古代の遺跡攻略が続きます。
では、本編どうぞっ。
「父さんっ!」
アベルの叫び声は届かず、パパスは魔物と戦っていた。
パパスが押されている様子はないが、魔物が次から次へと出現し、パパスに襲い掛かる。
奥へ通さないようにしているようだった。
奥といっても、先へと続く通路は見当たらないのだが。
「アベルっ、ここ凄く広いの。急ごう!」
「っ、アリア飛べるっ!? ここから降りればすぐ! ……って……あ……」
アベルはアリアを見て言葉を失くす。
アリアの翼は羽がいくつも折れ曲がっていて、手摺の上まで上がるのは無理そうだった。
「……ごめんなさい。羽折れちゃってて、上手く飛べそうにないの……」
しばらく待てば元に戻るかもしれないけど、とアリアは頭を左右に振る。
「っ……うん。そう……だった、ね。じゃあ……行こう……か」
アベルは俯きがちに口角だけ上げたのだった。
その顔色は悪く、青褪めている。
「…………。アベル……? 顔色が……」
「……父さんなら強いから大丈夫だよ。……ヘンリーが待ってる、行こう」
「っ、ええ!」
アベルはアリアを伴い歩き出した。
「……まだ、決まったわけじゃない……」
ぽつりと呟き、アベルは隣を歩く少女を見る。
アリアは、
「東の方に盗賊のアジトみたいな所があったの、あそこ! パパスさんの所に行く途中にあるから寄って行きましょう! ヘンリーの居場所がわかるかも!」
向かう先の小部屋らしき建物を指差していた。
まだ……、決まったわけじゃない。
アベルはアリアの云った“アジト”とやらへと寄ることにしたのだった。
◇
東へと進み、アベルはアリアの云っていた小部屋の扉を開ける。
『ちょっ、アベル、真正面から入るのっ!? 危ないよ!?』
アリアは慌てて止めに入る。
「……平気だよ。……どうせ、お酒飲んで酔っぱらってる」
『っ……わ、
「……………………、……うん。わかる時はわかるから大丈夫。でも話とか全部憶えてるわけじゃないから」
アリアをちらりと見て「いつもわかるといいんだけどね」とアベルは部屋の中へと入って行った。
「……わかる時はわかる……、か……」
アベルさっきから何だか……思い詰めたような顔してる……。
何か
アリアもアベルを追っていく。
◇
アジト内には三人の男が居り、酒盛りをしていたのだった。
「おじさん、一杯どうぞ」
「うん? 何だお前は? ああ、キラーパンサーを連れているところを見るとお前も魔族だな。ひっく……」
“アジト”に侵入したアベルはテーブルに置いてある酒ビンを手に取り、一人目、角が左右に付いた黄色いマスクを被り上半身裸の筋肉ダルマ男に酒を注ぐ。
『キラーパンサーって……?』
「さあ……何言ってるんだろうね……?(魔族……?)」
アリアとアベルは顔を見合わせ首を傾げる。
「がう?」
プックルも首を傾げていた。
高潔なキラーパンサーとは我のことだが、何か? とのこと。
「かー! 仕事の後の酒はたまんねえなあ。ともかくここに子供を連れてくりゃあドレイとして買ってくれる。いい話だよな」
ふと、厳つい顔の人攫いの二人目の男がジョッキ片手に大きく息を吐き出すと、隣の筋肉ダルマの方を向いて酒臭い息を放った。
丁度、そこにはアリアが居り、
『ぅっ、お酒くさっ……。ドレイって……何てことを……! っ、ヘンリーをどこへやったのっ!? メ……』
アリアは男を睨み付け、手の平に炎を纏わせ始める。
メラを放つつもりらしい。
「ちょ、アリアっ!? この人には効かないよ!?」
アベルはアリアの手首を掴んで止める。
『っ、ぐ……。そうだった……。けど私が姿を見せればワンチャン……』
「だめだ。騒ぎになったら魔物もやって来る。ここに居る男達を殺しても意味はない。そしたら君も僕も無事じゃ済まないよ?」
『っ、ぐぅっ……』
アベルの説得にアリアは唇を噛み締め、黙り込んだ。
「あの人にも話、訊いてみるね。アリアは聞いても怒らないようにね?」
『…………うん』
アベルは冷静にアリアを諭し、奥の席で鼻歌を歌いながら上機嫌にラッパ飲みで酒を煽る三人目の男に声を掛ける。
顔は赤ら顔で、【ダンスニードル】と【くさったしたい】を足して二で割って、百発殴ったような顔をしている。
「おじさん、おかわりどうぞ」
コトッ、とアベルは新しい酒をテーブルに置いてやった。
「うい~、ひっく……。王妃に王子を始末してくれと頼まれたけどよぉ。殺せと言われたわけじゃないし……。王子をドレイとして売ればまた金が入る。こりゃあ一石二鳥ってもんだ。ひっく」
「……ドレイか……」
ドレイとして売られるって、どういうことなんだろう……?
こんな中途半端な記憶なら無い方がまだましだ、アベルは“ふぅ”と息を吐く。
のも束の間、
『ぐぐぐっ……』
「っ……どうどうどう……アリア、顔が怖いよ……っ」
アリアが中指を立て、鬼の形相で男を下から睨みつけているのでアベルは落ち着かせるように頭を撫でた。
すると、アリアの瞳にじわりと涙が浮かぶ。
『っ、アベルっ、もうこんな所に居たくない。パパスさんの所に行こう?』
「…………うん、そうだね。けどちょっと待って」
『……うん』
アベルは少しだけ部屋内を物色してから、アリアの手を取ると小部屋を出たのだった。
◇
小部屋を後にし、パパスの居るフロアを目指し歩いている途中、アリアは口を開く。
「ねぇ、アベルって、すごいね」
「え……? 何が……?」
「だって……、人攫い達が酔っ払ってたとはいえ、傍にある樽を壊しちゃってたから……」
先程まで激おこなアリアだったが、アベルが小部屋内にあった樽を堂々と壊していくので、吃驚したのか声を失ってしまう。
部屋を後にすると、すっかりいつもの穏やかなアリアに戻っていた。
「あ、力の種が入ってたよ。あと……すごろく券かな、これ」
「力の種は知ってるけど、すごろく券……? この世界にもすごろくがあるの?」
「アリアの世界にもあったの……?」
「うん。あ、でも私の言ってるのは、そのすごろくじゃなくって……」
ドラクエ世界のすごろくって……、Ⅲでやった記憶があるわ……。
この世界にもあるなら、リアルすごろくになるのかな……。
ぶるりっ。
アリアは想像して身体を震わせた。
前世のアリアがプレイしたドラクエⅢの“すごろく”には様々な仕掛けがあり、大金が手に入るマスや、珍しいアイテムを手に入れることが出来るマス、魔物と戦うマスなんかもある。
ルール上、仲間から一人を選びソロプレイするため、戦闘も必然的に一人で戦わなければならない。
ゴール地点には貴重なアイテムが置かれており、それを目当てに何度もプレイしたものだ。
ただ、運が悪いとゴール出来ずに終わることもあるし、死ぬこともある。
よく“勇者”でプレイしたけど、“賢者”にした時は弱くて死んじゃってたなぁ……。
勇者の名前は兄の名にしてたけど、賢者の名前は確か自分にしてたんだよね(名前は未だ思い出せないが)。
懐かしいなぁ……、じゃなくって!
もし一人でやっておいで、なんて言われたら死ねる!
私は絶対やらないんだから、とアリアはアベルの持つ【すごろく券】を見下ろしそう思う。
「アリアの世界もこの世界も、共通点がいくつかあるんだね」
「……あはは……共通点かぁ……。そうだね~……」
アベルの言葉にアリアは“制作会社が一緒だからだよ”とは言えなかった。
アリアの呪文の範囲は、対物は効くこともある。
対人、魔物は見える相手には効くが見えない相手には効かない。って感じですかね。見えない相手には互いに干渉出来ないっていう……。
アリアさんの気持ち(魔力or気合?)次第なとこがありますが、いつまでもこの状態じゃないのでわりとざっくり設定だったりします。
すごろく楽しいよね~。
めっちゃ好き過ぎて、何度やったか。
最後のすごろくだけ中々クリアできなかった思い出。
何で、落とし穴ぁ~!?
また、落とし穴ぁ~!?
くっそ、落とし穴ぁぁああ!!!
くやしいのう、くやしいのうっ!!
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読んでいただきありがとうございましたっ!