一流冒険者の僕が美少女令嬢に隷属することになりまして   作:月崎海舟

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第八話 さあ、お掃除を始めましょうか

 そろそろ日が出ようという時間。

 脇に森林が生い茂る道を車の中で、私はシリウス――――もとい、護衛達とくつろいでいた。

 もちろん、シリウスを含めた護衛達は真面目に仕事をしているし、兵士も別の装甲車に乗り込み私の乗っている車を護衛し進んでいる。

 

「シリウス、お茶をお願い」

「畏まりました」

 

 車に備え付けられているワインセラーからお茶を取り出し、シリウスは私の為にお茶をコップに注ぐ。

 

 こうして命じていたほうが、シリウスの気は休まる。

 ……まあ、それでも周辺への警戒心は解いていないのだけど。

 

 奴隷としては正しい姿なのだけど、どちらかと言うと愛でるような奴隷としてシフトしていきたいのに、現在は私がシリウスの掌の上で転がされている。

 当初の予定とは真逆になっている。

 

 私は一口お茶を飲むと、それをシリウスに差し出した。

 

「ブレイク卿のボイジャー領につくのは昼頃なんですから、そう気を張り詰めてもしょうがないでしょう? 一口飲んで落ち着いたらどうかしら?」

 

 間接キスですよ? さあ、動揺なさい……!

 

「そうだね。ありがたく貰うよ」

 

 シリウスは嬉しそうな笑みを浮かべると、あっけなく一口含んだ。

 

 ……私との間接キスなのだけど!?

 もっとこう! ドギマギしてもいいと思うのだけれど!?

 

「ありがとう」

 

 私が心の中で怒っていると、シリウスがまだお茶の入っているコップを私に返す。

 

 ……あれ!? これってつまり、私がシリウスとの間接キスになっちゃうんじゃないかしら!?

 飲んでよ! 全部飲んでよ! 私がドキドキしちゃうじゃない!

 

 頭の中で『シリウスの唾液』『間接キス』『これはもう婚約では?』という余計なワードが浮かんでは消える。

 

 ……落ち着きなさいオリビア。あなたはヴァルキュリア家の現当主でしょう?

 落ち着く為にも、ちょっと現状を整理をしておきましょう。ね?

 

 ――――現在、私達はブレイク卿の収めるボイジャー領へと向かっている。

 

 もちろん前もってブレイク卿のご意向を兼ねてのこと。

 勝手に軍を引き連れて来るだなんて、蛮行もいいところですからね。

 

 当初は冒険者を雇うという案も彼女にはあったらしいのだけど、安い金で冒険者を大勢雇うより、大金をはたいて統率の取れた軍隊の方がいいに決まっている。

 特にヴァルキュリア家の軍力は、神聖渡辺帝国でも十本指に入る規模と統率力。頼らない手は無いでしょう。

 その分こちらは恩も売れますし、権威も増す。まさしくWin-Winです。

 

 領地のギルドにいる冒険者を大量に雇って殴り込ませる……という手もあるにはありますが、サポーターが付いていない冒険者は、たまに大ハズレとか出たりするのよね。

 相手は終末教ですし、ブレイク・ボイジャーにとっても因縁のある相手だ。

 

 一緒に乗っていたカレンが勝手にワインセラーからジュースを取り出しながら、ふと私に質問を投げかけてくる。

 

「ここらへんの地理は地図ぐらいでしか把握してないんですけど、ボイジャー領には何があるんですか?」

 

 けれど、私にはその質問の意図がよく分かない。

 

「それはどういう意味でかしら?」

「いやあ、ヴァルキュリア領はかなり商業も盛んですし、立地も抜群じゃないですか」

「そうね」

 

 その辺りの事情は、先祖の手腕の賜物だと思う。

 元々は領地も小さく、農作物を収穫するにも不毛な大地だったと聞く。

 それをよくもまあ、神聖渡辺帝国の中でも有数の都市にしたと感心します。

 

「でもボイジャー領は小さいですし、立地もそこまで恵まれてる感じがしないんですよね。かと言って商業とかが盛んなイメージも無い。地図を見る限り宿泊施設が多いんですけど、何か集まる」

「ああ、ここには観光名物として、勇者の棺があるのよ」

「この周辺二つも偉人の遺体関連の物があるんですか???」

「昔はヴァルキュリア家とボイジャー家の間にはいくつか他の領地があったんだけど、時代の流れと共にその領地がヴァルキュリア家の物になったりして、現在の隣接する形になったのよ」

「あー……なんとなくわかりました」

 

 なるほど、と頷くカレン。

 わかってくれたようならこちらとしても何より。

 

「で、勇者の棺って、聖なる遺体とはどう違うんです?」

「大前提として別人って言うのはわかってるかしら」

「まあ、それは……はい」

「勇者――――ガイ・ルーデンベルクは、初代教皇のヤルダバオトにクーデターを起こして、成功を収めた人物よ」

 

 私の説明に、カレンは眉をひそめる。

 

「あー……それなら少しだけ歴史書で呼んだことがあります。確か、暴政を敷いてた教皇ヤルダバオトを討った……とかなんとか」

「まあ、そうとも言われているわね」

 

 それには諸説ある。

 当時の記録から読み解けば、初代教皇ヤルダバオトは国家運営においては非常に優秀だった。

 それでも不満を持つ層はいたので、ガイ・ルーデンベルクとしては暴政ということにしたかったのだろう。

 ただ一般的な見解としてはカレンの言っていたことも間違いではないので、特に否定することはしないでおきましょう。こんがらがるでしょうし。

 

「終末教は教皇ヤルダバオトを『終末教皇』だなんて祟っているものだから、勇者が眠っている棺なんて憎ったらしくてしょうがないでしょうね。そういう意味では、ボイジャー家と終末教には因縁が存在するわ」

「ガイ・ルーデンベルクさんの遺体を手に入れたら、何か特典とかあるんです?」

「聖なる遺体みたいに、血肉を食べたら力を得るとかは聞かないわね。だいたい、棺が強固過ぎて開かないし」

「見世物にしてるのに中身が見れないんですか?」

「棺自体がすごく豪華だから、観光名物としては何ら問題ないわ」

「うわぁ……それで釣られる一般庶民もあれなんですが、うわぁ……」

 

 疑問はすべて解消できたのか、打ちひしがれたように項垂れるカレン。

 酷い話よね。でもこれも領を運営するために必要なことだし、仕方のないことなのよ。

 

 ――――ふと、クソ親父のことを思い出す。

 

 ……いや、仕方のないことだと思うのは、倫理観的に危うい。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「何かあった?」

 

 シリウスは心配そうに顔を覗き込んでくる。

 気持ちが緩んでいるときと違い、表情には出ていないはずだと言うのに。

 

 いい加減に自分がいい顔だという自覚をしてほしいものなのだけど。

 

 こんな鬱々とした真っ黒な感情だと言うのに、その黒い瞳に心臓が無邪気に弾みだす。

 ……この程度で気分が晴れるだなんて、私の頭はバカみたいに単純にできている。

 

 手に持っていたお茶を飲み干して喉を潤わせてから、私は口を開く。

 

「別に、なんでも無いわよ」

「ならいいんだけど」

 

 あっさりと納得するシリウス。

 それほどまでに、私のポーカーフェイスは絶好調だった。

 

 ……って、これシリウスが飲んだやつ! 飲んだやつじゃない!?

 私何してるの!? もっと味わって飲めばよかった!!

 

「何やらオリビアさんがまた自爆してますよ。シャーロットさん」

「幼い頃からこんな感じでしたから……」

 

 そこの二人、うるさい。

 そう言える思考能力もなく、私は現地に到着するまで混乱していた。

 

 

 

 

 

▽▲▽▲▽

 

 

 

 

 

 僕達がたどり着いたのは、ボイジャー領のとある町の外れ。

 そこは森林に囲まれた倉庫街となっており、輸入した商品(主に食料等)の保管場所となっている。

 

 約二〇〇名の集団で構成された部隊は、拡散して木々に身を隠していた。

 僕はオリビアの護衛として付いてきている為、もちろんオリビアと一緒にいる。

 

 僕が冒険者達を頼って集めた情報を元に、ボイジャー家が繊密な調査をすると、その中の一つが終末教シンパ達の集会場となっているらしい。

 そして冒険者を雇い、武器売買をしていた裏付けの証拠を掴んだことで、気兼ねなく突撃できるとのことだ。

 

 一人残らず殲滅する為に、集会と思われる日と時間を調べ上げ、突入する日程を調整した。

 通信で事前にオリビアとブレイク卿は打ち合わせをしており、兵士達の配置場所や連帯に関しての打ち合わせは済んでいる。

 

 もちろん僕達も準備は万全だ。

 僕に至ってはオリビアと間接キスしている。

 僕に至ってはオリビアと間接キスしている。

 

 今の僕は無敵だ。体から無限の力が湧いてくるようだった。

 

「こういうのって毎回思うんですけど、投降を促したりしなくていいんですかね?」

 

 唐突に、カレンがそんなことを言い出す。

 本当に毎回言ってるが、僕は付き合うことにした。

 カレンにとっては、心構えをするにあたって大事な問答なのだ。

 

「そんなことして、瞬間移動の魔法や我力天成(アブソリュート・ワン)で逃げられたら元も子もないじゃないか」

「いやあ、それはそうなんですけどね。こう……情報持ってそうですし、尋問したりとかしなくていいんですか?」

 

 突然怖気づいたようなカレンの反応に、オリビアは首を傾げる。

 

「その場合、嘘の情報でかき回されるわ。こういう極端なシンパ程変な意固地もあるし、ここで鏖殺しておくのが、冒険者としてもセオリーじゃないのかしら?」

「いや、まあそうなんですけど……こう、なんらかの被害者が監禁されてるパターンもあるわけじゃないですか。私も昔そういう立場だったんで、何の警告もなしに突入するのだけはなんとかならないかな、と思いまして」

「ああ、そんなことが……」

 

 どこか遠くを見ているようなカレンのカミングアウトに、オリビアは表情を曇らせた。

 

 ……そう、カレンは終末教で監禁されていた過去をを持っている。

 二年前、僕がとある事件で冒険者達(確かウィリアムともその時知り合った)と一緒に終末教支部に突入した際、救出された一人がカレンだ。

 

 その時のことがトラウマになっている部分もあるのだろう。カレンはこういった突入作戦にどこか警告ができないかと提案するのだ。

 カレン自身、引き際はわかっているのか、あまり問題を起こしたことはない。

 

 この意見は世間一般では非難されるだろうし、実際にされたこともあった。

 けれど、加害者の事まで思いやれるというのは、カレンの優しさの一つだと僕は思っている。

 

「信仰心や洗脳を解くのだってコストが馬鹿にならないのだし……あ」

 

 オリビアは何かを思い出したのか、資料を取り出し確認する。

 

「ブレイク卿の雇った冒険者によると、そういった活動の報告はないわね。主に武器や魔物を売買してるだけの集団のようよ」

「ようし全員ぶっ殺しましょう」

「この切り替えの速さは見習いたい所があるわね……」

「見習わなくていいよオリビア。カレンの場合は極端すぎるから」

 

 腕時計を見れば、そろそろ突撃の時間だ。

 そろそろ合図を出さなければならない。

 

 持ってきていた爆弾を小さくしてカレンに渡す。

 

「お願いね」

「はーい」

 

 カレンは全ての爆弾を瞬間移動させると、すかさずにボタンを押した。

 

 ドゴォン!!

 

 大きな爆発と共に、倉庫の一角が吹き飛んだ。

 

 冒険者達による調査で、おおよその間取りは掴んでいた。そこで今回僕達が爆撃したのは武器庫だ。

 資料によれば近接戦の為の武器や薬品、魔術的道具もあるとある。向こうが油断していれば、これで多少は戦力が削げる筈だ。

 

 爆弾を小さくしておいたのは、時々瞬間移動させた爆弾を即発見して、即解体する化け物が稀にいるためである。

 こうしておけば発見は遅れて敵に逃げたり防御する暇を与えないし、解体するのにも手こずらざるをえない。

 

 何より、僕の『伸縮自在(アトミックディスタンス)』は分子や原子の距離を操ることにより、物体の大きさを自由自在に変化させる能力。

 小さくしたところで、その爆発の威力や範囲などは変わらないのは利点と言えるだろう。

 

「あなた達、本当無敵よね……」

「私達だって、伊達に『小さなシリウス座』とか『太陽のアサシン』とか呼ばれてませんからね!」

 

 オリビアの引き気味の呟きに、ドヤァ……! と満面の笑みで返すカレン。

 確かに僕としても騎士道とは程遠い戦法だと思うけど、味方側の損害を最小限に押し止める為にはこれが一番早いと思う。

 

 敵に容赦情けをかけてしまえば、味方側に被害が出る。

 その中にオリビアがいるというのであれば、なおさら徹底的にやるしか無い。

 

 オリビアもこれが一番効率がいいとわかっているだろうから、態々口にするのはやめて、別のことを言うべきだろう。

 

「この手を使えるのは最初の一撃だけだよ。爆弾だって高価だから、作戦で使える数は少ないしね」

 

 そもそもヴァルキュリア家がサポーターになっていなければ、僕達は爆弾を使う機会さえ訪れなかっただろう。

 それだけ簡単に物を壊せる火薬というのは高値を付けられているし、入手ルートだって限られている。

 

 本当は魔物が飼育されている部屋も吹き飛ばしたほうがいいのでは? という案もあったが、爆弾一つで吹き飛ぶやわな生物ではないし、檻が壊れて戦線が混乱するだけだ。

 その為、今回の作戦で使うのは一つだけとなっている。

 

「――――GARRURURURURURURUR!!」

 

 ……という配慮をしていたのに、終末教達が出してきたのは魔物の軍勢。

 見る限り、多種多様で対応するのも大変そうだ。

 

「ここでぐらいしか活躍できないからね。僕が片付けるよ」

「過小評価にも程があるけど、お願いするわ」

 

 僕の提案にオリビアが頷く。

 好きな女の子にお願いって言われると、すごく元気が出る。

 

 手首から小さくした剣を元の大きさにして手に取る。

 やることは簡単、刃部分を伸ばして――――魔物たちを一息に切り裂いた。

 

 基本的に、二つに切り裂かれて再生する魔物は希少だ。

 今回彼らが用意した魔物に、そんな希少な魔物は存在していなかった。

 

 僕は視界にいる魔物達が全滅したのを見届けると、刃の長さをもとに戻す。

 

 本来、このように分子や原子の距離を広げて大きくしてしまうと、その分物質は脆くなってしまう。

 だが、空気中に存在するマナを擬似的に同質の分子に変換し、その間に敷き詰めてしまえば強度の問題は解決される。

 

「片付け終わり」

「……二年前より強くなったわね、シリウス」

 

 オリビアの言葉は本来の意味でこそ称賛ではあるが、その声色と顔からは困惑を感じる。

 まあ魔物を一撃で仕留めるって、確かに二年前の僕ではできなかった芸当だし、普通はできないからね。

 

 これでも一流の冒険者をやっていたんだから、これぐらいはできるようにならなきゃね。

 とはいえ、ヴァルキュリア家の支援がなければここまで強くはなれなかっただろう。

 

「そこはヴァルキュリア家の投資のお陰だよ。本当に君のお父さんには頭が上がらないよ」

 

 僕は素直に感謝の言葉を伝えた。

 

「……そう」

 

 オリビアは顎に左手を当てている。

 どうやら複雑な心境らしい。

 

 亡くなる前に、先代ご当主と何かあったのだろうか?

 

「他の兵は突撃しましたけど、どうします?」

 

 カレンの言葉に反応して振り向けば、抵抗するシンパ達に対し、兵達が制圧している光景がそこにはあった。

 武器庫は吹き飛び、魔物は一瞬でかき消された彼らに、まともな戦力は残っていないだろう。

 

 だと言うのに、潤沢なリソースと統率のとれた兵士達を相手にしているのだから、その部分だけは同情する。

 ……いや、テロリストにそんな情を持ってると、僕の場合足元をすくわれるな。気を引き締めないと。

 

「さて、私達も手筈通りに突入しましょうか。私も箔を付けるため、多少は活躍しておきたいですし」

「了解」

「了解でーす!」

 

 オリビアの決定に、僕とオリビアは素直に了承した。

 

 作戦決行前、『三人だけで大丈夫なのか?』という声もあった。

 だが、『この三人は過剰戦力過ぎる』という声に、それは封殺された。

 

 

 

 

 

▽▲▽▲▽

 

 

 

 

 

 ――――それを言葉にするならば、蹂躙だった。

 

 終末教の過激派シンパとて、何も鍛えず学ばなかったわけではない。

 彼らの中には有名な学院から出てきた者もいたし、元々騎士だった者もいる。

 

 それらのノウハウを活かし、他のシンパ達を鍛え上げもした。

 

 薬品を投与し、我力天成(アブソリュート・ワン)の強化をした。

 術式の構築方法を教え、基本的な五大元素の魔法を取得させた。

 武器の扱い方を叩き込み、故郷の一兵士にも劣らぬ技量を身に付けさせた。

 

 結果出来上がったのは、10メートル級の魔物を打倒する戦士達。

 世界を終末に落とし込むにふさわしい戦士達。

 

 ()()()()()を決行せずとも、正面から圧倒できると自分達が断言できる。

 現在のブレイク・ボイジャーが保有する疲弊した兵力を差し向けられても、ここにいる終末教過激派シンパ達だけでたやすく追い返せたことだろう。

 

 ――――その自信は跡形も無く崩れ落ちる。

 

 神聖渡辺帝国の中でも、ヴァルキュリア家軍力は神聖渡辺帝国でも十本指に入る規模と統率力だ。

 他の領地に潜んでいる終末教過激派シンパ達と合流できていれば話はまだ話は違ってくるのだろうが、ボイジャー領にいるだけの面子では到底太刀打ちできる戦力ではない。

 入り口で押し留めているのは奇跡とも言える。

 

 それだけでも彼らからしてみれば悪夢だというのに、倉庫内に突如として三人が姿を表す。

 

 カレンと護衛のシリウスとカレンは、瞬間移動で倉庫内に侵入したのだ。

 

「Fire」

 

 オリビアが合図を送ると、三人で一斉に倉庫内に火を放ちだす。

 炎はあっという間に燃え広がり、灰がオリビアの周りに舞い出した。

 

「さあ、お掃除を始めましょうか」

 

 歌うように呟くオリビアのその一言で、その灰は一塊となりあろうことか動き出す。

 

 燃える倉庫の中で、白い灰が圧倒的な質量と化して終末教過激派シンパ達を潰していった。

 オリビアの一挙一動で踊る灰達は、全てを連れ去らう波のよう。

 

 シンパ達が炎や雷系統の魔術をぶつけようとも、灰の波はびくともしない。

 

「灰が燃えるとでも?」

 

 それらすらも飲み込んで、白き灰は敵を鏖殺する。

 

 水や地系統の魔術で質量で対抗しても、その洗礼された灰の塊はびくともしない。

 

「燃え盛る空間の中で、空気中にどれほどの水分があるのでしょう? あら、この床から出てる出っ張りは、地属性で作った魔法かしら? 脆すぎにも程があるでしょう。ガラス細工の間違いではなくて?」

 

 終末教シンパ達の魔術を一つ一つ精査し、笑みさえも浮かべながらそれら全てを粉砕する。

 その間にも戦場は燃え広がり、灰は蓄積されていく。

 

 まさしく、『灰被りの伝承(スクラップ&ビルド)』の名に違わぬ光景だった。

 

 なんとか灰をくぐり抜け距離を詰めようとも、傍でカレンを守っているシリウスが剣を伸ばして首を切り飛ばす。

 死角から奇襲をしようにも、空間把握能力で周囲を警戒しているカレンが、瞬間移動で後ろを取られ心臓を穿たれる。

 

 オリビア達三人は、傷一つ無く戦場を蹂躙していた。

 

「この程度の戦力で、我がヴァルキュリア家を襲撃しようとしていたのかしら? あはははっ!」

 

 思わずオリビアが笑いだしてしまう。

 それ程までに、彼女の目には滑稽に映ったのだ。

 

「――――バカにしているのかしら」

 

 だからこそ、そんな道化が自分達に襲いかかるという事実が許せない。

 

 敵の心臓を射抜くように、赤い瞳が敵を睨みつける。

 それだけで終末教過激派シンパ達は、その身を振るい上がらせた。

 

 終末教過激派シンパ達はその身を持って思い知る。

 こんな化け物たちを正面から打倒するなど、正気の沙汰ではないのだと。

 

 気がついた時にはもう遅い。

 投降しようにもその暇が無い。

 

 倉庫にあったものが突如巨大化し、質量で押しつぶされる。

 巨大化した物質が、あっという間に頭上から降り注ぐ。

 それらを避けようとも、灰の波が全てをかっさらう。

 

 ――――彼らは何一つ損害を与えられず、無残に散っていった。

 




・神聖渡辺帝国の常識
 テロ組織は発見次第、遺恨残さないよう徹底的に掃除して置かなければならない。


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