動物を飼う上で気をつけないといけないことは沢山あるが、その中でも食べてはいけない物の誤食は時に命に関わるので特に注意しなければならない。
例えばネギ類は赤血球を破壊してしまうため血尿や下痢、嘔吐を引き起こしてしまったりする。
その中でも代表的な食べさせてはいけない物として、チョコレートがある。
甘く食べたら多幸感を覚えるそのスイーツは、動物、特にネコや犬が食べると、カカオに含まれている成分が中枢神経を刺激し、場合によっては痙攣や下痢、嘔吐を起こし最悪死に繋がってしまうのである。
大和くんがタヌキくんにそう言われたと聞いたのは子ネコを受け入れた日の夜。私はそれをしっかり聞いていたのだが、子ネコが女の子に変わった衝撃で今の今までそれが頭から抜けていた。
そもそも琥珀が取りにくいだろうと思っていた戸棚の中にお菓子を入れていたので、それを子ネコが勝手に取るなんてことはあり得ないから大丈夫だろうとすら思っていた。
しかし実際には子ネコは女の子になり、琥珀は多分椅子かなにかを使ったのだろうか、戸棚からお菓子を取り出している。確かに最近悪知恵がついたのかお菓子を取り出す行為はたまにやっていたのは知っていたが、机の上に食べれる分だけを器用に持っていって食べたらしっかり片付けもしていたので、そのことについては目を瞑っていた。
今回も、琥珀に初めて出来た妹分にいいトコロを見せようとお菓子を振る舞っていたのかもしれない。その行為自体は大人でも後輩が出来たらご飯奢りたくなるものと同じだろうから咎めることはしない。
けど、食べさせたものが悪い。
私が白い女の子に近寄って行く間に、白い女の子はチョコレートを咀嚼し終わったのかゴクンと喉を鳴らしたと思うと俯き震えだした。
マズイ。やっぱり元々ネコだからチョコレートで体に異常が起きてしまったのか?
焦る気持ちを抑え、冷静に。女の子の背中を擦りながら様子を見る。
「······う、·····うぅ」
「大丈夫!?」
俯きながら体を震わせる白い女の子は、呻くような声を小さくあげている。
救急車を呼んだほうがいいよね!? 大和くんに伝えないと!!
「大和くん!! 大変!! 女の子がチョコレート―――」
「うみゃゃやぁぁあああい!!♪」
「!? ふぇ?」
私が大和くんを呼ぶため叫んでいる最中、白い女の子は私の方にキラキラとした目を向けて大声で叫んだ。心なしかシッポもピンッとしっかり立ち上がり、喜びを爆発させているように見える。
「え!? なに? なんて言ったの?」
「ニャー、そんなにチョコ美味しかったの? もっといる?」
「にゃー♪ ちょーだぁ」
私は突然の事だったので何を言ってきたのかわからなかったが、琥珀はわかったいたようで新たにチョコレートを白い女の子に差し出そうとしていた。その様子を見て、混乱しつつもそれを横から手を出して静止する。
目の前で受け取れるはずだったチョコレートを横取りされたと思ったのか、白い女の子はにゃーにゃーと抗議の声をあげる様を見ながら、本当に異常がないかを確認する。
ひとまず蕁麻疹とかは出てなさそう。でも後から症状出るかもしれないし······。
「なんかあったの!?」
私が頭の中でイロイロ考えを巡らせていると、バタバタと大和くんがやってきた。私の叫び声のせいか相当焦っているみたいで、来る途中に壁にぶつかったような音が聞こえた。
「女の子がチョコレート食べちゃったの。今は何ともないけど、病院連れてったほうがいいかな?」
私がそういうと大和くんは白い女の子に目を移す。そして私に抱きしめられながら未だに元気よくにゃーにゃー抗議する白い女の子の様子を見て、
「······とりあえず元気みたいだから、一旦様子を見ておこう」
結局、数時間経っても元気だった。