ぬわーーーーっっ!! しませんよ。まだ……。
では、本編どうぞっ。
『ぬわーーーーっっ!!』
パパスがゲマの炎に包まれ、消し炭になった過去がアベルの脳裏に蘇る。
そう、アベルの見た未来は、
そして、それは別の世界の出来事。
よく似た、別世界。
アベルはそれを何度も経験してきたのだ。
幾度も、父の非業の死を目撃
この世界に至っては、何故かアベルが別世界の出来事を多少なりとも憶えていた。
――もう、見たくない。
アベルがそう思うのも無理はない。
そして、今回も巨大な火球がパパスの目前まで迫っていた。
――その時だった。
“マホカンタ!”
少女の声が聞こえたかと思ったら、パパスの前に呪文を跳ね返す光の壁が現れ、ゲマの放った【メラゾーマ】が跳ね返される。
跳ね返された大きな火球はゲマに向かうが、ゲマは咄嗟に身を引き避けた。
火球はそのまま遺跡の壁にぶつかり、苔やツタ、壁を焦がしていた。
「っ!!?」
ゲマは一瞬何が起きたのかわからず燃えた壁をちらり、目を瞬かせる。
アベルも聞き覚えのある声に閉じていた目蓋を開いた。
「……っ、……!?」
ウソだ……。
そんなこと……、今まで一度だって…………。
アベルは目を見張る。
「はぁ、はぁ……、う……?」
パパスに至っては何が起きたのか理解しておらず、痛む腕を押えている。
光の壁は一度だけ魔法を跳ね返すと消えてしまった。
『っ、パパスさんっ、今、回復を……って、あ、そっか、効かないのか……、えぇ~、でもマホカンタは効いたし……』
光の壁、もう消えちゃったからたまたま効いてくれたのかな。
良かったぁ~!!
いつの間にかパパスの足元にアリアがやって来て、彼を支えている。
「なんだ?」
「今、一体何が……」
ジャミとゴンズは目の前にアリアが居るにも拘わらず、見えない様子で首を傾げていた。
『っ、どうしよう……、あっ、薬草なら……』
アリアはガサゴソと自分の持ち物を漁る。
『……あった! パパスさん、これ食べて……(酷い……顔も、身体も……。今飛べないからごめんなさい……)』
アリアは立っているのもやっとであろう、血で滑るパパスの身体に何とかよじ登って口に薬草を突っ込む(翼はアベルに縛られた際に羽が折れてしまい使用不可中である)。
「んむっ!!!???」
パパスは驚き目を丸くするが、一噛みすると薬草だとわかったのか、咀嚼した。
「……な、何が起きているのかはわからないが……(傷が少しだけ回復した……)」
少しだけ身体が楽になり、パパスの呼吸が安定する。
「…………招かれざる客……でしょうかね……」
ゲマがぽつりと小さく呟いた。
その小さな呟きに、アベルが何かに気付く。
「っ……! ア、リ……っ」
ダメだっ、ゲマは……!
アリアに呼び掛けようとしたが、声が上手く出せない。
『アベルっ! パパスさんを助けるからねっ! アベルもすぐ助けるからっ! ヘンリーもっ! ……っ、プックル!』
パパスから下りると、アリアはアベルに向かって大きな声で告げた。
プックルが離れた所で完全に意識を失い伸びているので「プックルが死んじゃったぁああああ!!」と彼女は頭を抱え勘違いしている。
『……うぅ……。許せない……! ……ぅーん……』
私を認識できない人達には呪文が届かないけど、私が見えなくっても、物には当てられるし、直接呪文をぶつけなければ効くかもしれない。
天井を崩してダメージを与えられないかな……。
何か、使えそうな呪文……。
アリアは目の前の魔物達を倒せれば御の字だが、倒せない場合でも何とかゲマ達を欺き、皆で逃げる隙を作ろうと
あっ、あるある!
アリアは天井を見上げ、両手をゲマの頭上に
『顔の青いシャクレやろぉっ! 絶対許さないんだからっ!!』
「シャク……? …………ほっほっほっほっ……」
アリアはパパスの前に立ちはだかり、啖呵を切る。
ゲマは愉快そうに嗤っていた。
そんな中、アリアは両手に神経を集中させ、呪文を放つ。
『バギマ!』
ゲマの頭上、天井の壁目掛け放たれた中規模の竜巻の刃は、天井にぶつかり、幾つかの壁石を崩し直下のゲマへと落下していった。
「「ゲマ様っ!!」」
「っ!!??」
ジャミとゴンズがゲマに注意を呼び掛ける。
同時、ゲマは一瞬驚いたものの、落ちて来た石を片手で楽々粉砕したのだった。
『あっ! 何なの、むっかつくぅ~!!』
アリアは頬を膨らませる。
「い、一体何が……???」
突然目の前で天井が崩れ、パパスは茫然と立ち尽くしていた。
『……バギマはダメか……、なら……、うーん…………』
アリアは次の一手を考えるが、
『……一応魔力温存してたけど、足りないかもしれないし、とりあえず、もっとパパスさんを回復させておかないと……』
パパスに振り返り、アリアはまた持ち物から薬草を取り出す。
そんな中、
「……リア……、げて……」
アベルは声を振り絞った。
こんなこと、僕は望んでいない。
アリアを巻き込むつもりはないんだ……。
そう思うアベルの背後に居たはずの、ゲマの気配がいつの間にか消えている。
そして、
「……ほっほっほっほっ……。威勢のいい娘さんですねえ……」
次には、アリアの背後にゲマの姿があったのだった。
ゲマの手がアリアに伸びる。
『っ!!? なっ』
アリアは自分が影に覆われたことに気が付いたが、気付いた時にはもう遅く、
『きゃあああああっっ!!』
宙に捕らえれていたのだった。
アリアさん、無防備過ぎやしませんかね……。
ノーガード戦法ですわ……。
ゲマさん……。
ホント憎いあん畜生ですねっ!
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読んでいただきありがとうございましたっ!