急募:ラスボスに転生した一般人が平和に生きる方法   作:鬼怒藍落

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最強種

 数多くのヒロインが出てくる厨二病闇鍋ゲーム『混界のサーガ』の中には、それはもう化物みたいに強いキャラが何人か存在している。

 そしてその中でも最強と呼ばれるキャラの一角が目の前にいる銀嶺阿久良王だ。

 ちなみにファンの間ではアクラちゃんと呼ばれている。

 で、話を戻すがクラマルートのヒロインである彼女は、それはもう馬鹿みたいに強い。最初現れたときはクラマ君を救ってくれるお助けNPCなのだが、時間が経ち好感度を稼いでいくと戦う事が出来き、彼女に勝利すれば晴れて彼女のルートに入れるのだが……。

 前述したとおり彼女は馬鹿みたいに強いのだ。

 難易度で言えばこのゲームの中で一番だし、何個もの即死技を持っている上自己回復までしてくる鬼畜仕様。それどころか四つの形態を持ってる上に一切休ませてくれずに連戦させてくる。そして嘘をつくとバレるのだ。

 しかも設定と彼女の発言を見るにまだ本気でないだとか、ゲームで戦ったときは四割程の力しか出してなかったようで、それを見たときはどんだけ強いんだとツッコんだ事は今だ記憶に残ってる。

 あと嫌でも記憶に残されたバッドエンドは共依存や人格改変、果てはレーティングに喧嘩を売っている生み直しにetc.

 

『誰か攻略法ハーリー!』

『初見プレイ時:アクラちゃんなら手加減してくれるでしょ! 戦闘後:何だこの鬼畜ボス修成はよ!?』

『勝てねぇよ、誰か助けてよ』

『なんで僕はこんな修行僧みたいなことをしてるんだろう?』

『スリップダメージががが』

『僕……吹雪……好き』

『凍死体が一つ、凍死体が二つ、凍死体が……いっぱい』

 

 今上げたのが攻略できなかった人達の掲示板の反応であり、あまりにも勝てなかった僕もそこに意見を残したのを覚えている。

 そして――――。

 

『僕にはアクラちゃん以外何もいらない』

『人族は皆殺し、人族は皆殺しぃ!』

『ひゃっはー! 狐こそ最高の種族だぜ!』

『アクラちゃんしか勝たん』

『尻尾に挟まれて余生を終えたい』

『ママァ!』

『僕の母親はアクラ様だったんだ』

『僕来世は着物になる(真顔)』

 

 これがアクラルートでバッドやグッドを辿った人間の末路だった。

 いや、思い返したけど阿鼻叫喚のクリア前の方がまともな反応笑うんだよな。だって後半に上げた反応とか地獄だし、まあ僕もクリアしてから数日は同じようになってたんだけどさ。

 

「む? せっかく握り飯を用意してやったのだ。早く食べぬか。そしてはやく話を聞かせよ」

「そう言われても僕が知ってるのは別のアクラだよ。僕が知ってるのは君の姿とは全然違うし」

 

 一応名乗れている事から考えると本人かもしれないが、これは嘘ではないので乗り切れるはず。

 

「……そうか、あの反応から妾の事を知ってると思ったのだが。それなら仕方ないでもせっかく握り飯を出したのだそのぐらいは食べるのだ」

「食べたいんだけど、僕今幼馴染みを探してるから急がないといけないんだ」

 

 時間を取られてしまったがこの場所には謎の魔法があるせいで猶予があまりない。アリアの状況が分からないので速く探さなければいけないのだ。

 

「む、なら妾も手伝うぞ。時間を取らせてしまった礼だ。それにこの場所は妾の庭だからな、どこに何があるかくらいなら分かるぞ」

「そうなの? それじゃあ、助けてくれない?」

「よいぞ、始めての暇つぶしじゃ……大船に乗った気分で探すが良い!」

 

 彼女には嘘が通じず、何より彼女自身が嘘を嫌っているのできっとアリアを見つける事が出来るだろう。だけどまあ、警戒は解くことが出来ない。だって暫定本人の彼女相手だ。記憶を失っていて小さくなっていてもその実力は変わらないだろうし、機嫌を損ねて殺されたらたまらない。

 

「では出発だ他に人間の気配は北の方からするぞ」

 

 もう一つ彼女相手に気を付けなければいけない事がある。

 それは、彼女に気に入られないことだ。将来的にまた出会う可能性がある以上今気に入られてしまったらきっとバッドエンドが早まるだろう。

 それほどまでに彼女のバッドは入りやすく、何より重く僕では耐えれそうにはない。

 

「そうだクラマよ、貴様は何故ここに来たのだ?」

「事故だよ、幼馴染みの子と廃墟を探索してたらここに来ちゃったんだ」

「それは災難だったな、となると彼奴の術に引っかかったのか」

「彼奴?」

「そうこの社の番人だ。妾の他にこの場所を守っている奴でな。たまに物を持ってくるのだ」

 

 その番人の事が気になって彼女に話を聞いてみれば、どうやらこの場所には番人と呼ばれる鎧姿の武者がいるようなのだ。 

 そのせいで彼女はここから出られないようですっごく退屈しているとの事。一度戦いを挑んだが軽く遇われてしまったようで、それ以来は戦っていないそうだ。

 まじか、アクラが倒せない相手とかいるのか……でもそんな空いているとは思えないし、記憶を失ったことで彼女は弱っているのか?

 

「あれ? って事はもしかして僕達って帰れない?」

「あーそうだな……彼奴がいる限りここからは出られんな」

「まじかー」

 

 いや、まじか。

 ここから帰るには彼女を倒せる化物と戦わないといけないのか。え、詰んでない? さっきのゴーストを相手した以上に詰んでない?

 あまりの現実にこの場で僕は項垂れてしまう。

 

「でもここは何もないが良いところだぞ? 妾の力で飯は出せるし住めば都になるかもしれぬぞ」

 

 項垂れる僕を慰めるようにそう言ってくれたが、僕の気分は上がることはなかった。だって今の反応から勝つのは無理でここに永住する事になったかもしれないからだ。

 幸いハクアとの繋がりが近くになってきた事から、もうすぐアリアと出会えそうなんだけど……今の事を聞くと素直に喜べない。

 

「っと、クラマよ誰かいるようだぞ?」

「あ、アリ――アァァァァ!?」

 

 目に入った見慣れた姿。

 彼女を見つけ名前を呼ぼうとしたタイミングで突進してくる銀の毛玉。鳩尾にそれが直撃し僕はそのまま後ろに吹き飛ばされた。

 直後聞こえる荒い息と毛の感触に犯狼が誰か理解したのだが、怒ろうとするもあまりに痛みに悶絶してしまい僕は動くことが出来なかった。

 

「ねえ大丈夫クラマ?」

「――ッゥ逆に大丈夫に見えるの?」

「見えないけど……」

 

 珍しくこっちを心配してくれるアリアの様子にかなり弱っている事を僕は悟る。

 よく見れば目が腫れていて泣いていたことを知り、もう遅いけどもっと早く見つけて上げればよかったなと思ってしまった。

 

「見つけられたようだな、よかったではないかクラマ」

「うんありがとね、おかげで彼女を見つけられた」

「……貴方誰?」

「妾か? 妾はアクラ、この社に住む狐だぞ」

「なんでクラマと仲良さそうなの?」

 

 あれ……アリアさん?

 なんか様子おかしくない、なんでそんな不機嫌そうにアクラを見るの? ……というかそれどころか、手元に槍まで作り出しちゃって何しようしてるの?

 どうしようなんか凄い嫌な予感するんだけど。

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