ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

パパスはつおいぞ!

では、本編どうぞっ。



第八十八話 パパスと合流

 

「はぁーーーーっ!!」

 

 

 パパスの掛け声が聞こえると共に剣が振り下ろされ、魔物の身体が斜めに切り裂かれると「ギャアアア!」と断末魔の叫び声がフロアに響く。

 魔物の身体が床に崩れ落ち、消えていった。

 

 

「っ、父さんだ!」

 

「うん! 間に合ったみたいっ!」

 

 

 アベルとアリアは漸く目指していた舞台のあるフロアに辿り着き、舞台上で戦うパパスに加勢しようと走り出す。

 二人は早速武器を構えるが「さあ、やるぞ!」という時には、パパスが魔物達を一掃してしまっていた。

 

 

『っ、つっよ~い! あんなにたくさん居たのに……!』

 

 

 アリアがパパスの戦い振りに瞳を瞬かせ、さすがだと感心する。

 

 どれだけ戦っていたのかはわからないが、パパスの足元には数えきれない程たくさんのゴールドが散らばっていた。

 

 

「はぁ、はぁ……これで、やっと奥に進めるな……はぁ……(全く次から次へと……)」

 

 

 パパスは剣を一振りし、刃に付いた血を振り落とすと、背中の鞘に剣を収めたのだった。

 そして、険しい目付きで周りを注意深く見回す。

 

 

 そこへ。

 

 

「っ、父さんッ!」

 

「おお! アベルか! お城ではぐれてしまったと思ったがこんな所までやって来るとは……。お前も随分成長したものだな。父さんは嬉しいぞ! さて、ともかく王子を助け出さねば!」

 

 

 アベルがパパスに声を掛けると、ここのフロアの魔物は全部父さんが倒したから安心しろ、とアベルの頭を優しく撫でる。

 アベルを目にした途端、パパスの瞳は優しく穏やかに緩くなった。

 

 

 が、

 

 

「お前が先に行け。後ろの守りは父さんが引き受けたぞ!」

 

 

 パパスはアベルにそう云うと、再び辺りを警戒するように厳しい目付きに戻ってしまう。

 

 

「……父さん、ヘンリーがこの奥に居るの……?」

 

 

 アベルは立ち止まったまま動こうとしない。

 

 

「む? うむ、恐らくな」

 

「……居ないかもれないし……、そうだ! 一旦戻って応援を呼ばない? 王様に言えば……」

 

 

 そうだよ、救援を呼べばいいんだよ……!

 何で今まで気が付かなかったんだろう……。

 

 

 アベルはふと思いついて、アリアを一瞥してから提案してみる。

 “アリアが居るから未来は変わるかもしれないんだ”、それならば、自らも何か変えてみようと思ったのだった。

 

 

 けれど、

 

 

「何を言っている。そんなこと出来るわけがなかろう? ラインハット王に頼まれたのはこの父だ。これは父が解決せねばならぬ問題なのだ」

 

 

 パパスは首を左右に振り、アベルの案を却下してくる。

 

 

「で、でも……」

 

 

 このままだと、父さんは炎に呑まれてしまうのに……。

 僕じゃ、未来は変えられないのかな……?

 

 

 アベルは唇を噛み締めた。

 

 

『アベル……? パパスさんがいればヘンリーを助けられるでしょ? 急がなきゃヘンリーが売られちゃうかもしれないのよ?』

 

 

 居ないかもって……居るよ……。

 私一緒に連れて来られたもの……!

 

 

 “アベルは何を言っているの?”とアリアは首を傾げて、アベルを説得してくる。

 

 

「……っ、父さんっ、ヘンリーを助けたら……、…………っ」

 

 

 言わなきゃダメなのかな。

 あんまりにも酷いことだから、本人にはなるべく言いたくないんだけど……。

 

 

 アベルは言い淀む。

 

 

「ん……?」

 

「……っ、と、父さん……死んじゃうかもしれないんだよ……? それでも行くの……?」

 

 

 アベルは意を決してパパスに告げるのだった。

 

 

「…………、死……? …………わっはっはっはっ! 何を言うかと思えば……。父さんは死なんよ、アベル。こんな小さなお前を残して死ぬわけないだろう?」

 

 

 アベルが泣きそうな顔で見上げるも、パパスは笑い飛ばして大きなその手でアベルを抱き上げる。

 

 

「っ、と、父さん…………っ、僕はっ!」

 

「……大丈夫だ、アベル。父さんはな、とても強い。それに、まだやることが残っているのだ、そう簡単に死なんよ。お前が大きくなり、孫をこの手に抱くまでは決して死なんぞ!」

 

 

 パパスは不安そうな息子を見上げ、明るく告げた。

 

 

 そういえば……。

 家に来た予言者のあの男……、今のアベルみたいに泣きそうな目をしていたな……。

 

 

 ラインハットに来る前、サンタローズで調べ物をしていた時に自宅にやって来た若者が、哀し気な瞳で自分を見ていたのを思い出し、パパスは“予言もあながち嘘とは言い切れないものだな”と思う。

 

 

 面倒事に巻き込まれ、家に戻るのが遅くなる……ということだったのだろう。

 早く、アベルを自宅に連れ帰ってたくさん遊んでやらねばな。

 

 

 独り言も気になるし、とパパスはアベルを床に下ろすと頭を撫でた。

 

 

「っ……でもっ……!」

 

 

 アベルは何とか食い下がろうとするのだが、

 

 

「さあ、早くヘンリー王子を助けねばな。行こう、アベル。……だが、このフロアは行き止まりになっているようなのだ。途中水路の北に牢らしき場所も見つけたのだが、水路が邪魔で通れなかった。もしかしたら、そこにヘンリー王子がいるのやも」

 

 

 さて、どうしたものかと、パパスは譲る気はない様子で先を目指そうとしていた。

 

 

「このフロアの奥から水の音が聞こえるのだが……隠し通路でもあるのか? アベル、お前は勘が良い。何か思いつかないか? 父さんは奥の壁を調べるからお前もちょっとその辺を探ってみてくれ」

 

 

 パパスは奥の壁へと歩いて行くと壁に耳を当てる。

 壁の向こう側からザーーーー……と水の流れる音が聞こえた。

 

 

「っ……。……アリアがいる、から……(きっと大丈夫……!)」

 

 

 アベルは小さくボソッと溢し、パパスの背中を見送る。

 

 

『ん? 私……?』

 

「……アリア、大丈夫……、だよね……?」

 

『…………ん? ……よくわかんないけど……、パパスさんが居れば大丈夫でしょう? さっきの戦闘だって、あっという間に倒しちゃったじゃない?』

 

「……………………、そう、だよね……」

 

 

 アリアは何も知らないから……。

 君ならもしかしたら、変えられるかもしれないんだよ……?

 

 

 首を傾げるアリアにアベルは肯定して欲しくて、彼女を窺い見ていたのだった。

 

 

「おーい、アベル? こっちだこっち!」

 

「……父さんっ、壁じゃないよ! そこの仕掛け床に乗ると壁が開くんだ!」

 

「ん? なん……」

 

 

 奥の壁の前で手招きするパパスに向かってアベルは走り出し、壇上の中央付近にある周りの床とは違う模様が描かれた飾り床を踏み締める。

 

 すると、

 

 ゴゴゴゴゴゴ、という音を立てパパスの目の前の壁が開いていった。

 

 

「おおっ!? さすがだアベル! よくわかったな!」

 

 

 ああ、マーサ。

 私達の子はなんと頼もしいのだ!

 

 ……だが、何か引っ掛かる気がしたな……?

 

 

 パパスはアベルを褒めるが、何か違和感を感じた。

 

 

「……奥にイカダか何かがあれば、水路も行けるよね?」

 

「ん? あ、ああ……そうだな」

 

 

 ……何だ……?

 アベルの様子がおかしいな……。

 

 

 アベルがパパスの元へやって来てそんなことを言うので、パパスは首を縦に下ろしながら、やはり違和感を感じる。

 

 ……のだが、「ヘンリー王子の救出が先だね」と、アベルが歩き出すので奥へと向かうことにした。

 

 

 

 

『アベル……』

 

 

 アリアはアベルに手を繋がれながら、彼の横顔を眺める。

 目が合うと僅かにはにかんではくれるが、視線が外れると小さな少年の顔の眉はハの字を描き、弱っているように見える。

 

 

 ……アベル、あなた何か知っているのね……?

 

 

 …………。

 

 

 ……未来がわかるって言ってたものね。

 

 

 いつも元気で可愛い笑顔を見せてくれるあなたが、今はとても悲しそう。

 どうして、そんなに不安そうな顔を……?

 

 

 この先で、何が起ころうとしているの……?

 

 

 少しでもアベルの不安が和らぐならと、アリアはアベルの手をぎゅっと強く握るのだった。

 




アベル君、未来を変える為頑張ってますなっ!

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