ドラゴンクエストⅤ -転生の花嫁-   作:はすみく

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いつもありがとうございます、はすみくです。

ぬわーーーーっっ!! しませんよ。まだ……。

では、本編どうぞっ。



第九十六話 形勢逆転!?

 

『ぬわーーーーっっ!!』

 

 

 パパスがゲマの炎に包まれ、消し炭になった過去がアベルの脳裏に蘇る。

 

 

 そう、アベルの見た未来は、未来(・・)ではなくすべて過去(・・)なのである。

 

 

 そして、それは別の世界の出来事。

 よく似た、別世界。

 

 

 アベルはそれを何度も経験してきたのだ。

 

 幾度も、父の非業の死を目撃させられている(・・・・・・・)

 

 

 この世界に至っては、何故かアベルが別世界の出来事を多少なりとも憶えていた。

 

 

 

 

 ――もう、見たくない。

 

 

 

 

 アベルがそう思うのも無理はない。

 

 

 

 そして、今回も巨大な火球がパパスの目前まで迫っていた。

 

 

 

 

 ――その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 “マホカンタ!”

 

 

 

 

 

 

 

 少女の声が聞こえたかと思ったら、パパスの前に呪文を跳ね返す光の壁が現れ、ゲマの放った【メラゾーマ】が跳ね返される。

 跳ね返された大きな火球はゲマに向かうが、ゲマは咄嗟に身を引き避けた。

 火球はそのまま遺跡の壁にぶつかり、苔やツタ、壁を焦がしていた。

 

 

「っ!!?」

 

 

 ゲマは一瞬何が起きたのかわからず燃えた壁をちらり、目を瞬かせる。

 アベルも聞き覚えのある声に閉じていた目蓋を開いた。

 

 

「……っ、……!?」

 

 

 ウソだ……。

 そんなこと……、今まで一度だって…………。

 

 

 アベルは目を見張る。

 

 

「はぁ、はぁ……、う……?」

 

 

 パパスに至っては何が起きたのか理解しておらず、痛む腕を押えている。

 光の壁は一度だけ魔法を跳ね返すと消えてしまった。

 

 

『っ、パパスさんっ、今、回復を……って、あ、そっか、効かないのか……、えぇ~、でもマホカンタは効いたし……』

 

 

 光の壁、もう消えちゃったからたまたま効いてくれたのかな。

 良かったぁ~!!

 

 覚えておいて(・・・・・・)良かったわ……。

 

 

 いつの間にかパパスの足元にアリアがやって来て、彼を支えている。

 

 

「なんだ?」

 

「今、一体何が……」

 

 

 ジャミとゴンズは目の前にアリアが居るにも拘わらず、見えない様子で首を傾げていた。

 

 

『っ、どうしよう……、あっ、薬草なら……』

 

 

 アリアはガサゴソと自分の持ち物を漁る。

 

 

『……あった! パパスさん、これ食べて……(酷い……顔も、身体も……。今飛べないからごめんなさい……)』

 

 

 アリアは立っているのもやっとであろう、血で滑るパパスの身体に何とかよじ登って口に薬草を突っ込む(翼はアベルに縛られた際に羽が折れてしまい使用不可中である)。

 

 

「んむっ!!!???」

 

 

 パパスは驚き目を丸くするが、一噛みすると薬草だとわかったのか、咀嚼した。

 

 

「……な、何が起きているのかはわからないが……(傷が少しだけ回復した……)」

 

 

 少しだけ身体が楽になり、パパスの呼吸が安定する。

 

 

「…………招かれざる客……でしょうかね……」

 

 

 ゲマがぽつりと小さく呟いた。

 その小さな呟きに、アベルが何かに気付く。

 

 

「っ……! ア、リ……っ」

 

 

 ダメだっ、ゲマは……!

 

 

 アリアに呼び掛けようとしたが、声が上手く出せない。

 

 

『アベルっ! パパスさんを助けるからねっ! アベルもすぐ助けるからっ! ヘンリーもっ! ……っ、プックル!』

 

 

 パパスから下りると、アリアはアベルに向かって大きな声で告げた。

 プックルが離れた所で完全に意識を失い伸びているので「プックルが死んじゃったぁああああ!!」と彼女は頭を抱え勘違いしている。

 

 

 

 

 

『……うぅ……。許せない……! ……ぅーん……』

 

 

 私を認識できない人達には呪文が届かないけど、私が見えなくっても、物には当てられるし、直接呪文をぶつけなければ効くかもしれない。

 天井を崩してダメージを与えられないかな……。

 

 何か、使えそうな呪文……。

 

 

 アリアは目の前の魔物達を倒せれば御の字だが、倒せない場合でも何とかゲマ達を欺き、皆で逃げる隙を作ろうと覚えている(・・・・・)呪文を頭の中で探ったのだった。

 

 

 あっ、あるある!

 

 

 アリアは天井を見上げ、両手をゲマの頭上に(かざ)す。

 

 

『顔の青いシャクレやろぉっ! 絶対許さないんだからっ!!』

 

「シャク……? …………ほっほっほっほっ……」

 

 

 アリアはパパスの前に立ちはだかり、啖呵を切る。

 ゲマは愉快そうに嗤っていた。

 

 

 そんな中、アリアは両手に神経を集中させ、呪文を放つ。

 

 

『バギマ!』

 

 

 ゲマの頭上、天井の壁目掛け放たれた中規模の竜巻の刃は、天井にぶつかり、幾つかの壁石を崩し直下のゲマへと落下していった。

 

 

「「ゲマ様っ!!」」

 

「っ!!??」

 

 

 ジャミとゴンズがゲマに注意を呼び掛ける。

 同時、ゲマは一瞬驚いたものの、落ちて来た石を片手で楽々粉砕したのだった。

 

 

『あっ! 何なの、むっかつくぅ~!!』

 

 

 アリアは頬を膨らませる。

 

 

「い、一体何が……???」

 

 

 突然目の前で天井が崩れ、パパスは茫然と立ち尽くしていた。

 

 

『……バギマはダメか……、なら……、うーん…………』

 

 

 アリアは次の一手を考えるが、

 

 

『……一応魔力温存してたけど、足りないかもしれないし、とりあえず、もっとパパスさんを回復させておかないと……』

 

 

 パパスに振り返り、アリアはまた持ち物から薬草を取り出す。

 

 

 

 

 

 そんな中、

 

 

「……リア……、げて……」

 

 

 アベルは声を振り絞った。

 

 

 こんなこと、僕は望んでいない。

 アリアを巻き込むつもりはないんだ……。

 

 

 そう思うアベルの背後に居たはずの、ゲマの気配がいつの間にか消えている。

 

 

 そして、

 

 

「……ほっほっほっほっ……。威勢のいい娘さんですねえ……」

 

 

 次には、アリアの背後にゲマの姿があったのだった。

 

 ゲマの手がアリアに伸びる。

 

 

『っ!!? なっ』

 

 

 アリアは自分が影に覆われたことに気が付いたが、気付いた時にはもう遅く、

 

 

 

『きゃあああああっっ!!』

 

 

 

 宙に捕らえれていたのだった。

 




アリアさん、無防備過ぎやしませんかね……。
ノーガード戦法ですわ……。

ゲマさん……。
ホント憎いあん畜生ですねっ!

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感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。

読んでいただきありがとうございましたっ!

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