一流冒険者の僕が美少女令嬢に隷属することになりまして   作:月崎海舟

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第三話 ヴァルキュリア城をご案内

「護衛するにあたって、この敷地のことを軽く把握しておいて」

 

 とのことで、僕達は敷地内を回ることになった。

 僕は昔から遊びに来ていた為に少しは詳しいが、カレンはこのヴァルキュリア城に今日初めてきたので、どちらにせよ確認しておく必要があった。

 

 ヴァルキュリア公爵家の所有している領地はとても広い。

 その為に領民も多く、彼らにわかりやすく権威を提示しておかなければならないのは当然と言える。

 

 なら何がわかりやすいか。

 色々とあるのだろうが、僕程度にでもわかるのは住居の大きさだろう。

 

 ヴァルキュリア城はその名の通り城であり、もうこれって一国の主とかじゃないの? と思う大きさと、歴史を感じさせる佇まいだ。

 城の中以外にも、敷地の中には巨大な教会、歴代当主の墓場、武器庫やら食料庫やらと、数えればきりがない程の施設が存在する。

 

 カレンはそれらを順に案内されても、その規模の大きさにおののくばかりである。

 ……冒険者の仕事柄、僕達は貴族の家に訪れることもあるのだが、それらの想定を遥かに超えてるからね。

 一般貴族の基準を知っているだけに、カレンが驚くのも無理はなかった。

 

 その中でも白い円柱の建物――――聖なる遺体の安置所は、いつ来ても重苦しい雰囲気が漂っていた。

 扉はいかにも固く閉ざされており、結界魔法で厳重に守られていることがわかる。

 おそらくは、瞬間移動でもこの結界を超えることはできないであろうというのが、冒険者としての知識がある僕にはわかった。

 

「え? 聖なる遺体ってなんですか?」

 

 聖なる遺体の安置所の前で、恐る恐る手を上げて質問するカレン。

 ヴァルキュリア家のこの手の逸話は有名だと思っていたのだが、どうもカレンは知らないらしい。

 

 なんで知らないのよ。という目で僕を睨んでくるオリビア。

 知ってると思ったんです……と、僕は目を伏せて弁明した。

 

 カレンが知らないことを怒っているのではなく、僕が教えていないことを怒っているのだろう。

 ただ知らないのであれば、オリビアは優しく教える女性だからだ。

 

 汚名返上の為、カレンにもわかりやすく僕から教えることにした。

 

「英雄教ってあるだろ?」

「はい。世界二大宗教の一つですよね?」

「聖書にも書かれている英雄渡辺――――その遺体を、聖なる遺体って言うんだ」

「はい!?」

 

 信じられないとでも言うかのように、素っ頓狂な声を上げるカレン。

 僕だって、突然『聖書で邪悪なる神々を討滅したとされる英雄の遺体が目の前にある』と言われたら、多分素っ頓狂な声を出すだろう。

 実際はどうだったのか、昔過ぎて覚えてないけどね。

 

「え? いや! そういうのって、英雄教の教会とかが管理してるもの何じゃないんですか!?」

「普通はそうなのでしょうけど、神聖渡辺帝国の初代教皇がヴァルキュリア家に命じたのよ。我が家に保管、及び管理をしなさいってね」

 

 自慢気に……というよりかは、誇らしげに語るオリビア。

 その話を昔から聞かされた僕としては、その理由もなんとなくわかる気がした。

 

「初代教皇ヤルダバオト……? え、あの、それって、何年前の話になりますかね……?」

「今年でちょうど一七〇〇年になるわ」

「そん、なに」

「ええ、我がヴァルキュリア家は先祖代々、この聖なる遺体をお守りしてきたの。誰にも悪用されないように。眠れるように」

 

 カレンの目は、驚きすぎてもはや点になってしまっている。

 

 その気持ちも分からなくもない。

 我らが英雄の眠りを、ヴァルキュリア家は子々孫々と守り継いで来たのだ。

 偉業と言ってしまっても何ら差し支えない。

 

 その証明だとでも言うかのように、ヴァルキュリア家は公爵の爵位まで与えられている。

 一国の皇帝でさえ、その偉業を認めざるを得ないのだ。オリビアが誇りに思うのは当然のことである。

 

「……あー! だから家名がヴァルキュリアなんですね! さながらこの遺体安置所は、ヴァルハラと言ったところでしょうか!」

 

 ヴァルハラ? 何を言ってるんだカレンは?

 そもそも、ヴァルキュリアという響きにどんな意味があるのか、僕は今まで考えたこともなかった。

 

「あら、そんな神話も知ってるの? 意外と博識じゃない」

「いやぁ、親の教育の賜物ですかね!」

 

 オリビアに褒められているというのに、カレンは苦笑いを浮かべる。

 

 多分カレンは、『ヴァルキュリア家の歴史知らないのにそんなマイナー神話を知っとるんか。ほ~ん?』とでも解釈したに違いない。

 僕がオリビアの顔を見る限り、素直に感心しているだけだと思う。

 

 ……というか、ヴァルハラというのはどこぞの神話なのか。

 オリビアも知っているなら、この城の図書館なんかにも書籍があるかもしれない。今度暇を見つけて探してみよう。

 

 別に、僕も博識と褒められたいわけではない。断じて無い。ただの知的好奇心である。

 

「もしかして聖なる遺体を見せてもらえたり……!?」

「ごめんなさい。これを狙って襲いくる悪党も多いものだから、みだりに人に見せることはできないのよ」

「あー……まあ、それはしょうがないですね」

 

 オリビアが申し訳無さそうにしていることがわかったのか、カレンも無理に拝見したいとは押し切らない。

 はっちゃけているように見えるカレンだが、最低限のラインは超えないように努めているのを僕は知っていた。

 

 だが、僕はその会話を聞いて、ふと疑問が湧いてきていた。

 確かに『聖なる遺体を食せば力が手に入る』なんて馬鹿げた話を聞いたこともあるし、実際に襲撃するような奴らがいたことも知っている。

 

 だから僕は隷属する時、オリビアを真っ先に守れる護衛を申し出た。

 そういう事情もあるので、絶対オリビアに襲いかかるやつは出てくる。その頻度は他の貴族の比ではないだろう。

 悪党を叩いた際のボーナスは期待できるし、何よりオリビアを守れるのは男としての本懐だ。

 隷属する身として、これ以上の天職は無いだろう。

 

 ……少し話がずれちゃったな。

 ここで問題としたいのは、それほどまでに聖なる遺体を厳重に守っているという点だ。

 

 実を言ってしまうと、僕は子供の頃、オリビアの父親に一度見せてもらったことがあった。

 遺体というには眠っているだけのように見えるそれは、確かに聖なる遺体と呼びたくなるのもわかる代物だ。

 オリビアがここまで警戒しているのだから、本来は孤児院から遊びに来る子供に見せていいものではないのだろう。

 

 そういえば、冒険者のスポンサーになると申し出てくれた時も、名が売れる前からだった。

 ありがたい申し出に喜んで契約した覚えがある。

 

 ……あれ? 僕が思っている以上に、オリビアのお父様に気に入られてたんじゃ?

 

 想定以上の厚意に対し、もう何も返せないことを悔やみながらも、ふとそう思ってしまったのだった。

 

 

 

 

 

▽▲▽▲▽

 

 

 

 

 

 しばらく敷地内を回っていると、オリビアが恥ずかしそうに手を上げた。

 

「……少々お手洗いに行ってきますので、先に向かっててくれないかしら」

「護衛を離れさせるのはどうかと思うな」

「問題有りません。カレンさんに付いてきてもらいますので」

「えっ」

 

 突然指名されて戸惑っているカレンをよそに、オリビアはその腕をしっかりと掴んだ。

 そういうことなら大丈夫だろう。ここはオリビアの城の敷地内だし、何よりカレンなら信頼できる。何も問題はないだろう。

 

 何よりこれ以上護衛するとか言うと、変態だと怒られかねない。

 僕としてもそういった趣味はないので、ここは素直に従うことにした。

 

「かしこまりました」

 

 僕の返事にオリビアは気を良くすると、隣にいるカレンにこっそりと耳打ちをした。

 

「約束は守ってね」

「それぐらいちゃんとわかってますよ」

「ならいいんだ」

 

 おそらくオリビアは、カレンに僕の好きな人とか聞いてくる。

 だから、一応念押しをしておいただけだ。

 

「それではオリビア、また後で」

「ええ、また後で」

 

 どこか嬉しそうなオリビアに頭を下げて、僕はその場を去っていく。

 

「さて――――洗いざらい教えて貰おうかしら

「うおおおおお!? ヘルプミー!? シリウスくーん!!」

 

 ……本当にがんばってね。

 トイレの中から聞こえる救いの手を求める言葉に、僕は心の中で応援をすることしかできなかった。

 

 

 

 

 

▽▲▽▲▽

 

 

 

 

 

 オリビアに指定された次の場所は、軍隊の為の訓練場だ。

 ヴァルキュリア家には、騎士や従士を含めても、所属している兵の総勢が五千人を超える規模となっている。

 

 そんな兵達が一同に使ったとしても、何も問題が無いほどの広大な地面が僕の目の前に広がっていた。

 砂が敷き詰められた訓練場では、青い空の下で鍛える兵士達の姿が勇ましく映る。

 

 流石に兵士達全員が訓練しているわけじゃない。領地を見回ったり、他の仕事をしている兵士たちもいるだろう。今日が休日だという者もいるかもしれない。

 それでも、目の前には五百人程の兵士達が訓練をしており、その光景は圧巻だった。

 

 僕は城の壁を背にしながら、ふと子供の時のことを思い出していた。

 

 懐かしい。昔はよくオリビアと落とし穴を作ったものだと。

 

「……お前、シリウスか?」

 

 思い出にふけっていると、聞き覚えのある声が聞こえる。

 声のする方を振り向けば、僕が知っているよりも勇ましい顔をした、サーコートの騎士がいた。

 

 その顔つきはイケメンと評すよりは、知的な男前と言うべきか。

 黒髪はオールバックになっており、その目には赤縁メガネをかけている。

 

 彼の名前はジョン・アルスミス。僕の古い友人だった。

 

「ジョン! 久しぶりだな。孤児院の卒業以来か?」

「『久しぶりだな』じゃない! お前、こんなところで何やってんだ? もうそろそろ春だし、冒険者は魔物のかきいれ時じゃないのか!?」

「心配ありがとう。でも大丈夫。冒険者は辞めて、オリビアの奴隷になることにしたんだ」

 

 それを聞いたジョンは、見るに堪えない汚物でも見ているかのような視線を僕に向けてきた。

 

「お前、そんな趣味があったの……?」

「ははーん。さては何か壮絶な誤解が発生しているな?」

 

 ふざけてるなら怒るぞ、と拳を握って見せる。

 ジョンはため息を付きながら、その拳をぺしんと叩き落とした。

 

「誤解も何もあるか! お前、せっかく一級の資格を取ったのに、それを辞めてオリビア様の奴隷になるとか、どんだけ情緒を拗らせたんだ!?」

「声が大きいよ」

「大きくもなる! せっかく冒険者として成功してたのに、それをドブに捨ててどうする!?」

「オリビアに隷属することを、ドブに捨てるって言った?」

「言ってないわ! 全然誤解じゃないことだけはわかったぞ!」

 

 しまった。つい怒って誤解を加速させてしまった。

 

「いや、本当誤解なんだって。一年前の東部の都市で起こった巨大魔物災害って覚えてる?」

「え? ああ、二〇〇メートル級の魔物が暴れたってあれだろ?」

「アレ、僕も少し関わっててね」

「は? マジで? 俺そんな話知らないぞ。すごいな」

 

 疑わず素直に感心してくれるジョン。

 あの件の隠蔽工作は、オリビアの末端の部下でさえ知らないらしい。

 ……ああ、それも当然か。ジョンは騎士だし、そういう管轄ではないのだろう。

 

「まあ、その時に色々とあってね。回り回ってこうなった」

 

 だったら詳しく言わないほうがいいだろうと、あやふやにしておくことにした。

 

「……お前が隠すってことは、それなりに事情があるんだろうけどな。何かあったら俺に言えよ」

 

 古くからの友人なだけあって、僕が何かを隠しているのかは察したらしい。

 昔から頭の回転が早いやつだった。

 

「お前とオリビア様が揃うと、何をするかわからないからな」

 

 僕の称賛を返して欲しいのだけど?

 

「さすがに失礼すぎやしないかそれは」

「昔のお前らは、随分なイタズラっ子だったじゃないか。屋敷でも孤児院でも大暴れだ」

「もう二人とも大人だ。昔みたいなバカはしないよ」

 

 そう、僕とオリビアがいたずらをしたのは、遠い子供の頃の話だ。

 礼節を弁え当主の座を受け継いだ彼女と、冒険者として外の世界の常識を知った僕達だ。

 今と昔では、まるで前提条件が違う。

 

「……急にドッジボール大会始めたりしないか?」

「僕からはしないよ。オリビアがやるなら僕もやるけど

「そこはストッパーになるって言えよ!?」

 

 そう言われると耳が痛い。

 僕だってオリビアと同じ立場ならそうしたと思うよ。

 

 でもね?

 

「僕はオリビアの奴隷だから、そこらへんはしょうがないよ」

「お前性癖が天職だったから転職しただけだったりしない?」

 

 そういう気持ちも、ちょっとはあるかもしれない。

 僕は黙って目をそらした。

 

「騒々しいですね。何の騒ぎですか?」

 

 そこへ、オリビアの声が響き渡る。

 声のする方をすぐさま振り向いてオリビアの姿を確認する。隣にはもちろんカレンもいた。

 それを確認すると、僕とジョンは礼儀正しくに頭を下げた。

 

「いえ、顔なじみに出会いまして。話に花を咲かせていました」

「そう、なら構いません」

 

 僕の言葉に満足したように頷くオリビア。

 

「ここであなたと落とし穴を作ったのは、どれくらい前でしたか」

「シリウス君?」

 

 オリビアの発言に、信じられないという表情を浮かべながら僕を凝視するカレン。

 そんな顔をできるなら、僕の想い人に関しては白状してないと判断していいだろう。

 約束を守れなかったのであれば、こんな時でも申し訳無さそうな顔を浮かべているだろうしね。

 

「もう五年程前になるんじゃないでしょうか」

「十二歳の頃にそんなことをやったんですかシリウス君!? 思ってたより最近でびっくりしてるんですけどシリウス君!?」

 

 カレンのツッコミに、もっと言ってやれと言わんばかりに頷くジョン。

 

「もう大人だし、訓練場にそんな危険なことはしないよ。オリビアがやるなら別だけど」

「失礼ですね。私とてヴァルキュリア家の当主。そのよう愚昧はもうしません」

「なら安心しました」

 

 少し拗ねてしまったオリビアだったが、これぐらいなら問題ないだろう。

 

絶対ストッパーできる距離感だろこれ……

 

 何やらジョンがつぶやいていたが、小声過ぎてうまく聞き取れなかった。声量的に独り言だろうし、聞き返さなくてもいいだろう。

 

「……おいシリウス」

 

 かと思えば、ジョンは僕に耳打ちをしてきた。

 

「ヴァルキュリア家の保有している兵士達は、約五千人程度ですね」

「そん、なに!?」

 

 オリビアとカレンが、軍隊の規模について話あっているので、その隙を付いて声をかけてきたのだろう。

 

「何?」

「あちらのレディはお前の知り合いか?」

 

 一瞬だけカレンの方に視線を向けるジョン。

 ああ、そういえばここも初対面か。

 

「彼女はカレン・ミルス。僕の冒険者時代の相棒で……今は僕と同じ奴隷仲間で、オリビアの護衛が主な仕事だ」

「は???」

 

 ジョンのその疑問符は、怒りがこもっていることを感じる声だった。

 そんな声を出さないでほしい。言ってる僕ですら酷いと思ってるんだから。

 

「なぜよそ者がオリビア様の護衛なんかができるんだ?」

 

 ……怒ってるのそこ?

 

「答えろシリウス」

「僕が信頼してるからじゃないかな?」

「納得できん!」

 

 ジョンは声を荒げると、オリビアとカレンの元へ急ぎ足で向かう。

 

 ……さっきカレンのツッコミに賛同したとは思えない怒りようだ。

 多分あの時は、客人か何かと思ったのかもしれない。

 

「……オリビア様、ご歓談中失礼します」

「許します。何かしらジョン」

「シリウスから、そちらの女性がオリビア様の護衛の任に付いていると聞きました」

 

 ちらり、と怒っているような形相でカレンを見るジョン。

 

「あ、どもども! よろしくお願いしま~す!」

 

 それをカレンはよくわかっていないことが、このセリフで嫌というほどよく分かる。

 メンタルが鋼とかではなく、カレンはマイペースなやつなんだ。

 

「私は反対です。シリウスならいざしらず、このようなよそ者にオリビア様の護衛の任が務まるとは思えません!」

「……ああ、そういったことで納得できないという人もでてきますか」

 

 一瞬、考え込むように目を閉じるオリビアだったが、すぐさまその目を開く。

 その赤い瞳はどこかランランと輝いているようで、僕には楽しそうに見えた。

 

「では、ジョンとカレンさんには模擬戦をしてもらいましょうか。カレンさんがあなたに勝てれば、納得もするでしょう? あなたが勝てば解雇ということで」

「構いません」

「いや、私に対する旨味が無いんですけど!?」

 

 すぐに頷くジョンに対し、首を横に振るカレン。

 確かに、これではカレンに対する旨味がまるでない。勝手に喧嘩をふっかけられたようなものだ。

 とはいえ、主人であるオリビアがやれといえば、隷属している僕達は拒否のしようがない。

 

「あ、でもこれで私が負けたら、迷惑料二十五年分はパーになったり……!?」

「その場合はシリウスが五十年分働くことになるだけですね」

「私に一切の得が無いッ!!」

 

 ……個人的にはカレンが自由の身になるのは嬉しいんだけど、もし戦うのなら勝つのはカレンの方だ。

 二年間でジョンも強くなったと思うけど、カレンに勝てるビジョンが僕には思い浮かばなかった。

 

 仲のいい二人がただ傷つくだけなら、僕としても喜んで賛成できな――――

 

「カレンさんが勝てば、給料一年分を贈呈しましょう」

「賛成です」

「なんでそこでシリウス君が答えるんですかね!?」

 

 一年分も早くカレンが自由の身になるのだ。乗らない手はないと思う。

 

「あらカレンさん、賞金はいらないのかしら?」

「賞金があるのであれば、喜んで受けさせていただきます!!」

 

 カレンが断る理由もなかった。

 

「よろしい」

 

 オリビアが指を鳴らすと、訓練場がうごめいた。

 よく見るとそれは白い粒達で、あっというまに訓練場の中心に集まっていく。

 

「え? はい!?」

 

 初見のカレンは驚いているが、僕や兵士達からすれば見慣れた光景だ。

 現に訓練場にいた兵士達は、すぐさま端の方に捌けていくのが見える。

 

 指を鳴らして一秒もかからずに、白い粒達は立派な闘技場へと固まった。

 

 感嘆な声を漏らし、兵士達はオリビア対して拍手する。

 拍手をしている中には僕やジョンもいたが、カレンだけは呆然としていた。

 

「……今何をしたんですかね、オリビア様」

「オリビアの能力はね、その場にある灰で色んな形を作れるんだよ」

 

 先ほどの白い粒達、あれは事前に撒いた灰だろう。

 

「色々と言いたいことがあるんですけど」

「何?」

「何で訓練場に灰が撒かれているんですかね……?」

「こういう時のためだと思うよ」

 

 オリビアは昔から、こういうことをするのが大好きなんだ。

 可愛らしいところも変わってないな……。

 

 僕は懐からマイクとスピーカーを取り出す。

 マイクを通して声と魔力を通せば、スピーカーからは僕の声が大きくなって出力されるという優れものだ。

 

「僕は実況するから、カレンもジョンも頑張ってね」

 

「別にシリウス君が実況する必要皆無ですよね!?」

「お前、実はこの状況楽しんでるだろシリウス!!」

 

 これから対戦する二人の声を背に、僕はオリビアの元へ走り寄る。

 

 僕の持っている物をみて、何をするか察したのだろう。

 オリビアはどこか呆れたように、それでいて嬉しそうな表情を浮かべた。

 

「そういう所、変わってないわね」

「オリビアが楽しんでるなら、僕も楽しんで盛り上げないとね」

「そう。あなたが楽しめるのであれば何よりだわ」

 

 オリビアは僕だけに優しく微笑む。

 その笑顔は、眩しく感じるほどに綺麗だった。

 




次回、バトル展開。

・シリウス&オリビア
 お互いに相手が楽しければいいと思っている。

・ジョン・アルスミス
 オリビアのことを心の底から尊敬しており、幼馴染であるシリウスのことは信用している。
 だがよそ者。テメーはダメだ。

・カレン・ミルス
 私がツッコミなのは、今回の話でよくわかってもらえたと思います。
 ふだんここまでシリウス君がはっちゃけることは無いんですけどね……。
 多分好きな子の前でテンションがバク上げしてるでしょこれ。
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