「ひとまず明日は市場も休みだし、納品もないからいっそのことお店閉めて皆で行こうか!」
河野さんに案内された病院には明日行くこととなり、そのまま家に帰ることとなった。帰り際ネコミミ幼女は河野さんに何度もバイバイを繰り返し幼心に別れを惜しんでいた。
家に帰り妻に児童相談所での見解を伝えると、ネコミミ幼女を抱きしめ頭を撫でながら妻は提案してきた。撫でるというより撫で回すという状態か、ネコミミ幼女はされるがままに頭をこねくり回されているが、嫌がる様子はなく寧ろ楽しんでいるように見えるので微笑ましくその様子を見ることとした。
「正直、私まだ驚いているけど、この子がこの姿になったのを心のどこかでもう受け入れてるの。そうなるのが当たり前だった、みたいな感情? まぁよくわかんないんだけど、でもこの子がこうやって私達家族の元でこの姿に変わったのは、
そう妻は語りながら、リビングの隅に置かれた写真の置かれていない簡易的な仏壇の方に目を向けて目を細める。
「奇跡の贈り物かぁ」
自身も妻の視線に誘われるように目を向けて呟く。
案外、物事には何かしら繋がりがあるものだからそういう妻の考えも悪くないのかもしれないな。
「にゃー、まんまぁー」
「ん? お腹すいたの?」
「にゃー」
そういえばこの子について驚くことがまだあった。学習能力というか成長スピードが尋常ではない。
始めは「にゃー」としか言葉を発しなかったが半日も経たずしてコチラの言葉を聞いて覚えたのか、安易な言葉なら綿貫に診てもらったときよりもしっかりと言葉として発せれるようになっている。さらにコチラの言葉をある程度理解したのか、ちょっとした会話も出来るようになっているのでいる。
正直、今の妻とネコミミ幼女の会話も引くほどビックリしているが、妻はそれが当たり前の会話のように接している様子を見ると、先程の言葉にあったように心のどこかで受け入れてるが故だろう。
「昼ごはんにしよっか。何食べたい?」
「ぁうーあにゃー」
「うん。よくわからないから焼き飯にするね」
なんの為の質問だったのかよくわからないが、妻は名残惜しそうにネコミミ幼女を下ろしてキッチンに向かっていくのだった。
テトテトとネコミミ幼女は妻についていこうとしたが、危ないからパパのところに居なさい。と妻に言われ、シュンとしながらこちらにやってきた。
「ぱぱー」
手を伸ばしながら見つめてきたのでそのまま抱きかかえながら向かい合う形になった。先程妻から追いやられシュンとしていた表情は、パッと明るくなり、目を合わせるとニコニコと笑顔の表情となる。そして、こちらの顔に手を伸ばしてきてペタペタと触ったり引っ張ったりして遊び始めた。
「いや、めちゃくちゃ顔触るね。なんなん? そんな触り心地いいの?」
「髭の触感とかが面白いんじゃない?」
料理を作りながら、対面キッチンからこちらの様子を妻は微笑ましく見ているのであった。
「「いただきます」」
「いぅあうあ!」
妻がキッチンの奥から引っ張り出した、息子のお下がりの食べこぼしキャッチするエプロンをネコミミ幼女につけ食事の挨拶をする。ネコミミ幼女は目の前のお皿に盛られた焼き飯をエプロンとともに出されたスプーンを持って、もう片方の手で焼き飯を掴んで食べる。
「美味しい?」
「おぃしぃ!」
ポロポロとこぼしてそのままエプロンの中に収まっているが、わんぱくに食べるその姿を見て息子の昔の姿を思い出した。
(そういえばご飯食べるときスプーン使わないのに片手でよく握りしめてたなぁ。んで、めちゃめちゃこぼす)
お下がりのエプロンも相まってそう見えてしまっているのかもしれない。ただ何となく覚えた既視感はどこか引っかかるものがあった。