この大市放火事件の捜査の為に俺たちは関係者へと聞き込みを行っていく。なんだかんだで被害者の2人からも話しを聞くことが出来たし、中々に順調な滑り出しになっている。それに、話を聞いていく過程で、エリオットの聞き込み力や推理力が披露されて驚かされる所が多々あった。こんなⅦ組のメンバーの気づかない面に気づくことが出来るのも特別実習の良いところなのだろうな。
そして、聞き込みやリィンやエリオットの推理のお陰で領邦軍の行動が不審で怪しいという結論に至った。やっぱり領邦軍かー。個人的主観も多く入るけど、領邦軍に対するイメージは中々に悪いからな。他の良い人そうな人が事件の黒幕なんかよりは全然良い。
「ふぅ、我々も忙しいのだがね。まあいい、手短に用件を言ってみたまえ」
領邦軍に話を聞きに行くと、領邦軍の隊長らしき人がすごく気だるそうな態度でこちらに対応してきた。民衆の要望なども無視しているらしいのに、この人らは忙しいのか?うちの領地には領邦軍は居ないけど、独自にいる治安維持の人たちはもっと地域の人に寄り添っているし、ちゃんとしている。こんな人たちを見ていると、俺が父さんや兄さんともっと仲が良ければ、故郷にもっと馴染めたのかなとも思ってしまう。
「では、単刀直入にお聞きします。領邦軍としてはあれ以上の調査を行わないおつもりですか?」
「フン、何をいうかと思えば……そんなことか」
「各地の治安維持を預かる領邦軍としては、いささかそぐわぬ言動に思えるが」
「フン、威勢の良いことだ。だが、その認識はまだまだ青いと言わざるを得ないな」
「……ラウラの何処が青いんだよ」
「我々領邦軍が各地を維持するにあたって、最も重要なものが分かるかね?それは、各地を治める領主──我々の場合はアルバレア公爵家──彼らの意向ということになる。領邦軍に属する以上、貴族の命令は絶対だ。我々はその意向に従い、守るべきものを冷静に、判断しているだけなのだよ」
こいつらの言いたいことは貴族である俺からしても、理解は出来る。でも、納得はしたくない。忠義は大事だと思う……だけど、それによって何かから目を背いてちゃ駄目なんだ。取り返しの付かないことになるような気がする。
軍人だから。その理由で領邦軍の人はこれは仕方の無いことだと言って、何も話そうとはしなかった。確かに、未だに学生の身である俺たちには分からないものなんだけど、年齢の問題なのか?
「最後に一つ、僕からいいですか?」
何も手がかりが得られないかと思い帰ろうとした時、エリオットが機転を見せてくれた。領邦軍が調査をしていないにも関わらず、俺らが聞き込みで得られた情報を知っていたのだ。この答えを引き出すように質問したエリオットはすごいな。音楽家や軍人よりも探偵の方が向いているんじゃないのか?まぁ、案の定、これを指摘された領邦軍の人たちは理由をつけて、退散していったけど。
★ ★ ★
エリオットやみんなの推理によりこの事件は領邦軍によって周到に計画されたもので、その狙いは税への苦情の取り下げらしいことが予想された。これでようやく黒幕が判明したな。良かったー元締めや被害者の商人達じゃ無くて。頑張って普通に生きている人たちが疑われるのは心苦しいことだからな。
「いや……おそらく実行犯は別にいるはずだ。あのプライドが高い領邦軍が、自ら手を汚してまで、事を起こすとは考え難い」
「確かにラウラの言う通りだね。あの人らはそういうことをしないね」
ラウラからの的を得ている指摘と併せて事件の盗品が何処に行ったのかということが疑問点から、実行犯である犯人はまだ近くにいるという結論にいたった俺たちは街の住民に怪しい人物の話を聞くことになった。
「では、さっそく調査開始といこう。卑劣な犯人を逃さぬためにな」
有力な証言は直ぐに見つかった。昼間から大通りで酔っ払っていた男はあのルナリア自然公園の元管理人らしく、クロイツェン州の役人にいきなり解雇されたという話だった。しかも、昨日の夜に新しく管理人になった若者達が木箱なんかを持って走っていったということらしかった。本当にこの証言だけで充分すぎるよ。
それに、ルナリア自然公園に荷物がありそうなのか……このままだとアリアンロードさんとの集合場所なのに無駄な手間をかける訳になってしまう。これは絶対に解決しなければならないことになったな。
「行き先は決まったな。ルナリア自然公園……万全に準備を整えてから向かうことにしよう!」
「う、うん!」
★ ★ ★
目的のルナリア自然公園に着くと昨日は入り口にいた、あの偽物の警備員達は居なかった。犯人は違う場所に既に逃走した可能性もあるけど、俺はまだ中にいる気がする。
そんな中、アリサが入り口の門近くに転がっているブレスレットを発見した。それはあの帝都の商人が扱っていたものと共通点があるデザインで、そこから犯人がまだ中に居る可能性が高いということで、乗り込むことになった。昔、ルナリア自然公園には近くに来た時に時間が空いたので、来たことがあるけども、そこまで歪な構造もしてなく特徴的な物も無かった普通の自然公園だった記憶がある。今も変わっているかは分からないけど……。
「……この南京錠は内側から掛けたというわけか。ならば」
門のところに南京錠がかかってるんのを見つけて、ラウラが壊そうと大剣を取り出した。南京錠を壊そうと剣を取り出すなんてラウラらしいとは思うけど、昔からそういう所はいい意味でも悪い意味でも変わってないんだよね。
「俺がやろう。その大剣よりも静かにできるはずだ。それに、ラウラに言われたことにも答えたいからな」
「八葉一刀流 四の型・《紅葉切り》」
リィンが自身の刀を取り出すと、ものの見事にほとんど音を出さずに南京錠を破壊してみせた。リィンもラウラに言われたことを気にして、しっかり気遣ってくれてるんだな。リィンがそういうことが出来る人だとは薄々分かっていたもののいざ見てみると、なんか嬉しいな。しかも、紅葉切りって俺が上手く使うことが出来ない型の一つなんだよな。俺に教えてくれた人が少しその型が不得意だったというのもあるとは思うけれど……。
「……見事だな。……ノクトの目からどう映った?」
ラウラ。そんな事を聞かないでくれ。リィンが何かを期待するような目で俺のことを見てきてるから。俺はリィンみたいにしっかりとならった訳では無いから、いまいち言いにくいんだよな。いや、仮にもどんな人間であっても師匠のことを言い訳みたいことは止めよう。
「うん。しっかりと研ぎ澄まされているよく分かるよ。ユン老師は丁寧に教えて下さったんだね。俺も一度くらいは会ってみたいよ」
そこからルナリア自然公園を探索していくことになった。中には魔獣が蔓延っていたので、そんな奴らを討伐しながら進んでいった。多分、盗んだ大きな荷物があるとしたら開けた場所だろうから、そんな場所にたどり着ければ良いな。
「ノクト。こんな時だけど、聞きたいことがあるんだけどいいか?」
「うん。どうしたのリィン君」
「ノクトは誰に八葉一刀流を習ったんだ?俺もノクトに教えてた人に会いたいと思ったんだ」
うーん、言いにくいな。はっきり言って俺が師事してもらってた人は色々と曰く付きだったから。まぁ、もう会って無いから言っても大丈夫か。
「会えるか分からないけど、一応その人がどういう人かは言えるよ。名前は……ずっと師匠って言ってたから分からないけど、途中で八葉一刀流から破門された人で、厳しくて優しくされたことなんて無かったな。父さんが個人的に大金で雇った人だから、あんまり為になる情報とかは分からないや」
「……そうだったのか。ノクトはどう思ってたんだ?」
「俺は好きだったよ。ストイックで無口な俺にもずっと同じ態度で接してくれていたし、直した方が良いところは俺が分かるまで言ってくれたから。でも、軽く別れだけ言ってふらっと居なくなっちゃったから、そこだけは寂しかったかな」
あの人は多分指名手配か何かをされてたんだろうな。誰かに追われてる風だったから。それでも、暇つぶしだとかずっと言っていた割にしっかり接してくれたあの人には感謝が多い。
「ノクトはその人のことが好きだったんだな」
「うん」
何かしんみりしてしまったけど、様々な魔獣を倒しながら、俺たちは順調に進み続けた。そして、ついにルナリア自然公園の奥にある開けた広場の場所にたどり着いた。
そこには偽の管理人が4人。何とも下らない会話をしていた。こんな事を言ってはなんだけど、そのもっと稼げるとかいう会話をしているだけで、俺とラウラが戦った猟兵の方が仕事に対して矜持を持っていたと思うし、もっと下衆では無かった。
「その木箱も、どうやら大市で盗んだものみたいだし……」
「この場合、現行犯逮捕が認められる状況なのかしら?」
「観念した方がいいですよ」
「……下衆だな」
ラウラも静かな怒りを心に灯したようだった。俺も命を取られそうになったあの時の猟兵に恐怖を感じるし、許すことは出来ない。でも、その猟兵よりも実力も精神も下のこんな悪党には言いようの無い怒りの方が覚える。
「ハッ、やっちまうぞ!」
「所詮はガキどもだ!一気にブチのめしてやれ!」
「クク、幸い目撃者もいないことだしなぁ……!」
「覚悟してもらおうかッ!」
一斉に4人とも僕らに向かってかかってきた。4人全員が銃を所持していて、遠距離からの攻撃には強いようだけど、多分、近距離には弱いはず。上手くエリオットとアリサにサポートしてもらって、俺とラウラとリィンが決定打を作らないと。
「リィン君!そっちの奴は任せた。俺とラウラはこっちの奴らをやる!」
リィンに1人を任せると、俺とラウラは3人を相手に立ち回ることになる。エリオットとアリサにはリィンを重点的にサポートするように軽く言って、俺たちは2人がかりで3人を相手にする。そこには、こんな奴らは自分達の敵では無いというプライドの他に、自分たちの実力を試したかったというのもあったんだと思う……。
「ラウラ。いけるよね」
「ああ!数を減らしていくこととしよう」
「了解」
ラウラの両手剣はさっそく一番近くにいた奴の骨を折るかの勢いで叩きつけられた。実際にはその両手剣は銃でガードされたものの、代わりに銃が嫌な音を立てて壊れていった。
「ガ、ガキがよ。調子に乗るんじゃねぇぞ!」
銃が壊れてしまったことでナイフを取り出してラウラを切りつけようとしたようだけど、俺はその間に割って入ると、太刀と片手剣の二刀流で切り伏せた。
「これで同数。観念するんだな」
「へ、誰がするかよ!」
ラウラやエリオットのサポートを受けながら、そこまで苦労せずに残る2人も倒し切ることに成功した。リィンの方も問題無く倒せたみたいで、これで相手を全員戦闘不能にすることが出来た。本当はもっと圧勝したかったんだけど、今のところはこれくらいでも十分か。
いや、何かが来そうな気がする。なにかは分からないけれど、俺たちの敵になるようなものだとは思う。あっちの木々の方か……チャクラム投げてみるか。
「ノクト。何をやっているのかしら?」
「分からない。こっちの方に何かが来るか気がしたんだ」
チャクラムは木々の幹を切りながらその方角へと進んで行った。そして、ある一本の木が切れた所で、人間の瞳が見えた。あんな場所にいる人間なんて、怪しいに決まってる。俺が思ったのとは違う気がするけど、こいつらを雇った人間の可能性もある。追わなきゃ。
「みんな。こいつらは任せた!俺ちょっと行ってくる」
みんなが何か言っているみたいだけど、何を言ってるかはよく聞き取れない。見つけた奴は俺が追って来たことが分かると逃げたようで、逃げていた背中が見えた。背の丈的に俺たちよりも年上で男のようだった。
「おい!待てよ。何が目的でこんなところにいるんだ」
「これは気配察知能力が優れているのか?いや、これは気配察知というよりも……」
「話聞いているのか?お前……何者なんだ?」
その男は眼鏡をかけており、何処か知性的に感じるような佇まいだった。戦闘能力は強くなさそうだけど、この人があの野盗を雇ったのか……だったら、策略などが得意な人なのかな。
「我々は帝国解放戦線。私の名前はGと言います。以後お見知り置きを」
帝国解放戦線?聞いたことも無いな。結構有名なのか?だけど、自分の本名を名乗らない時点で人に素性を知られたくは無いってことだから、ヤバい組織には違いない。Gは片手に拳銃を持ち、もう片手に笛のような物を持っていた。あの銃なら大体のスペックは分かるけど、笛の方はどんなものかすら全然分からない。あっちに狙った方が得か。
「大人しく引いていただけませんか?」
「無理だな。怪しそうな人間を放っておくほど、俺は正義感が欠けていない」
太刀をGに向かって、躊躇うこと無く投擲する。この距離なのもあり、太刀は真っ直ぐGに当たるような軌跡をする。だが、反射か予想したかGはその太刀を避けた。それを読んでいた俺は避けたばかりで直ぐには動けないGに近寄ると蹴りをお見舞いし、笛を奪い取った。
「学生で、ここまでの芸当が出来るとはな……」
「昔から武術は嗜んでいるんでね。それに……死を目の前にした俺は死を恐れない」
Gは名残惜しそうに笛を見たものの、形勢が悪いと思ったのか森の奥へと退却していった。俺は追おうとして、止めた。ここで彼を捕まえることも殺すことも容易いとは思うけど、それにしては彼は切羽詰まっていて、哀愁漂ように思えたから。
笛をカバンに入れてみんなの元へ戻ると、すでに野盗達は縄に捕まっていた。しかも、領邦軍が居るし、鉄道憲兵隊を引き連れた氷の乙女クレア・リーヴェルトが居た。あの氷の乙女は苦手なんだよな。昔、父さんの領地を抜き打ちで調査しに来ようとした時、色んな理論を持って入ってこようとしたもん。結局、父さんが無理やり皇帝に連絡して止めさせたけれど、それもあって、オズボーン関係とうちの家は関係が悪い。
それとは関係なしに、鉄道憲兵隊のおかげでこの事件は無事に解決に持っていけそうなことは後から聞いた。なんだか複雑な気分なのは否定出来ないけど、氷の乙女が居なければ自分達が捕まっていたとも聞くし、素直に感謝しておこうとは思う。こんな俺の心情とは別に特別実習は無事に終わった。クラスメイトとの関係も少しは良くなったと思えるようなものだった。
更新ペース落とします