風呂から上がり脱衣室。今大苦戦している。
丹愛にオムツを半ケツで履かせて、肌着を着せたまでは良かったのだが、髪の毛と尻尾はタオルで軽くしか水分をとってないのでそれが不快なのか、思い切りブルブルとさせ水分を弾き飛ばそうとしている。
その様子を見て、早くドライヤーで乾かしてあげようと手にとりスイッチを入れると、音に驚いたのか驚愕を浮かべた表情で固まった。
そのまま頭に近づけ髪を乾かし始めるが、音が怖いのか、熱風が嫌なのか、
「にゃー!」
「うわっ、こら!」
凄い勢いで身を捩ってこちらの腕の拘束から逃げそのまま脱衣室から出ていった。
脱衣室に取り残された自身と息子。ひとまずパジャマを自ら着た息子の頭を先程満足に仕事が出来なかったドライヤーで乾かしていると、逃亡者を確保した妻が脱衣室にやってきた。
「ずぶ濡れ容疑の逃走者、確保いたしました」
「ご苦労。では逃げないようにそのまま拘束をしてくれ」
茶番をすませ、息子の髪を乾かし終わった後メインイベントへ差し替える。先程とは違い妻の抱擁で安心しているのか、音に怯えながらも逃げようとする素振りはなくなった。
風を当てながら指で髪の毛をわしゃわしゃさせ全体的にドライしていく。幼いからか、この子の髪質の性なのかはわからないが、段々乾いていくとふわっふわで綿のように柔らかくなってきた。
ある程度乾いたので手櫛で軽く整え髪の毛のドライを終わらせた。
通常ならここで終わるのだが丹愛には尻尾がある。髪の毛同様にドライヤーを当てていく。
「髪の毛ふわふわなったねぇ」
「にゃにゃん♪」
髪の毛とは違い、ドライヤーの音が離れた為か気持ちに余裕ができているようで妻と一緒にふわふわの手触りの良い髪の毛を触りながらキャッキャしている。
尻尾を髪の毛同様わしゃわしゃしながら乾かしていくが、これまた苦戦する。丹愛自身は意識してないのだろうが、本能的な部分か、反射なのかはこれまた不明だがドライヤーの風が当たるたびにピョコピョコと動き、なかなか同じ所を乾かすことができない。
髪の毛の時よりも時間はかかったが、なんとか尻尾を乾かすことができた。髪の毛と同じで乾いた尻尾の毛並みはふわふわとしており、心なしか丹愛本人も満足そうであった。
―――――――――
先程、脱衣室での戦いがあったばかりなのだが、また新たな戦いが始まろうとしていた。
「丹愛お口開けてぇ。あーってやって」
「あー」
「いいねぇ、そのまましててねぇ」
シャカ
「ぃにゃーー!」
「あ、口閉じないで。あけんさい」
――――歯磨き――――
それは息子の時もそうだったが、慣れるまで多くの涙と悲鳴で抵抗され、そしてコチラはそれでも清潔さを保つために心を鬼にしてその抵抗に対して必死に対抗する親と子どもの戦いである。
口の中で人工物の毛が音を立てたことで、慣れない感覚に口を閉じ歯ブラシを噛んで動きを止めようとする丹愛に対し、アゴを指でグッと下に押して無理矢理口を開けさせる。
「いににににー!」
「そんな頑張って抵抗しなくてもいいから、はやく口あけんさい」
どうにか口から歯ブラシを引っ張り出し、そのままの流れで固く閉ざしている唇と歯の間に滑り込ませ、歯の表側をゴシゴシと磨き始める。
「ぬーー!」
口元で蠢く歯ブラシに対し唇を固く閉じ動かせないようにしてくるので、なかなかスムーズに磨くことは出来ないが、それでもなんとか磨いていくと、今度は口を開け表側を磨かせないようにしてきた。
僥幸―――。
その隙に内側に歯ブラシを入れ、更に反対の手の親指を下の前歯に当ててグッと力を入れ口を開いた状態で固定した。
「ゃーやーーー!」
顔を左右にさせながら頭全体で歯ブラシから逃れようとしているが、固定されているせいで逃れることはできないようだ。
こうして格闘すること数分後、そこには満身創痍、抵抗で疲れて息を整えている丹愛と、ひと仕事やり終わり満足感溢れる男がいるのだった。