ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

古代の遺跡攻略、行ってみます。

では、本編どうぞっ。



第八十五話 ぼろぼろの二人

「アベルぅ……」

 

「はぁ、はぁっ……呼んだ?」

 

 

 アリアが呟くと頭上に影が掛かり、アベルが息せき切ってアリアを覗き込んでいた。

 

 

「っ、ええぇっ!?」

 

「はっ、はぁ……、良かった、アリア無事だったんだね!」

 

 

 驚きに目を見開くアリアに、アベルは安堵した顔で笑顔を見せる。

 

 

「っ、アベルっ!」

 

「っ、わっ!? ちょ……ちょっとアリアっ!?」

 

 

 ぎゅうぅぅぅっ! 

 

 

 アリアは咄嗟にアベルの首に腕を回し、引き寄せ抱きしめていた。

 

 

「アベルっ、アベル! アベルっ、よく無事でっ!!」

 

 

 アベルとの再会にアリアは涙する。

 

 

「っ、無事に決まってるじゃん……僕、」

 

「“強いし”……? って?」

 

 

 アベルだ……!

 アベルが来てくれたっ。

 

 うれしい……!

 

 

 アリアはアベルを解放し見上げると、ほっとしたような顔で微笑んだ。

 

 

「っ、そういうこと!」

 

 

 アベルはちょっぴり照れ臭そうに後ろ頭を掻く。

 

 

「よくここだってわかったね……?」

 

「うん、町の人に訊いてここだろうって」

 

「ここだろうって……遠くて大変だったでしょう? お城からは随分距離が離れてるよ?」

 

「まぁ……それなりに遠くはあったけど……」

 

 

 アベルはここに辿り着くまでの過程を思い出す。

 

 

 

 

 

 

 ――ラインハットを後にしたアベルは地図を頼りに【古代の遺跡】を目指し、北東へと進んでいた。

 途中、魔物と何度も遭遇し、プックルと協力しながら“負けるもんか!”の精神で戦い抜けた。

 

 そんな中、ふとアベルは足を止め、突然ある方向へと指を差す。

 

 

「……ねえ、プックル、あそこに何が書いてあると思う?」

 

「がうっ?」

 

「……僕、字が読めるから見て来るね。毒沼だからプックルはそこに居て」

 

「ふにゃあ~」

 

 

 アベル達の目の前に毒の沼地が見える。

 その中央に看板が設置されているではないか。

 

 ……気にならないわけがない。

 

 アベルはプックルに毒の沼地手前で待つようにと言いつけて、毒沼をざっぶざっぶと掻き分けていった。

 

 看板を目前にした際、ふっとアレ(・・)が降りて来る。

 

 

「っ、あ、これまた(・・)だ……、っ」

 

 

“毒の沼地、キケン! 入るな!”

 

 

 看板にはそう書かれていた。

 

 

「…………っ…………」

 

 

 僕は莫迦だっ!

 

 

 こんなしょうもない看板を読むために身体に毒を受けるなんて!

 

 前にもしたじゃないか!

 なんでまた(・・)同じことを繰り返すんだよっ。

 

 

 アベルは看板の前で絶句し項垂れる。

 そして、身体が毒で満たされていくのを感じながらプックルの元に戻った。

 

 

 ざぶざぶ、ざっぶざっぶ……。

 身体を侵食する毒の痛みを受けても、アベルは無言だった。

 

 

「がうがうっ」

 

「……ぅぅ……薬草を……」

 

 

 毒の沼地を抜け、アベルは【ふくろ】から薬草を取り出し噛み砕く。

 失われた体力が戻って来た。

 

 

「あの看板、沼の中じゃなく手前に置いてくれればいいのに……」

 

 

 アベルは悔しそうに唇を噛む。

 

 

「……行こう、プックル」

 

 

 無駄な時間を使っちゃったな……。

 

 

 アベルは再び【古代の遺跡】を目指し歩き出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 その後も【古代の遺跡】に到着するまでかなりの魔物と遭遇し、幾度も戦闘を繰り返す。

 ラインハットを出る前に薬草を大量に購入しておいたのだが、備えておいて良かったとアベルは思った。

 口の中が青臭くなるまで薬草を食べたが、お陰で身体も鍛えられたので、結果オーライなのである。

 

 

「……アベル? どうかした?」

 

「あっ、ううん。来るのが遅くなってごめんね」

 

 

 回想から戻って来ると、アベルは心配そうに自分を見上げて来るアリアを見下ろした。

 彼女に怪我は無い様だが、服が随分汚れている。

 血と土埃が白い服を汚していた。

 

 

「ううん、あなたが無事で良かった」

 

「アリア、大丈夫? ……怪我した?」

 

 

 アベルはアリアの手を引いて立たせてあげる。

 立ち上がったアリアの翼の一部が汚れ拉げていた。

 

 

「え? あ、うん。少しね。呪文で回復したから平気」

 

「……ごめんね、僕がもっと早く気付いていればこんなことには……」

 

 

 アベルは俯きアリアに謝る。

 

 

「え……? 何でアベルが謝るの……?」

 

 

 アベルだって、怪我してるくせに……。

 

 

 アベルをよく見てみると、回復しきれていない傷が薄っすらと残っていた。

 

 

「……がうっ!」

 

 

 突然、アベルを見ていたアリアにプックルが「我も居るんだけど」と飛び掛かってくる。

 勢いよく飛び掛かられ、アリアは尻餅を搗いてしまった。

 

 

「あっ、プックル! わっ、ちょっと熱烈歓迎は今はちょっと勘弁っ!!」

 

「ふにゃあ~! ゴロゴロゴロ……」

 

 

 べろべろべろ。

 れろ~ん、れろ~ん!

 

 

 プックルは夢中で嫌がるアリアの頬や首筋、手に、脚と舐めていく。

 

 

 ……この味だ。

 この味こそ、我が食すに相応しい、最高級食材!

 

 いつかサンチョとやらの用意した野菜と共に美味しくいただくのだ。

 今は死なせるわけにいかん!

 

 

 プックルはいつかアリアを食おうとしているようだ……。

 

 

「ちょっ、タンマっ!! ダメだってばっ!! えいっ! 言うことを聞いて!」

 

 

 アリアはプックルの両頬肉を思いっきり掴み、左右に引っ張る。

 

 

「っ!? ウニャァアアア!!」

 

 

 痛っ!?

 髭が抜けるっ!?

 

 

 プックルは驚いてアリアから離れたのだった。

 

 ……アリアとプックルがじゃれ合う中、アベルは黙ったままだったが、漸く口を開く。

 

 

「っ……僕が……」

 

 

 また(・・)に気付くのが遅かったからこんなことになったんだ……。

 

 

 アベルは拳を握りしめる。

 アリアはプックルに「めっ!」と説教をして、アベルに向き直った。

 

 

「謝らなくていいよ。……アベルの所為じゃないでしょ?」

 

「え」

 

「ね、そんなことより、アベル。ヘンリーが牢に入れられちゃってるみたいなの。パパスさんもさっき奥へ行ってしまって。追い掛けよう?」

 

 

 アリアはあっちの方、とパパスの向かった方向を指差し行こうと告げるが、ふと視界に入った足元……、階下に広がる何らかの儀式に使用するような舞台のあるフロアにパパスが丁度やって来るのが見えて目を見開いた。

 

 

「あっ、あれ、パパスさんじゃないっ? っ、魔物……っ!?」

 

「あ……、……っ!」

 

 

 アベルは通路の手摺まで走り、階下に向かって叫ぶ。

 手摺は高く、大人の身長でも飛び越えるのは難しそうだ。

 

 

「父さんっ!」

 




古代の遺跡はそこそこ強いモンスターが出るので、パパス加入後にレベル上げや宝箱探索をした方が効率的かもしれません。

毒沼は……見に行きましたよね? ねっ?

あぁ、何かシリアスパート辛い。楽しいw
悪ふざけしたい、でも出来ない。
しばらくはこんな感じかもしれません。

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感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。

読んでいただきありがとうございましたっ!

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