少し身体が痛い。あの銀髪の子にバレてはいけないと思って、おもいっきり飛び降りたせいで、他のみんなよりも痛みが増した気がする。
おお!身体の痛みを取っていたら、綺麗な姿勢でその銀髪の子が鮮やかに降りて来た。やっぱ、この子も只者じゃないんじゃないのか?さっきも何故か空中に居たし、この運動能力も普通じゃない。幼い頃から鍛えてきたのかな?
「ううん……何なのよ、まったく……」
え、声を発した金髪の女の子の胸に黒髪の男子が埋もれてるんだけど……
「……その……何と言ったらいいのか」
でも、男子の方はしっかりと立って謝ったぞ。下心は無かったのか。あ、ビンタされた。うわ〜痛そう。俺も一歩間違えばああなっていたかもしれないのか……同情するぞ黒髪の男子。
と、いつまでも同情してる訳にはいかないな。暗くて見えにくいけど、辺りには10個ぐらいのテーブルがあって、どのテーブルにも何か荷物と小さい箱があるようだ。乗っている一つ、あれは俺の荷物だな。明らかに他の荷物と大きさが違うから分かりやすいな。
その時、ポケットに入れていた入学案内所について来てた小さい機械みたいやつが震えた。
『それは特注の戦術オーブメントよ』
おお、この機械からサラの教官の声がしたぞ。すごいな。そこから、教官の説明によるとこの機械はあの有名なエプスタイン財団とラインフェルト社が共同で開発した第五世代戦術オーブメント《ARCUS》らしい。そう言われても、その辺の分野は全然ダメだからな。政治とか国際情勢は多少出来るんだけどなー。
『───結晶回路をセットすることで、魔法が使えるようになるわ』
『君たちから預かっていた武具と特別なクオーツを用意したわ。それぞれ確認した上で、クオーツをARCUSにセットしなさい』
「ふむ……とにかくやってみるか」
ラウラが動き始めたのを皮切りにみんな動き出したから、俺も合わせて歩いて行く。みんな自分の荷物だから、間違いようは無いか。
テーブルに着いたら、さっそく荷物の中身を確かめる。うん。武器は全部ありそうだな。失くしたら、取り寄せるのに時間かかるのもあるからよかったー。でも、この箱に入っているクオーツってやつは知らないんだよなー。
この小さいのがクオーツかな?嵌めればいいのか。白色で中々いいんじゃないかな?でも、このARCUS何か線とかがあって、小さいなりに複雑そうだな。あ、嵌めたら光が出てきた。
『君たち自身とARCUSが共鳴・同期した証拠よ。これでめでたく魔法が使用可能になったわ。他にも面白い機能が隠されているんだけど……ま、それは追々ってことで、それじゃあさっそく始めるとしますか』
中々に良い音を鳴らしながら、大きなドアが自動で開いた。しかも、教官が言うには、この奥はダンジョン区画らしく、けっこう広めで迷うらしい。なんで、そんなものが学校の区画内にあるのかなー?聞きたいんですけど?
『無事、終点までたどり着ければ旧校舎1階に戻ることが出来るわ。ま、ちょっとした魔獣なんかも徘徊してるんだけどね』
『──そらではこれより、士官学院・特科クラス《Ⅶ組》の特別オリエンテーリングを開始する。文句があったら戻って来た後に受け付けてあげるわ。何だったらご褒美にホッペにチューしてあげるわよ』
え、みんな先生の冗談に対してスルーなの?俺もラウラ一筋でやってきてるから反応はしないけど、誰かはしなきゃ。ま、まぁ、とっとと武器を装備するか。ダンジョン区画とか初めてだし楽しみー。
♣︎ ♣︎ ♣︎
そんな教官からの無茶振りに、俺たち合計10人は成り行き的に円になっていた。
「フン……」
「ま、待ちたまえ!いきなりどこへ……一人で勝手に行くつもりか」
「馴れ合うつもりは無い。それとも貴族風情と連れ立って歩きたいのか?」
だけど、わざわざ輪を乱すようにユーシス君は一人で行こうとするし、マキアス君もそれにつっかかる。大丈夫なのか?このクラス。あー喧嘩しちゃったよ。え、最終的に二人とも行っちゃったし、これからやっていける気が本当にしないんだけど……。
俺含め全員の戸惑いがここの空気感だけで分かる。人を引っ張っていきそうな、二人が単独行動しちゃったら、誰が残りの8人をまとめるんだよー。
「───とにかく我々も動くしかあるまい。念のため数名で行動することにしよう」
こんな時でも動けるラウラは、本当にいい意味で空気を読まないから、見習いたいよ。ラウラが順に女子に声をかけていっていると、声をかけられる前に銀髪の女の子は勝手に進んで行ってしまった。もしかして、俺が故意では無いにしろパンツ見てしまったのバレてしまったのかな……。どうしよう、折りを見て謝ろう。
「では、我らは先に行く。ノクト、男子はそなたが、リードしてやるのだぞ」
「うん。分かったよ。ラウラも気をつけてもね」
「そなたこそな」
ラウラは行ってしまった。別にわざわざ別行動しなくてもいいのに。いや、ラウラなりにあのビンタされた側とした側の二人を気遣ったんだろうな。もちろん、まだ金髪の子は怒っているようで、また黒髪の彼を睨んでいた。
「えっと、それじゃあさ。俺らも一緒に行かない?」
ラウラに頼まれたのはいいけど、断られたらどうしよう。でも、ここにいる男子は全員穏やかそうだし、大丈夫でしょ。
「うん。もちろん!」
「異存は無い。オレも同行させてもらおう」
「ああ、もちろん」
全員が同行を了承してくれて、良かったー。見たところ3人ともここで武器を構えてから行くようなので、俺も構えようかな。さて、どれをメインにしよう。
「ガイウス・ウォーゼルだ。帝国に来て日が浅いから、宜しくしてくれると助かる」
「そうか……やっぱり留学生だったか。こちらこそ、よろしく。リィン・シャバルツァーだ」
「エリオット・クレイグだよ」
えっーと、褐色気味の長髪の人がガイウスで、黒髪のビンタされた人がリィンで、オレンジで大人しそう人がエリオットね。問題なし、覚えた。
「ノクト・クロンダルトだ。よろしく頼むよ」
「それにしても……その長いのって、武器なの?」
ガイウスの持っているのは、十字の槍か……ここら辺では確かにあんまり見ないな。見たところ、普通の槍との違いは十字部分だけなのかな。後で、軽く触ってみたいな。
「これか?故郷で使っていた得物だ。そちらはまた不思議なものを持っているな」
「あ、うん、これね」
「杖……?いや、導力機なのか?」
「え、これ導力機なの?そんな難しそうなの持っているなんて、すごいなエリオット君」
「そんな事無いよー。入学の時に適正があるから使用武器で選んだだけだよ。魔導杖って言うんだって」
へー今の世の中にはこんな武器なんてあるんだなー。どちらかと言うと、中距離や遠距離運用かな?後で、教官に俺への適正だけ聞いておこうかな。
「まだ試作段階らしいんだ。それで……えっと、リィンの武器はその?」
エリオット、俺の武器を見てから視線をずらすんじゃないよー。確かに、リィンの説明の方が短くなりそうだけど。
「それって……剣?」
「違うよエリオット君。太刀だよねリィン君」
「よく知っているなノクト。ノクトの言う通りこれは太刀だ。東方から伝わったもので、切れ味はちょっとしたものだ。ノクトの腰のものも太刀じゃないのか?」
「ああ!やっぱり分かるよね。そうこれも太刀なんだよ」
やっぱりリィンは分かってくれたみたいで、無性に嬉しいなー。多分、手の状態を見る限り、剣士だろうし、ラウラよりも先に手合わせ願おうかな?
「えっと、ノクトの武器はどれが本当なの?」
「帝国では、そんな風に武器を大量に持っているのは普通なのか?」
「俺も初めて見るな。ノクトはどうしてそんなに武器を持ってるんだ?」
おお、一気に来るなー。まぁ、でも初めて見たらそう思うよね。手短に軽く説明していきますか。
「今、手に持っているのが両手剣で、腰に刺しているのが太刀と双剣と騎士剣かな?寮に送ったやつも合わせると、もう少し種類はあるかな?」
「何故そんなに種類があるか聞いてもいいだろうか?」
「別にそんな深い理由は無いよ。色んな流派齧ってきたけど、どれが一番使いやすいか未だに決められてないだけだよ」
親の意向とはいえ、習ってきた流派の数は多分誰よりも勝ると思う。腕は別としてね。
「さて、オレたちもそろそろ行くとしようか」
「ああ、警戒しつつ慎重に進んでいこう。お互いの戦い方も把握しておかないとな」
「もちろん。他のみんなを探すことも忘れずね」
何回か戦闘を繰り返す内に分かったことだけど、ガイウスは攻撃範囲が広くて、最前線で槍を振るうのはすごく合っていて、エリオットのサポートも初めてにしては中々様になっているんじゃないか?
あと、リィンのあの構えって、太刀を見た時も思ったけど八葉一刀流じゃないかな?俺は八葉流に関しては本当に齧っただけだから、少ししか型を使えないけど……リィンは型の形も綺麗だし、将来有望だと思うね。
「見ていて思ったんだけど、ノクトはその装備で重くないの?」
「う〜ん、重かったんだけど。幼い頃からしてるから、もう慣れちゃったかな」
「すごいね。僕なんて見てるだけで、体が重くなっちゃうよー」
♣︎ ♣︎ ♣︎
戦闘がメインだけど、雑談も途中、途中に挟みつつ進んでいた。このままのペースだと、どこまでの広さか分からないけど、誰かしらには追いつくんじゃないだろうか?
「はあぁ〜っ……」
「エリオット、大丈夫か?」
「怪我はなさそうだが……」
「うーん、戦い疲れかな?」
「う、うん……ちょっと気が抜けちゃって。……3人は凄いなぁ。ぜんぜん平気みたいだし……」
流石に俺やリィンみたいに、武術に関わっていなかったら、体力が尽きるのも仕方ないか。ガイウスも筋肉のつき方を見るところ、結構運動してたみたいだし。エリオットは精細そうだし、音楽とか料理とかをやっていたのかな?
「まぁ、慣れの違いだろう」
「そろそろ、休憩することにしようか?みんなもそんなに早くは行ってないだろうから」
「大丈夫。ちょっとヨロけただけだから」
その時、エリオットに向かって、上から虫型の魔獣が落ちてきた。このままじゃ当たりそうだったから、双剣の片方だけを抜いて魔獣に当てて、倒し切れはしないものの、軌道はズラすことに成功した。で、ズレた虫は何処からともなく来た弾に撃たれて撃破された。ふぅ〜良い腕だね。
で、それでこちらに来たのはショットガンを手に持って来たマキアスだった。まだ怒ってるのかな?それだったら俺も危ない気がするな……。
「……その、さっきは身勝手な行動をしたと思ってね。いくら相手が傲慢な貴族とはいえ、冷静さを失うべきじゃなかった。すまない、謝らせて欲しい」
謝っているということは、やっと頭が冷えたのかな?良かった〜これからもこんな調子だったら付き合いづらかったからね。
「いや……気にすることはないさ」
「そうそう。冷静さを見失うことぐらいみんなあることだって」
「うんうん、あんな状況だったしね。ノクトもマキアスも危ない所を助けてくれてありがとう」
「君たちは……4人だけみたいだな?」
「ああ、他のメンバーはもっと先行していると思う」
もしかしてメンバーに加わってくれるのかな?この4人だと少し前衛多めだから、ショットガン持ちが加わってくれるのはありがたいね。
「…その、もし良かったら僕も同行して構わないか?見ての通り、銃が使えるからそれなりに役に立つはずだ」
「喜んで。リィン・シュバルツァーだ」
「エリオット・クレイグだよ。よろしくね」
「ガイウス・ウォーゼル。よろしく頼む」
「ノクト・クロンダルトだ。よろしく」
「……クロンダルト……何処かで……。いや、すまない。マキアス・レーグニッツだ。改めてよろしく」
「……そういえば……身分を聞いても構わないか?」
嘘は……良くないよなー。後でラウラにバレたら何て言われるか分からないし、でも、俺は多分上手く自分が貴族だと言えないんだよな。しかも、若干気づいているみたいだから、うちの家の詳細まで気づきそうなんだよね。人によっては詳細に嫌な顔をするけど、マキアスはどうだろう……。
「えっと……ウチは平民出身だけど」
「同じく──そもそも故郷に身分の違いは存在しないからな」
あれ、この流れは俺だけ貴族という流れなのかな?それは……マキアスのヘイトを一人で買いそうだから普通に嫌なんだけど。リィン、君だけが頼りだ。
「なるほど……留学生なのか」
「少なくとも高貴な血は流れていない。そういう意味ではみんなと同じと言えるかな」
リィン……そんな言い方したら、俺に高貴な血が流れているみたいじゃないか。止めてくれ、言いにくいさが増しているじゃないか。……よし!開き直って堂々とするか。
「それで……君の方は?」
「俺はクロンダルト伯爵家。貴族だ」
その時、見るからにマキアスのこちらを見る目が変わった。しかも、顎に手を当てて何かを思い出しているみたいだし。俺は爵位までちゃんと言ったんだ。言いたいことがあるなら、言って欲しいなー。
「……思い出したぞ。クロンダルト伯爵家と言えば、クロスベル北部にある一帯を支配している、ほぼ唯一と言っていいクロスベル独立に賛成を表明している家だったか……」
クロンダルト家のこと知ってるじゃん。でも、あんまり公に言わないで欲しいなー。このことを聞くと、エレボニアだと嫌そうな顔をする人ばっかりだし。
「せいぜい平民風情に負けないようにしてくれ」
うわっ。空気が重い。これはまぁこれから二年かけて徐々に俺の人柄を知ってもらって、少しずつでも受け入れてもらうしか無いかー。先が思いやられるよ。
この辺の家のことが主な独自設定ですね。
一応、オリ主のクオーツは閃の軌跡に登場する幻属性の『ジャグラー』です。