急募:ラスボスに転生した一般人が平和に生きる方法   作:鬼怒藍落

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ラスボス予定の一般人中盤ダンジョンで迷子になる

 牙の森を彷徨い続けて約二時間。

 正確な時間は分からないけど、大体そのぐらいだろうと思いながら進んでいれば短い時間で好物になったこの森特有の真っ赤な木の実が沢山あった。

 それを何個か木から取り、もう慣れてしまった掲示板魔法を発動する。

 

215:一般ラスボス

悲報:はぐれて迷ったワロス

 

216:名無しの転生者

案の定迷ってて草

 

217:名無しの転生者

フラグ回収乙

 

218:名無しの転生者

俺は知ってた

 

219:名無しの転生者

俺も

 

220:名無しの転生者

迷うと思ってた

 

221:名無しの転生者

なにしてん?

 

222:名無しの転生者

逆にどうやって迷うんですか?

 

223:名無しの転生者

呑気

 

224:名無しの転生者

森の物勝手に食べちゃダメでしょ

 

225:名無しの転生者

大丈夫お腹壊さない?

 

226:一般ラスボス

大丈夫、スタミナ回復できる奴だから

 

227:有能ニキ

あの木の実なら安全だな

 

228:名無しの転生者

よし安全だ

 

229:名無しの転生者

安心した

 

230:名無しの転生者

有能ニキの言葉なら信じられる

 

231:有能ニキ

だから信頼厚くて草

 

232:名無しの転生者

とりあえずイッチ視界共有できる?

 

233:一般ラスボス

任せて……まあ森しかないけど

 

234:名無しの転生者

わぁ、本当に木がいっぱい

 

235:名無しの転生者

真っ暗でなんも分からねぇ

 

236:名無しの転生者

景色全部コピペかな?

 

237:一般ラスボス

とりあえずどこ目指せばいいと思う?

 

238:名無しの転生者

 

239:名無しの転生者

 

240:名無しの転生者

アリアのとこ

 

241:名無しの転生者

フェンリルの神殿?

 

242:名無しの転生者

それ危なくない?

 

243:名無しの転生者

その前にまず牙の森の詳細が知りたい頼む有能ニキ

 

244:有能ニキ

任されたちょっと待ってろよ

 

245:名無しの転生者

これでわかるな

 

246:一般ラスボス

なんで僕は頼られないの? 一応クリアしてるんだよ

 

247:名無しの転生者

だってねぇ

 

248:名無しの転生者

信頼の差

 

249:名無しの転生者

イッチだししゃあない

 

250:一般ラスボス

悲しいのだ

 

251:有能ニキ

『牙の森』そして別名が日の森。太陽が出ている間日の光に溢れる聖なる森。そしてこのダンジョンには、回復系のアイテムと満腹ゲージを回復するための果物が多数存在し、主に鳥や獣系のモンスターが多く生息している……隠しボスである聖獣フェンリルは、対話することが可能で何かを対価に願いを叶えてくれる

 

252:名無しの転生者

中盤ダンジョンっぽいな

 

253:名無しの転生者

これフェンリルに助けてもらえるんじゃない?

 

254:名無しの転生者

対価居るんだろ? イッチがそんなの持ってると思わないぞ

 

255:名無しの転生者

そこは子供補正

 

256:名無しの転生者

フェンリル子供好きだからいける

 

257:名無しの転生者

ならいけるな。とりあえずイッチ、フェンリルに会いに行こう

 

258:有能ニキ

場所は分からないが、神殿があるはずだ。そこ目指そうか

 

259:名無しの転生者

皆、了解ありがとう

 

260:名無しの転生者

ええんやで

 

261:名無しの転生者

方向音痴のイッチがたどり着けるか分からんが、頑張れよ

 

262:名無しの転生者

帰ったら奮発してステーキ食べような

 

263:名無しの転生者

皆マジで優しいな

 

264:名無しの転生者

ここのスレのみんなは仲間だしな

 

265:名無しの転生者

ちなみにイッチは俺らの子供

 

 

「草……ふふ、皆がいるなら安心だ」

 

 ちょっと不安だったけどこうやって自分を助けてくれる仲間がいるんだ。

 もう怖がる心配はないし、フェンリルの神殿を目指して頑張ろう。一緒にいてくれるキキョウも僕の表情が変わってのを見て元気に吠えてるし、頑張って目指さないとね。

 

「そういえば僕って、今どこに向かってるんだろう? フェンリルがいる神殿に向かってるつもりなんだけど、景色が変わらないせいで全く分からないんだよね。ねぇ、どう思うキキョウ?」

 

 魔力が減ってきたのであまり掲示板を使えないので話し相手がいないのが辛かったから、彼女に話しかけてみたのだが、返事は一鳴きだけ。一応力を借りた副産物として大体何を言っているか分かるが、今回の返事は酷い物で私には分からないというものだった。

 

「迷った僕が悪いけどそれは酷くない? まあいいけどさ」

 

 ちょっと不貞腐れてそう言ってしまったが、どう考えても迷った僕が悪いのでこれ以上の文句はない。でももうちょっと何かあってもいいだろう。例えば慰めるとかさ。

 ……あ、はやく歩けと。ごめんって、家帰ったら鹿肉上げるから許して。

 

「え、何? 熊肉もくれるなら乗せてくれるって? 早く言ってよ、それだったらすぐにそう言ったのに」

 

 なんだこの相棒は? そういう事ならもっと早く言って欲しかったな。

 だってそれならこの長い森を歩きで二時間も彷徨う必要がなかったのに……そんなに文句言うなら乗せない? ごめん謝るから乗せて。 

 結局優しいキキョウは俺を背中に乗せてくれたのだが、これがすっごい快適だった。疲れないし、何より毛並みがとても触り心地がいいのだ。

 

「じゃあフェンリルの元まで出発だー。多分奥にあると思うしこのままいけば着くでしょ」

 

 

266:名無しの転生者

イッチさては気づいてないな

 

267:名無しの転生者

視界共有きってないんだよなぁ

 

268:名無しの転生者

微笑ましいわ

 

269:名無しの転生者

初見というか始めてきたけど何だこの子、可愛い

 

270:名無しの転生者

俺らの子供だぞ

 

271:名無しの転生者

イッチは俺らが育てた

 

272:名無しの転生者

口に出すな可愛いぞ

 

273:名無しの転生者

なんだこの阿保の子

 

274:名無しの転生者

圧倒的見切り発車感

 

275:名無しの転生者

皆がいるから安心だじゃねーよ照れるだろ

 

276:名無しの転生者

あざとい流石イッチあざとい

 

277:名無しの転生者

俺らも頑張らないとな

 

278:名無しの転生者

あぁ、そうだな絶対にイッチを家に帰すぞ

 

279:名無しの転生者

初めてのお使いかな?

 

280:名無しの転生者

初めてのお使い、フェンリルの神殿編

 

281:名無しの転生者

最初だけ聞いたらただのテレビ番組なのに後半だけファンタジーなの草

 

 

 キキョウに乗せて貰いながら先へと進むこと数十分、周囲に視線を向けながら探索していれば今更ながらあることに気付いたのだ。

 

「今って……昼だよね」

 

 早朝からこの森に潜って約二時間程いたことは覚えている。

 それから数十分、今もこの代わり映えしない森の中にいる事は分かるのだが、前に有能ニキと作ったノートが間違っていなければこの森は日が出ている間は光に満ちる聖域で暗くなることなんて有り得ないのだ。

 

「これってもしかしなくてもやばい?」

 

 そう小声で呟いて一度キキョウに止まるように指示してみたのだが……急にキキョウが草むらに向けて吠え始めたのだ。魔物か? と思った俺は瞬時にキキョウの力を借りて剣を構えたが、

 

「……血の臭い?」

 

 聞こえる足音――いやこれは何かを引きずっている音だろうか? 何かがいるのは分かるが、相手はこちらを襲ってくる様子は一切なく、ただ噎せ返るような血の臭いを放っていた。

 だけど油断は出来ない、この森は聖域とはいえ曲がりなりにも魔物が溢れるダンジョンだ。何がいるのか分からないので油断とか絶対にしてはいけない。

 警戒し相手が出るのを待っていれば、茂みから現れたのは白銀の毛を持つ狼だった。キキョウの漆黒の毛並みとは違う輝く銀の毛……だけどその大部分は赤黒く染まっていた。

 獲物を狩った事による返り血……違うな、これは全部自分の体から出した物だ。

 血濡れの来訪者、それはこの森の主である筈のフェンリルで、様子を見るに誰かに襲われたことは確実。

 此方の存在に気付いたこの狼は敵意を表しに睨んでくるが、すぐに体をぐらつかせその場に倒れてしまった。

 

「厄介ごと……でも、見捨てる事は出来ないよね」

 

282:名無しの転生者

明らかなイレギュラー

 

283:有能ニキ

おかしいなフェンリルを襲える魔物なんかこの森にいる筈がない

 

284:名無しの転生者

というかイッチがさっき言ってたけどなんで今昼なんだよな

 

285:名無しの転生者

そのはずだ。最初は明るかったしたった数時間で夜になることはありえないでしょ

 

286:名無しの転生者

じゃあなんでこの森暗いんだ? 有能ニキの情報だとずっと陽の光に満ちてるはずだろ?

 

287:名無しの転生者

確かにそれはおかしい

 

288:名無しの転生者

というか有能ニキどうした? 何か気になる事でもあったか?

 

289:有能ニキ

とりあえず情報を出すがフェンリルを襲える奴はこの森にはいないんだ。

フェンリルという聖獣は何があっても襲ってはいけない神聖な者として扱われていてな。

それはこの森にいる魔物も同様の筈で、むしろ率先して未来の主である子フェンリルを守ろうとさえする。

だからこそこの状況はおかしい、この森にこの獣を襲える魔物なんかいる訳がないし、何より裏ボスである巨大なフェンリルではないとはいえこの聖獣を倒せる者がいるとは思えないんだよ。

 

290:名無しの転生者

じゃあなんで怪我してるんだ?

 

291:名無しの転生者

そんなの外敵か、自分で怪我した?

 

292:名無しの転生者

前者だな

 

293:名無しの転生者

後者はない

 

294:名無しの転生者

イッチが治療しようと近づいてるけどどう考えても悪手だろ

 

295:名無しの転生者

悲報イッチ自分の剣で手を斬る

 

296:名無しの転生者

何してんだイッチ!?

 

297:名無しの転生者

「これをやりたいんだけど、どうかな?」

剣で切ったあとすぐに包帯で治療して言うのは反則だろ

 

298:名無しの転生者

なんで迷わずそれが出来るんだ

 

299:名無しの転生者

フェンリルが敵意ないの悟って素直に治療受けてる

 

300:名無しの転生者

よかった

 

301:名無しの転生者

でも油断できないぞ絶対に敵がいる

 

 

「良い子だね、あとこれも辛いかもしれないけど食べてよ」

 

 ここに来るまでに集めておいた真っ赤な木の実。

 これにはHPの回復効果があるので、気休めかもしれないが少しはこの子の体力を回復させることが出来る筈だ。

 下手かもしれないが精一杯包帯を巻き、治療を終えればフェンリルは動けるようになってくれてお礼なのか一度鳴いたのだが、すぐに怒りを浮かべ僕の後ろに吠え始めた。

 

「なにって……君達、誰?」

 

 急にどうしたんだ? 

 何か不味いことしたのかなと思い後ろを見てみたのだが……そこには蝙蝠の羽を持った男と女に老人の三人組がいて、男がニヤニヤと気味の悪い笑顔を浮かべて僕の事を見ていたのだ。

 

 

302:名無しの転生者

敵って吸血鬼かよ!

 

303:名無しの転生者

なんで終盤の敵がここにいるんだ!?

 

304:名無しの転生者

逃げろイッチ!

 

305:名無しの転生者

掲示板見てないイッチに伝わらねぇ

 

306:名無しの転生者

……というか、イッチの性格的に逃げるわけないよな

 

307:名無しの転生者

絶対に戦うな、殺されるぞ!

 

 

「おい小僧、その獣を渡せ。そうしたら命は助けてやる」

 

 テンプレな台詞を吐いたそいつは、家畜を見るよな目で俺を見下していて、どう考えても生かして返してくれる様子はない。それにそいつの後ろにいる女はこっちを見てまだ笑っているし気味が悪くて嫌な予感が拭えない。

 

「やだよ、それよりおじさん達は何なの?」

「なにただの狩人だ。その獣を狩りに来ただけのな!」

 

 最後声を荒げたそいつは紅い槍を此方に投げてきた。

 なにかされると思ってずっと警戒していたおかげか避ける事が出来たのだが、

 

「ねえ、あの子供貰って良いかしら? 生きが良さそうで飼い甲斐がありそうなの」

「いいぞ、だが趣味悪いな。あんな子供のどこがいいんだ?」

「だって見てよ、私達を見ても怖がらずに向かおうとしてるのよ? そんなの面白いじゃない?」

 

 そのせいか女に目を付けられてしまい、相手に火を付けてしまったようだ。

 後ろは森前には蝙蝠のモンスター? いや違う、この容姿に紅い瞳……そしてさっきの槍から考えると此奴らは吸血鬼。

 こんな序盤のダンジョンにいるはずのない魔族と呼ばれる者達だ。

 

「キキョウ逃げるよ、フェンリルも!」

 

 吸血鬼の推奨レベルそれは五十以上。

 今の俺のレベルは分からないが、絶対に勝てない相手であり、こんな場所にはいてはいけないであろう奴だ。

 フェンリルは最初向かうと牙を構えたが、すぐに言うことを聞いてくれてキキョウに乗り走り出した俺に着いてきてくれた。

 

「出口分かる!?」

 

 言葉は通じるか分からないが聞いてみた所、すぐにこの子は方向を変え一度鳴いてから右の道に進み始めた。キキョウもキキョウでその鳴き声に返事をし、その後を着いて行き始める。

 

 だけど相手は吸血鬼。

 空を飛べ何より夜目が利く彼奴らからしたら、この真っ暗な森は自分の庭同然の狩場である。しかも彼奴らはフィールドが暗いほどにその能力が上がったはずだ。

 今の暗さなら――。

 

「おっと逃がさないぞ」

「そりゃ、回り込まれるよね」

 

 後ろからも聞こえるバサバサという蝙蝠の羽音。

 回り込まれ囲まれた俺達の周りには今頃三体の吸血鬼達がいるだろう。逃げられない、それに勝つのは絶望的。

 獲物であるフェンリルがいる以上逃がしてくれないだろうし、俺は最初の行動のせいで女吸血鬼に目をつけられている。

 

「キキョウ……やるよ、最初から全力だ」

 

320:一般ラスボス

という訳でみんな吸血鬼から生き残るために助けてください

 

321:名無しの転生者

しょうがねぇな!

 

322:名無しの転生者

こうなったら自棄だ絶対にイッチを生かす

 

323:名無しの転生者

皆で帰るぞ

 

324:名無しの転生者

吸血鬼俺らを敵に回したことを後悔させてやるよ

 

325:名無しの転生者

有能ニキ、ナビの頼むぞ!

 

326:有能ニキ

いいかイッチ、俺が出来るのは情報を送る事だけだあとはお前の努力次第だぞ

 

327:名無しの転生者

イッチならできるさ

 

328:有能ニキ

絶対に生き残れ

 

 

 攻略ノートの情報通り相手は強者。

 だけど吸血鬼の性格を考えれば、格下である僕相手では絶対に慢心してくれるはずだ。ゲームでもレベル差が五~十以上あると手加減してくれたはずだし、それは吸血鬼という種族共通の性格だったと覚えている。

 だからここはその慢心を突くしかない。

 元より勝つのは絶望的――――でもさ、やるしかないよね。

 死にたくない、皆の為にも絶対に生き残ってやる。

 

 

 

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