闇堕ちへの軌跡   作:地支 辰巳

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貴族なんて所詮、こんなもの

 

 セントアークに着いて、2日目。今日も今日とて、特別実習の課題をしようと思っていると、宿の扉から同じような年齢の人間を連れた小生意気な表情をしているいい服を着た少年が入って来た。

 

「よお、あんたらが、トールズの学生さん?パトリックお兄様と似て、頼りなさそうだよねー。僕が何か恵んであげようか?」

 

 その小生意気な顔通り、そいつは煽りに近い言葉を俺たちにかける。何なんだこの餓鬼はとか思ったけれど、ハイアームズ家には問題児の四男がいると聞いたことがあるから、言葉的にこいつだろう。パトリックとは違うベクトルでめんどくさそうだな。

 

「俺達に恵んでなんかいらない。急いでいるから、そこをどいてくれないか?」

 

 ハイアームズ侯の関係者だと薄々察していて、動きを躊躇っていた他の人に代わって親などには迷惑をかけても大丈夫な部類の俺がいの1番に反論する。そんな俺の返しが気に入らなかったのか、そいつは不機嫌そうな表情で眼前まで迫る。

 

「僕のこと知らない?ここの領主ハイアームズ侯の四男、ジュリアス・ハイアームズだよ?そういう態度は改めた方が良いと思うなー?」

 

 やっぱりハイアームズ家の四男だったけれど、本当にありきたりな貴族だな。俺の家や、ラウラの家が特殊だとはいえ、ここまで貴族らしい貴族を間近で感じるのは久しぶりだ。

 

「そんなことする必要はない。俺は人の肩書きとかは気にしないように生きてるからな」

 

「はぁー?そんな人間いるわけないじゃん。みんな、人の顔や肩書きばっかり見て、生きてるんだよ?そういう君は貴族、平民どっち?」

 

「俺はクロンダルト伯爵の次男、ノクト・クロンダルト。貴族だ」

 

 ここまで堂々と名乗るのなんて、いつぶりだろう。いつもは自分が萎縮して名乗っているけれど、今回は違う。相手は貴族の考えを受けて育ったまだ成長途中の子ども。何も気負うことは無い。

 そんな、俺のことを知っていたのか、ジュリアスは引き攣った笑い声を上げる。

 

「え、あの、売国奴とかも噂されてるクロンダルト家?ヤバいなー。変な噂ばっかりあるし、殺されちゃうかも。ハハハ」

 

 煽ってくるジュリアスは本当に俺の嫌な噂を聞いていたんだろう、手に少しの汗が滲み、感じる恐怖に耐えながら俺を煽ってくる。だけど、それを見て、やっと分かった。彼は虚勢を張っている。そう思えると、何か愛らしくも思える。でも、例え、そうだとしても、俺達の進路を邪魔して良い理由にはならない。

 

「もういいだろ?これから試験なんだ、どっか行ってくれる?」

 

 俺は他の人が居る前だけど、語気を強める。色んな流派を習っている内に学んだ威嚇する方法も披露したから、これで帰ってくれたら良いんだけど。

 俺の願いどおり、ジュリアスはバツの悪そうな顔をしながら、去って行った。

 

「ふぅ、みんな大丈夫?」

 

「うん。それにしてもノクトってそんな怖い言い方とか、顔を出来たんだね。すごく意外」

 

「俺もそう感じた。いつもより纏っている風が違う、そんな感覚だな」

 

 みんなが言うほど、自分が強くやっている感は無い。だけれども、周りの皆んなが感じてるんだったら、これ以上、うちの家の変な噂が広まらないように控えるべきなのかもしれないな。

 

 

★ ★ ★

 

 

 そんな波乱があった始まりだったけれど、日中は昨日どおり問題無く特別実習をすることが出来た。他のみんなともしっかりと交流して、色んなことも知れたので、そう言った意味でも特別実習のありがたみは感じれる。

 それをやっている内に昼ごはん刻を過ぎてしまったので、昼ごはんを食べにお店に入る。お店はおしゃれな感じが凄く出ているけれど、ちょっと怪しげな雰囲気も出ている。そんな店に入ったのは、俺が前にセントアークに来た時に入ったことがあるのが大きいけれど、アリサもエリオットも興味はあったみたいだし、ガイウスやラウラもそこまで渋らなかった。

 

「本当にノクトってセンス良いよね。ここの料理も美味しいし」

 

「いや、偶々、前に来た時に来ただけだから俺のセンスは関係ないよ。ガイクスくんはここの味、どう?」

 

 俺と同じでエレボニア帝国の辺境出身であるガイウスは自分の経験から言うと、帝国のやつと口に合わないことがあるかもしれないから、一応聞いたけれど、表情を見る限り大丈夫そう。

 

「ああ、田舎者の俺の口にも合う良い味だ」

 

「それは良かったよ。俺もクロスベル方が近くて、家でもそっちよりの料理しか出なくてさ、初めてここの料理食べた時、微妙なやつもあったから、どうかなって思って」

 

「そうなのか。ノクトの故郷も遠方にあるのか。クロスベル?にはよく行くのか?」

 

「うん、まぁ。親戚があっちにいるから。月一では絶対に遊びに行くよ?あと、あっちには仲良い従兄弟も居るからさ」

 

 この学校に入ってから、姐さんさんに会ってないなー。一応、将来的にはもっと会うことになる気がするんだけど、どうなんだろうな。聞きたく無いけれど、父さんに聞いとくのもありかな?父さんも姐さんとの仲や親戚関係気にしてるから。

 

「そうなの。どんな人なの?」

 

「クロスベル国際銀行って知ってる?そこの総裁の娘さんでさ、典型的なお嬢様だよ。性格はちょっと腹黒いけどね」

 

 姉さん、外面は結構良いんだよね。俺と居る時に偶に出る想像以上にヤバい言葉なんかを聞くと、根は多分碌なひとじゃないと思う。いつかはみんなにバレるとは思うけど。まぁ、幼馴染にも隠しているみたいだから、そこは結構凄いと思う。

 

「ノクト。お前の姉さんの話はお腹いっぱいになるほど聞いた……それに、許婚なのだろ?そう悪く言うもんじゃないぞ」

 

「あ、だから」

 

 ラウラの上を少し見た表情が分からない訳では無い。俺だって姉さんのことは好きだよ。でも、それは俺がラウラに向けているものとは違う。許婚だって、父さん同士が勝手に言っているだけで、ただの家の伝統。気にしたくは無い。

 

「どうせ、父さんが勝手に言っているだけだから」

 

 そんな風に個人個人のことを知れた昼ごはんになったと思う。そのままの悪くは無い雰囲気まま今日が終われるはずだったんだけど、店を出た直後に確か、この辺りの領邦軍の人たちに囲まれた。

 

「ノクト・クロンダルト。自領で作った危険物をセントアークに持ち込んだ疑いで来てもらうか」

 

「?何かの間違いです。俺はそんな危険なもの、持ち込んでいません。学校側に確認して下さい」

 

 勤めて冷静に話そうとはするけど、こんなことはいくら、貴族で嫌われる俺でも初めてだ。誰かの差金だろうことは明らかなんだけど。

 

「それは我々も証明出来る。ノクトはそのようなことをするような人間では無い」

 

 ラウラを筆頭にして、みんな庇ってくれているけれど、多分、無駄だと思う。俺の家の領地でもそうだけど、貴族に仕えている人間は正しいかどうかでなんて、行動していない。自分の立場が悪くならないようにしか、行動しない。だから、今回もそう。

 

「仲間のお前らの意見など、信用出来ん。同罪として連れて行くぞ?」

 

「辞めてくれ。疑いがあるのは俺だけだろ?俺を連れて行ってくれ」

 

「分かればいいんだ。ほら、こっちだ」

 

 みんなが次々に声を上げたりするけれど、ラウラが顔を伏せながらもこっちに来るのを止めてくれている。ラウラも分かってくれたんだろうな、ここで今、何をしてもあっちが有利なだけだって。うーーん、これは後で父さんの権力で何とか出してもらうしかなさそう。貴族の権力なんて所詮、こんな風でしか使うことは無いんだから。

 

 

★ ★ ★

 

 

 そして、俺が連れて来られたのは何処かは分からないけれど、ほとんど牢屋と言ってもいい所だった。そこに一時間放置されると、俺の目の前に昼間にあった生意気な奴、ジュリアスが現れた。

 

「どうだったかな?見事でしょ?君を捕えることなんて、この僕にかかれば造作も無いんだよねー」

 

「あんたがやったのなら、こんなことが出来ることに合点がいくが、どうしてこんなことをしたんだ?」

 

「いやー、なんかね、クロンダルト家に恨みがある人がいるらしいんだよね。その人に僕が手を貸してる感じ。偶然だよねー。納得いった?」

 

 こんな偶然に俺の家に対して、恨みがある人間がここに来ているのか?いや、だけど、そんなことが無ければ、こいつは動くような奴じゃないとは思う。そんな気がする。

 

「ぼちぼちかな。それで……俺をどうするつもりなんだ?」

 

「知らない。その人と夜に会ってもらうことしか僕は聞いてない。まっ、僕は権力に従わなかった君を邪魔したかっただけだからさ」

 

 そんな言葉を残してジュリアスは何処かに行ってしまった。夜まで時間を潰してくるつもりなんだろう。窓も無く、今、何時なのか分からないし、俺が持っているのはハンカチ、あの時奪った笛とかかあるけど……出るには危ないか。武器は無いしな。

 

 

★ ★ ★

 

 

 ノクトが捕らえられた。その事実に落ち着いて対応したはずの自分は大きく動揺している。何故ノクトが暗に示した通り、時間に任せるようにしたのだろう。その場で反抗すべきだったのでは無いだろうか。父上の権力に頼ってでも止めるべきなのでは無いだろうか。だけど、そんな取れなかった選択肢は忘れよう。私にはその場を自力で突破する力、権力、名声が無かっただけだ。私はまだまやかしの強さしか持っていない。

 

「ラウラ。ノクトを助けに行きたいけれど、何か良い案とか無いかな?」

 

 議論することも無く、話がノクトの救出へと向いていた。それは嬉しいことではあるので、私も積極的に議論へと関わる。私自身の思いはこんな時は後回しにすべきだからな。

 

「いくら、領邦軍だからと言って、ハイアームズ家全体が関わっているとは考えずらい。我々が出会ったジュリアスがやったと思うのが、妥当だろう。そこから、考えるなら、ジュリアスの人となりを知ることがノクトを救う手掛かりになるだろうな」

 

「ならば、別れて聞き込みといこう。情報が集まった人から宿に戻ろう」

 

 ガイウスの仕切りにより、四人全員街中に散らばって行く。こんなこと初めてだから、……私がこれまでもノクトと離れることに対して、ストレスを感じるとは思わなかった。私とノクトの心と身体の為にも急いで居処を掴まねばな。

 

 

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