先の手にアリアの手が繋がれていたのだが、蹴られた拍子にヘンリーの指の力が緩み、アリアは解放される。

 

 

 ……ということが数分前にアリアが体験したことだった。

 

 

 

 

 

 

 一人になったアリアはそのまま男達を追って奥へと歩いて行く。

 両脇に水路が通る入口のフロアから奥へと歩くと、遺跡の全景が見渡せる高所へと出たのだった。

 そこからは遺跡の造りが一望でき、複雑に絡まる各通路の繋がりが見渡せる。

 

 

「立体迷路みたい……」

 

 

 あそこが、あそこに出て……。

 あっちは、こっちに……?

 

 リアルなダンジョンだと思うと迷っちゃいそうね……。

 

 

 アリアはここからの眺めをスマホで写せたらいいのに、と思う。

 ぼーっと遠くを眺めている内に、じくじくと膝が痛んだ。

 

 

「っ、いった! そうだ。……ヘンリーを助けないと……。ん、ホイミ!」

 

 

 先程擦り剥いて血が滲んだ膝に、アリアは回復呪文を唱える。

 すると、膝の傷が塞がっていく。

 血は止まったが、汚れたスカートは赤黒く変色し始めていた。

 

 

「うん、呪文は使えるから、何とかなるかな!?」

 

 

 アリアはヘンリーが連れ去られた方へと視線を移す。

 

 

「……! あそこがアジトかな……!?」

 

 

 今立っている場所から見て、東側。

 少し距離はあるが、人攫い達が遺跡内の小部屋に入って行くのが見えた。

 男達の中にヘンリーの姿は確認できない。

 

 

「……あ、牢に入れるとかなんとか言ってたっけ。……許せない」

 

 

 幼気な子供に何てことをするのっ!!

 

 

 アリアは憤り、独りで乗り込んでやろうかと息巻いたのだが。

 直後、背後から聞いたことの無い声が聞こえて来た。

 

 

「天空人! 成敗っ!」

 

「えっ、うわぁあああっ!!?」

 

 

 ヒュッと風を切る音がした……と思ったら剣が横一線に振り払われた。

 アリアは背後に近づく気配に気付き、既の所で背を仰け反らせ攻撃を避ける。

 刃が目の前を横切って行った。

 

 

 ハラリ、パラパラパラ……。

 

 

 前髪が少しだけ切れてしまった。

 

 

 グッジョブ私!

 今の動き良かったよっ!

 

 当たってたらやばかった……!

 身体真っ二つになってた!!

 

 あれ、多分痛恨の一撃ってやつだったと思う!

 

 

 アリアは鼓動をドキドキドキと高鳴らせ、立ち上がる。

 突然襲われた事実に驚愕するも、切れた前髪を見上げ“ぱっつん前髪”も悪くないよねと切られて跳ねた前髪を押さえたのだった。

 

 何故そんな悠長なのかというと、次の攻撃がやってこなかったからである。

 

 

「っ、貴様っ! よくも避けてくれたな! 頭に来たぞ!」

 

 

 横一線に振った剣の勢い余り、アリアを襲ってきた敵はバランスを崩していた。

 その敵とは、緑の【スライム】に乗った小さな騎士、【スライムナイト】。

 剣が重いのか振り切った際に手から剣がすぽっと外れ、遠くに飛ばしてしまっていた。

 それを拾いに【スライムナイト】は【スライム】から一旦下りると、剣を拾って戻り再び【スライム】によじ登る。

 そして、次の攻撃に備え構えを取ろうとしていた。

 

 動きがコミカルで可愛いのだ、が……。

 

 こいつは可愛いだけじゃなかった。

 

 

「スライムナイト! 何で出て来るのっ! ウソッ! しかも、群れっ!?」

 

 

 アリアは一匹の【スライムナイト】の数メートル後ろに、二匹の【スライムナイト】を見つける。

 

 

「おーい! ここだここだ! ここににっくき天空人がいるぞっ!!」

 

「今行くぞ! 騎士たるもの仲間のピンチには必ず駆け付けるのだぁぁぁっ!」

 

「いざ行かん!」

 

 

 【スライムナイトA】が手を振ると、【スライムナイトBC】がアリアに向かって来ていた。

 

 

「ちょっ! ピンチはこっちなんですけどっ!(逃げなきゃっ!)」

 

 

 アリアは三匹は分が悪いと、逃げようとするのだが。

 

 

 

 ……………………。

 

 

 

 しかし まわりこまれてしまった!

 

 

 

 ………………えぇ……?

 

 

「うそぉ……。イッっ!!!」

 

 

 【スライムナイト】達の剣が振り下ろされ、避けるもアリアの顔が痛みに歪む。

 致命的ではないが、三匹にそれぞれ腕や脚を切り付けられてしまっていた。

 

 

「いっ、たぁ…………! 痛いぃぃ~~~!!」

 

 

 アリアは両腕を抱え、身を護るように蹲る。

 全身が痛みに震えた。

 

 

 いつもならアベルやプックルが庇ってくれるので、ここまでリアルな痛みは初めてだった。

 

 

 ……やばい。

 これ、このままだと死ぬ!

 

 

 アリアは何か呪文を唱えようとしたのだが、

 

 

「「「マホトラ!」」」

 

 

 スライムナイト達は一斉に魔力吸収呪文【マホトラ】を唱えてくる。

 アリアの顔が一気に青褪めた。

 

 

「なっ、ちょっ、やめ……!!」

 

 

 

 

 ふざっけんなぁぁあああああっ!!

 

 

 

 

 アリアはぶち切れ、心の中で叫んでいた。

 




スライムナイト、この時期に遭遇すると何気に嫌なモンスターです。
ピエールは大好き!

アリア、絶体絶命のピンチですね!
早くアベルが来ないかな~っと。

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感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。

読んでいただきありがとうございましたっ!

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