鬱……。
では、本編どうぞっ!
『っ、うっそ、まさか……見えるの……!?』
アリアは見えない鎖に繋がれ、宙に浮かされていた。
驚きに目を見開き、地上にいるゲマを見下ろすが、
「ほっほっほっほっ……。天空人ですか……、まだいたのですねえ……。城は疾うの昔に落ちたというのに」
ゲマはアリアの目線に合わせる様に自分も宙に浮く。
同じ目線で、ゲマが顔を近付け舐めるようにアリアを見たのだった。
アリアの後ろでジャミとゴンズが「ゲマ様! 一体何を?」と二匹で顔を見合わせている。
ゲマ以外の二匹にはやはりアリアが見えないらしい。
パパスはアリアのお陰で体力が僅かに回復したが、あまりにもダメージが多かったためか膝をついてしまっていた。
アベルの元に行けるような体力はなさそうだ。
『っ、放して(……あごぉおおおっ!!)』
どんな骨格してんのよ……っ!!??
こんな時なのに、アリアはゲマの顎が気になってしょうがない。
「ほっほっほっほっ……放してとは……。
天空人を見たのは久しぶりで、これは
ゲマは丁寧な口調ながらも鼻の下を伸ばし、愉悦に酔いしれたように口を歪ませた。
どう調理してやろうかとオレンジの怪しい瞳が喜びに弧を描いている。
『…………、…………じゃあ、……放してください。……ダメ?』
「ほっほっほっほっ……。どうしましょうかねえ?」
アリアはあざとく小首を傾げて可愛く言ってみるが、ゲマの顔はますます喜びに歪んでいった。
『…………あんた気持ち悪いのよ。何、その笑い方。下品だわ』
何こいつ、さっきからニタニタと私のこと見て……。
幼女趣味とか?
完全にヤバい奴じゃない!
アリアはゲマの態度に眉を顰める。
「ほっほっほっほっ……、そういう態度を取っても宜しいのですか?」
『っ……な、何よ……』
ごくり。
ゲマの怪しい視線に怯んでしまい、アリアは無意識に唾を一飲みした。
「ゲマ様?」
「ゲマ様……!?」
ジャミとゴンズが再びゲマに語り掛ける。
パパスに止めを刺すかどうか訊きたそうにしていた。
ところがゲマはアリアと対話中で、ジャミとゴンズには目もくれない。
「我々魔族にとって、天空人とは……相容れぬ存在。いや、忌むべき存在なのですよ。たとえ空の城が遥か昔に墜ちようとも、それは未来永劫変わりません。天空人には死を……」
『っ!!?? こ、こんな幼気な子供を殺すっていうのっ!? こんなに可愛いのにっ!?』
っ、ヤバッ、油断した……!
まさか私が見えるなんて……!!
アリアの背中にじっとりとした嫌な汗がツーッと垂れる。
「ほっほっほっほっ……。子供であろうとなかろうと、関係ありません。…………ですが……」
ゲマが話を続けようとすると、
「「ゲマ様っ!!」」
足元でジャミとゴンズがゲマを見上げていた。
「…………さっきから何ですか、騒々しい。少し待っていなさい。今、天空人の娘を血祭りに……」
「天空人……ですかっ!?」
「天空人!!? どこに……!?」
ゲマの言葉にジャミとゴンズは眉を顰める。
“自分達には見えないのですが”、と辺りをキョロキョロと見回したのだった。
「……ほう……? あなた方には見えないのですか……? …………ふむ……」
ゲマはアリアから少し距離を取り、彼女の周りをぐるりと一周して熟視した。
中でもアリアの翼を特に注視している。
『……っ、な、何……?』
アリアは訝しんで、ゲマの不可解な動きに視線を追わせていた。
するとゲマはアリアの背後で静止する。
「ほっほっほっほっ……。おもしろい魔法が掛かっていますねえ。成程、これの所為でジャミとゴンズには見えないということですか……」
『っ、痛っ!!』
ゲマの手が伸び、アリアの片翼を無遠慮に引っ掴む。
急に乱暴に掴まれ翼が軋むと羽根がはらはらと抜け落ち、床へと落下していった。
『痛いっ! ちょっと痛いんですけどっ……!? 暴力反対っ!!』
「……翼が無ければ、天空人もただの人。空には帰れませんねえ……。まあ、もっとも、空の城すらも今や天空にあらずですしねえ……」
ニヤニヤと享楽にふけるように、ゲマはアリアの片翼を掴む手に力を込める。
そして、アリアの翼の付け根にもう一方の手を押し付け、背中を押さえた。
『イッ……!? な、何するつも……』
アリアは痛みに背後を窺う。
よくは見えないがゲマが背中を押さえ、片翼を掴んでいるのはわかった。
あ、これ、ダメなやつ……!
アリアは瞬時に理解し、血の気が引くのを感じる。
そうしてゲマは片翼を持つ手に“グググッ”と強い力を込め、一気に翼を引き剥がしたのだった。
「ぎゃあああああああああああっっっ!!!!!!」
アリアは絶叫し、痛みに身体を痙攣させる。
ぶちぶちぶちぃ……、プチっ、プツッ……。
ぷつぷつ、プツン、ぶちぶち……。
血管が引っ張られ切れていく音が聞こえ、アリアの背中から
ゲマは「ほっほっほっほっ……、美しい色ですねえ……」と返り血を浴び喜んでいた。
剥がした血塗られた片翼をゲマは“ほら”と手放し、パパスの目の前の床へと投げ捨てる。パパスの頬にもアリアの鮮血が付着した。
「あっ! 天空人っ!!」
「おおっ! そこだったのですか!」
片翼が無くなったことでアリアの姿を視認出来たらしく、ジャミとゴンズは一旦目を丸くしてから「おお! さすがはゲマ様!」とゲマを称えていた。
「っ……翼……!?」
パパスは足元に落ちて来た小さな翼を見つけると、ゲマを見上げる。
「っ……!? な、……女の……子……!!?」
「あ゛あ゛あ゛あ゛ああああああっっ!!!!」
ぶちぶちぶちぃ……!
パパスがアリアを目撃した頃には、ゲマはもう片方の翼も引き剥がしていたのだった。
プシャァア……!!
アリアの背から再び血飛沫が溢れ出す。
アリアは瞳から涙を溢し、ぶるぶると身体を震わせ……、
「……ぅ……」
終には意識を失ってしまった。
「ほっほっほっほっ……。これで小賢しい魔法ともお別れですねえ……。ホイミ」
アリアが意識を失ったことを確認したゲマは、アリアの背中に回復呪文を掛ける。
翼を引っこ抜いた際に出来た大きな傷痕が僅かばかり小さくなり、出血量が抑えられた。
「ゲマ様!? 何故回復を……!?」
ジャミがゲマの行動に意見する。
「ほっほっほっほっ……、これで彼女も人間です。人手不足ですからねえ……。少し休ませましょうか」
ゲマはそう云うと、アリアを拘束していた見えない鎖を解いた。
アリアの身体が床に落下していく。
「っ、何てことを!! ……っ!!?」
パパスは残った体力を振り絞って走り出し、落ちて来るアリアをキャッチした。
アリアはアベルよりも小さく、すっぽりとパパスの腕に収まる。
「……っ、君が……。アリア……」
パパスが血だらけのアリアを抱える様子を、離れた場所からアベルが滂沱の涙を下し見ていた……。
いやぁ~、鬱展開続きますなぁ~。
何か、ごめん。
ゲマはゲマらしく書きたくてね……ほっほっほっほっ……。
保護魔法なくなっちゃった、テヘ☆彡
パパスさんがキャッチ出来なかったらアリアさん死亡ですねw
毎度後書きで雰囲気ぶち壊す私w
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評価いただけるとモチベ上がりますので、良かったら下さいっ。
感想など頂けたらめっちゃ嬉しいです。
読んでいただきありがとうございましたっ!